頭文字Dー歌姫の最速録ー   作:三坂

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第六十二話 5連続ヘアピン

 

 

 

 ドギャァァァ

 

 

 ひっそりと静まりかえっていた秋名山にエキゾースト音やスキール音を響かせ相変わらず2台は一定の間隔を空けながらバトルを繰り広げつつ、着々と秋名名物の5連続ヘアピンへ近づいて来ていた。

 

 そんな中GTRをグリップとドリフトを器用に使い分けながら走らせていたソラだったが、若干だがタイヤの食いつきやブレーキの反応悪いことをキャッチしていた。

 

 

プシャァァァ

ーうーんタイヤの食いつきが少し悪い…、おまけにブレーキも…やっぱ垂れてきますか…ー

 

 

 確かに強力なブレーキに峠に持ってくるのが反則級なGTRではあるものの、その分剛性を高めるために重量が重くなっている。

 これがサーキットなどやヒルクライムなら何の影響もないのだが、ダウンヒルとなると話は別。

 

 タイヤやブレーキに一番負担が行きやすくどんなにセーブしていて勾配のキツくなる秋名では、その影響は無視出来ない。

 

 

ーまだ完全にってわけじゃないですけど…勾配のキツい秋名だと影響もろにくらいますねー

 

 

 もちろんタイヤやブレーキ垂れてきていることやのは友奈もしっかり気づいており、突っ込みが若干鈍くなっていくことを察していた。

 

 

ーさっきより突っ込みが少し甘い…?そろそろタイヤやブレーキがたれてきた?ー

 

 

 となればペースが徐々に落ちくるはず…なによりこの区間は更に勾配がきつくなるセクション、ハチロクで追い上げるには絶好のチャンスとも言える。

 

 

ーけどチャンスなのにはかわりない…!この区間は勾配のキツいセクション…!こっちはタイヤもブレーキも全然垂れてない…!ー

 

 

 目標はこの先の5連続ヘアピンまでに追い上げること…、そう思いながらシフトアップしつつアクセルを踏み込むとGTRのRB26に負けないエキゾースト音を響かせながら追い上げていくのであった。

 

 

ーでもまずはこの差を埋めないと…!よーし!目標は5連続ヘアピンまでに追いつくこと…!いっくよー!ー

ゴクッ

ゴァァァァァ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギャァァァ

「おっ…なんかバトルやってないかこれ」

「だな…どんどん近づいて来るぞ」

 

 

 2台が下っている先、5連続ヘアピンカーブの最初(カーブ17)の右コーナーに陣取っていた走り屋集団のギャラリー3人は、上の方から聞こえてくるエキゾーストに気づいておっという表情を浮かべる。

 

 ってきり今日は走り込みをしている2台だけをみて撤収するだけだと思っていたため、こりゃいいのが見れそうだ…と1人がそんなことを呟く。

 

 

「今日はこのまま帰る予定だったから良かった…、最後にいいのが見れそうだ…」

 

 

 だがふと1人がそういえばバトルしてるのって誰なんだろうな?と尋ねていく、…というのも走り込みをしていた2台以外他に車を見ていないのだ。

 まさかその2台がバトルをしてるんじゃ…と話す仲間に対してアホウ…と1人がそんなわけないだろと宥める。

 

 

「でもバトルしてんの誰だろうな…走り込みしてた2台以外見てないし…まさかその2台が…」

「アホウ、そんなわけ無いだろ…どう考えたって…」

 

 

 そんなことを話しているうちにも音の主はどんどん近づいてきており、ストレートの奥からこちらを照らすヘッドライトの光が現れた。

 

 

ギャァァァ!!

「…!!来たぞ!!」

 

 

 どうやら2台が縺れ合うようにバトルを繰り広げているらしい、先頭を走る車が先ほど見かけた走り込んでいたGTRであることに気づくとギャラリー達は驚きを見せていく。

 

 

「…!あっおい前の車、さっき見たGTRじゃねーか!?」

「あぁ間違いない…!あのGTRだ!バトルしてんのか!?」

 

 

 しかし驚くのはまだ早い、後ろにもう1台いることに気づいた1人がそれを指摘すると共に、GTRの背後から姿を現したハチロクを目の当たりにするや否や、嘘だろ!?という声を上げた。 

 

 

「いやまて!後ろにももう1台いるぞ!…おいおいマジかよ!?後ろハチロクだぞ!」

「嘘だろ…!ハチロクだって…!?」

 

 

 もちろんハチロクということは先ほど見かけた赤城の歌姫、GTRとバトルしている光景にギャラリーの走り屋達は慌て始めていく。

 

 

「ってことは赤城の歌姫か!?マジでバトルしてんのかよ!」

「まさかさっき話してたことが本当のことになるとはな…」

 

 

 しかしそれよりも驚くのがGTR相手にハチロクが追い回しているということであり、普通に考えてダウンヒルとはいえど本来ありえない光景。

 何より赤城の歌姫は赤城の走り屋、そんな彼女が秋名で見知らぬGTR相手にバトルを繰り広げているなど彼らにとっては理解の追いつかないことだらけ…

 

 

「ってかなんで歌姫が秋名で見知らぬGTR相手にバトルしてんだ!?というかハチロクで追いまわすって…!」

「確かに歌姫のハチロクは噂じゃレース用エンジン…だがそうだとしてもGTR相手に、しかも地元じゃない秋名で…一体何がどうなって…」

 

 

 だがギャラリー達がそう思っている間にも2台は縺れ合うように激しい接戦を繰り広げながら5連続ヘアピン目掛けて走ってきており、先頭を走るR34のステアリングを握るソラは張り付きかけているハチロクに関心の表情を浮かべる。

 

 

ゴァァァァァ!!

ー張り付かれた…!流石は歌姫さん…!こっちのペースが少し落ちたのを見逃さすに来ましたか…ー

 

 

 しかしバトルの本番はここからと言ってもいいため、全力で抗ってやる…!そんなことを思いながらソラはアクセルを踏み込んでいきR34を加速させていく。

 その様子を後ろで見ていた友奈は、ハチロクのステアリングを操りながら追いつくことは出来たものの、思ったよりもペースが落ちていないことに驚きを見せていた。

 

 

ーでもここからがバトルの本番…!全力で抗いますからね…!!ー

ゴクッ

ドギャァァァ

ー…うーん、追いつくことは出来そうだけど…思ったよりペースが落ちてない…タイヤやブレーキの熱ダレはしてるはずなんだけど…ー

 

 

 恐らく走り方を変えてきた…内心そう思いながらも、それでもやることは変わりないと自分に言い聞かせながらアクセルを踏み込む。

 

 

ーでもやることは変わりない…、このRを…ソラちゃんをぶち抜くだけ…!ーゴクッ

ゴァァァ!!

 

 

 2台はそのままもつれ合いながらも5連続ヘアピンの最初の右コーナー、ギャラリーたちが陣取っているカーブへと勢いよく突っ込み、ほぼ同時のフルブレーキングでブレーキランプを点灯させながら減速していく。

 

 

ウォンウォン!!

ゴフッ!!

「おっおい!2台揃って突っ込んでくるぞ!」

「流石は上手い奴のブレーキング勝負だ…、鋭さが全然違う」

「キョーレツ…!鳥肌もんだぜ!!」

 

 

 R34を先頭に、その後ろについてくる形でハチロクがコーナーへフルブレーキングしつつ進入すると、ヒールアンドトゥで3速から1速へギアを叩き込みながらステアリングを切り込む。

 その後その巨大を感じさせない豪快なドリフトでR34はコーナーを流していき、それを目の当たりにしたギャラリー達は驚きの声を上げる。

 

 

ギャァァァ!!

「うぉ!?GTRでドリフトだと!?」

「おいおいどうなってんだよ…!!GTR…というか四駆でドリフトってめっちゃ難しいって聞いたんだけど…」

「ぶっ飛んでるぜ…」

 

 

 呆気に一瞬取られていた3人であったが、その後にR34ほどの派手さはないものの、相変わらず綺麗なドリフトでコーナーをハイスピードで流していくハチロクを見て我に返っていく。

 

 

ギャァァァ!!

「…はっ…!今のって歌姫か!?」

「見たかよあのドリフト…綺麗以外言葉が出ないぜ……」

「ってかあの走り方赤城以外でも出来るんだな…流石ってところか…」

 

 

 その間にも5連続ヘアピンの最初を立ち上がった2台は次の左コーナーへとむけて短いストレートでしっかり加速しつつ突っ込む。

 先ほどと同様にフルブレーキングで派手なドリフトと落ち着いているドリフトという対照的な走りを見せながら、お互い鋭いドリフトでコーナーを流しながら立ち上がっていくのであった。

 

 

ゴフッ!!

ウォンウォン!!

「っと…!」

「よっ…!」

ドギャァァァ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後難なく5連続ヘアピンをクリアした2台であったが、やはりコーナリング勝負でタイヤやブレーキを酷使したのが響いてきたのか、ソラのR34は先ほどよりも更にコーナーへの突っ込みが鈍くなってきていた。

 

 

ゴァァァ

ーってヤバ…ちょっと気合い入れすぎたかも…、さっきよりも突っ込みが鈍いっていうか…ー

 

 

 今でこそ騙し騙し走っているものの、それでもペースの低下は否めず、コーナーでの進入もタイヤの食いつきも悪いことからジリジリとアウトに膨らむ始末。

 

 

ーそれにタイヤの食いつきが…コーナリングでドリフトやグリップするたびに外に膨らむっていうか…ー

 

 

 もちろんそれは友奈にもしっかり気づかれており、ようやくブレーキとタイヤに垂れてきたな…そんなことを思いながら、そろそろ本格的仕掛けることにしたらしい。

 

 

ーようやくブレーキとタイヤが本格的に垂れてきたか…、本当ソラちゃんここまで持たせるなんて走りが上手いよー…。まっでもそろそろ本格的にしかけ…ますか…!ー

 

 

 仕掛ける場所は最終セクションに入るまでのRのキツいコーナー、というのも秋名の最終セクションは長いストレートが存在している。

 タイヤやブレーキがヘタってきているとはいえGTR相手にそこの加速勝負で勝つことは出来ず、そこまでに前にでなければならないのだ。

 

 

ー仕掛けるのはこの先のRのキツいコーナー…、秋名の最終セクションはストレートが多い…そこまでに抜いてアドバンテージを広げなきゃ…ー

ゴァァァ

 

 

 そうこうしているうちに左の急な左カーブの13コーナーが迫ってきたため仕掛けるならここ…!と言わんばかりにステアリングを右に勢いよく振って車体をアウト側に寄せる。

 

 

ー仕掛けるなら…ここっ!ー

ウォンウォン!!

 

 

 その後フルブレーキングで減速しながらも空いているアウト側に車体を飛び込ませると、並んだ状態でコーナーへ飛び込む。

 当然ソラも気づいてはいたもののアウト側に飛び込まれてはラインを塞ぐことが出来ないため、このままコーナリング勝負で持ち込むことに。

 

 

ゴァァァ

ー並ばれた…!これじゃ塞ぐことが出来ない…!!仕方ない…このままコーナリング勝負に持ち込む!ー

 

 

 ヒールアンドトゥで3速から2速にギアを叩き込みながらステアリングを切り込んだ2台は、一歩も譲らないハイスピードのコーナリング勝負でコーナーをクリアしようとする。

 

 …がやはりタイヤが垂れてきているGTRにとってはその巨大をGの激しいコーナリングで支えられるはずもなく、イン側に着けずジリジリとアウト側に膨らむ。

 

 

ウォンウォン!!

ドギャァァァ!!

ーちっ…タイヤが…!流石にこの巨大を支えるには厳しいですか…!ー

 

 

 しかしそんなソラとは対照的に友奈のハチロクはタイヤの余力は全然有り余っており、アウト側に膨らみつつジリジリと後退するR34に対して、ハチロクはじわじわとだが前にへと躍り出ていく。

 

 

ー…ハチロクが前に…、あの感じだとタイヤには全然余力ありそうです…!こういう時軽いっていいですよね…!ー

 

 

 こうしてコーナーの出口に差し掛かることには完全に前と後ろが逆転し、ハチロクが先頭に躍り出てR34が2番手へと後退して立ち上がることに。

 だがまだ勝負は決まっておらず、友奈はステアリングを操りながらアクセルを更に踏み込んでいき、スパートをかけるようにハチロクを加速させる。

 

 

ーよしっ!前に出た…!でも問題はここから…!できる限りストレートまでにアドバンテージを稼がないと…!ー

 

 

 先ほどGTRを追いかけていた際の走りとは比べ物にならないほどの走りを披露しつつ、まるで瞬間移動するかのようなコーナリングで走り抜けていく。

 これには流石のソラでも追いつけないらしく、コーナーを抜けるたびにジリジリと差が開くのを感じていた。

 

 

「っと!」

ドギャァァァ

ー速い…!コーナーを抜けるたびジリジリと差が…ー

 

 

 だがそれと同時に友奈の狙い、秋名で最もスピードが乗りやすいストレート区間までにアドバンテージを広げるつもりであることに気づいていた。

 

 

ーけど恐らく…いやこの感じだとストレートまでにアドバンテージ広げるつもりですね…!ー

 

 

 ストレートで抜くことは本意ではないが、GTRのトラクションと加速力を持ってすれば抜き返すことは可能性。

 

 

ーいくらタイヤやブレーキがヘタってるっていえど…ストレートなら抜き返すのは容易い…また本意じゃないけど…ー

 

 

 しかしそれをするには一定間隔以上離されないことが重要であり、もしそれが出来なければいくらGTRといえど巻き返すのが不可能になってしまう。

 

 

ーでもそれをするには一定間隔以上離されないことが重要…!もしそれ以上離されたら…いくらGTRといえど巻き返せません…!ー

 

 

 なら何が何でもついて行ってやる…そう意気込みながらアクセルを踏み込んだソラは、心臓部であるRB26を咆哮させながら追いすがるように加速していく。

 もちろん相手が是が非でもついてくる気配は友奈も感じ取っており、何が何でも逃げ切ってやる…!そんなことを思いながらハチロクを走らせていくのであった。

 

 

ー何が何でもついて行ってやります…!ー

ー向こうもこっちの狙いを察した…でもこのままいく…!全力で逃げさせて貰うよ!ー

ゴクッ

ゴァァァ!!

 

 

 

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