ソロ以外は僕には苦痛です   作:S1nO

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明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
前話で2022年中にもう一本出すとか言ってましたが投稿できずすみません。
今年の目標はペースアップです。マジで頑張ります。


だれかの力に

 熊谷さんとの真剣勝負の後半戦。前半と同じくあの戦法で戦う。あれだけであと3つは繋げられる。焦らず落ち着いていけば倒せる。1対1(タイマン)は崩れれば終わり。芋づるのように負けがついてくる。立て直せればそれでいいのだか、なかなかうまくいかないのが世の中。僕の場合、太刀川さんの施空孤月や当麻さんの狙撃をもらった時がそれに該当する。焦りや不安ばかりが先走ってしまう。

 諸々の不安は置き去りにして目の前に待ち構えている熊谷さんに切り掛かる。さっきと同じ戦法。僕と熊谷さん、どちらも体を引き締める。グラスホッパーを起動。スピードで圧倒する。次は上ルート。ただ、一枚目をスルーしていく。そのままジャンプの最高到達点で施空孤月。そうしたかった。

 

「メテオラ!」

 

グラスホッパーを踏む前にメテオラで粉々にされた。僕の戦術の欠点、それは、自分が動き出す前に対策や攻撃をされればケアができないこと。しかもメテオラとなればどの道成功は見込めない。5分で解答を見つけられるか。メテオラ講習会がヒントになりすぎたか。僕のエリアに踏み込んでくると思ってた。反省反省。まだ3本差もある。余裕をもって戦え。

 大丈夫だ。深呼吸していつもの調子に戻す。もう一回やってみる。派生というか応用的な技だからさっきのようには行かせないようにしてある。グラスホッパーを展開。そのまま突進。もちろん熊谷さんはメテオラを飛ばそうとする。少し警戒の様子が見えた。策なしの突撃じゃないことくらいわかってるはずだ。だからこそ目の前の僕に視線を合わせすぎてしまっている。

 

「くっ!」

 

バイパーの細い筋が熊谷さんを貫いた。流石に見えないだろうとは思っていた。足元から伸ばした遠回りなバイパー。気を引き付けていたから気づかないと思った。細い筋を最短距離で道順に合わせることで動きとのブレがないようにしている。奇襲にもアシストにも使える。見られなければの話だけど。

熊谷さんは目の前のことばかりに必死になりすぎている。表情とSE、どちらからも熊谷さんが焦っていると伝えてくる。いついかなる時も冷静でいなければ何も果たせない。風間さん、レイジさん、迅さん、二宮さん。この人たちみたいに成れればいいけど、実力が伴わなければ見掛け倒しの笑われ者だ。熊谷さんはあの人達みたくなりたくて経験を積んでいるのだろうか。何にせよ僕がやらなきゃいけないのは熊谷さんの経験の手助けをしてあげることだ。甘えも妥協もない。向こうが本気ならこっちも本気でやるべき。

ここで流れを渡さないためにももう一本取っておきたい。これは最後に取っておこうと思ったけど、流れを完全にこちらのものにするためにはやむを得ない。シーソーゲームは好きじゃない。しっかり決める。もう一本も落とさない。

 さっきの動きはやめ。次は近接から。グラスホッパーを踏んでのスタート。一気に距離を詰める。弧月はあらかじめ抜いてある。旋空弧月じゃない。鍔迫り合いの形に無理やり持っていく。片手vs両手。アドバンテージはこちらにある。だが拮抗しているのが必要条件じゃない。押し込んで後退させるの必要。だからこちらも両手で弧月を握りしめる。そのまま体重を前にかけてさがらせる。最初数センチは足を引きづっていたが、足が浮いて後ろに出た。

 

「グラスホッパー」

 

 

 

「パラボラ」

 

バイパーが収束して熊谷さんの腹部を貫いた。これで7対2。あと3本。油断せず確実に着実にいこう。もう一回あれをやってもいいかもしれないが、グラスホッパーをうまく踏ませなければ、リアルタイムで弾道を引けたとしても倒し切るのは難しい。パラボラは、を64分割したバイパーを空中に飛ばした相手の一点に弾が集中する技。パラボラって言葉は放物線を意味する。名前の由来は放物線、パラボラ面が反射したものを一点に集める性質から。他にいい言葉がなかったからこれになった。ちなみに64分割じゃなくてもいいし、一点に集めなくてもいい。ただ、一点に集めた方が通常のバイパーより高火力が出せる。弾速より威力におもきをおいているから集中シールドじゃなきゃ割れるんじゃないかと思う。個人のトリオン量によるけど。パラボラ改として一点に集めず散らせればと思うけど。真上に飛ばすためのグラスホッパーの角度。どこに飛んだかで変わる弾道設定。引っかからなかった場合。一瞬での組み立てが難しすぎる。これはあとで個人練習で身に着けよう。

 さっきのバイパーを散らすこととか、弾道設定のことが頭から離れない。おかげで初動出遅れてしまった。もったいない。咄嗟にシールドを展開したから防げたけど、引き下がるときの置き土産メテオラに被弾。脇腹が逝かれた。トリオンの漏出が酷い。物陰に身を潜めたけどすぐにバレると思う。家屋の二階に行こう。そっちの方が熊谷さんを捕捉しやすい。時間を有効活用するなら合成弾を作っておくべきか。でも、一発撃ったらこっちもトリオン漏出過多で一本落とすことになる可能性が高い。もとはといえば、邪念にとらわれていた僕が悪い。割り切った方が良い。

ベランダから屋根に登ってバイパーとバイパーを組み合わせる。合成には数秒かかってしまう。その間に捜索。時間は有効に使わないといけない。合成完了。いつでも射出可。あとは見つけて有効射程圏内に入る。そして倒す。四方を見てもSEも見つからない。あるなら(家の中)か。だとしてもどうして狙ってこない。上にいることがわかればメテオラで壊せば良い。瓦礫か。いや、それも避けられる。何を狙う。トリオン切れしか思い浮かばない。なら遠くへ逃げるのがベスト。こうなったら家ごと弾き飛ばすしかない。

 

夢幻変則弾(プラネット)

 

隠れ蓑にしていた家屋を吹き飛ばす。爆発の反動で体が浮き上がる。ここにいるならダメージが大きくないことはない。

だけど熊谷さんの姿が見えない。予想が外れた。やっぱりトリオン切れ狙いか。

 

「旋空」

 

正面から来る。ダメ押しか。射程短め、威力高めのメテオラで弾き飛ばすしかない。虫の抵抗はこのレベルだけど次につながるなら妥協。

 

「弧月!」「メテオラ」

 

僕がやられて3対7。ただ、さっきのメテオラのダメージが大きく響いている。躊躇うことなくボロボロのトリオン体を弧月で切り裂いた。3対8。残り2本。だとしてもさっきの旋空弧月はどこから出てきたんだろうか。今は考えないようにしよう。さっきはそれで被弾したから。

 次はどうするべきか。熊谷さんからすると点が欲しいから攻めるしかない。僕がそれに合わせる必要もない。なら受けの立ち回りをするのがいい。弧月を握る熊谷さんから闘志がみなぎっている。

みなぎる闘志を刀に乗せて振りかざす。もちろん弧月で受け止める。距離が詰まれば押して再び切りかかる。力任せな振り。切先を右側に、握り手(右手)を左側に。左手を加えて熊谷さんの剣をなぎ倒す。そうすればもちろん脇腹ががら空き。それをシールドで守るのも見えてる。横一閃が入らないのはお見通し。技の種類は豊富にある。じゃなきゃ一人で生きていけないので。

 

「旋空弧月」

 

縦振りの旋空弧月。威力十分。シールドを砕いて左側を切り落とす。そのままポイント獲得。僕は縦振りの旋空弧月好きなんだけど、やる人少ないんだよなぁ。上から下に振り下ろすパターンもある。旋空弧月だけでいろんな戦術を練れ隙がるのは魅力だと思う。祖父から教わった剣技も相まって良さを引き出せている気がする。太刀川さんは「隙ができるし、俺の二刀流だと大して必要ない」、小南は「そんなのアタシの双月の方が向いてるじゃない」とか言って人気がない。聞く相手が悪かっただけだと思いたい。慣れれば役に立つし、アドリブ力も上がると思う。

 結果は10対3で勝ちはした。最後は出水君命名のアクロバティック旋空弧月と変化炸裂団(トマホーク)で。最後2本は熊谷さんがメテオラの使い方が上手かった。妨害や牽制ができるようになっていた。お互い課題は見つかった。僕は完成度や難易度。熊谷さんは安定性。那須さんの射撃を見ているからか、飲み込みや実践での活躍が早かった。弧月の腕前もかなり高い。後は落ち着きと決定力があればマスタークラスまで行けそうにも思える。役割的に那須さんの守りだから近距離戦での防御や動きは凄い。ただ中距離や初見技には対応できていない。B級中位からしたら那須さんの火力を警戒しすぎて手を出しずらいんだろうけど。そこに狙撃手(スナイパー)がいるから集まれば危険なチーム。それはどの隊も同じ。那須さんが高い能力を持ってるから警戒されている。それでも3人集まる前にやられてしまえば機能がかなり苦しくなる。特にエースがやられたときに。そこがA級上位と違うところ。玉狛第二も同じ。

 

「2人ともお疲れー。熊ちゃん、俺から1つアドバイスさせてもらうと射程削って威力上げた方がいいと思うぜ。攻撃手だから俺ら(射手)みたいに遠くに撃つより近くにいる敵を倒したいわけじゃん?ならそっちの方がいいと思うけどなー。な、幹斗」

 

「そうですね。僕も一回その割合の弾打ちました。飛距離が短くてすぐ起爆してくれる方が近距離戦は向いてますね」

 

「ありがとう、出水君、若宮君」

 

「いいっていいって」

 

「こちらこそ勉強になりました」

 

「2人ともお菓子食べるー?」

 

「私は結構です。国近先輩が食べてください」

 

「僕も同じくです」

 

「それじゃあ、ありがとうございました。後でお礼に何か持ってきます」

 

「やったー」

 

「幹斗、お前に聞きたいことがある」

 

 

 

「どこであの技身に着けたんだ!?俺にも教えてくれよ!」

 

出水君に取り押さえられたらさっきの模擬戦のパラボラについての質問だった。

 

「出水君なら簡単にできますよ」

 

「一応前情報は聞いておきたいだろ?どういうイメージで撃ってんだよ」

 

「バイパーを別地点に配置してそれらが相手の下方向四方八方に打ち込むだけです」

 

「俺も撃ちたいから付き合ってくれよ」

 

「僕はもう支部に戻ります。用事があるので。太刀川さんに相手してもらえばいいじゃないですか」

 

「まぁ、そっか………」

 

「出水先輩!!この僕がいるじゃないですか!!」

 

「おお、唯我、お前いつから居たんだ?まぁいっかそんなこと。でもお前じゃ幹斗や太刀川さんの代わりにならないだろ」

 

「幹斗?あの独りぼっちでA級名乗ってる品のない奴ですか?そんな奴より僕の方が役に立ちますよ!」

 

この人すごいな。自分に自信がありすぎる。心も同じことを伝えているからさらに追い打ちをかけられた気分だ。悪気がないのが余計に苛々させてそうだ。

 

「お前それ、本人の前で言えるんだな」

 

「まさかこの人のことですか!?こんな安っぽい人が出水先輩の認める人なんですか!?」

 

「安っぽい………」

 

「私は若宮君カッコいいと思うけどなー」

 

「そうだぞ。コイツは俺と同じレベルだ。お前じゃ歯が立たねえよ」

 

出水君と国近さんが否定し、フォローしてくれた。出水君とさっきの人は仮想訓練室に入っていった。それを機に僕も太刀川隊作戦室を後にした。国近さんにお礼をし、買ってきていたジュース三本冷蔵庫に入れた。帰り道、さっきの人の悪気のない安っぽいが僕の中に張り付いた。

 

 

 

 あの後彼は出水君の連取相手として拘束されたらしい。パラボラ習得に向けて逃がさなかったんだろう。僕も支部の訓練室で散弾パラボラの練習をしている。相手がいないから虚空に青白い光線が交差するだけだ。頭の中にあるものをそのまま出しただけだから即席でできるかは別の話だ。

 ダメだ。弾道のイメージができても成功のイメージができない。ここで無暗に撃っても変わらない気がする。部屋で案を練ろう。

 

「アンタがここ使うの珍しいわね。相手が見つからなくて帰ってきた?」

 

「いいえ、違います。自主練です。形すらわかっていないもののために本部の訓練室を使うのはおこがましいので」

 

「久しぶりにアタシと1対1(タイマン)しない?」

 

「しません。形にするのに時間がかかりそうなので」

 

「ちぇ、相変わらず可愛げのない奴ね」

 

「僕にあってもしょうがないものだと思いますけどね。小南に聞きたいんですが、僕って安っぽいですか?」

 

「アンタ何言ってんの?人間に安いとか高いとかないの!アンタはアンタで、アタシはアタシ。そこにそんな馬鹿みたいな(高い安いなんて)ことはないのよ」

 

「そうですね。自信が湧きました。今度1対1やりましょう。嫌ならいいですけど」

 

「仕方ないわね。いつならいいの?」

 

「1ヶ月あれば万全で挑めると思いますね」

 

「1ヶ月!?なしなし!!」

 

「じゃあ代わりに何かありますか」

 

「キムチ鍋が食べたい………」

 

「じゃあ明日ですね。それまで待っててください」

 

小南とのやり取りを終え、自室にこもってパラボラ改のイメージを練る。必ず形にする。もっと必要だ。誰にも迷惑をかけないためにも。

 

 

 

「よっ、またここにいるのか」

 

「別に良いじゃないですか。好きでここにいるわけですし」

 

「相変わらずだな。もっと可愛げがある方が女の子から人気だぞ」

 

「小南みたいなこと言いますね」

 

「実は過去も見えるんだ」

 

「たまたまを誤魔化すの下手ですね。本心は驚きを隠せてないようですけど」

 

「お前には敵わないな」

 

「お互い様なところです。何の用ですか。何もなしにここに来ることないですよね」

 

「話が早いな。もうちょっとしたら近界民がくる。前とは違うところだ。お前には先に伝えておきたかった」

 

「厄介事押し付けるつもりですか。その説得にって考えではないみたいですけど」

 

「今回の任務は基本的に俺たち(B級以上の選ばれた隊員)だけで済ませたいと思ってる」

 

「大きくすると面倒ごとが増えますからね」

 

この前の大規模侵攻で多くの人が攫われた。記者会見ではボーダーは批判された。人を守る立場の存在(ヒーロー)が信頼できなくなった。子供()を返せ。など酷い言われようだった。三雲君が話さなければ僕たち(ボーダー隊員)は憎まれていただろう。あれだけの被害を出してまた近界民が来ると世間に伝えられてしまったら世の中大荒れだ。それを避けるために精鋭で迎え撃つということだろう。

 

「一応まとまって迎撃してもらおうと思ってる」

 

「つまり、ソロで行動できないから覚悟しとけってことを言いに来たんですね」

 

「大体そんな感じだな。早めに伝えて交流を広めてほしいと思ってな」

 

「指示に従うだけなので余計な気遣いです」

 

「やっぱお前、可愛げねぇな」

 

 

 

 迅さんに変な気遣いをされたけど別に真に受けようと思わない。黙って敵を倒せばいいだけだ。馴れ合いはいらない。苦痛だ。いっそのこと任務を放棄したいほどに。でも許されるわけがない。大人数が一番嫌い。無作為に見える感情が辛い。輪に入らないときに向けられる痛い視線もある。我慢するしかないのか。やっぱり

 

「一人でいい」

 

星が煌めくのが久しぶりに羨ましいと思った。どうして星たちはあんなにも生き生きとしているんだろう。疑問なのにわかりたくない。もしかしたらわかっているのに目を背けているだけなのかもしない。逆に前に伝えられてよかったかもしれない。

 

「やってみますか」

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