頭文字Dー歌姫の最速録ー   作:三坂

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 このたびの令和8年熊本地震により、亡くなられた方々に深く哀悼の意を表しますとともに、被災されたみなさまに心よりお見舞い申し上げます。
 今なお続く余震の中、被災地のみなさまが安全に過ごされ、一日も早く被災地の復旧復興が進みますよう、心よりお祈りいたします。

(突然このような文書から始まってびっくりしたとは思います、この回を書いてる途中に熊本地震が発生しまして、急遽このような文書を入れました
 尚本編はいつも通りでいきます

 それでは第四十七話…どうぞ!(今回でガムテープデスマッチは決着です)


第四十七話 拓海・怒涛の激走!!

 

 

 

ー…ムカついた…わざとやりやがったな…、テメェみたいなカスには…ぜってぇ負けないからな…!ー

ゴァァァァ

 

 

 慎吾にコーナー途中でどつかれてスピンしたもののなんとか立て直して復帰した拓海であったが、完全に今のでキレてしまったらしくいつになくガチギレの表情を見せながらアクセルを踏み込む。

 その光景を見ていたギャラリー達はあのスピン状態から立て直して何事もなく走り始めた秋名のハチロクのテクニックに、驚きの声を次々と上げていた。

 

 

「すげぇ!?スピン状態から360度ターンして何事もなく走り始めたぞ!!」

 

 

 そんなギャラリーたちに混じる形で見ていた前田宗一は、流石は秋名のハチロクといったところか…と冷静に先ほどのスピンからの立て直しを分析しつつ評価する。

 

 

ーほぉなかなかやるな、スピンからの立て直しもそうやが…その後に何事もなくコース復帰…こりゃ偉いレベル高いとちゃうんか?ー

 

 

 だがそれと同時に秋名のハチロクがスピンした原因が後続のナイトキッズ所属のEG6がどついたことが原因だとにも気づいていたらしく、得意のガムテープデスマッチで負けそうになったかってなかなかの荒業やな…と鼻で笑っていく。

 

 

ー…にしてもまあまさかコーナー途中でどつくとはなぁ…あのEG6のドライバー、負けそうになったからやったってとこか…まっうちから言わせればその程度ってことちゅうかーふんっ

 

 

 確かにどついたことで位置が入れ替わりEG6に取っては有利な状態になったのかもしれない、だが同時に先ほどのスピンで秋名のハチロクのドライバーが完全に切れたのも見抜いており、まだバトルの結末は分からないのに終わった…と内心そんなことを呟いていくのであった。

 

 

ーまあこれで位置が入れ替わってEG6のドライバーに取っては優位になったやろうが…、今ので完全に秋名のハチロクのドライバーはキレたやろうな…こりゃ勝負あったかもしれへんなー

ゴァァァァ…

 

 

 もちろん拓海がスピン状態から立て直したのは前を走っていた慎吾もバックミラーで確認しつつも、立て直したのはまぐれで偶然だと自分に言い聞かせていく。

 まあ確かに速度の乗りやすい高速コーナーでアレをやれば立て直す間もなくあっという間におじゃんであることには変わりないため、一見すれば運が良かったように思える。

 

 

ー…ちっ…絶対偶然だ…紛れに決まってる…くそぉ…高速コーナーだったら間違いなくおじゃんだったはずなのに…ー

 

 

 ハチロクを潰しそこねたのは気分悪いが、位置が入れ替わり主導権は自分が握っているため後はこのままハチロクを千切って勝つだけだと慎吾は心の中で割り切ることに。

 確かにコツを予想より早く拓海が掴んでいるとはいえガムテープデスマッチでのスピードバトルなら圧倒的に慎吾の方が有利何も事実、このまま千切ってやる…そんなことを内心思いながらアクセルを踏み込み、EG6もそれに応えるように加速していく。

 

 

ーまあいい…どうせこのバトルは俺の勝ちだ、潰しそこねたのは気分悪いがスピード勝負ならこのルールに慣れている俺は負けないぜ。ぶっちぎってやるー

ゴクッ

ンバァァァ!!

 

 

 しかし拓海も逃がすまいとアクセルを床まで踏み込む勢いでハチロクを加速させていき、コーナーへ先に侵入したEG6に続く形で…だがいつもならやらないほぼノーブレーキのハイスピードドリフトで勢いよく飛び込む。

 

 

ギャァァァ

ウォンウォン!!

ゴァァァァ!!

 

 

 だが驚くのはこれからコーナーから立ち上がった拓海はハチロクの左側タイヤを斜面に無理やり乗り上げさせ、そのまま段差で振動や足回りなどお構いなしにアクセルベタ踏み状態で土煙をあげながら加速。

 これにはギャラリー達も慌てて突っ込むようにやってきたハチロクを避けるように進路上から退避、しかしハチロクは気にする素振りもなく目の前を勢いよく通過していく。

 

 

ゴシャァァァ!

ゴトゴト!!

「うわぁぁヤベぇ!?」

「ひぃぃ!!」

ブォン!!

 

 

 その後コーナーが迫ってきたため斜面からアスファルト路面に復帰して、全開の4輪ドリフトでコーナーを流したと思ったら右リアをギャラリーがいる場所でもお構いなしにガードレールへ接触。

 今度はぶつかった反動を利用して逆4輪ドリフトでコーナー混じりのストレートを流していき、これにはギャラリーたちも正気かと疑いの表情を浮かべていた。

 

 

ギャァァァ

「うわぁ!?」

ゴンッ

ドギャァァァ

「げぇ…アイツモロにガードレールぶつけなかったか…?しかもその反動を利用して逆ドリフト…!!」

「あのハチロク何考えてるんだ!?」

 

 

 とはいえ狂気じみた走りを続けていたお陰であれだけ開いていたEG6との車間はぐんぐんと縮まり、慎吾もバックミラーをチラチラみながらそんなバカな…とギャラリーたちの歓声とは裏腹に焦りを露にしていた。

 その間にもコーナーに差し掛かるたびに慎吾のEG6は左足ブレーキとサイドブレーキを器用に使ったコーナリングでクリアしていき、いつになくハイスピードの走りを見せていく。

 

 

ーマジかよ…ハチロクが差を詰めてくる…そんな馬鹿な…!!ー

ゴクッ

ギャァァァ

 

 

 しかしハチロクはその倍のスピードでコーナーへ侵入、ぶつかることもお構いなしと言わんばかりのハイスピードドリフトでEG6を追随していきギャラリー達もキレてるぜ…とひしひしと伝わる迫力を目の当たりにしていた。

 そんな中密かにこのバトルを見に来ていたナイトキッズリーダーの毅は、通常の走り屋ならキレたらミスを連発して走れないところを、拓海は身体に染み付いたドライビングテクニックでハチロクを紙一重のコントロールをしていることを見抜いていた。

 

 

ギャァァァ

「死ぬつもりかよぉ…」

「キレてるぜ…あのハチロクのドライバー…!」

ー並のドライバーならキレたら最後…ミスを繰り返して速く走れない…、…だがアイツは違う。身体に染み付いたドライビングセンスに紙一重のところでハチロクをコントロールしているー

 

 

 キレればキレるほど速い…そう思いながらも、同時にこのバトルの結末を見抜いていたのか勝負あったな…と走り去る2台のテールランプを横目にそんなことを呟いていく。

 

 

ーキレればキレるほど速い…、…勝負は見えたな…慎吾…ー

ゴァァァァ

 

 

 しかしそんなことをリーダーから思われている間にも慎吾は、これまでにないほど自分もEG6も限界コーナリングで攻めているのに離れるどころか更に距離を詰めてくるハチロクに焦りを完全に隠せず、何が起こっているのか理解が出来ていないという軽いパニックに陥っていた。

 

 

ギャァァァ

ーくそぉ…俺もEG6もこれ以上攻め込めないギリギリで走ってるのに…一体何が起こってるんだ…!?ー

 

 

 と同時に今までは何ともなかったダウンヒルアタックが今までにないほど恐ろしく感じているらしく、牙を剥きつつあるコーナーに恐怖しつつも、それでもいつになくハイスピードのコーナリングでハチロクをどうにか振り切ろうと走り続ける。

 

 

ー……恐ろしいぜ…ダウンヒルアタックがこれほどまでに恐ろしいと感じたことはなかった…!ー

ウォンウォン!!

ギャァァァ!!

ゴァァァァ

 

 

 しかしそんな必死の走りも虚しくコーナーを2個ほど抜けたところのストレートで完全に張り付かれたことで、最強のテンロクエンジンを搭載したEG6がハチロクに追い詰められている状況に衝撃を受けていた。

 

 

ー…!?張り付かれた…信じられねぇ…このクラス最強のEG6がハチロクに追い詰められるなんて…ー

 

 

 というかここまで来ると速いとか遅いとかの次元でないことは慎吾も気づいていたらしく、拓海の恐ろしいテクニックに思わず化け物だと口にしつつも、同時に追いつかれても抜かせなければいいと割り切ることに。

 まあこの先の連続ヘアピンを抜ければゴールはすぐそこ、なのでそこまで走りきれば慎吾の勝ちのようなものなので、ここから先は意地でも死守するつもりのようだ。

 

 

ー速いとか遅いとかのレベルとは根本的に違う…あのハチロクバケモンだ……けっ!食いつかれたって抜かせなきゃいいんだ…この先の連続ヘアピンをクリアすればゴールはすぐそこ…!バトルは俺の勝ちだ!ー

ンバァァァ

ゴァァァァ

 

 

 その後連続ヘアピン最初の右コーナーをハチロクを

抑えつつEG6難なくクリア、このままの流れでヘアピン2つ目の左コーナーもクリアすると言わんばかりに疾走していく。 

 しかしその際にハチロクがイン側に寄せたことに気づいており、もちろん慎吾はそんなことさせまいとイン側のスペースを塞いだ状態でコーナーへと侵入する。

 

 

ウォンウォン!!

ーけっ!インにつこうたってそうは行くか…!ー

ギャァァァ

 

 

 だが拓海はインを詰めてきたEG6にお構いなしと言わんばかりにハチロクをインへと飛び込ませていき、EG6のリアにぶつけると言わんばかりの速度で急接近。

 当然慎吾もさっきの仕返しでぶつけてくる気かと驚きの表情を露にしながら反射的にブレーキを踏みながらステアリングを微調整していく。

 

 

ギャァァァ

ーまさか、さっきの仕返しでぶつけてくる気か!?ー

 

 

 がそれが結果として仇となりお得意の左足ブレーキが普通のブレーキになったことやアクセルも反射的に離したことでEG6はアンダーになってしまい、ズルズルとアウト側へと僅かにラインを膨らませてしまう。

 もちろんそれには気づいたもののその時点では時すでに遅し、空いたイン側のスペースに拓海はハチロクを飛び込ませていき、お得意の溝走りでEG6よりも速いスピードでジリジリとコーナリング勝負で頭を押さえる。

 

 

ーしまった…!?ー

キュルルル

キキュ

ゴァァァァ 

 

 

 一瞬スピードがガタ落ちになったEG6とは違い、溝走りによってある程度速度を維持させることに成功したハチロクは立ち上がりでEG6の前へと躍り出ていく。

 拓海にとってはいつもの勝負パターン、しかし慎吾からすればてっきりぶつけられると思ったのに不気味なコーナリングをされたことに驚きと混乱を隠せずにいた。

 

 

ゴァァァァ

ーてっきりぶつけられると思ったのに…今のコーナリングはなんだ?…どう見てもインベタをスコーンといきやがった…!ー

 

 

 しかしそれよりもあれだけ優位なポジションを取っていた自分が抜かれることが理解出来なかったようで、盛り上がるギャラリー達とは裏腹に怒りの声を露にしながら1人車内でぶちまけていくのであった。

 

 

(歓声)

ゴァァァァ

ー俺が抜かれるなんて……ー

 

 

 

「理解できねーんだよ!!」

ウォン!!

ギャァァァ

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃勝負がつきつつあった頃、拓海たちを追ってコースへと飛び出した秋名スピードスターズのS13シルビアの車内では相変わらず健二が大丈夫かな…と不安そうな表情を浮かべながら呟く。

 …が池谷は先ほどの心配そうな表情とは裏腹に、もう大丈夫じゃないかな?と安心させるような口調で話していき、これには健二もえ?と驚きの表情を露にする。

 

 

ゴァァァァ

プジャァァァ

「大丈夫かなぁ…拓海の奴…?」

「へっ、もう心配する必要ないんじゃないかな」

「あぁ?」

 

 

 まあ確かにここまで走ってきてクラッシュをしていないということは、池谷の言う通り拓海がこのガムテープデスマッチのコツを掴んでいるということ。 

 もちろん本人のセンスもあるだろうが、友奈のアドバイスが的確だったということも十分にあり得え、ひょっとしたらこのバトルでEG6を千切ってくれるかもしれないぜとも答えていく。 

 

 

「ここまで無事だってことはこのデスマッチのコツを掴んでるはずだ。もちろん拓海のセンスもあるだろうが、友奈ちゃんのアドバイスも上手く型がはまったのかもな。…ひょっとしたらあのEG6をぶっちぎってるかも」

「…だとしたら、あのナイトキッズの嫌味な奴。きっと焦ってるだろうな」 

 

 

 当然そうなればあのナイトキッズの庄司慎吾が焦っているのは目に見える光景であり、池谷はきっと今頃拓海にバトルを仕掛けたのを後悔してるかもな…と健二と安心しきったような表情で話していくのであった。

 

 

「あぁ、今頃は。拓海相手に…いや友奈ちゃんまで相手にしちまった状態でバトルを挑んだことを…後悔してるかもしれねぇぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなやり取りを交わしている頃、ほぼこのガムテープデスマッチも消化試合と成りつつあり、拓海のハチロクはEG6を振り切らんと言わんばかりの快走でダウンヒルを疾走していた。

 しかしゴール手前の長いストレートに出た途端、EG6はVTECを唸らせテンロク最強の高回転エンジンを唸らせながら加速してハチロクに並びかける。

 

 ここにきて最後の勝負に出た…と思われたが、何やらその表情は何処か不気味さを感じさせており…

 

 

ギャァァァ

ゴァァァァ

ンバァァァ

ーはっはぁへぁひぁ…!こっちから仕掛けたガムテープデスマッチじゃねぇか…!ー

 

 

 このまま自分で仕掛けたガムテープデスマッチで負けてしまえばチーム内では笑いものにされてしまい、あれだけ馬鹿にしていたリーダーの毅よりもメンツが保てなくなってしまう。

 そうなるぐらいならどんな手を使ってでも引き分けに持ち込んでやる…、そう思いながらも慎吾はアクセルを更に限界まで踏み込む。

 

 

ーこのままこのまま負けたら俺はチームの中で笑いもんだ。たとえ引き分けに持ち込んでも俺のメンツは保ってやるぜぇー

ンバァァァ

 

 

 長いようで短いストレート、しかしハチロクのテンロクエンジン相手なら同クラス最強のテンロクであるB16Aエンジンなら並ぶことは可能。

 だが抜くため勝負というよりかは先ほどぶつけた際の間合いと同じような…いや明らかに2台同時のクラッシュを狙っているかのような雰囲気。

 

 

ンバァァァ

ー短いストレートだがB16Aのパワーで並ぶことは出来る…ー

 

 

 実際それが慎吾の狙いでありコーナーに差し掛かり相手が回避機動や受け身が取れない状態になったことを確認するや否やアクセルベタ踏みで侵入、ハンドルを勢いよく左へと切り込みハチロクの右側に向けて突っ込んでいく。

 

 

ーお前の逃げ道はねぇ…、このバトルの結果は……ー

 

 

 

 

ーダブルクラッシュと行こうぜぇ!!ー

ンバァァァ

ギャァァァ

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし偶然か否か拓海のハチロクは慎吾のEG6が放った渾身の体当たりを紙一重でかわしていき、彼の目の前にはその先にあったガードレールがヘッドライトの光で照らされる形で現れる。

 もちろんその光景を目の当たりにしたことで慎吾は我に返り、慌ててブレーキに足を置きながら切り込んでいたステアリングを元に戻していく。

 

 

ギャァァァ

「…!!?」

ガコッ

キュルルル

 

 

 だが完全にぶつける体型に入っていたためその程度では精々ぶつけた際の衝撃を和らげる程度、左側から勢いよく接触したEG6は擦りながらしばらく疾走。

 その後ガードレールの段差に接触にしたのか、車体が衝撃で跳ねていき反動で車体が一瞬離れる。

 

 

ガガガガガガ

ガシャァァァン

「……」

(rage your dream)

 

 

 それから再びガードレールに接触、左側のヘッドライトを破損させながら反動で車体が一回転していき、走り去るハチロクを横目にその後は惰性でバック、ゆっくりとさながりながらリアをガードレールに接触させる形でようやくとまった。

 

 

ガコッ

ドン!

ギャァァァ

 

 

 完全にバトルの勝敗は決した…だが慎吾の表情には先ほどあった不気味なやけっぱちの雰囲気は一切感じられず、まるで何をやっていたんだ俺は…と言わんばかりの顔を浮かべながらしばらくの間ハンドルを見つめていた。

 

 

「……」

 

 

 同時刻、ゴール地点ではギャラリー達が降りてくる2台を今か今かと待ち望んでおりスキール音が響き渡ると共にどっちが先だとざわめていており、ナイトキッズのメンバーは慎吾が先だと決まってると自身満々に口にする。

 

 

ギャァァァ

「来たぞ!どっちだ!?」

「EG6に決まってんだろうが!」

 

 

 しかしコーナーから飛び出すように姿を現したのは白黒のパンダカラーのハチロク、秋名のハチロクでありこの結果を目の当たりにしたナイトキッズメンバーは驚きを露にしていく。

 

 

ゴァァァァ

「うぇ!?ハチロクじゃん!」

 

 

 だがハチロクはゴールライン手前だというのに速度をほぼ落とさずにドリフトで侵入、これにはガードレールに腰掛けていたギャラリーの1人は迫りくるハチロクに慌ててひっくり返るように退避。

 しかしそんなことはお構いなしと言わんばかりにハチロクは走り去るようにその場を後にする。

 

 

ギャァァァ

「…うわ!?」

「なっ…なんなんだあのハチロク!?」

「殺す気かよ!…なんだぁ!?」

 

 

 言わば直帰みたいな走り去りに思わず唖然としていたナイトキッズのメンバーだったが、いまだに降りてこないEG6に気づくと慎吾はどつなったとメンバーの1人が無線機を持っている仲間に尋ねる。

 しかし仲間からの返答は無言、だが何があったのかは察していたのかコーナーの奥の方を何とも言えない表情で見つめていくのであった。

 

 

「…おっおいEG6は…!慎吾はどうしたんだ…!!」

「……」

 

 

 

 

 

 

 ぶつかった衝撃であたり一帯に散乱するガラスや破片、その先のコーナー出口では車体の向きが逆になりボロボロとなったEG6が止まっており、近くには右手を押さえながら立ち尽くす慎吾の姿が…

 車体下からは何かの液体が漏れ、ボディー左側を中心にボロボロとなった痛々しい愛車をしばらく見つめながらも、そっと歩み寄りしゃがみ込みながら撫でていく。

 

 

「……」

 

 

 結果的には自業自得、だがそれでもシラフに戻ったことで自分が取り返しのないことをしてしまったという罪悪感からか、彼の瞳にはうっすらと涙が浮かんでいた。

 するとそのタイミングでスキール音とエキゾースト音が上の方から聞こえてくると共に、コーナーから勢いよくツートンカラーのS13が姿を現す。

 

 

ー…俺の…EG6…ー

ギャァァァ

 

 

 走っていた車内からコーナー手前の破片がヘッドライトの光で照らされる形で現れると、健二がまさかハチロクが事故ったのでは…と焦りの表情を露にしていく。

 …が池谷はそうでないことに気づいていたようで、慌ててブレーキを踏み込み減速、クラッシュした主であるEG6の手前で車を停車させた。

 

 

ゴァァァァ

「まさか拓海!?」

「違う!!」

 

 

 あれだけ馬鹿にした相手に涙をみられたくなかったのか涙を拭うと、慎吾は顔を背けるように視線を逸らしていくが、とまった車から飛び出すように出てきた健二と池谷は慌てた表情で駆け寄る。

 

 

キキッ!!

「……」

「やっちまったのか!!」

 

 

 とはいえあれだけの速度でぶつかったにしては車の損傷は比較的軽く済んだらしく、よくこれで済んだよなーと健二が車を横目に話していく。

 だがそうなると今度はドライバーの怪我の問題が出てくるため、池谷が大丈夫かと尋ねていくが慎吾は視線を合わせることなく後ろ姿を見せながら無言を貫いていた。

 

 

「よくこんなもんで済んだなー…」

「それより大丈夫かお前!怪我は…!!」

「……」

 

 

 しかしその雰囲気で池谷は察したのか、自分が病院まで送ってあげるから乗っていきなよと優しい口調で提案していくが、しばらく間を空ける形でそこまでして貰うのは申し訳ないと慎吾が初めて口を開く。

 

 

「…乗れよ、俺の車に。病院まで行ってやるから、救急車呼ぶよりもずっと…早いから」

「…そこまでして貰う訳にはいかねぇよ…、電話だけしてくれたらいいから…」

 

 

 だが池谷はその返答が無理をしている上での言葉なのに気づいていたようで、痛いんだから無理しなくてもいいんだぞと優しく手を乗せながらそう口にしていき、健二も事故ったときはお互い様だと話していく。

 その後近くの救急病院を地元故知ってるからそこに連れて行ってあげると話していくと、慎吾も恩にきる…と呟きながら提案を受け入れることに。

 

 

「無理すんなよ…痛いんだろ?」

「事故った時はお互い様だ、俺ら地元だから救急病院知ってんだ」

「すまん…恩をきる…」

 

 

 すると麓の方からエキゾースト音とスキール音が響き渡ると、1台の車が上がってくる音とヘッドライトの光がコーナーの先から照らされる形で現れる。

 それを聞いた池谷達はこのタイミングで上がってくるのか…!と口にしながら慌てて事故車がいることを教えようと駆け出しかける…が慎吾はその上がってくる主がわかっていたのか、心配は要らないと止めた。

 

 

ギャァァァ

「…!!おっおいこの音!誰か上がってくるぞ!」

「くそっこんなタイミングで!とりあえず俺が知らせて…」

「…いや、その必要はねぇ…多分この音はアイツだからな…」

 

 

 最初その意味がわかっていなかった2人だったが、コーナー手前に差し掛かったタイミングで速度が落ちるようなエキゾースト音と共に赤色のMR2が姿を現していき、池谷たちの目の前にハザードを焚きながら停車していく。

 池谷達も車を目の当たりにしたことで上がってきた主に気づいたらしく、間髪入れずに運転席ドアが開くと共に明日香が降りてくる。

 

 

「…?そりゃどういう…」

ギャァァァ

ウォンウォン…!

「!?おっおいこのMR2って…」

「……」

 

 

 降りてきた雰囲気が明らかに違うため、恐らく全てをしっているんだろうな…そんなことを思った慎吾は、覚悟を決めながらビンタでも殴られるのも承知で謝罪しつつ立ち尽くす。

 …が明日香はしばらく慎吾を見つめると、深いため息を零しながら言いたいことは山ほどあるけど今は病院にさっさといけ…と話しながら横を通過すると池谷たちのほうへと歩みやっていく。

 

 

「……すまん…、明日香」

「……はぁ…、言いたいことは山ほどあるけど…先に病院…痛いんでしょ。それ…」

「………」

「話すのはその後…、さっさと手当てしてきて。じゃないとろくに説教も出来ない」

「すまん…助かる…」

 

 

 その後うちのクソ慎吾が色々迷惑をかけた…謝ってもどうにかなる問題じゃないのは分かっているが、まずは謝らせてほしいと池谷達に謝罪していく。

 しかし池谷達は困ったときはお互い様だと口にしながら、慎吾の車をどうにかしてくれたら俺たちが彼を救急病院に運ぶから任せてほしいと伝える。

 

 

「……池谷先輩、健二先輩…本当にうちのクソ慎吾がすみませんでした…。謝ってもどうにかなる問題じゃないのは分かってるんですけど…」

「気持ちはわかる、起こったことは取り消せない…けど困ったときはお互い様だ。とりあえず病院には俺たちが連れて行くから、車のほうを頼めないか?」

 

 

 流石にそれは…と言いかけた明日香だったが、自分が連れて行ったら怒りでボコボコにしそうになりそうだったので出来ればそれで、車のほうはこっちでなんとかしますと答えた。

 するとその最中、慎吾があのハチロクのドライバーは凄いな…と口にしつつ何もんなんだ?と尋ねるように呟く。

 

 

「いや流石にそれは……、…やっぱお願いします。車のほうはなんとかするので」

「あぁ頼む」

「……なあ、すげぇ奴だな…あのハチロク一体何モンなんだ?」

 

 

 その光景を目の当たりにした池谷達は完全に秋名のハチロクに惚れたな…そんなことを思いながら笑みを浮かべ、明日香はこんな時に何余韻に浸かってんだ…と少し呆れ気味の表情を浮かべていくのであった。

 

 

 

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