ソロ以外は僕には苦痛です   作:S1nO

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なんとか二週間以内に完成しました。
大規模侵攻編は二つに分けました。
よろしくお願いします。
※一部修正致しました。


違う人たち

 明日か。備えるべき日は。前に迅さんが「近頃大規模な襲撃がある。だから、守れるもんは守ってくれ」と言われた。ボーダー隊員として当たり前だ。なんならそれが隊員の仕事だ。安心と信頼と実績で成り立っているのがボーダーだ。ただでさえ否定的な考えを持たれている場合が多い企業だ。死傷者や住宅に被害が出たら国も黙ってない。

 「実感わかないなー」なんてのが本心だし、実際「○○日に襲撃されるぞ」とか言われたところで本気にする人は少ないだろうけど。迅さんは預言者や未来人でもない。未来が見える人だ。朧げだったらしいけど変えようのない未来(事実)のようだ。

 今回は「街を守ること」を要求された。いかにも大雑把だ。今までさんざん僕に御守りをさせてきたくせに今になって急に解雇。普通ならあり得ないと思うけど。世の中を知らない僕が言えることじゃないけど。でもいつも通りというか無理せずできることを安全にやるだけなんだけど。

 

 

 

「開戦の狼煙がこんなに唐突なものとは思いませんよ。普通は」

 

三門市全域に警告と警戒区域に避難命令が発出された。空は黒雲で埋め尽くされ、黒いリング状のゲートと呼ばれるものが大量に出現した。異質と受け取れるゲートからは一般車の大きさの湯湯婆(ゆたんぽ)に足が生えたようなトリオン兵、同じくようなものに天使の輪のついたトリオン兵が主に出現した。首の長いトリオン兵もいた。教科書に載っている恐竜に近しいものを感じた。どれも気持ち悪い見た目なのにかわりはない。

 因みに僕は今、本部基地から見て東にいる。うじゃうじゃと湧いて出てくる。呼んでもないのに次から次へと。1人は限界があるけどやるだけやんのが僕の仕事(モットー)なんでね。

 

「メテオラ」

 

命中し、何体かのトリオン兵からトリオンが漏出していく。繰り返しで撃って数を減らす。着実に減ってきている。

範囲が広く、多くの敵に対しては僕のトリガーの中でこれがベストだ。

大量相手に得策がない。トリオンの消費量が増えるのは仕方ない。爆発も含めて確実にダメージを与える方が賢い。

 ただ、何発もあったところで景色は変わらない。根幹を潰したくなる。見つかるはずもないし、ここを離れることもできない。

 

「諏訪隊現着した!近界民(ネイバー)を排除する!」

 

ナイスなタイミングでもないが増援は非常にありがたい。大分気持ちが楽になった。無茶な動きが出来るように少しはなったと思う。けど、やることは変わんない。無茶をすればやられるし、舐めたことをしても同じ。堅実にいくのが正解だ。実戦は練習のように、練習のは実戦のようにとはよく言う。だがそんなのはあり得ない。実戦は練習のように対策を練れたり、何度も同じ場所に立つことはできない。練習も同じだ。実戦を知らないのに実戦を語る。主観、又は少ない経験。それは当てにならないのと同じ。実戦と練習の差は激しい。だから丁寧に一つのことを集中していく。

 

 戦闘開始から何分経ったか分からない。だが諏訪隊が合流したことで殲滅速度が上昇して、道の端にトリオン兵の残骸が多数転がっている。次のヤツらに備えて体制を整え

 

『バキリ。バキ、バキィ』

 

倒したはずのトリオン兵の中から人型に近いトリオン兵が新たに出現した。より正確に伝えると『気だるそうな運動不足の青年』

 

「何だよコイツは」

 

諏訪さんが驚いた。両方に抱えた銃の引き金にかける指が震えているのが見えた。少しだけビビってしまっている。それは僕も同じ。違う。違うんだ。明らかに。さっきの奴らとは。明確な殺意が見える。僕のSEじゃなくても感じられる。「秘密兵器なのか」と思いたい。だけどそんなの絶対違うと言い切れる。だって人型が溢れかえっているから。

 おい。いつまで固まってんだよ。敵はこっちをとらえて準備万端なんだぞ。いつでもこっちを殺せ(ベイルアウトさせられ)るんだぞ。

 もう驚く時間はいらない。殻から出てきた新型を討伐する。

 

「アステロイド」

 

豪快な射撃が新型に着弾した。シールドがなかったからダメージは相当入ってい……

 

「マジかよ」

 

諏訪さんが感嘆するのも納得の光景があった。新型は太い腕を胸の前で交差させ防御していた。おまけに腕へのダメージだけにとどめて、本体へのダメージをシャットアウトしていた。でもいい方向に考えろ。『闘いは悪しきほうに目を向ければそれを招き寄せる』祖父が厳しく叩き込んだ言葉。だからこんなときは

 

「メテオラ」

 

火力で押し切る。腕にダメージが入っているのは確認済みだ。爆発でさらにダメージを

 

「ぐはぁっ!」

 

爆煙から攻撃は読めなかった。むしろないと思ってた。不覚だ。相手は対人じゃない。いつもみたいに煙がはれたり移動してからじゃない。しかも思想も感じ取れない。相手は人じゃない。生物兵器近界民(ネイバー)だから。

 それにしても殴られてだいぶ飛ばされてしまったけど諏訪隊が連携を組んで応戦している。新型への蓄積ダメージは大きいから予想外の動きや諏訪隊のミスがなければこのまま押し切れる。

 

 

 

 

なん……だよ……

 

 

 

新型が……諏訪さんを……喰った。予想外どころじゃない。恐怖の画だ。

諏訪さんが笹森さんを助けるための射撃をした瞬間に。捕縛して捕食した。どうやったんだ。銃手の距離は近接じゃない。簡単に詰められる距離じゃなかった。あり得るなら僕がメテオラ撃った後の反撃の時のスピードなら納得がいく。

 もっと遠くから射撃すれば大丈夫か。遠距離から高火力で押し切ればいけるかもしれない。

 

「「了解!」」

 

せっかく僕がやる気出したっていうのにどこから出てきたんだ。風間隊の御三方。善戦して押しきれそうだったのに。まぁあの御三方の連携に割って入ると邪魔になるからいいんだけど。僕より楽にやってくれるでしょう。僕はトリオンの消費を抑えられてラッキー。風間さんたちのメリットは知らない。『戦いは最後に生き残ってたやつが勝者だ。たとえその過程がどんなものであったとしてもな』祖父がそう言うんだ。ありがたく楽させてもらおう。

 あっという間に片付けた。さすがはA級三位部隊。僕が腕にダメージを与えていたから割と簡単に駆除できたと思うんだが。それでも新型相手に徹底した連携はさすがとしか言いようがない。銃手の連携の諏訪隊。機動の連携の風間隊。錯乱させたのも大きかったと思う。

 歌川君が戦闘不能で倒れた新型の腹の中から黄色に淡く輝くトリオンキューブを取り出した。安直だが諏訪さんと考えていいと思う。諏訪さんじゃなかったら構造が気になりすぎるところではあるが解析班の方々の努力に期待しよう。笹森さんと堤さんが本部まで大事に護送して後は野となれ山となれって感じか。

 

『初めましてミキト。私はレプリカ。ユーマのお目付け役だ。』

 

いきなり黒い豆粒が僕の前に現れて自己紹介を始めた。僕の名目を知っていることとユーマ、おそらく空閑君の横を浮いている自立型トリオン兵だと思う。敵意は感じないし、三雲君や迅さんが親しげにしているから少しは耳を傾けてもよさそう。

 

「あなたは確かもっと大きかったような気がするのですが」

 

『今は本体が別のところにいる。これは分裂した個体の一つだ』

 

「そうですか。僕にどんなご用件ですか」

 

『簡潔に言うと西地区に来てほしい。オサムやチカが不安だ』

 

「了解しました。ではすぐに行きます」

 

『ありがとう。感謝する』

 

三雲君の名前を出されたら行くしかない。迅さんの言いつけだから仕方ない。もし本体と連絡か状況の共有ができるのであれば信憑性はさらに高い。でも聞くより行って確かめた方が早いか。

 

「風間さん、僕は西地区の方に向かいます。東地区をお願いします」

 

「了解した」

 

「ありがとうございます」

 

次は西地区に移動か。真反対なんだけど。グラスホッパーで移動したいけど敵兵が邪魔で逆に遅くなりそうだ。まぁそんなのどうでもいい。移動して援護に入るのが最優先だ。結局彼らの御守りに回るのか。毎度のことだけど護衛あんまり好きじゃないんだよなぁ。

 

 

 

 

 着いたぞ西地区。だいぶかかった気がする。なんかひと段落ついてそうな感じかなとおもったけど

 

「新型三体相手に三雲君とC級だけとは。僕がいくべきかな」

 

おっと現ボーダー最強部隊玉狛第一。これなら僕の出番はなしかな。

 ボーダー最強の部隊でもてこずりながら戦闘しているなら、さっきのは違う。となると

 

「新型はメテオラ単体では倒せません」

 

「幹斗!?」「若宮先輩!?」

 

「援護をお願いします、玉狛第一」

 

アシストに入るしかない。

 前とは違うんだ。圧倒的に立場が違う。前は隊員。今は共同戦線を張るだけ。関係はない。ただの戦闘員だ。一気に決める。

 待て待て新手のタイミング最悪だぞ。角付き。まさか本当にいるとは。トリオンを外付けして傭兵を育てる。角があるだけで戦力が高いと言うことらしい。移動中にレプリカさんが言ってたことだ。少なからず『西地区が危険』なことが的確なあたり今となっての信憑性が山のように高い。油断は禁物どころではないということだ。

 

「まだ新型二体も生きてる。手負いとはいえアレが絡むと面倒だ。小南、幹斗。三分やる。新型を片付けろ」

 

「一分で十分よ。私が戻るまでにやられないでよね。足引っ張るんじゃないわよ、幹斗」

 

「分かってますよ小南。さっさと行きますよ」

 

 小南と共戦張るなんてことがまたあるとは。一分もかかるはずないと思うけど。保険張ったな小南。

 

「ヒビ入りは僕が。小南はもう片方をお願いします」

 

「了解!」

 

やるか。色違いは硬い装甲を持ってるから単純な火力だけじゃ撃破に時間がかかる。だからここは

 

「グラスホッパー」

 

弱点の目を下からとらえてそのまま

 

「旋空弧月」

 

一刀両断。撃破はしただろうけど念には念を。相手の上からアステロイドで貫通させる。(とど)めの一撃。

 

「こちら撃破確認しました」

 

「こっちはとっくに終わってる」

 

さすがランク戦出禁の攻撃手三位。僕とはスピードが違う。それぞれ得意分野があるから一概にどっちが上とかはない。太刀川さんは別格だけど。

 あとは人型。C級がいるから完全に相手に向き合うのは無理だ。しかもレイジさんと烏丸君相手でも劣勢を強いられているんだ。僕と小南が下手に援護に入っても勝機は薄いだろう。一撃で仕留めるのが無難だ。

 

「小南の一発につなげるぞ。もう一人にも注意しろ」

 

「「「了解(しました)」」」

 

そうだよな。さすがはレイジさん。小南の超火力は早いけど隙がある。しかも単体で挑めば遠距離攻撃ができる相手にやられる。だから僕たちの射撃で隙を作りそこに小南の一撃を叩き込む。いい作戦だ。

 

「メテオラ+バイパー。トマホーク」

 

メテオラの爆発とバイパーの機動力を合わせた技。トリオンの消費量がプラネットよりも多いから持続力は低い。けどあの角ありの視界を遮ってもう一人に小南が集中できるようにするにはこれが一番だ。

よし、小南が攻撃態勢をとった。しかももう一人は防御に手いっぱいで完全に崩れている。これなら……。なんだ今のは。あの角なし、笑ってる。余裕だと思っている。小南の斬撃が「効くはずないもの」として認識していた。しかも反撃の隙があったのに見逃した。小南も距離をとった。勘で気づいたか。

あの人型近界民(ネイバー)戦い方に余裕というか楽観的思考を用いている。さっきは「玄界(ミデン)の進歩は目覚ましい」「こちらの国にもほしい人材だ」とか威力偵察かのようにも感じられる思考をしていた。こっちは街と命かかってるのに。こんなこと思っても「そんなのは敵の都合だ」って風間さんなら言うだろう。だから甘えとか遠慮とか同情を求めたりしない。事情なんて知らない。僕は敵を倒すだけだ。

 

「メテオ「待て幹斗」

 

どうかしたのかレイジさん。もう一度さっきのをやるのか。失敗から学んで繋げるんじゃないのか。前を向き直って攻撃に備えるか。おいおいなんだよあれ。電磁砲なのか。角ありのマント万能すぎるだろ。銃口はどこに向いている。三雲君か。いや違う相手は「トリオンの多い人材が欲しい」ってレプリカさんが言ってた。じゃあ狙いは

 

「雨取さん気をつけてください」

 

言い終わるときには遅かった。撃たれていた。射撃によるダメージはないが何かしらある。

 

「捕らえました」

 

捕らえただと。何が言いたいんだ。「当主様が救われる」とか訳が分からない。敵の事情に首突っ込んだって意味はない。けど意味深すぎる台詞なんだけど。

 

「千佳つかまれ!!」

 

「つかまれ」?どういうこと……そいうことか。

 

「京介!幹斗!」

 

「「了解(しました)」」

 

レイジさんの合図でさっきの電磁砲のほうに射撃をする。今は防御されていい。何なら防御に専念してほしい。だって

 

『ゴツッ!!』

 

決まった。レイジさんのマッスルパンチ。本当かよ。あの一撃でもダメージが弱いのか。

 

『どうしました、その右手の棘は』

 

『おそらく磁力を働かせる物体だ。さっきの一撃も磁力で威力を殺された』

 

磁力か。だから雨取さんが浮いたのか。厄介なトリガーだ。攻撃を食らえば機動力が封じられてしまう。僕にとって相性が良くないな。

 

「京介、幹斗、修。C級を連れてぜんそくで基地に向かえ。雨取をやつの磁力の範囲に入れるな」

 

「いいんですか?数の有利がなくなりますよ?」

 

「もう全員でジリジリ退ける状況じゃない。こいつらは……俺と小南が足止めする」

 

「「了解です(しました)」」

 

レイジさんの判断が正しいかどうかは結果として見えてくるはずだ。なのにどうしてレイジさんは成功すると確信しているんだ。

あとは三雲君たちを基地まで護送する。僕と烏丸君で道中のやつらは相手しなくちゃならない。ここが正念場な気がする。

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