頭文字Dー歌姫の最速録ー   作:三坂

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第四十九話 赤城の白い彗星

 

 

 

 市立病院に入院している樹の元へお見舞いにやってきた羽南達であったが、羽南からハチゴーのアップデートに関しての話を聞いた樹は目を輝かせながら喰い付いてきた。

 

 

「はっハチロクのエンジンをオレのハチゴーに載せられるってことか!?ちょっとそこを詳しく説明してくれ…!!」

 

 

 だがあまりにもがっつくものなのでまあまあ落ち着いて…と羽南が宥めながら、先ほど父親からの伝言として伝えたハチゴーのアップデート計画について説明していく。

 

 

「おっ…落ち着いてイツキ君……、コホン。それじゃさっき話したことの詳しい話…説明するね?」

「あぁ!…頼む!」

 

 

 事の発端は今朝、ガムテープデスマッチも一段落し明日香が慎吾から搾り取った賠償金で樹のハチゴーを修理する際、元積んであったハチゴーのエンジンがぶつけた衝撃で駄目になり載せ替えしようという方向で進んでいた時

 たまたま同じハチゴーのエンジンがないか知り合いの解体屋、荒川解体屋に羽南の父親が電話をした際、事故車のハチロクでエンジンとトランスミッション、更に足回りでも使えそうなのがあると告げられたのがきっかけだ。

 

 羽南経由で父親から樹がハチゴーを買ったことを聞かさらていたおやっさんは、それなら載せ替えるんだし修理費用も出してもらえるならこの際載せ替えるのはどうかと提案されたらしい。

 確かに多少の剛性の違いなどはあれどボディだけならほぼハチゴーレビンであり、ちゃんとしたエンジンやトランスミッション、足回りやマフラーなどを組めば化けそうではあるため、それを聞いた由紀は確かに…と納得した表情を浮かべる。

 

 

「って感じ、載せ替えるならいっそのことハチロク化計画するのもいいんじゃないかって。だってボディこそはハチロクレビンだし、ちゃんとしたものを組めば化けそうではあるじゃん?」

「まー確かにそれは言えてるかも」

 

 

 もちろん載せ替えるかハチゴーエンジンのまま載せ替え替えるのかという選択が出来るのはオーナーである樹だけなので、それも兼ねて聞いてきてくれと頼まれたらしい。

 どうかな…と尋ねた羽南に対して樹は少し考えると、そこまでしてくれるんならお願いしようかな…と載せ替えることを決心した表情を浮かべながらそう答えた。

 

 

「まあでも載せ替えるかハチゴーエンジンのままでいくかってのがあるからその選択肢はイツキ君が決めること、その返答を聞きたくて来たってのもあるかな」

「…そうだな、せっかくそこまでしてくれてるんだ…お願いしてもいいか…伝えてくれるか?」

 

 

 それを聞いた羽南はりょーかいと笑みを浮かべると、早速電話してくるから待ってて!と告げながら駆け足で病室を後にしていく。

 それを見送った4人だったがふと由紀が本当に載せ替えていいのか?後悔とかはないかと少し不安そうに尋ねる。

 

 というのもエンジンを違う車の違う型式のものに載せ替えるということはその車の特性が大きく変わるというもの、当然足回りや排気系も変わるため樹の知っているハチゴーとは大きく変わるのは間違いない。

 

 

「オッケー♪ならちょっと今から電話してくるから、ちょっと待ってて!」タタタッ

「うん…!お願いするよ」

「……でも本当にいいのイツキ君、だってほらハチゴーにハチロクのエンジン載せ替えるってことはその車の特性…大きく変わるんだよ?」

 

 

 当然樹もそれは充分に分かっており、もし自分の知ってるハチゴーの走りじゃなくなってもハチゴーなのにはかわりないと答えつつ、最強のハチロクコンビを目指すならこれぐらいはしないと…と話していく。

 それを聞いた由紀は安心したのか少し笑みを零すと、もう女の子隣載せてる状態でバトルしちゃ駄目だからね?と念押していくのであった。

 

 

「確かに由紀ちゃんの言う通り…、でもオレにとってハチゴーはハチゴーだから」

「……」

「それに拓海と最強のハチロクコンビ目指すならこれぐらいしないとだし!」

「ぷっ…何よそれ…、…でも今度は女の子隣乗せた状態でバトルなんてしちゃ駄目…だからね?」

「…分かってるよ」 

 

 

 

 

 

 とそんなことを話しているのを横目に、祐也が明日香に対して昨日のバトルあとナイトキッズの庄司慎吾をどうしたのかと尋ねいき、

 彼女はそれに答えるかたちでリーダーの中里と病院での治療が終わった後しっかり説教して、一発自分が強烈なビンタをかました旨を明かしていくのであった。

 

 

「ところで明日香、昨日のバトルのあとって」

「あー、病院で治療終わった後しっかり中里と説教して一発私がビンタかましといた…。あと修理費用や入院費もしっかり搾り取ってね」

「……流石ナイトキッズとつるんでるだけはあるな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 明日香達が見舞いに行っている頃、渋川のGSスタンドでは池谷と友奈がいつものように来店してくるお客さんの対応をしていた。

 とはいえ今日はそうでもないのか応援の人も見受けられず日陰に立っている2人も何処か平穏な雰囲気を醸し出している。

 

 雑用などはすでに済ませているため、2人は昨夜のバトルに関しての話で盛り上がっており、池谷があのムカつく野郎に拓海がガムテープデスマッチで勝って更生させたときはスッキリしたよ…とニヤニヤしていた。

 

 

「いやー本当昨日のバトルはスッキリしたよ、拓海があのムカつく野郎を蹴り飛ばしてくれた上に更生させてくれたんだから」

「まあでも…結構ヒヤヒヤ…でしたけどね」

 

 

 まあ拓海がガムテープデスマッチに勝てたのも友奈から的確なアドバイスを貰ったお陰でもあるため、今回の勝利は拓海と友奈の共同勝利だな…と池谷はそう指摘する。

 そんなことはないですよ…と否定しつつ、拓海のオヤジにアドバイスを託されたから無事にバトルに勝てるように過去の経験を活かして助言しただけだと話していく。

 

 

「まっ今回の勝利は友奈ちゃんのアドバイスがあってこそだ、あれがなきゃ拓海も勝てなかっただろうしな。つまり2人での勝利ってことだ」

「そっそんなことはないですよ…(汗)、私はただ拓海君のオヤジさんにアドバイス託されたからその通りにしただけで…」

 

 

 するとそれを聞いた池谷がそのことについて触れていき、何故わざわざ文太自身じゃなくて友奈にアドバイスさせるように仕向けたのか…と不思議そうな表情を浮かべながらそう呟く。

 何度も自分みたいに藤原豆腐店に顔を出しるかと言われるとそんなことはなく、なによりあの日が2人にとって初対面。

 

 いくら噂を拓海から聞いているとはいえ実際に走っている姿をみてもないのに、あってハチロクと彼女をみただけでアドバイスをして欲しいと言えるのはなかなかに大博打とも言える。

 

 

「あーそうだよそれそれ、なんで拓海のオヤジさんは友奈にアドバイスを託したんだ?だって初対面だろ、あの日が」

「ですね…、なんか私とハチロクをみた直後にアドバイスをしてほしいって」

「ふーむ…、相変わらずアイツのオヤジは読めない…」

 

 

 その会話を少し離れたところで聞いていた祐一は、バトルを見なくとも赤城の歌姫クラスなら出会ってすぐに分かること、むかしからそうだったからな…と呟いていく。

 

 

ー文太クラスになりゃ歌姫レベルの走り屋は出会って車と人さえ見りゃすぐに分かるさ、…昔からそういう奴だからなー

 

 

 とまあそんなことを話していると見慣れた白色の秋名スピードスターズの180SXが入ってくると共に、池谷達の目の前へとやってくる形で停車、中から健二がひょこっと運転席ドアを開けながら姿を現した。

 

 

パパーっ

キキッ

「おっあのワンエイティは健二だな、アイツ本当に暇だよな」

「おいっす、お疲れ2人とも」

 

 

 車から降りてきた健二は、やはりガムテープデスマッチのバトルで拓海が勝ったことはすでに(当たり前だが)群馬中…いや県外エリアにも広まっているらしい。

 ちなみにガムテープデスマッチを無理やり実行させた慎吾はMR2乗り明日香ととナイトキッズリーダーの毅にみっちりと絞られたらしく、それを聞いた池谷はざまーみろとスカッとした表情を浮かべる。

 

 

「そういや昨日のバトル、群馬どころか県外まで広まってるらしいぜ。FR殺しのデスマッチに秋名のハチロクが勝ったって」

「流石は拓海ってところだ、んであのムカつく野郎はどうなった?」

「あー、アイツならナイトキッズのリーダーとMR2の子にたっぷり絞られてるらしーぜ。噂じゃビンタされたとか」

「へっざまーみろだぜ、イツキを怪我させたのが運の尽きってな…!」

 

 

 とまあそんなことを話しているとふと健二が、そういえばこの辺で事故でもあったのか?とバトルとは全く関係ない話をいきなり振ってくる。

 もちろん事故などは起こっていないため、なんでそんなことをいきなり聞くのかと池谷が尋ねると、健二がスタンドの看板近くに花束が置かれていたこのを明かしていく。

 

 

「…ってそうだ、そういえばスタンドの目の前で事故とかあったのか?」

「へ?そんなの店長からも聞いてないしオレも見てはないけど…なんでいきなりそんなことを?」

「いやさ、あそこの看板したに花束が置かれててさ」

「花束?」

 

 

 

 その後健二の案内の元友奈と池谷、あと祐一も背後から付いてくるかたちでその場所へ向かっていくと健二の言う通り看板下に綺麗な花束が置かれていた。

 一体誰が何のために…置かれた花束を見下ろしながらそんなことを呟く池谷の横、しゃがむかたちで花束をまじまじと見ていた友奈がふとその中に手紙が入っていることに気づいて声をあげる。

 

 

「ほら、これだよコレコレ」

「本当だ…、店長何か置かれる見覚えとかありますか?」

「いや…、そんな覚えは全くないぞ」

「……あの、池谷先輩。なんか花束の中に手紙みたいなのが…」

「手紙?」

 

 

 

 そう言われて改めて覗き込んだ3人だったが友奈の指摘通り花束の中に折り畳まれた手紙が入っていることに気づく、しかもその表紙には赤城の歌姫宛…という文字が……

 

 

「本当だ…ってか宛名書いてあるな…」

「あっおい池谷これって…!!」

「赤城の歌姫宛…ってことは友奈ちゃん宛か…」

 

 

 一体誰がこんなことを…そんなことを思いながらもとりあえず手紙の中身を確認するために花束と一緒に回収しながら広げるかたちで内容き目を通した友奈は、思わずその内容にはっとした表情を浮かべた。

 

 

「一体誰が……(ペラッ)…っ!?こっこれって……」

 

 

 何事かと後ろで見ていた池谷たちも覗き込むと、ようやくその意味を理解したらしくはっとした表情を見せていく。

 そこにはこう

 

 

『明日の夜10時

赤城山で待ってる

 

赤城の白い彗星 高橋涼介より』

 

 

 書かれておりその内容をみた祐一はいよいよ動き出したか…と少し険しい表情を浮かべながら、わざわざ赤城レッドサンズではなく、赤城の白い彗星として書いてあることに着目し、これがただのバトルの挑戦状でないことにも気づいていた。

 

 

ー……いよいよ動き出したか……、それにこの描き方……ただの挑戦状じゃないなー

 

 

 それが数年前、一度赤城でやりあった最初で最後の赤城の歌姫とレッドサンズを形成するまえの1匹狼、赤城の白い彗星のバトルの延長線、言わばその決着だな…と直感的に祐一は感じていた。

 そんな彼の視線の先、そこにはいよいよ来たか…と言わんばかりに鳥肌を立たせ唖然とした表情でいつになく手紙を見つめる友奈の姿がそこにはあった。

 

 

ー数年前…赤城で一夜限りのバトルだった赤城の白い彗星と赤城の歌姫…、結局あのバトルは引き分けで幕を閉じた…その決着をつけるつもり…だな…ー

「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の夜、いつものように営業を終えた祐一が店じまいをしていると聞き慣れたエキゾースト音と共に1台のハチロクが敷地内に入ってくる。

 藤原豆腐店と閉店間際なのに図々しい入り方、考える間もなく文太が来たな…そんなことを思いながら店舗から顔を出す。

 

 

キュルルルル!!

「よぉ、今日は何のようだ?」

 

 

 ちなみに今日はガソリンを入れにきた…というわけではなく拓海がぶつけた箇所の修理兼板金に出しに行くついでに祐一の親字面を拝みに来たらしい。

 

 

「おう板金出しに行くんで、その前にお前の親字面でも拝んどこうと思ってな」

 

 

 その際にぶつけた箇所を確認した祐一は派手にやったなーと言いながら、まあこの前のバトルじゃこうなるのも無理はないか…と納得した表情を浮かべる。

 ちなみにぶつけられた車のオーナーである文太は、何故か嬉しそうな(相変わらず表情は読めないが)表情を浮かべておりそのことを祐一に指摘されていく。

 

 

「派手にやったなー、拓海の奴。まあこの間のバトルじゃ無理もないか」

「あのバカが…、でもいい傾向だぜ」

「あぁ?変な奴だな、フェンダー凹まされてニヤニヤするなんて」

 

 

 別にぶつけられて喜んでいるわけではなく、この頃は速い走りをするようになってきたようで、今まで感じていた物足りなさを埋めるかたちで文太曰く一つ壁を超えたのだとか…

 

 

「アイツ走りが変わってきたのさ、前は確かにうまかったけど何か物足りなかった、このごろは速い走りをするようになったよ。一つ壁を越えたな」

「よくわかるな文太」

 

 

 まあ毎日ハチロクを見ていればオーナーである文太にとって、拓海が普段どんな走りをするかなんて手に取るように分かるらしい。

 それだけじゃなく最近アイツにとって刺激的な走り屋が現れたこともいい傾向だとも話していき、祐一が迷うことなく赤城の歌姫だろ?と当てていく。

 

 

「そりゃ毎日ハチロク見てりゃ、アイツがどんな走りをするか手に取るように分かるさ」

「はぁー、そんなもんかねぇ」

「それにアイツにとって刺激的になる走り屋が現れたこともいい傾向だろうな」

「…そりゃ、赤城の歌姫…だろ?」

 

 

 もちろんその通りであり、まだ走りまでは見ていないが文太曰くいい走り屋とのことで、実力に関しては拓海以上じゃないかと指摘していく。 

 相変わらず友奈の走りをみていないのによくわかるもんだなー…と祐一がつぶやくと、あのレベルの走り屋なら車と人間をみればわかるもんだよ…と文太は答える。

 

 

「あぁ、まだ走りをみてないがいい腕をしてるのは間違いない。拓海よりもテクニックはあるだろうな」

「ほぉ、よくわかるな。まだ走りをみてないのに」

「あーいう走り屋は見た目と車さえみればなんとなくわかるもんだよ」

 

 

 とまあそゆなことを話していた2人だったが、文太はこれからハチロクの板金に出しに行くため、エンジンを始動。リトラクタブルのヘッドライトをオープンさせると、また帰りに寄るから一杯やろうぜ!と告げていく。

 

 

「んじゃ帰りに寄るから一杯やろうぜ、じゃあな!」

「おう」

 

 

 当然祐一も見送りをするのだが、相変わらず荒いスタートダッシュにスタンドの敷地内から道路への合流方法を横目に、息子も息子だがオヤジもオヤジで似たり寄ったりだなぁ…とやれやれという表情を浮かべる。

 

 

キュルルルル!!

ウォン!!

「…息子もクレイジーだが…オヤジもクレイジーだ…アイツも変わんねぇなぁ…」

 

 

 その後店内に戻りつつ、ふと祐一は昼間友奈の元に送られてきたレッドサンズのリーダー…高橋涼介からの挑戦状を思い出す。

 こりゃ明日は群馬エリア中大ごとになるぞ…そんなことを思いながら途中だった店内の店じまいを済ませていくのであった。

 

 

ーにしても昼間のレッドサンズからの挑戦状…、ありゃ明日は群馬中が大騒ぎになるぞ…ー

 

 

 

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