ソロ以外は僕には苦痛です   作:S1nO

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超久しぶりです。
色々あって更新できてませんでした。
二週間に1話のペースで上げれればいいかなと思ってます。
よろしくお願いします!


強い人

 僕の耳にも彼らがボーダーに入隊したとの報告が届いた。別に何とも思わない。果たさなければならないことにおいての中心人物であるという認識は変わらない。何をしていたのか?と聞かれると後処理である。会議室に呼ばれ「隊員同士の争いは公式なもの以外禁止とされているのに何をしているんだ」とか「弓手町駅周辺を勝手に壊すんじゃない」みたいなことを長々と理由まで説明された。要は説教。鬼怒田さんと忍田さんからだからほとんど何も思わなかったけど。そのあと何もする気が起きなくて本部の仮眠室で一睡した。目が覚めれば日付が変わってた。 

 それと本部所属の優秀軍団(お利口さんたち)が遠征から帰ってきたとの情報も入ってきた。またいつも通り騒がしくなる。あの人とはかかわりたくないなぁ。

 適当に時間をつぶそうと思い本部をうろつこうと思う。

 

「よぉ、幹斗。昨日ぶりだな」

 

 迅さん。都合のいいように現れる。SEがあるとはいえあまりにも絶妙なタイミングで現れる。こういうところがあまり好みじゃない。僕に張り付いているように思う。昨日だってそうだ。任せられた任務を遠くから見ていた。気に食わない。対等な交渉をしたというのに。

 

「1つ今日の知らせがある」

 

「どうぞ。また昨日みたいなことですか?」

 

少し態度に出てしまったかな。僕が迅さんに嫌気が差していることを。

迅さんは「そんなに不機嫌になんなくてもいいじゃない」と俺を諭してから次のことを話した。

 

「遊真と千佳がボーダーに入隊した。だけど遊真が近界民だと知ってるからよく思わない奴もいる」

 

まぁそうだろうとは勘ずいていたけどそこから発展することはない。どうせ昨日みたいな襲撃だろう。単純なお仕事でしかない。

 

「またお守りの役を僕に。ってことですよね」

 

「いや、今回は違う」

 

予想が外れたか。そんなことはどうでもいい。迅さんの伝える内容を理解して実働する。それが今の僕。傭兵のようだ。と自分で自分を嘲笑った。

 

「遊真の黒トリガーが狙われている」

 

初耳情報じゃん。また隠してたのかよ。素性の知らないやつの護衛なのに知らないことが多すぎるなんて。裏でなんかあるとしか思えないんだけど。けどここで反応するのは得策でない気がする。多分迅さんの思う壺。黙って聞くのが吉。そう結論が出た。

 

「その黒トリガーを守るために戦ってほしい」

 

なるほどそういう理由か。けど表向きすぎて笑ってしまいそうだ。

 

「嫌です。そんな理由は僕には通用しませんよ」

 

「やっぱり分かっちゃうかぁ」

 

迅さんの提案に俺は首を横に振った。理由は迅さんの理由が理由じゃない。ただの押し付けだったから。迅さんはそれを薄々気付いていたっぽい。

 

「そういうことなので今回僕は無関係です。どちらにも手を貸しません。これでいいですか?」

 

「良いと言うしかないんだけどな」

 

「じゃあ頑張ってください」

 

僕は突き放すように言葉を投げつけその場を後にしようとした。

 

「なぁ、また1つお知らせがあるんだが聞きたくはないか」

 

 

 

 あんな雰囲気でちっさい頼み事ができるなんて。何が「コーヒー買いたいから100円くれない?」だよ。かっこ悪りぃよ。100円が無いことを隠し通せた迅さんはなかなかの強者なのか?ま、あの人は強いけどかっこいいかと言われると僕は「そこまで......」って感じだな。強者の余裕ってやつなんだろうけど。僕も一応A級に位置しているけど迅さんとは逆の立ち位置だ。S級って肩書きもあるのかもしれない。僕はランキングや称号に(すが)り付くような哀れなやつじゃない。それはたぶん迅さんや太刀川さんもだと思う。称号や歓声を得るために強くなったんじゃない。守るために戦ったから手に入ったと思う。けどそれは意識していることじゃない。胸の内にあるものでもない。必死になった時に出てくる簡単で単純な理由。だから僕は知らない。

 

 

 

 時刻はまだ昼だ。ランク戦に潜るような奴もいれば談笑を楽しむ者もいる。僕はそのどちらにも当てはまらない。ランク戦に潜るほど戦いたくはない。ましてや僕はは1人でなければいけない。だから僕は明らかに雰囲気が違った。大海に浮かぶ孤島のように。

 1人でいることは苦痛じゃない。むしろ、より多くの人と接することの方が辛い。僕にとって『関わり』は浅く狭くだ。僕はある程度の、いや、絶対の確信が持てる人としか会話をしない。その会話も簡素なもので、言葉を短くまとめ、話が発展しないようしている。話す時間が長くなるほど本心は表れてくる。だから続かせない。それができるのは玉狛メンバー(新人たちを除く)くらいしか思いつかない。僕にとって人間関係は単調で絡まることはない。僕はそれをよしとしている。だから逃げ続けている

んだろう。

 

 

 

 することがないから玉狛支部の屋上に移動した。移動してきても別にすることはない。流れる雲を見つめるくらいか。

 

 静かなのは凄くいい。心が安らいでいく。うわついた心も誰かを憎む心も全てが沈静化していく。自分が戦闘員であることも忘れてしまいそうなほどに『思い』にこびり付いたサビを磨き落としていく。うるさいってのは僕にとっては他にも種類がある。一般的に言われる聴覚で感じるもの。動きがうるさいや視線がうるさいなんかも使われる。僕の場合はそれに『向けられる感情』という項目が追加される。一括りに『向けられる』とまとめているけど要は「人の感情が見えるのがストレスに感じる」ということ。だから人のいない穏やかな場所こそが僕にとっての「静か」だ。

 いつまでも更けていられる。思えば小さな頃からそうだった。親は喧嘩を繰り返し、僕の前では平静を装う。けれど僕はわかる。両親の心には黒い炎が滾っていたのを。小学生になったときには近くの公園で1人でいるようになったらしい。学校が終われば公園に向かう。友達はいなかった。相手は友達って思ってくれていたかもしれない。でも僕は思えなかった。「情け」や「しょうがないから」とか「してくれるよね?」っていう感情が見えていたから。今の自分なら我慢できるはず。小さい時の僕は多分こう思ったはずだ。「怖い」と。そのせいで友達はできなかった。

 そのうち僕は今のように一人称が僕で誰に対しても「さん」をつけるようになった(一部を除いて)。敬語で話すようになったのもこれが元凶だ。

 中学校に上がる時にボーダーに入ると親に向けて言った。親は何も言わなかった。小学5年の時、喧嘩が続き父親は不倫。そのまま不倫相手とどこかへ行った。母親は呆れて酒に潰れた。生活費や養育費は父親が置いていった金でなんとかなった。母親反応こそしなかったが、邪魔者がいなくなって清々していた。

 

 これ以上掘り返すのはやめよう。静かな風景に申し訳ない。

 もう夕方か。そういえば迅さんの約束の日時今日の夜からぐらいだったっけ。確かあの白髪の子の黒トリガーを狙ってるとかなんとか。多分ここを直接習うことはないかな。大胆だし、林道さんもいるし。けど白髪少年は玉狛所属。だから本部からここまでの直線距離の間で攻めると思う。参加しないのになに作戦立てたんだ。馬鹿馬鹿しい。

 そうだ見に行こう。黒トリガーをわざわざ武力行使で奪いにくる。ということは城戸派のトップが勢揃いってことなのでは?そしたら太刀川さんの剣技や風間隊の連携、当真さんの狙撃、出水さんの弾幕。凄く豪華なショーじゃないか。しかも迅さんが一挙に対処するんだろう。それはもう見どころ満載じゃないか。出水さんみたいな弾幕タイプじゃないからどれも攻撃パターン分析くらいしか用途はない。けどA級の本気の動きを研究できるんだ。ボーダーの基礎なんてすっ飛ばして見てもわかるくらい優良な教材だ。ついでに昨日の迅さんへの仕返し。なんて戦場だったら持ってはいけない私情をちょっと挟んで。

 

 見つけた。多分あの辺だろうか。誰かがベイルアウトした光が流星のように流れるのが見えた。

 

「双眼鏡よし。携帯食よし。トリガーよし。スマホよし」

 

 勉強しに行きますか。バレないように。

 

 

 

 なんかもう結構いい感じかな?迅さん相手に風間さん、太刀川さん、歌川君、古寺君、奈良坂君の5人。屋外なら迅さんが不利かもしれない。屋内でも大して変わらないかな?スナイパーがあるかないかだけど、結構気持ちが違う。僕も同じようなやつだから言えるけど、スナイパーってのは得点獲得型と活動妨害型の2つに大きく分けられる気がする。前者は当真さんやユズル君。後者はスナイパーの基本的な心得だと思っている。

 太刀川さんが猛撃を開始した。太刀川さんの2つの孤月が激しく攻め立てている。迅さんは防戦一方。ちょくちょく飛んでくる狙撃をうまく回避しながら太刀川さんを防いでいる。パッと見迅さん劣勢だ。常に刀で打ち合い、二方向からの狙撃。おまけにいつくるかわからない奇襲。けどあの人の心は勝ちが見えているっぽい。

 太刀川さんの攻撃の反動で小さなガレージへと迅さんは入っていった。少し移動しよう。

 あのままなら普通負ける。どんなに迅さんが強くても狭い場所で3対1は勝ち目がない。

 太刀川さんに緑の刃が6本ほど突き刺さった。何が起こったのかわからない。噂程度で聞いたことはある。迅さんの黒トリガー『風刃』。変幻自在のブレードをあらゆるところから放出できる刀。互角の打ち合いが始まったかと思えば天井から一本が切りつけ、追い討ちでさっきの光景が。

 風間さんと歌川君が攻撃を開始した。ヤケクソか。でも2人相手は敵うわけがな、いや違う。太刀川さんか。風間さんごと一刀両断ってことかよ。これはどうするんだろうな。

 

 

 

 あそこで風刃を使うのか。だったらもう勝ち目はないな。いや待て、もし迅さんのSEで攻撃が読めるのであれば事前にどこに風刃を打てばいいのかわかるってことか。同等扱いなんてのは失礼だな。

 A級上位の戦闘を見て学ぶつもりが迅さんの黒トリガーの凄さのせいで全く頭にない。強いて言うなら味方ごと斬ってでも敵を倒すことくらいか。結果は狭い場所で風刃をうまく扱えるようにした迅さんの勝ち。僕もバイパーで同じようなことができないかな。

 迅さんにどうだったかの報告を聞いて(ねぎら)いの言葉でもかけてあげようと思う。

 

 

 

 

「どうしてですか」

 

帰ってきた迅さんにどうだったかを聞いた。もちろん「守った」という分かりきっている事実を聞き、爆弾を投下した。『風刃を手放した』と。あんなに絶望的な場面を風刃を利用して切り抜けたのにと疑問を持つのは普通だ。風刃を使える人は迅さんの他にもいる。だけどあんな動きを見たら手放したことをこちらが責めたくなってしまう。

 けどそこは迅さんだ。何があるんだろう。玉狛に黒トリガーが2つもあるという点か。一応本部には天羽君がいる。彼も黒トリガー使いで城戸派所属のはず。けれど城戸さんからすると、A級が束になっても敵わない黒トリガーが2つあることは実質的な権力が玉狛に移動してしまう。それを避けたい。と見積もることができる。ならば迅さんの行動に納得できる。

 

「城戸さんたちのことを考えてですか」

 

迅さんが何かを言おうとする前に確認として聞いた。もちろん返事はYESだった。

 けど迅さん(いわ)く完全に迅さんが使えないわけじゃなくて状況に合わせてその都度使う人を変えるとのことだ。まぁ迅さんが使えなくなるわけじゃなくてよかったと思う。師匠の形見らしいし触れないより全然いいと思う。

 

「やることは変わんないんですか」

 

「俺は、最善の未来のために暗躍する。悪い未来は大体俺のせいだからな」

 

「無理しないでください。何のために手を打ったんですか」

 

「そうだな......。ありがとう、幹斗」

 

「今日は彼らの正式入隊日ですよ。誘ってくれた先輩がそんな湿気た顔じゃ不安になりますよ」

 

「余計なお世話だよ」

 

「そうですか。では僕はここで。何かあれば呼んでください」

 

 

 

 迅さんは嘘が下手だ。いや、僕が見えてしまうのがそう感じさせるだけかもしれない。また1人でやるつもりだ。見栄も虚勢も張らない。けどS級やA級という称号のために明るくしている。僕もそうなのかもしれない。太刀川さんや風間さん、当真さんのような余裕はない。けれどA級としてあらなければならない。そのために

 

「闘ってみるか」

 

1人基地で呟いた。今の自分試しにやってみるか。

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