3ヶ月以上空いてしまいました。
作者自身が精神的にやられていたので立ち直るまでに相当な時間を要しました。
頑張るぞ
できれば
「しょくん!B級上位入りおめでとう!これからも頑張るんだぞ」
陽太郎君からのありがたいお言葉をもらい本日の祝勝会的なものが始まった。なんとなくこういうの毎回やってる気がするんだけど。玉狛の良さって喜びを交流するところもあるかもしれない。だとしても玉狛第二を甘やかしすぎな気もする。まぁ勝った時くらい余韻に浸るのも悪くない。
「みきとがごちそうを用意してるからたくさん食べて次にそなえるんだ!」
「変にハードル上げないでください。ただのキムチ鍋です。好き嫌いがあるようでしたら申し訳ないです。小南たちの意見は受け付けませんので」
「僕は大丈夫です。作ってもらってそんなこと言えませんよ」
「俺も
「私も大丈夫です」
「それならよかったです」
メンバー全員問題ないようでよかった。我慢していったとしてもバレるから意味ないし。気を遣うのが裏目に出る場合だ。小南は「なんでよ!」と反発してきたが、とりあえず気にしないことにする。どうせ「まぁまぁね」とか言って、具を口元に運んでいるのが想像できる。
全員で「いただきます」と言い、晩御飯の時間が始まる。皆口々に「うまい」と言ってくれる。作り手としてはとても嬉しい。これに勝る褒め言葉はないと思う。苦労や失敗もリカバリーもこの言葉が聞ければ成長とモチベーションに繋がる。やってよかってって思える。
鍋の底が見え始めてきた頃、小南から今日の試合についての感想戦が始まった。
「遊真、アンタよくあんな格好で鋼さんに1人で勝負しに行ったわね」
「何か自信があったからな。しかもオサムがやってもいいって言ってたし」
そうだとしても無茶してるよ。空閑君が落ちたら勝つの無理だったでしょ。凄かったよあの場面。細い糸通しまくった感じがした。ああいうの見ると自信ついたり、戦術の幅が広がるんだよな。エースが無茶できるってのはアドバンテージ大きいな。玉狛第一は全員が無茶できるし、無茶するし。特にあの短髪茶髪は。師匠譲りだ。
「三雲君もよく耐えたと思いますよ。那須さんの妨害に徹するのは良くできた戦術だったと思います」
「ありがとうございます。でも那須先輩を落とせなかったですけど……」
「修はいい仕事をした。あそこで那須先輩のマークを外れれば東岸は壊滅していた可能性もある。向こうもお前を鬱陶しいと思ってたんじゃないか」
「ありがとうございます」
謙虚だな三雲君。柿崎さんみたい。仲間のために身を張るところも、いざとなったら雰囲気が変わるところも。頼れる相棒がいるところもか。でも三雲君は柿崎さんを越えるように見える。柿崎さんと違って野心みたいなのが強く感じる。「向上心は有ればあるほど良いぞー」みたいな事を迅さんが言ってた。
「千佳もよく生き残ったな。遊真の2点はお前のおかげだ」
「確かに、橋を落とした雨取さんの功績は大きいですね。他のチームのやりたいことを潰したのはいい仕事です」
やりたい事をさせないってのは大事な事だ。僕も良くそれをやってる。相手の実力に関係なくやらせないのは流れがよく変わる。近接でも遠距離でも同じ。心が乱れれば形勢逆転は簡単だ。だから那須隊有利から玉狛勝利に変えられた。良い作戦だ。上になればその対策を考えることになるけど、今の段階でそれができるならokか。
「B級上位は戦術もパワーも桁違いよ。今まで通りじゃ通用しない集団よ。しっかり考えて対策することね。頑張りなさい!」
おもむろに小南が立ち上がって喝を入れる。烏丸君も口を開いたし、レイジさんも何を言うか考えている。多分僕にも回ってくる。
「小南先輩も言ってたけど今までとはレベルが違いすぎる。ナメてかかるとすぐにやられるぞ」
「B級上位はいつでもA級に入れるような連中だ。連携重視のお前らに対して個々の能力が飛びぬけて高い。おまけに練度も一流だ。お前ら一人一人の成長が今後のカギになる。それだけだ」
予想通り烏丸君、レイジさんが続けた。3人の視線が僕に向いている。やっぱりそうなりますよね。特に何も考えてなかったな。一番手っ取り早いのはこれだろうから切り出してみるか。
「僕が相手をしますので準備してください。体で覚えさせます」
「アンタ本気で言ってるの!?」
「それが一番手っ取り早いです。百聞は一見に如かずです」
「な、なら、あたしもやるわ!」
「無理しなくていいですよ。三輪隊くらいの実力はあるので心配もいりません」
「アンタ1人だと試合になんないでしょ!」
どっちのことを言ってるのか。どっちだとしても失礼極まりない発言だけど。今回は僕に対してだからいいか。よくはないんだろうけど。仕方ない。
「小南がこう言ってますがどうします?選択肢は3つです。僕1人とやるか、小南合わせた2人。やらない。のどれかです」
「僕は2人とやりたいです。成長できる機会を無駄にはしたくありません!これから強い相手と戦うときの情報としても僕は戦いたいです。いいか、空閑、千佳」
「もちろんだ。おれも若宮先輩と戦ってみたかったしな」
「わたしも修くんと同じ」
やる気あるね。嫌いじゃない。
「決定ですね。条件は3対2のチーム戦。先に全隊員が緊急脱出した方の敗北。マップは市街地A。天候は晴れ。試合時間は勝敗が付くまで。あとはランク戦と同じです。ただし、自主的な緊急脱出は禁止です。いいですか」
「「「はい(おう)」」」
「じゃあお願いします、宇佐美さん」
「らじゃー。頑張ってね三人とも。あ、小南ちゃんも若宮君もがんばってー」
「んで、作戦は?」
「ないですよ。まったく」
「はあ!?よくそんなんで勝負仕掛けられたわね!」
「元々は1人でやるつもりだったのに小南が入ってきたので」
「あっそ。で?アンタは誰を先にやるの?」
「雨取さんからにしようと思ってます。邪魔ですよね、狙撃手」
「そうね。遊真はあたしが相手する」
「了解。万が一の場合は通達お願いします。直ぐに向かうので」
「余計なお世話よ。あたしが負けるはずないわ」
「その自信がある様でしたら僕も心強いですね。では別れて探しましょう」
コイツ、作戦とか策略とかなんも考えてないのかよ。僕が言えたことじゃないけど。1人で自由にやろうと思ってたのに……自由勝手な人だな。作戦なんかない方が動きやすそう。ってかそうだろ。あっても大雑把な命令くらいでしょ。
「発見しました。3人とも纏まっているようです」
『オッケー。直ぐにそっちに向かうわ。場所は?』
「西の高いビルです。僕は近くの道路にいます。屋根に穴の空いた家屋が目印です」
『了解。見つけたわ』
はやっ。近くない?目が粗いから広い範囲を見てきたのか?だとしても早いぞ。ありえなさすぎる。まぁ、早い方がいいに越したことはないからいいか。
「完全な
「同じくです。バイパーで雨取さんをやろうと思っているんですが、小南のメテオラで空閑君と三雲君の気を引いてほしいです」
「あたし1人で飛び込めばアンタが千佳を狙ってるのがバレるわ。だからアンタも一緒に飛び出すのよ。なるべくあたしが引きつけるからアンタはその間に射撃。OK?」
「了解しました。小南のメテオラのタイミングで攻撃開始です」
よし、作戦決定。ビルの屋上に雨取さんがいるのは確認済み。あとは軌道を組むだけ。大体の軌道は組み終わった。あとは発射位置次第。って、もう行くのか。
「千佳!若宮先輩に気をつけろ!」
「おっとチカはやらせないよ」
「アンタたちちゃんと周りを見てから戦況報告しなさいよね!」
孤月両手持ち!そして目の前に若宮先輩!読み間違えた。いや、僕たちの考えが読まれてたんだ。若宮先輩は僕をロックオンしている。完全にここで斬る気だ。千佳の狙撃のことなんて頭に無さそうだ。この煙の中だと撃てない。なら、僕がするべきことは
「うぉぉぉ!」
距離を詰めて孤月を振らせないこと。
「バイパー……」
「なっ……!」
一瞬で色んなことが起きた。僕が空中に飛び、僕の身体を弾が貫くと思った。だけど僕の身体のラインギリギリで軌道を変えて、上の方に飛んでいった。
「千佳ぁ!」
「防がれましたか」
若宮先輩の弾は千佳を狙っていた。最初から騙されていた。僕を狙っているっていう風に装っていたんだ。咄嗟に声を出して危険を知らせたが、千佳もシールドで全身を守っていたからダメージはないそうだ。
「小南。僕は雨取さんを仕留めてきます。2人を頼みます」
「逃すなオサム」
「アステロイド!」
「メテオラ」
若宮先輩の弾が正確に僕のアステロイドを相殺した。しかも爆発で完全に姿を見失った。流石に諦めるしかない。自主的なベイルアウトは禁止のルール。千佳が逃げてもすぐに追いつかれる。なら…
「空閑!!」
「りょーかい」
「そうはさせないって言ってるでしょ!」
「僕が小南先輩の相手です!」
「オサムがわたしを?」
「頼んだぞオサム」
千佳は若宮先輩を倒すのに必要だ。僕がいなくても2人なら若宮先輩を倒せるかもしれない。2人が若宮先輩と戦ってる間、小南先輩を足止めするのが僕の役目!
「向こうはどうしたんですか。小南が逃してあげるとは思いませんけど」
「オサムが隙を作ってくれたんでな」
「だとしてもわざわざ雨取さんを守る意味がわからないですね」
「オサムはアンタを倒すのにチカが必要って言ってたからな」
「本気で信じるんですね。無理だとは思わないんですか」
「オサムの作戦はほとんど失敗しないからな。わかみやせんぱいもわかってるはずだ」
「忘れてないでしょうね僕と君が初めて出会った時のこと」
「三輪隊を1人で相手した時のことか」
「覚えているならもう言わなくていいですよね。君の本心も諦めてるようですよ」
「だからってオレたちは逃げるわけには行かないんでな」
揺さぶりにのらないか。流石は村上さん相手に正面で待ち構える人。僕を斬る気満々だ。瞬時に戦意を切り替えられる。素晴らしい兵士意識。
仮に僕がここで落ちても空閑君を道連れにできれば勝ったも同然。だけど、そんな甘えはいらない。僕がA級を実感させると言い出したんだ。圧倒する。
「どこからでもかかってきてください。必ず返り討ちにします」
「悪いけどそうなるのはアンタだよ」
「威勢だけは十分です」
お互いのブレードが至近距離でぶつかる。力で言えば僕の方が上だ。押し返すことは容易い。押し返してそのまま空中戦を始めてもいい。空中戦は一撃火力よりも機動力。つまりスピードの方が優先される。空閑君の機動力は高いけど僕でもあの程度なら簡単。じゃあ、決まりだ。でも、
「グラスホッパー」
「施空……」
「させない」
「孤月……」
空閑君の方から空中戦に持ち込んできた。お互い考えてることは同じだ。ここからが本気のぶつかり合いだ。
「「グラスホッパー」」
グラスホッパーからのスタート。僕が気をつけるべきは、スコーピオンの多様な攻撃方法。普段通りの使い方もあれば、足ブレードや枝刃。もしかしたらマンティスもあるかもしれない。そうだとしても僕が勝つ。
先制攻撃は空閑君。グラスホッパーを使った起点づくりと思われる。僕に攻撃を出させないように牽制しつつ隙を疑っている。そんな中途半端な距離は僕の得意ゾーン。
「バイパー」
「予想通り」
そっちか…。雨取さんに僕の足場を壊させるためか。だけどバイパーの壁が空閑君を近づけさせていない。ただバランスが非常に良くない。このままだとやられる。グラスホッパーを起動したいけどこの態勢じゃむしろヤバそう。いや、これなら使う意味があるか。
「グラスホッパー」
無数のコンクリートブロックが空閑君の方に飛んでいく。グラスホッパーにのった原始的な砲弾が上手く作用してくれている。瓦礫を飛ばすのはいい選択だった。空閑君も距離をとった。これなら床に足がつく。これで仕切り直せる。空閑君もこっちに向かってきてる。迎え撃たずに待ち受けよう。高ぶる気持ちを深呼吸で抑えつけて。目を見開く。正々堂々が闘いの礼節。
「急に真剣になったね」
「言い方には気をつけた方がいいですよ。気を引き締めたと言ってほしいですね」
「オレは詳しくないからよくわかんないけどアンタが本気だってことはわかった」
「お喋りはもういいですよね」
刹那、動きの速さが上がった。
黄色く輝いた斬撃が建物を破壊する。
狙ったはずの相手は腕一本だけ残して空に舞う。
片方の腕から淡く緑に輝く小さな破片が噴き出す。
互いの視線は切れずに睨み続けている。
2人の間には一瞬にも数分にも変えられる距離がある。
それぞれの目にさらに強い気が宿った。
互いにその場所から飛び立つ。
片方は日本刀を、片方は変幻自在の刃を抱えている。
互いの目に映る姿が大きくなる。
2人が衝突する。
刀の空気の切る音と体が傷つく音がした。
勢いそのまま2人の位置は逆になる。
だが体の状態は天と地の差があった。
雌雄は一太刀で決した。
「やっぱり強いねアンタ」
「それなりです」
「みんなお疲れ様ー。3人とも良く頑張ったよー」
「流石わかみやせんぱい俺なんかじゃ歯が立たなかった」
「僕は結構君たちの戦術面白いと思いました。昔同じようなこと何回もされましたけど」
「まぁ、私たちには及ばないってことよ!とにかく次の試合は今よりも辛いはずよ。二宮隊、影浦隊は元A級。東隊の東さんは元A級部隊隊長よ。ぼーっとしてるとすぐにやられるわよ」
さっきも同じようなこと言ってなかったっけ?実際その通りだし、今のままじゃ絶対勝てない。三雲君も小南に秒殺されたらしいし、空閑君がやられたら雨取さんもすぐに落とせた。課題はやっぱりエースの割合。8割近くを占めているように思う。ポイントゲッターは空閑君のみ。雨取さんは土木。三雲君は時間稼ぎにしか感じない。せめてもう1人エース級がいれば……。そんな都合のいい話なんてないけど。雨取さんは人が撃てないとなれば余計にそう考えてしまう。どっかの隊の誰かさんは精密機械越えの狙撃で実質的なダウンをとれたけど、トリオン量が多いからどうやってもそんなことはできない。レッドバッレトしかないかな。
「幹斗、アンタもなんか言いなさいよ」
「言うことはないです。今やったことでしか教えられないです。あくまで傾向と対策なので小耳程度に覚えといてください。『挑発や駆け引きに安易に乗る』ことは控えた方がいいです。検討を祈ります」
空閑君は乗せられやすい。実際さっきも、正面から向かい合わなければ勝機は十分にあったかもしれない。なのに正面衝突の斬り合いに応じた。エースの致命的な弱点だ。
「そういうことらしわ。頑張りなさいよ!」
「「「はい!(うす)」」」
そうしてB級上位入りおめでとう祝勝会は幕を閉じた。各々自室に戻ったり、後片付けをしている。玉狛第二のメンバーはさっきの反省会兼次の試合の構想を練っていた。
僕は今日の片付けを行なっている。鍋の汚れを落とし、全員分の食器を泡で包んで水で洗い流す。後ろから聞こえる作戦会議の様子を聞きながら作業するのも乙だと感じる。カウンターテーブルに置いていた携帯が震えた。誰かからのメッセージを受け取ったようだ。駆け寄って画面を覗くと、『差出人:出水』と映し出されていた。泡のついたままの手で、がめんをさわり内容を読む。
『防衛任務のヘルプ頼みます』
と一言だけのメールだ。太刀川隊なら防衛任務なんてお茶の子さいさいなはず。わざわざ僕に応援要請をするはずがない。ほとんどの確率でお遊びに付き合わされると思われる。
「悪ぃ幹斗太刀川さんが終わらせちまった。帰っていいぞ」
はぁ?僕の大切な時間を返せ。おい。
「そんなのは冗談冗談。実はお前のバイパー習ってみたいと思ってな……」
「それなら僕より那須さんに聞いてください」
「まあまあまあまあ、そんなケチくさいこと言わずにさぁ?」
「企業秘密なので」
「ったく仕方ねえ、那須ちゃんに聞くか。『幹斗は器が小さいから教えてくれません』って」
全く挑発も一流とは、同級生として鼻が高い。一発お見舞いしてあげるしかなさそう。
「っぶね!何してんだボケ!」
「これです。せいぜい頑張ってください」
見せつけるようにバイパーをお見舞いし、嫌がらせのような言葉を残して別れを告げよう。天才出水君なら余裕だと思うけど。
気づけば初投稿から1年経ちました。目標は『現行に追いつく』です。
レベル低いですが、確実に一歩ずつ。
そういうことです。