頭文字Dー歌姫の最速録ー   作:三坂

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いよいよ決着です!!
隙を見せない啓介に対して
友奈はどんな突破口を見出すのか…!!


第六話 新たなる伝説の始まり

 

 

赤城山

ダウンヒルにて

 

 

 

ークソッタレ…!!なんなんだよコイツはぁ!どんなに必死に逃げてもスッポン見てぇに喰いついて来やがる…!!俺が遅いのか…?ー

 

 

 

静寂な赤城山を打ち破るように高いエキゾースト音が周囲に響き渡ったと思ったらストレートをハイスピードで二台が疾走していく。その先頭を走るFDの車内では啓介がなかなか離れないハチロクに焦りと苛立ちを見せており、なんとか堪えながらステアリングを操っていた。

 

 

 

ーいや落ち着けオレ…!ここで焦ってチャンス見せたらそれこそ一巻の終わりだ…!要は抜かせなきゃいいんだ!スペースは開けさせないぜ…!!意地でも先にゴールしてやる!ー

 

 

 

だがすぐに我に戻った啓介は焦るなと自分に言い聞かせながら深呼吸しつつステアリングをしっかりと握ってアクセルを更に踏み込む。350馬力のロータリーエンジンがそれに答えるように咆哮して、ハチロクを振り切ろうとせんと更に加速していく。

 

 

 

ー流石に地元なだけある…、ラインもけっこういいし走りもなかなか上手い。しかも一回バトルしてからこれかなり腕上げて来てるね、隙がほとんどないー

 

 

 

その後ろを追いかけるように走っていたハチロクの車内では友奈がステアリングを操りながら啓介の走りを冷静に分析しているようだ。最初に出会ったときよりも腕を上げているのは明らかな事実であり、それとともに走りが鋭くなって隙がなくなっていると来た。

これでは抜かすことが出来ないため、どうしたものかと考えていた友奈であったがふと思い出したようにハッとした表情をいきなり浮かべる。

 

 

 

ーどうしたものかなー…、ん?待てよ。隙が生まれないならこっちから作ってしまえばいいんだ…!このFDのドライバーは熱くなりやすい性格、つまり何回もちょっかいかければ…!ー 

 

ーよぉし…!なら早速次のコーナーから試してみよう…!この仮説が正しければ必ず乗ってくる…!(ゴクン!)ー

 

 

 

何やら突破口が彼女の能力に過ぎったようでこれなら行けると言わんばかりの顔をしながら素早くシフトアップしてアクセルを名いっぱい踏み込む。直後、タコメーターが高回転まで一気に回ったと思ったら4AGエンジンがロータリーエンジンに負けないほどの唸りを上げて追いすがるように加速していく。

 

 

 

啓介「ちっ…!」

 

 

 

なかなか離れないことに思わず舌打ちを溢した啓介は差し迫る42コーナー手前で慣れた手付きを見せながらフルブレーキングからのヒール・アンド・トゥで2速にギアを叩き込んでステアリングを切り込んでいく。もちろんインに差し込まれないようにしっかりと車体を寄せながら鋭い四輪ドリフトで流しているのだが…

 

 

 

友奈「まずはここ…!(ギュン!)」

 

 

啓介「なっ!?何だよそりゃ!」

 

 

 

ここだと言わんばかりに友奈はステアリングを一瞬右に切り込んでアウト側から被せるようにハチロクを空いたスペースに放り込ませる。もちろん無理なライン取りのため抜くことは出来ないのだがまさかこのタイミングで来るとは思っていなかった啓介は思わず声を荒げてしまう。

 

 

 

「マジかよ!早速仕掛けやがったぞ赤城の歌姫!」

 

 

「ここで来るのか!しかもアウト側からだと…!?」

 

 

 

当然その光景を目撃していたギャラリー達もここで仕掛けるとは思っていなかったようで驚きの表情を顕にしながら流していく2台を眺めていた。峠のコーナーで2台が並んでドリフトしているため車幅もかなり近く、車体が当たりそうで当たらないような距離感を維持しつつ勢いよくコーナーを流して立ち上がる。

 

 

 

ークソッタレ!ここで行かすかよ!ー

 

 

 

だがここでいかせるほど啓介も甘くないため、絶対前には出させないぞというオーラを醸し出しながらアクセルを踏み込んで立ち上がりで一気に加速させる。流石にレースエンジンを積んでいるハチロクでもFD相手では部が悪いようで一体下がるように後ろにピッタリと張り付く。

 

 

 

「流石に啓介さんがここで行かれるというのはなかったか…。あのハチロクもすぐに引っ込んだし」

 

 

「だが見たかよさっきの奴…!びっくりしたぜ俺、まさかここで仕掛けようとする奴がいるなんてな…!アドレナリンドバドバだぜ…!」

 

 

「あぁ…!それにあの狭さでもどっちもライン崩してないからな…やっぱレベルがたけぇ奴は走りも一級品だよ!」

 

 

 

ーまさかここで来るとはな…、だがそんな無理やりなラインじゃ俺を抜くことは出来ねぇぜ!インはぜってぇ開けない…!ー

 

 

ー…って思ってるんでしょうけど、まだまだこんなものじゃないですよ…!ここからが本番です!ーゴクン

 

 

 

もちろんここではハチロクを抑えながら立ち上がりフル加速していくFDでは、啓介が絶対に前には行かせないのとインは開けないという思いを募らせていた。…がどうせそんなことを考えているんだろうなと思っていた友奈は、まだまだこんなものじゃないと言わんばかりに笑みを浮かべながらシフトアップして加速させる。

 

 

 

ーもういっちょ!(ウォンウォン!!)ー

 

 

ー何!?ここでも来るのかよ!クソ!だから行かせねぇって言ってんだろ…!ー

 

 

 

次のコーナーでももちろん友奈はステアリングをアウト側に切ってガードレールとFDの間に車体を滑り込むようにねじ込ませて突っ込み勝負に躍り出る。当然啓介も行かせないと言わんばかりにイン側の利点を利用して、ハチロクよりも一歩奥に踏み込んだブレーキングで張り合う。

 

 

 

ー何考えてるんだコイツ…!俺をおちょくってんのか…!?ー

 

 

ーまだまだ行きますよっと…!(ゴフッ!)ー

 

 

ーまた来やがった…!!クソ野郎がしつけぇんだよ!!(ギャン!!)ー

 

 

 

出口で抑えたと思ったら次のコーナーで再びアウト側から何度も差し込んでくるハチロクに苛立ちを見せているのか、コーナーを抜けるたびに出口で挙動がどんどん怪しくなってきていた。抜かれないと解っていても、視界にチラチラと映り込むように仕掛けられたら誰だって苛ついてしまう。

…それが啓介のような熱くなりやすい男なら尚更に

 

 

 

ー立ち上がりの挙動が怪しい…、相手もかなり苛ついて来たのかも…!これならあと何度か仕掛ければアレが使える…!ー

 

 

 

もちろんそれは友奈も当然気づいており、先程から立ち上がり加速の際に余計なスライドを見せているFDの後ろ姿を見ながらこれなら行けると笑みを浮かべている。そうこうしているうちに次のコーナーが差し迫って来たため、再びアウト側に滑り込ませ啓介を苛つかせるためにどんどん挑発していく。

 

 

 

「あのハチロク何やってるんだ…!?さっきからちょこまかとアウト側から仕掛けてる…!!」

 

 

「抜くにはラインが狭すぎるから無理だ!啓介さんが譲るとは思えないし…!!」

 

 

「けどあのハチロク抜く気満々だぜ…!スキあらば行きますよオーラ全開だぞ…!」

 

 

 

ー…そろそろお遊びは終わり…!次の右で決めてあげる…!(ゴクン!!)ー

 

 

ー…この雰囲気…いよいよ本気で来るか…。けどよ…、本気の俺を抜こうなど100年早いぜ!このまま逃げ切ってやる!ー

 

 

 

 

 

 

 

赤城峠

最終セクション手前のコーナーにて

 

 

凪沙「だいぶスキール音が近くなってきたわね。そろそろ来るんじゃないかしら?」

 

 

 

先程まで微かにしか聞こえてこなかったスキール音がどんどん大きくなって来ているのに気づいた凪沙がそろそろ来るのではないかと口にしながら音の聞こえる方に視線を向ける。もちろん他のギャラリー達も同じようで今か今かと2台が来るのを待ち望んでいた。

 

 

 

灯「ふふーん♪楽しみだな…♪赤城の歌姫が一体どんな走り見せてくれるのか…♪」

 

 

香苗「灯ったらやけにテンション高いわよねー。まあ…私も普段話しかけるときこんな感じだから人のこと言えないんだけど…(汗)」   

 

 

凪沙「お話し中悪いけどともそろそろ来るわよ…。灯はしっかり見といたほうがいいんじゃない?」

 

 

かつて高橋涼介と幾度もつるんで走っていたとなれば気にならないはずもなく、果たして赤城の歌姫は一体どんな走りを見せてくれるのかと灯は楽しげな表情を浮かべていた。がそんな二人の会話を遮るように凪沙が真剣そうな表情で手前奥のコーナーを見つめている。

 

 

 

「来た来た!2台縺れて突っ込んでくるぞ!!」

 

 

 

凪沙が話した直後に、ギャラリーの騒ぎ立てる声とともにFDとあの独特の歌姫ようなハチロクのスキール音が一気に大きくなっていく。直後ヘッドライトの光がコーナー奥から照らされたと思ったら、2台が縺れ合うように勢いよく飛び出して来る。

 

 

 

「すげー!?ピッタリと背後にくっついてやがるぞ!もう全然差がねぇ!!」

 

 

「マジかよ!あの啓介さんが苦戦してるなんて…!!」

 

 

 

まさか赤城のダウンヒルで啓介が追い回されるとは思っていなかったようで、ギャラリー達は驚きを隠せずにざわめきを見せている。だがそんなこと知ったことではないと言わんばかりに入り乱れ合いながらストレートを疾走する。

 

 

 

ーインを閉めすぎるせいでアウトに進入スペースを作っちまうんだ…。なら外から来るのを確認してアウト側に車体を少し寄せればラインは潰せるし今までよりも進入スピードは上げられる…!!ー

 

 

 

先程からちょっかいをかけられまくっているためフラストレーション爆上がり中の啓介は、何度も同じ手を喰わないためにアウトへ少し車体を寄せてコーナーに進入することをふと思いつく。これなら外も潰せるし今までよりもさらに突っ込み勝負で有利に立てる、そう踏んでいるようだ。

 

 

 

ーよっと…!ー

 

 

ーよし!アウトに振った!インには来ないな…!ー

 

 

 

啓介の予想通りこのコーナーでもハチロクはアウトに車体を移動して再び外側から差し込む。それを確認するや否や啓介はステアリングを少し外に振ってアウトのラインを潰そうとするが…

 

 

 

ー…かかった!(ギュン!)ー

 

 

 

しかし今度はフェイントであり、友奈はここだと言わんばかりにアウトに切りかけていたステアリングをすぐさまイン側へ切り込ませる。タイヤを鳴らしながらもハチロク滑り込むようにイン側へと突っ込んでコーナーでFDと並びかけた。

 

 

 

ー何!?インからだとぉ!?ー

 

 

 

まさかこのタイミングでインから来られるとは思っていなかった啓介は慌ててラインを抑えようとするが、すでに並ばれているためブロックすることが出来ない。ここまで来れば彼女お得意のコーナー勝負に出れるため、ジワジワとFDの前に躍り出ていく。

 

 

 

「啓介さんがあっさりと抜かれてた…!?どうなってんだ!!」

 

 

「アイツ!FDのイン側を開けさせるためにアウトから何度もフェイントかけてたんだ!じゃなきゃあの人はインのスペースなんて少しも開けない…!」

 

 

「…だがそれを含めてもとんでもない策士だぜアイツ!啓介さんを手玉にとってフェイント攻撃仕掛けるなんて…!」

 

 

ー…上手い…フェイント攻撃っていうのはよくある手法の一つだけど…。ここまで相手の性格を反映した走りが出来るなんて…並の走り屋じゃできないわねー

 

 

 

あっさりと啓介がコーナーで並ばれたことに混乱を隠せないギャラリー達は抜かれる様子を目の当たりにしつつも話で持ち切り状態になっているらしい。しかしその隣では先程の楽しげな表情がまるで嘘かのように真剣な顔をしつつ冷静に分析をしていた。

 

そんなそれぞれの反応を見せている一同を他所にジワジワと前に出ていたハチロクはイン側の利点を最大限活かしてそのまま立ち上がりでガードレールギリギリまで車体を寄せながらFDの前へと躍り出ていく。

 

 

 

啓介「……負けた。この俺が赤城で負けた…だと…?」

 

 

 

何が起こったのか完全に理解が追いついていない啓介。頭の中があっという間に真っ白になってしまい、彼の目に映るのはどんどん離れていく赤城の歌姫の後ろ姿…そして心地よいスキール音であった。

 

 

 

プシャァァァァ

 

 

 

そんなドライバーの気持ちを代弁するかのようにFDのウェストゲート音が悲しげに赤城の山中に児玉していくのであった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

赤城山頂上にて

 

 

 

史浩「何!?」

 

 

 

同時刻、ゴール地点の報告を聞いた史浩が驚いていた反射的に視線を涼介達に向ける。その表情明らかに動揺しており喋らなくてもなにかあったというのは肌で伝わってきた。直後彼の口からとんでもない言葉が飛び出る。

 

 

 

史浩「啓介が…負けたそうだ…」

 

 

ケンタ「啓介さんが!?そっそんな有りえないっすよ…!!」

 

 

「おいおい冗談だろ…、啓介さんが負けたって…」

 

 

「俺だって信じられねぇよ…。赤城じゃ誰にも負けない自信のあった啓介さんが…」

 

 

史浩「それとゴール地点からの報告なんだが…。あのハチロクのタイムが涼介さんの叩き出したタイムとほぼ同じらしい…」

 

 

賢太「りょ涼介さんが叩き出したのとほぼ同じって…何かの間違いじゃないんっすか…?」

 

 

池谷「友奈ちゃんが…勝った…のか?」

 

 

健二「そう…みたいだな。雰囲気的に……」

 

 

樹「マジかよ……(開いた口が塞がらない)」

 

 

羽南「…マジで勝っちゃった…。友奈ちゃん…」

 

 

祐也「あっあぁ…なんか凄いことなってんな…」  

 

 

拓海「……」

 

 

 

まさか本気の啓介が地元の赤城で負けるとは思っていかったようでギャラリー達は驚きを隠せずにあちこちで混乱している。もちろんこのメンバーも例外ではなく、池谷達も何が起こっているのか頭の整理が出来ていない様子。しかし拓海はそんな雰囲気は一切見せず真剣な表情を浮かべながら何やら考え込んでいた。

 

 

 

涼介「……やってくれたな(フッ)」

 

 

 

そんな中、高橋涼介は人だかりから少し離れつつ清々しい笑みを浮かべえ星空満点の夜空を眺めていた。どうやら完全に復活した赤城の歌姫に興味を惹かれたらしい。

 

 

 

涼介「なかなか面白いことになってきたな…(笑みを浮かべ)俺にとって仕留めがいの獲物が峠に戻ってくるとは…」

 

 

 

灯「ふふ…♪なかなか面白いことになったんじゃないかしら…♪こりゃ久しぶりに熱くなりそう…!」 

 

 

 

どうやら高橋涼介だけでなく、日野原 灯も同じように完全に赤城の歌姫をロックオンしたようで面白くなりそうだという雰囲気を見せている。彼女が目指している独自の最速理論、その材料の一つとして……

 

 

 

  

涼介「だがどんなに速くてもドライバーが違えど彼女、いや『赤城の歌姫』を倒すのは……」

 

 

 

 

 

 

     

 

 

 

 

 

 

ーこの俺だ(私よ)!!ー(涼介・灯)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

友奈「ふぁぁ‥」

 

 

 

あのあと、そのまま家に帰ってきた友奈。眠たそうにしつつ玄関を開けて入る。すると丁度寝ようとしていたのかパジャマ姿の春香の姿が

 

 

 

春香「あら?おかえりなさい〜♪」

 

 

友奈「ただいま〜‥」

  

 

春香「どうだった〜?バトルは♪」

 

 

友奈「ちゃんと勝ってきたよぉ‥とりあえず疲れたから先に寝るねー‥。おやすみぃ…(目を擦りつつ)」

 

 

 

そういって眠たそうな目を擦りながらお疲れの様子で2階へと上がっていくのであった。そんな娘を見つつ自身は玄関からそっと出てハチロクの元へ行く。そこには自分のR32と並ぶ形でひっそりと彼女の元愛車が止まっている。

 

 

 

 

 

ーふふ‥♪成長が楽しみ‥。でも、これから忙しくなりそうね‥♪ー

 

      

 

 

 

そう呟いていた春香の表情はどこか楽しみにしているかのような笑みを浮かべており、自分の娘がどう成長するのか?そしてそれと同時にどんな風に化けていくのかという期待を密かに膨らませるのであった。

 

 

 

 

 

 

(新キャラ紹介は次回の頭でやります)







第七話 愛車探し
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