ソロ以外は僕には苦痛です   作:S1nO

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すみません。長くなりすぎました。本当に今回で大規模侵攻編終わらせます。


消えない者達

「このあたりでいいと思います」

 

『ミキト何をするつもりだ』

 

「一発大きいのを撃ちます」

 

『本体によればオサムはもうすぐ基地に着くらしい。誤射をしないようにな』

 

「わかりました」

 

ワープ使いのトリガーのせいで、変なところまで飛ばされてしまった。しかも本部近くの射撃ポイントまで意外と移動しなきゃならなかった。射撃ポイントって言っても本部に近い家屋の屋根だけど。お返ししてやらないといろんな人に失礼だ。烏丸君もやられたみたいだから三雲君へのマークが容易になってしまう。近界民はさっきの場所からワープで移動したから米屋君はついていない。トリオンがなくて今から向かっても足手まといになるから、開けたところを狙うしかない。

 

「レプリカさん。敵の位置を教えてください」

 

『わかった。ここだ』

 

敵は移動しているけど三雲君めがけて真っすぐにしか移動していない。弾を当てる位置は割り出せる。あとはぶつけるだけだ。

 

「グラスホッパー。バイパー+ハウンド。包囲弾(ハンター)

 

当たった。手ごたえあり。ただ急所は外れている。あの近界民集中放火されてボロボロにされてるけど。多分砲撃されるのが分かっていた。けど一つだけだと思い込んでいた。大量に砲撃されたら防御は間に合わない。このままいけばあの近界民たちが三雲君に追いつくことは無理なはずだ。これで雨取さんが攫われることも、三雲君が死ぬことも免れていてほしい。あとは託して、信じるしかない。僕は。もう援護できない。頼む三雲君。

ってかやべっ、反動で落下位置がずれた。トリオンが切れたからグラスホッパーが使えない。このままじゃ瓦礫に埋もれる。

 

『大丈夫かミキト』

 

「ありがとうございますレプリカさん」

 

レプリカさんが印で助けてくれた。ってか印って種類いっぱいあるんだな。空閑君もいっぱい使ってるし、レプリカさんも僕に色々見せてくれた。あとで聞いてみようかな。それよりあのタイミングバッチリで助けてくれるなんてイケメンすぎるでしょ。

 レプリカさん経由でしか戦況確認ができない。宇佐美さんに頼ろうにも三雲君の方で手一杯だろう。

 

「レプリカさん今の状ky」

 

スッ

 

「レプリカさん。どうしたんですか。反応してください」

 

晴れた。レプリカさんが機能停止してから急に。さっきまで元気そうだったのに。反応もないし、動く気配もない。トリオン兵だから僕のSEじゃもともと感情が見れない。だから何が起きているのかもわからない。壊れたのかトリオンが切れたのかもわからない。それなのに、この空はいい顔をしている。

 

『幹斗君、お疲れ様。終わったよ。修君は「死なない」って迅さんが言ってたよ』

 

「わかりました。僕もそっちに帰ります。雨取さんは大丈夫ですか」

 

『うん。千佳ちゃんも保護されたよ。増援もないし、敵はほとんど太刀川さんたちが片付けたみたいだし、反応もないから大丈夫だと思うよ』

 

「ありがとうございます」

 

 移動ばっかであんまり貢献した気がしないな。迅さんは僕に「お前はメガネ君を助けるポジションにいる。だけどメガネ君に見える形じゃないところが多い。多分お前がいるからすんなりいく場面が多くあると思う」とか言われたな。包囲弾だって迅さんが追尾弾もっといた方がいいっていうからわざわざセットしたんだ。ハズレにならくてよかったけど。これからも使うかって言ったら要件等ってあたりの技だ。トリオンも時間も削られるから僕向きじゃない。こういう「ある程度の狙いまで行ってから」って時にしか使えないからバイパーで十分だ。

 とりあえず一安心か。大きな波は去ったって感じか。しばらく暇になりそうだな。学校行きたくない。でも行かないと、当真さんとか太刀川さんみたいになるから避けたいところではある。いや、行かないとあれよりひどくなる。それはさすがに勘弁したい。

 始まりも唐突だったけど、終わりもあっさり来た気がする。『終わり良ければすべて良し』とはいうけど、実際これは何点の結果(未来)だったんですか、迅さん。

 

 

 

 

 あれから一週間以上たった。三雲君の病室に行くのは初めてだ。宇佐美さんは昨日行って目が覚めてることは確認済みって意気揚々と話してきたから話の一つくらいはできると思う。

 

「失礼してもよろしいですか」

 

「どうぞ」と二つ返事で帰ってきた。軽い人だな。お人好しすぎるのも考え物だけど。そんなところが好かれる要因なんだろうけど。圧倒的な実力者の中に放たれて輪の中心になれる人間だ。

 

「若宮先輩!!」

 

「大きい声を出さないでください。他の患者さんに迷惑です。なにより君の体に悪いですよ」

 

「若宮先輩。一つ聞きたいことがあります」

 

「いいですよ。あの会見でのヒーローの言葉ですから」

 

「僕は、僕のやるべきことができていましたか」

 

何とも答えづらい質問をするな。でも僕じゃないと聞けないような質問でもあるな。

 

「できてはいた。けどそれに気づくのが遅すぎです。深く掘り下げるつもりも責め立てる気もないので手短に伝えると、《やれることは本来の実力とともにある》みたいなことですかね。どう受け取るかは三雲君次第です」

 

「もう一ついいですか」

 

さっきみたいな質問じゃなければ楽なんだけどな。せっかくの機会だ。好きにさせてあげよう。功績の分も含めて。

 

「どうぞ」

 

「射手としての僕は、若宮先輩にはどう見えますか」

 

「今簡単に説明できるものではありません。君が退院してからの方がいいと思います。それこそB級ランク戦の時期にでも。他にありますか」

 

「今はありません。また話せるときに、お願いします」

 

「そうですか」

 

「あのっ!………ありがとうございます。僕がこうやって生きているのは先輩たちとか空閑とか、いろんな人のおかげだと思っています。若宮先輩に助けられた場面は多かったので特に感謝したくて………」

 

「君が生きているのは、君の実力ですよ。僕がいくら君を援護しようと自分の力がないと意味ありません。感謝してもいいですけど生き残ったのは君の力が強かったからです。では、お大事に」

 

 三雲君の射手としてのイメージか。あんまり思い浮かばない。一戦交えたけど、僕の研究のためにやってもらった感がして、確定させるには厳しいと思う。ランク戦で見させてもらうか。彼の実力を。

 病院に行ったのはいつぶりだろう。ボーダーに入るだいぶ前が最後だったかな。親に当たられて、連れていかれた時だったかな。母親は今も入院中なのかな。それ以来祖父の家で育ってきたからな。別にもう会う気はない。僕を何と思っていたのかも教えてくれないし、僕が離れていくことに何も感じなかった人だ。だから僕は人が嫌いだ。人が信じきれなくなったのも完全にこの時だ。だから信念というか本心というか、人間性みたいなのは祖父に教え込まれた。祖父は裏表無い、きちんとした人だった。数少ない僕が心を開いた人物だ。けど三雲君は迅さんと同じで面白い人だ。祖父と違うのは当たり前かもしれない。あの二人は特別な何かを備えている。当たり前だけど僕にない。しかも持っていることを自覚していない。

 

 

 

今僕は迅さんと本部の廊下にいる。僕も迅さんも浮かない表情をしている。迅さんもわかっているからこうなるんだろう。

 

「まず一つです。今回の襲撃に対する評価は何点ですか」

 

「70点くらいだと思う」

 

結構な被害が出たのにこの点数。戦争の被害全体でみれば妥協点。大抵の人は許せる。メディアとかめんどくさい人たちのことを置いといて、迅さん的にはこれは許せるのか。

 

「その点数に自信をもって『許容範囲内の失点』だったって言えますか」

 

「………」

 

言いたそうな顔をしている。だけど本心は「堂々と『OK』言えることも残念そうに首を振ることも善じゃない」とある。さすがに口に出させるのは悪い。気分を害してしまうこともあるし僕が区切るのが吉だと思う。

 

「わかりました。それについては僕とかが触れる話題じゃないですよね」

 

多分そのことは迅さんが誰よりもわかっている。なら少し毛色を変えよう。

 

「迅さん。雨取さんと三雲君が危険な目に合うのわかってて動かしましたよね」

 

「どうしてそう思ったんだ」

 

「僕は迅さんのSEの細かいところまではわかりませんが『雨取さんと三雲君が危険な目に合う』っていう未来は見えてたと思います。なのに三雲君も雨取さんも酷い目にあいました。簡単に選べたと思います。『C級を戦場に出さない』という未来を」

 

「お前の言いたいことはわかる。なんならそれが一番良かったのかもしれない。でも千佳ちゃんを敵に狙わせて民間人に被害を出さない方法を俺は選んだ。上手く言葉にはできないし、することはしない。お前にはわかるはずだ幹斗。こうせざるをえなかった理由を」

 

迅さんは本気で思ってた。雨取さんにも三雲君にもとても負い目を感じている。『一生拭えないもの』として刻み込んでいる。迅さんはSEで見てきて苦しんだ物の量が違う。救えなかったり、変えようのないものだったり。僕の苦しみの何倍も迅さんは経験している。だから理解しなきゃいけないんだって思う。

あと、僕らが三雲君や雨取さんを守る未来(ビジョン)を信じていたから大胆な策で僕たちを動かしたんだ。責任を感じながらもみんなで対処することができたものそういう意図があったのか。

 

「迅さん、コーヒーおごります。ハウンドが役にたったのでそのお礼です」

 

「いいの!?いやぁ幹斗君はいい後輩だねぇ」

 

「ありがとうございます」

 

こうやって切り替えるのはすごいけど、僕には通じてない。迅さんはそれを分かってていつもやる。多分下向いてほしくないんだろうな周りの人に。だから頼られる人物な気がする。SEのいい面だけを見せてフレンドリー。このイメージを定着させている。そのおかげで僕の今がある。

 

 

時間帯は夜。空は黒く染まり、白や赤の光が無人造に並んでいるのが見える。そんな玉狛支部の屋上に先客がいた。彼の隣に位置を取り、夜空を見上げた。

 

「ねぇ若宮先輩。若宮先輩はオサムのことどう思う?」

 

僕から話し始めた方がよかったかな。数秒持たずに彼の方から話しかけてきてくれた。

 

「身に合ってないことを自信満々にやる冒険家ですね。大規模侵攻の時もそうでしたが、無断でトリガー使ったり、本部に侵入したり、入団試験で反抗したりしたので」

 

「俺もそう思う。けどオサムにとって大事だと思ったことは絶対にやり通す。それがオサムのいいところだと俺は思うけどね」

 

「行動力はあると思いますよ。確か僕と三雲君が模擬戦終わった後「何回もやったうちの一回しか引き分けにはなってない!」って言ったらしいですしね。そういうところの潔さは嫌いじゃないですね」

 

「若宮先輩面白いね。俺と似たようなSE持ってるからかな」

 

「空閑君とはちょっと違います。僕の場合人にしか効きません。トリオン体関係なくですが」

 

「ほぅほぅ。確かに俺のとは少し違うな。じゃあ俺が何考えてるかはわかるけど、レプリカが考えてることはわからないってことか」

 

「その通りです」

 

空閑君ってやっぱりフレンドリーなんだな。緑川君とか米屋君とも仲がいいし、いい距離感でいい話題を提案してくる。仲良くなるのに時間かからないタイプの人か。学校に絶対いる人。特に裏表激しい。けど彼は純粋な興味と親密さのために話しかけれるなんて。珍しいという言葉では大きすぎるくくりで、指で折って数えるレベルの人だと僕は感じる。玉狛の人はいい意味で変わり者が多い。『よく危ない橋を渡る』ところは共通点な気がする。

 

「では僕からも一ついいですか」

 

「どうぞどうぞ」

 

「空閑君はいつから戦いをやってきたんですか」

 

「えーと、確か九年前だったかな。親父に六年間、親父が亡くなってから三年間。それでも多分若宮先輩には勝てないと思うな」

 

「どうしてそう思うんですか」

 

「前にこなみ先輩から聞いたら「幹斗はあたしの次くらいに強いわね。アンタなんかじゃ相手にならないわよ」って言ってたから」

 

「それは僕を過大評価しすぎてますよ小南は」

 

「いやいや、俺はそう思わないけどね」

 

実力はある方だと思う。断言はしないけど。

『自分の力を過信するな。弱いからこそ強くなれる。強くなることは弱い者だけの特権だ。だから弱いことは悪くない。だが自分を守れるのは強い自分だけだ』

祖父が大事にしてきた言葉。掛け軸に『弱きは成長の種』ってのがあるくらい大切に刻み込まれている。祖父の家で育ってきた僕にも同じ思想がある。

 

「そういえばなんで若宮先輩はこなみ先輩のこと呼び捨てにするの?」

 

「それは小南が「いちいちさんつけるな!」っていうからです」

 

「じゃあ俺のことも遊真でいいよ」

 

「遠慮しておきます。小南とは同じ隊だったので。あと小南は「さん付け」すると不機嫌になるので」

 

「若宮先輩もこなみ先輩に頭が上がらないのか」

 

「違いますよ。小南に嫌な顔してほしくなかっただけですよ」

 

「もしかして若宮先輩こなみ先輩のこと好きなのか」

 

「いいえ。単に人を不快にさせると僕も不快になるので。この口調もその弊害ですね」

 

「若宮先輩ずっとそういう感じだから難しい人なのかと思ってたけどそんなことないんだな」

 

「よく言われます。話しかけられにくい自覚はあります。でも迅さんとか太刀川さん、小南には「意外とやんちゃ」って言われたりもしますね」

 

「俺は案外そう思うけど。俺と初めて会った時の登場とか、オサムに模擬戦挑んだりしたときとか」

 

「空閑君にもそう見えていたんですか。わかりやすいですかね、僕のこと」

 

「俺は若宮先輩のことちょくちょく見てたし、こなみ先輩から色々言われたから」

 

「いい師匠ですね。仲もよさそうですし」

 

「若宮先輩は誰かの師匠になったりしないの?」

 

「僕は教える人材じゃないです。多分傭兵向きですね」

 

「確かに、若宮先輩なら強い傭兵になりそう………」

 

「ボーダーにいるうちはそんなこと出来ませんし、なるつもりもないんですけどね」

 

「結構長い時間話をしましたね。僕はそろそろ部屋に戻ります。あんまり自分を責めたり、恨んだりしないでくださいね。自分を苦しめますよ」

 

多くを抱えすぎている空閑君に少しのアドバイスをしてから屋上を後にした。

空閑君は玉狛の人だ。強さとか年とか関係ない。自分らしくあってる。ずっと人を傷つけないように自分を押し殺している。多分これからも同じ状態でい続ける確信がある。前に進めないってわかってるのに足が進まない。怖いんだ。僕のせいで台無しになることが。逃げるのが僕の限界だ。変わらない。戻れない。『孤独が僕逃がさない』って思いこんで、仕方ないって自分自身にすり込んでいた。でもなんか勇気というか信じることが再確認できた。迅さん、三雲君、空閑君。それぞれ抱えているけど、周りの力とかを信じて進んでいる。今度はちゃんと玉狛第一メンバーと話してみよう。

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