ギャァァァ
「おいおい…池谷の奴、やけに飛ばすなー」
碓氷峠でシルエイティを観たあと、帰路についていた一同であったがその道中池谷はやけに飛ばしており、いつになくふらついているようにも思えた。
ちなみに健二のワンエイティには3人乗っているため、ついていけねーよと愚痴を零していると、拓海が離れていたほうがいいと口にしていく。
「こっちは3人乗ってるんだぜー、ついていけねーよ」
「離れてたほうがいいっすよ…」
おそらくいつもよりもかなりリズムが悪いと走りで察したのだろう、わかるのか?と尋ねる健二に対して多分と拓海は答える。
「なんか…リズムが悪いっていうか…変ですよ池谷先輩の車」
「え?わかるのか?そんなこと」
「わかるってわけじゃないですけど…多分」
多分?そう健二が拓海の答えに答えた直後、突如としてS13が制御を失い左右にふらふら、その後横向きになりながらコーナー出口で停車。
ちなみに健二は一応車間(ついていけなかったのもあるが)を空けていたため、余裕を持って停車することが出来た。
「多分?」
キュルルルル!!
ギャン!!
「うわ!?本当にやっちまった…!」
拓海の言った通りになった…樹がそんなことを口にした矢先、麓の方から甲高いエキゾースト音やスキール音とともに1台の車が上がってくるのがヘッドライトの光で確認出来た。
「拓海の言った通りだ」
ギャァァァ!!
「不味い!対向車来てるぞ!」
もちろん池谷も気づいてはいたがスピン直後ということもあって動くよりも相手のほうが来るのが早く、コーナーの影から青色のシルエイティが勢いよく飛び出してきた。
ギャァァァ
「…!?」
ぶつかる…誰もがそう思ったものの相手はインパクトブルーと呼ばれたシルエイティ、対応には慣れていたのかすぐにブレーキを踏んでくれたおかげでぶつかる手前で止まることに成功。
そのシルエイティの車内、助手席に腰掛けていたインパクトブルーの一人、沙雪は思わず愚痴を思わずこぼす。
「危なかったー、ったくどこの馬鹿よ!リアが出てビビってアクセル抜いて!お釣りを貰うって一番ダサダサの初心者スピンでしょー」
とはいえいつまでもお見合いしているわけにはいかないためパワーウィンドウを開けると、他の車が来ないうちにさっさとどくようにボディを叩きながら促していき、池谷もすぐに車をどかしていく。
「ちょっとー!13のお兄さん!早くどいてくれないと他の車がどんどんきて危ないよ!」
「今どきますから…!」
ちなみに後ろでその様子をみていた健二と樹はださーと盛り上がっており、連れと思われないように他人のフリしとこーと盛り上がっている。
「チョー恥ずかしい…!!池谷先輩!」
「カッコ悪ー、他人のふりしよー」
その間にも体制を立て直した池谷はそのままシルエイティとすれ違いながらすみませんと謝った直後、ハッとした表情を浮かべていく。
そう…シルエイティの運転席に腰掛けていた女性ドライバーはなんと今朝デートをした真子であり、彼女も池谷に気づいていたのかこちらを凝視していた。
「本当にすみませんでした……っ!?」
「…!」
お互いにまさかのタイミングでの再会、もちろん喜べるものではないため、衝撃を受けながらも池谷は車を走らせてその場をあとにする。
残された真子はしばらく呆然としており、沙雪のどうしたのかという問いに対して何でもないと答えていく。
ブロロロ
「……」
「どうかしたの?」
「ううん、何でもない」
当然池谷も同様でありS13を走らせながら、まさか碓氷峠最速のシルエイティのドライバーが真子だったとは…と驚きながらも、恥ずかしい場面を知られたことや自分よりテクニックが本当はあったことにショックを受けているのであった。
ー碓氷峠最速のシルエイティを操っていたドライバーが真子ちゃんだったなんて…!ー
ー俺…もうしにてぇ…!ー
ドギャァァァ!!
池谷と真子が衝撃的な再会を果たしている頃、秋名のダウンヒルでは甲高いエキゾースト音やスキール音が響き渡る中、R34とハチロクによる激しいダウンヒルバトルが繰り広げられていた。
重量以外峠に持ってくるのは反則級の性能をしているR34もそうだがそれを操るソラに対して、友奈は思わず感心の表情を浮かべていく。
ーいやー流石はGTR…反則級だよーその性能。ってかソラちゃんもヤバいかも…全然重さを感じさせないというか…ー
基本的に秋名の峠は序盤は勾配の緩いセクション、そのためハイパワーで四駆なGTRに対してハチロクはレース用エンジンに換装しているとはいえ軽さ以外では全て負けている。
そのためこのセクションでの差が顕著に現れており、前を走るソラを友奈は辛うじて捉えている状況なのだ。
ー秋名の序盤は勾配が緩い…、そのおかげで差が顕著に出てるっていうか…こっちは辛うじて捉えてるようなもんか…ー
確かにストリートに持ってくるには反則級ではあるものの、そのかわり重量はかなり重い。
これがヒルクライムならさほど影響がないものの、ダウンヒルとなるとスピードが乗りやすくて重量がある車はブレーキング時にタイヤやブレーキにかかる負担が大きい。
当然セーブしていたとしても影響は回避出来ず後半になればなるほどブレーキやタイヤが垂れてきて、GTR得意の強力なブレーキを活かせなくなってしまう。
ーでもGTRほどの車ってなると重量は無視出来ない、恐らく…いや後半になればなるほど苦しくなるはず…!そこまではこの位置をキープするよっ!ー
そんな一定間隔でついてくるハチロクをバックミラーで見ていたソラは、いくらダウンヒルとはいえどハチロクでGTRに驚きの表情を浮かべていく。
そりゃそうだ、ソラも今までいろんな車とバトルしてきたもののローパワーの車がついてきた経験が一切ない。
なのでこうしてついてくる友奈の異常さがひしひしと伝わってくるのだ。
ーハチロクでGTRについてくるって…いくらレース用エンジンを載せてるって言っても…誰にも出来る所業じゃないー
やはり流石は歌姫だ…そんなことを思いながら、同時にバトルをして良かった…!と笑みを浮かべつつアクセルを踏み込んでいき、R34を加速させる。
ーでも後悔なんてしていない…!むしろあの歌姫さんとバトル出来て幸せかも私…!とことん突っ走るよ!しっかりついてきてください!ー
ゴクッ
その後再びコーナーに差し掛かるとフルブレーキングで減速、ヒールアンドトゥで1速に叩き込みながらステアリングを切り込む。
今度はRのきついコーナーだったため四駆で重量級のR34でド派手な四輪ドリフトでコーナーを流していく。
「っと!」
ウォンウォン!!
ドギャァァァ
GTRでドリフト…その光景を目の当たりにした友奈はその凄さに思わず苦笑いを浮かべるものの、こちらも負けじまいとフルブレーキングで減速、ヒールアンドトゥで2速にギアを叩き込みながらコーナーへ進入。
ステアリングを切り込みR34に負けないド派手で綺麗な四輪ドリフトでコーナーを流しながら、クリアしていくのであった。
ーうひゃーGTRでドリフトって…あんなの私真似出来ないよー(汗)でも負けるつもりはないよ!ドリフトなら私の得意分野!ー
ゴクッ
ウォンウォン!!
ドギャァァァ!!
2台が激しいダウンヒルバトルを繰り広げている頃ゴール地点では降りてくるのを待っている明日香、由紀、あげはの3人の姿があり、かすかに聞こえてくるエキゾースト音やスキール音をBGMに話し込んでいた。
「おーやってるねー、二人とも」
「だな、にしても本当友奈ちゃんドリフト綺麗な音出すよなー」
「えぇ…羨ましいぐらいに」
するとふと明日香が思い出したようにあのGTRってどうやって入手したんだ?とあげはへと尋ねていく。
確かに高校生ぐらいの年齢でGTRを持っているというのはなかなかに珍しく、いくらアルバイトをしていたとしても手に入れるのは金銭的にも厳しい。
「そういえばさ、ソラちゃんってどうやってGTR入手したの?普通に車買うのも大変なのにGTRってなると…」
まさかソラの家庭は大富豪なのでは…と言いかけた由紀だったが、あげはがそれをあっさりと否定。
どうやらあのGTRは正確には譲り受けたものらしく、それを聞いた2人は思わずえっという表情を浮かべる。
「もしかしてソラちゃん家がお金持ちだとか…」
「あーあのGTRね、正確にはあの子のじゃないの」
「ほ?というと」
「実はね、あのGTRとある事情である人から譲り受けたものみたいよ」
「えっ?」
そりゃそうだ、普通に買うにしても大変なGTRを事情があったとはいえど手放して他人に譲り受けるなど本来ならばありえない話。
「GTRを?ソラちゃんに?」
「ええっ」
「うらやましい…、ってか事情があったとしても他人に譲り受ける?本来ならありえない話だけど…」
ちなみにその人は…と尋ねた明日香に対して、あげははソラから聞いただけであまり詳しくはないけど…と告げながらその人の名前を明かしていく。
「ちなみにその人は…」
「えーっとね、私も聞いただけなんだけど…確か名前は……」
「あっそうだ!やっぱりそうだよ!間違いない…!」
2人があげはから聞いている頃、スタート地点で待機していた3人であったが羽南が思い出したように突如として声を上げた。
いきなりだったのでびっくりしながらもどうしたんだよ…と尋ねる祐也に対して、羽南はソラが乗っているGTRがイギリスでのレースで優勝した女性ドライバー「シャララ・マイルズ」の車だと指摘する。
「うぉ…いきなり声出してどうしたんだよ……びっくりした…」
「いやだってあのGTR!どう見たってイギリスでのレースで優勝した女性ドライバー『シャララ・マイルズ』さんのRじゃん!」
なんですぐに気づかなかったんだろう…そんなことを思いながら悔やんでいるとましろがその通りだと告げながら、確かソラ曰くとある事情で譲り受けたものらしいと口にしていく。
「なんで気づかなかったんだろう…!あんな有名人のRを…!」
「たっ確かとある事情でその人から譲り受けたものってソラちゃんが言ってた気が…」
とある事情?と尋ねる羽南に対してましろも詳しくは聞いてない…というか聞いてもあまり話してくれなかったらしく、よくわからないと首を振りながら答える。
「とある事情?」
「うん…でも私もよく知らなくて…、というか聞いてもあまり話してくれなかったんだよね」
まあ本来貰える相手ではないため、色々と譲り受けたのも訳あってのことなのは間違いない。
とはいえ譲り受けたということは知り合いということでもあるため、そんな凄い人と知り合えるなんて羨ましくていいよーと羽南はそんなことを呟く。
「なるほど…、まあでもいいなー。そんな凄い人と知り合えるなんて…!羨ましいよー」
そんなことを羽南達が話している頃、2台が下ってる際の5連続ヘアピンではギャラリーをしに来たであろう走り屋の3人が屯するように立っていた。
…があいにく今日はあまり走っている車が見受けられず、いてもGTRとハチロクの2台だけでありしばらく見たら引き上げるか…と1人がそう口にする。
「なんか今日はあんまいないな…」
「だな…いてもハチロクとGTRの2台…それもバトルしてるって感じじゃないし…」
「もう少し見たら引け上げるか…」
すると仲間の1人がその2台のうちの1台、ハチロクが赤城の歌姫何じゃないか?とそういえばと言う感じで思い出す。
確かにカーボンボンネットに普通のハチロクから出ていいものではないエキゾースト音、歌姫のようなスキール音となれば間違いなく歌姫のハチロク。
とはいえ2人は気づいていたようで、今更な彼に対して気づくのが遅すぎると指摘していく。
「ってかさ、今思ったんだけど…あのハチロク赤城の歌姫なんじゃないか?だってほら走りがそれっぽいし」
「おいおい今更気づいたのか?俺なんかとっくのとうに気づいてたぜ」
「だな」
そんなやり取りを交わしていると思い出した1人が何故歌姫が秋名に来ているのか…そんなことを尋ねながら、そういえばあのGTRも地元じゃ見ない車だな…と不思議そうに口にした。
「マジか、…えっでもじゃあなんで歌姫が秋名に来てるんだ?赤城の走り屋だろ?…というか、よくよく見てみればGTRの方も地元じゃないよな」
言われてみればそうだな…そんなことを思いながら、もしGTRが地元の走り屋ならあんな特徴的な車すぐに気づくよと一人が話していく。
まあ走り方的に今流行ってる遠征?で訪れている可能性が高く、もしかすれば秋名のハチロク狙いかもな…とそんなことを呟く。
「言われてみればな、あんな車。もし地元ならすぐに気づくさ」
「けど何で秋名を走ってるんだろうな」
「まっ大方流行りの遠征だろ、秋名のハチロクあたりでも狙ってるんじゃないか?」
もちろん赤城の歌姫もここに来始めたということは同じく秋名のハチロクを狙っているということであり、もしかすれば近いうちに面白いバトルが見れるかもな…と口にする。
「恐らく歌姫も似たようなもんだろ、こりゃもしかすれば近いうちに面白いバトルが見れるかもな」
ただそのかわり今日はバトルが見られないということであり、ギャラリーの1人が今走り込んでる2台が何かの手違いでバトルしてくれねーかなぁ…と呟く。
「けどそのかわり今日は見れねーけどなぁ…、はぁ何かの手違いであの2台がバトルしてくれねーかな」
まあそんな偶然があるわけもなく、ないないと否定された1人はだよなーと渋々納得した表情を浮かべる。
とはいえ仮にしたとしても相手はパワーや性能が圧倒的に高いとされるR34 いくらレース用エンジンを載せている歌姫といえ地元じゃないとなると分が悪いのは明らか。
「んな偶然あるわけないだろー?ってか仮にあったとしても地元じゃない峠でハチロクじゃR34相手には分が悪いぜ」
確かにR32相手に秋名のハチロクが勝った例があるものの、それも相手が自滅したことや地元で熟知していたからであり、更に性能面で上回るR34となると話は別になってくる。
「けどGTR相手にハチロクが勝った例が…」
「アレは地元でのアドバンテージがあったし、ナイトキッズ側が最終的に自滅したからな…。そんなラッキーが何度も来るわけじゃないし、性能面で更に上回るR34相手だと話は別だぜ」
「だよなー」
だがこのときの彼らは知る由もなかっただろう。
そんな常識を覆すバトルがこれから目の前で繰り広げられようとも…