ソロ以外は僕には苦痛です   作:S1nO

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変わる人々

 今の状況を整理する。レイジさんが戦闘不能(ベイルアウト)になった。敵の狙いが雨取さんだと断定できた。だから今いるC級を連れて基地への避難を開始。追跡してくる敵は僕と烏丸君が相手をする。三雲君は雨取さんの護衛。

 基地への連絡通路の入り口についた。追手の数は多くなかった。これでC級が戦線を離脱すれば人型と徹底抗戦だ。

 

「……ダメです!ドアが開きません!」

 

そんなことがあるのか。何があった。わめくC級の考えはあり得ない。焦って変なことをする方が危険だ。

 

「宇早美先輩、これなんで開かないんですか?」

 

さすが烏丸君分かってる。経験の差が出てる。

 

 

 宇佐美さんの話を要約すると、

ボーダー本部と通信が取れない。予想できるとすれば本部にイルガーという飛行型近界民(ネイバー)が突撃爆破したことが関係している。

 

 こうなったら他の連絡通路か基地に直接行くかだ。ここが使えないのは想定外すぎる。

 

「追いかけてくる……二人。すごい速さで……」

 

雨取さんが不吉の予感を呟いた。僕は雨取さんの向いている方向を振り返った。そして見えた。「焦り」「楽しみ」の二つの感情が。皆の方は「焦り」と「恐怖」が映っている。

 そう思ってるのも束の間。もう僕たちの視界に二人の近界民が映った。レイジさんが戦闘不能になってから経過した時間は短い。しかも敵さんは黒い翼で飛翔出来る。おそらく角付きのトリガーの力。理屈はよく分からないけど磁力操作が可能なトリガーだから反発する磁石の性質で飛翔し、鳥の翼の動きで持続していると思う。何にせよちょっとどころじゃないピンチに立たされている。泣きっ面に蜂程度で憐れんでもらえるほど優しいもんじゃない。

 

「迅さんたちとの合流地点まで退くぞ。C級を連れて行け‼︎」

 

そうだな。僕と烏丸君で対処、要するにC級と三雲君が逃げる時間稼ぎだ。

 

「ヒュース殿は予定通り雛鳥を。戦闘員は私が斬りましょう」

 

「了解しました」

 

二人とも闘争本能剥き出しだ。僕じゃなくても感じ取れるだろう。けど気持ちだけで逃げるやつじゃない。さっさと逃げてもらえるように仕事(悪あがき)しますか。

 

ドカン!!

 

新手か。この状況で詰めに入ったか。何にせよここで敵の増援は不味すぎる。

 

「あたたたた……。これ威力強すぎじゃない?レプリカ先生。間に合ったからいいけど……」

 

迅さん。レプリカさんの能力を使ったのか。僕も西地区に移動する時にお世話になったから威力が強いのはわかるけど、グラスホッパーを乱用してるからすぐに慣れた。迅さんがいるし、レプリカさんって事は

 

ズドッ!!

 

やっぱりいるか。こちら側の近界民(空閑遊真君)

 

「そっちを頼むぜ幹斗、京介、メガネくーん。連絡通路は使えない。直接基地を目指してくれ。トリオン兵に気をつけろよ」

 

 

「「了解(しました)」」

 

 

 

『もしもしとりまるくん?風間隊の歌歩ちゃんと連絡取れたよ!』

 

基地に近界民が侵入か。単体で来てるっぽいな。何のために単体で。狙いは雨取さんだ。理由があるなら基地に入らせないためが一番っぽい。しかも黒トリガーか。相手にしたくないな。けど安全な場所は基地しかないし、迅さんが直接指示したんだ。なんとかなる未来が見えてるってことか。ちょっと不安そうな心だったけど。

 

「新型です。僕が凌ぎます。烏丸君たちは基地へ向かってください」

 

「若宮先輩、俺もやります。オサム。いけるか」

 

「はい!!」

 

ちょっとカッコつけさせてくれても………この量を僕一人で相手できるわけないから結果オーライなんだけど。

 

 

 

「エスクード!」

 

「この道はだめだ!迂回して別の道から基地に向かえ!」

 

新型は七体か。結構多いな。逃げながらだと照準が定まらないからダメージ伸びないんだよな。立ち止まりたいけどそれだとほかのヤツらを行かせてしまうからできないんだよな。

 

ドドドドッ

 

またかよこのパターン。今回は確実に味方っぽいから気にしない。いや気にする。気をひかれるから隙ができる。このタイミングで来られれば回避不能、予測不能で戦闘不能(ノックアウト)

出水君、米屋君。それに緑川君。A級三人の加勢とは有り難い。逃げる手間は確保しやすくなった。

 

「C級を基地まで逃がします。迅さんの指示です。敵を引き付けてください」

 

「了解。アステロイド」

 

さすが出水君。相変わらずの弾バカっぷり。僕も一発飛ばすか。

 

「アステロイド」

 

射手の上下ってなんかつけづらい気がするんだけど。トリオン量だけで決まるわけじゃないし、出水君みたいな爆撃タイプとか僕みたいな機動タイプ。アシストタイプもあるから一概に最強ってないと思う。

 

「三雲君。早く移動をさせてください」

 

「そうだ!気を抜くな修!まだ数で負けてる!四人が足止めしてくれても何匹かは抜けてくるぞ!」

 

一応三人加勢に来てくれたから結構な時間稼ぎにはなる。逃げる方たちには烏丸君もついてることだから安心してもいいかな。だから僕は目の前の相手に集中できる。一番得意な場面だ。1対1。1on1。ソロである僕にとっての主戦場。負けるわけにはいかない。いや、勝たなきゃ意味のない状況。

……仕留める。

 

「アステロイド+アステロイド。徹甲弾(ギムレット)

 

グラスホッパーで上空へ。その後の落下時に合成。急降下して発射。グラスホッパーで急にいなくなったから不意を突いた重い一撃が与えられる。大体のヤツは対処できない。初見殺し戦術の一つ。今みたいな流れで一体持っていけたけど何回も同じ手を使うわけにもいかない。時間がかかるし合成までに数秒持っていかれるからグラスホッパーは重ねて飛翔距離を高くしなきゃいけない。しかもレーザーとか飛行されたら致命傷は避けられない。太刀川さんの時みたいにどっかに誘い込めれば

 

ドドドドドドドドド  ボンッ

 

いきなりなんだあの威力。トリン量量半端なさすぎるって。もしかしたら雨取さんのトリガーなのか。でも彼女は狙撃手だってレイジさんが言ってた。さっき狙いが絞れてなかったから彼女の可能性は薄いと思う。じゃああの威力の攻撃を誰ができんだよ。

 

次はあれだ。三雲君たちのところ見向かってるヤツ。

獲物が一緒だったとは。次のに向かうか。でもさすがは出水君の徹甲弾。いい火力してる。

 

ドドドドド

 

またさっきの。今撃ったの三雲君だったよな。あんなにトリオン量あったっけ。この前そんな素振りなかったのに。隠してたのか。

ふーん。雨取さんのトリオンを分けてもらったのか。だとしてもすごい量だ。さすが本部の壁に穴をあけただけのことはある。

 なんだあれ。「捕獲」「驚き」「鬱陶しい」。新しい人型か。しかも周りに浮いてる奴らはトリオンでできた鳥か。飛んでくるのは一旦よける。

 

「鳥に触るな!!キューブにされるぞ!!」

 

それが本当なら危機的状態だ。速い弾速に多い弾数。とんでもなくきつい奴が出てきた。まだ新型もいるし、連携されればさらに(もろ)くなる。でも撃ち落とせないレベルじゃない。

 

「バイパー」

 

何が起こったんだ。当たった弾がキューブになった。触れたものをキューブに変えるトリガーか。それだったら反則でしょ、そのトリガー。

まずいぞこれは。

 

「三雲君。さっさとC級を連れて逃げてください。この近界民は君じゃ対処しきれません。」

 

ヤツのトリガーで下手すれば全員やられる。だったらやられる人数を減らすしかない。僕たち五人でここを耐え凌ぐのが一番の良手。出水君の援護に入るか。

 

緊急脱出(ベイルアウト)!!」

 

緑川君が落ちてしまったか。新型との連携か。懸念していた点の一つ。やっぱりか。でも三雲君たちを逃がすことが最優先だ。人型を足止めするのが今は多分いい。

 

「ハウンド」「バイパー」

 

僕と出水君で鳥を撃ち落とす。出水君は地上から、僕は建物の屋根の上から。それぞれ射撃をする。いくつものキューブが生まれるが攻撃がやむ気配を感じない。

 

バチッ!!

 

衝撃音とともに出水君が膝から崩れ落ちた。相手はなぜか感心している。気持ち悪いんだよな、こういうやつ。出水君が何の攻撃をくらったのかわからない以上手が出せない。

あれは……三雲君か。何やってんだ、逃げろといったはずなのに。

 

キンッ

 

………………

 

「おいこらメガネ!ボサっとすんな!基地まで行きゃまだ全然助かる!」

 

「走れ、修!おまえがやるべきことをやれ!」

 

「さっきも言いましたが、さっさとC級連れて、基地に行ってください。三雲君は今の三雲君の使命を果たしてください」

 

こういうの言うタイプじゃないんだけど。三雲君が立ち上がれたからこれで良し。さっきの心情()のままじゃどうなってたか。迅さん風に言えば『悪い未来に転がってる』のは確かだ。

 

「基地に向かいます!サポートお願いします!!」

 

「おー行け行け。人型(コイツ)には、一発お返ししなきゃ気がすまねーぜ」

 

「出水君。僕も人型の相手をさせてもらいます」

 

「OK、足引っ張んなよ幹斗」

 

「当たり前です」

 

敵のトリガーに触れれば一発退場。距離をとりながらの射撃は必須事項。しかも黒トリガーとなれば撃破するのは絶望的。三雲君達が基地に着く時間を作るのが大事。

 

「「アステロイド」」

 

敵のトリガーが放出してくる形態はさまざまで、虫、魚、爬虫類など様々な動物に姿を変える。こいつらを出水君と僕で敵のトリガーの能力を相殺する。迅さんが言う最悪の未来には、向かわせない。必死に食らいつけ。被弾するな。防ぐことに集中するんだ。

 

「ぐっ!!」

 

「大丈夫ですか出水君」

 

被弾させてしまった。目の前の敵への対処が『共同徹底抗戦』なのに『自己防衛』になってしまった。そのせいで出水君が………。だめだ。いじけるな。今は戦の中にいるんだ。ミスは解消できる。100%の完璧じゃなくてもいいなんて『甘え』なのは迅さんの近くにいたからわかる。甘えにならないように変換するのが実力者(A級)の腕の見せ所でしょ。

 

「どうした?一発お返しするんじゃなかったのか?」

 

「………余裕こいてんじゃねーぞ、このわくわく動物野郎。わかってきたぜ。てめーのトリガーは………トリオンにしか効かねーと見た」

 

図星だ。すごいぞ出水君。でもそれだけじゃないんだろ。………いた。変態ども(天才達)が。『まだかまだか』ってのと『当てられないことはない』『仕事をこなす』の三つが。それならあいつらに撃たせるために取り払わなきゃいけないな。そのための口実か。なら思いっきりやるだけだな。

 

「メテオラ」

 

周りの家屋を破壊する角度を調節しながら人型に当たるように撃つ。本当の目的を悟られないように。

 よしこれでいい。あとはうまく喋らせておけば、

 

ボッ!

 

一発デカいのが当たってくれる。にしてもあの隙間を通り抜ける狙撃ができるなんてやっぱり変態だわ。

腹の真ん中に大きい穴が空いた。トリオンの漏出は大きい。これでさっきの動物達の量も少なくなるはず。あとは物量で押し切れる。ただ緩慢するな。確実に出来ることからやるんだ。

 もう二発入った。さすがに頭と心臓は貫けなかったけどいい仕事をしてくれている。これでさらにトリオンの漏出量は増える。有利は防衛組(こちら側)に傾いている。トリガーの使用量も減っている。周りを浮遊している魚の数が減ってるから底も遠くはないはず。

 

「………「勝負は決まった」と思っている顔だな」

 

 おいおい嘘だろ。反則だろ。道端に転がってるトリオンを吸収して傷を修復した。それじゃ撃つだけ無駄じゃないのか。せっかくのチャンス到来だったのに。致命傷なんてのはないってことか。伝達脳か供給機関のどちらかを一撃もしくは敵が供給するまでに壊さないといけないってことになる。それだと多分僕と出水君では無理。狙撃手に任せた方がいいのは誰もが思ってる。今狙撃手の方も立て込んでる。僕らで何とか………

 

「出水君」

 

緊急脱出(ベイルアウト)!」

 

『わりぃ京介!幹斗!仕留め損ねた!』

 

ヤバいな。ここで出水君が脱落するとは………。あとは僕たち三人で何とかするしかない。

 

ドギッ

 

あの動き、あの威力は、ガイスト。

 

『若宮先輩、米屋先輩。逃がしたC級が迂回しつつ基地に向かってます。キューブにされた隊員も何人かそっちの道に転がってます。保護して護衛(ガード)してください。俺はもうヘルプに行けません』

 

『了解しました。敵のトリガーに十分気を付けてください。思っている以上に器用なので』

 

『OK。お前が緊急脱出したらな。俺も一緒に遊ばせろよ。せっかくの黒トリガー様だぜ』

 

『やっぱり僕もそうさせてもらいます。保護は後できっちりこなすので』

 

「了解っす。じゃあ三分間だけ付き合ってください」

 

三人で徹底的に足止めする。烏丸君がガイストで気を引いて、僕と米屋君でトリオン以外での攻撃をする。どちらも完璧に対処できるなんて人はなかなかいないはず。必ずどちらかの攻撃によって隙ができる。こんな風に。

 

ドギッ!

 

烏丸君の弧月の刃が無くなった。マントの内側にハチを仕込んでいやがったか。

 

「ハイレイン隊長」

 

ワープ使い………。三雲君たちの位置もわかっているのか。ここで逃がすわけには

 

 

 

どこだ。ここは。まさかワープ使いのトリガーで飛ばされたのか。宇佐美さんに連絡を取って確認するか。

 

『どうやらここはボーダー本部の東側だ』

 

この声は

 

「レプリカさん。どうしてここに」

 

『どうしてと言われてもミキトの近くにいたからとしか言いようがない』

 

「ここから三雲君のところまでどれくらいかわかりますか」

 

『三分はかかる』

 

「少し移動して射撃ポイントに行きます」

 

トリオン量も少ない。デカいのは後一発か二発。仕留めれなくてもいい。敵の動きを封じられればそれでいい。僕の役目は最初っからそれだったんだ。

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