ソロ以外は僕には苦痛です   作:S1nO

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※一部誤字修正致しました。


再走-Re:start-

「オマエは必要のない子」

 

「お前は護れる者になれる」

 

「キミ、気持ち悪い」

 

「あんたにしかできないのよ」

 

「テメェはいなくてもいい残念な奴なんだよ」

 

「俺はお前を信じている」

 

「ワカミヤ君には近づかない方がいい」

 

「若宮先輩ならできますよ」

 

「あっち行けよノゾキマ」

 

「お前がやり通すのが俺には見えてる」

 

 

ッ!………………………

夢か………。なんでだろう。こんなにも僕の心を乱すのは。母親、近所の人、年上、クラスメイト。小さい頃の僕を壊した記憶。それと、祖父、仲間、先輩、後輩。僕に裏のない心を見せてくれた時の記憶。気分が悪い。深い眠りにつけない。眠ろうとすると違う人との記憶が呼び覚まされそうな気がして邪魔される。こういうことは一回も起こったことがなかったからある意味新鮮。この部屋が空虚に感じるほどに何も考えられなくなりそうなくらい僕は佇んでいる。

 

ヴー ヴー ヴー

 

スマホが音を出して震えた。珍しいな。こんなにも夜遅くに。

 

『差出人:父親』

 

父親がこんな時間にメールをよこすなんて。しかもメールなんていつぶりにもらったかな。ボーダー入ってすぐくらいに一通だけだった気がする。そんな前のメールなんて消した。それより内容が知りたい。

 

『久しぶりだなぁ。元気か幹斗?いきなりすぎるよな。テレビで観たぞ、そっちにおっきい被害が出たんだってな。それが心配でメールを送ったんだ。怪我はないか?親父のところで学んだことは活きてるか?それでお前が無事ならうれしい。もっと嬉しいのはお前が誰かの命を救えたことだ。もちろん俺は活躍の実績は知らない。でも俺は、お前ならできたんじゃないかって思う。理由はな、『お前が立派な人間だと信じているからだ!』ってことだ。

頑張れよ!いつまでも応援してるからな!

 

 

 

 

P.S. 返信くれよ!お前の活躍話も含めてな! 無理に送んなくていいぞ。いつでもいい。俺はいつでも待ってるからな!』

 

父親にしてはちゃんとした文だ。祖父に似てるところかもしれない。気持ちのこもった言葉を常に使うところとか。

父親は僕が小学生になる前に仕事で家を空けて何年か経って帰ってきたときに家庭崩壊で離婚。僕は祖父の家に渡り、父親は責任を取ってなのか近くのマンションに住み始めた。

それ以来父親の顔は見ていない。ボーダー入隊を伝えたのも電話だった。それでも父親は慈愛に満ちた声で「頑張ってこい。俺はお前を応援する。何があっても」的なことを言ってた。ここはううやむやで覚えているけど、これだけは今も鮮明に覚えている。「忘れんなよ。俺はお前の父親で、お前は俺の息子だ。息子の希望応援してやるに決まってんだろ。お前が俺をどう思ってるかはわかんねぇけど、俺はお前を一生愛してる。だから元気にやってこい、幹斗」父親が泣きそうなのをこらえているのが電話越しでも伝わった。僕が頑張れている根幹の言葉。ありがとう。

 

 

 

 昨日の父親からのメッセージのおかげでスッキリできた。もちろん寝れた。二時間くらい。

 現在時刻午前四時。特に何もないけど一応起き続けている。心がスッキリしたからなのかもしれないけど、疲れとかがこれ以上回復しそうにない。つまり寝なくても大丈夫そうということだ。どうせ暇だからリビングに行くか。

 

「おはようございます、若宮先輩」

 

「………おはようございます」

 

雨取さんがいる。話したことないし、この前はなんか命令したっぽくて僕に対して怖い印象持たせてしまってるかもしれない。どうしよう。朝早くにこんなことになるなんて思ってもないからネタがない。おとなしく部屋に帰るか、雨取さんと話すかの二択。どうしよう、正解が出てこない。場面の想定にこんなマニュアルはない。まずは落ち着け。そして深呼吸だ。

 

すぅー

 

「あの………」

 

うぐっ

 

「なんでしょうか」

 

「お水飲みますか?」

 

「ありがとうございます。お言葉に甘えさせていただきます」

 

情けねぇな、僕。後輩に気遣ってもらって、自分は奥手奥手の考えだけ。

「どうぞ」と差し出された水を一口飲んで身体の調子を落ち着かせる。そしたら、今が朝の4時30分であることを思い出した。

 

「どうして雨取さんはこんな時間に起きてるんですか」

 

「最近よく眠れなくて……修君と遊真君に迷惑かけてるんじゃないかって……」

 

そこからは涙交じりの声でポツポツと言葉を紡いでいった。

「自分のせいで三雲君を死なせかけた。空閑君からレプリカを無くさせてしまった。夏目さんや宇佐美さん、玉狛の人たちに心配をかけられた。これは全部自分のせい」

って思い込んでる。昔の僕みたいな悩みだ。こういう悩みは解決してあげたい。僕もそうだった。塞ぎ込んで見えている周りが恐ろしく感じること。いつも通りが急に遠のいていく感覚。僕もその道を通った。解決してあげなきゃ本当に情けねぇやつになってしまう。

 

「気にしないでって僕が言っても多分効果は薄いと思うので、僕のことについてお話しします」

 

雨取さんは僕の方に顔を上げて言葉を待っている。勿体ぶらずに話そう。他の人たちが来る前に終わらせよう。雨取さんが泣いてる姿を見られたら都合が悪いのはお互い様だから。

 

「僕も全部自分のせいって思ってた時期がありました。でもそんな時祖父がこう言ったんです。「お前の失敗をどう受け取ってもらえるかが大事だ。慰めてくれるのか悪態をつくのか。お前を見捨てるのか手を差し伸べてくれるのか。それでお前が関わる人物を決めるべきだ」って」

 

「要するに、誰も雨取さんのことを責めてないってことです。だから雨取さんも抱え込まなくていいってことです。三雲君も空閑君も雨取さんに対してそんな感情を抱いていなかったですよ、少しも。もちろん皆さんもです。だからあの二人をもっと信頼してください。それがチームってもんですから。絆はチームに一番大切な要素なので。頑張ってください」

 

「はいっ!ありがとうございます!」

 

雨取さんは笑顔になってくれた。よかった。心もすっかりきれいになってる。代わりにあの二人への思いがあふれ出てきている。最近三雲隊が結成して、仲間の絆がさらに強くなったのが素人目でもわかる。よかった。三人ともそれぞれ違った悩みがあって。悩まないと次にいけない。彼らの悩みがきれいさっぱり解決できたかどうかは僕は断定できない。でも、助言だって思えてもらえたのならやった甲斐を感じられる。

 

「幹斗!アンタ千佳になんもしてないわよね⁉︎」

 

いきなり小南が物陰からさっと表れてとんでもない疑いの目をかけてきた。ここで小南が乱入してくるってことは、多分盗み聞きしてたな。目も声もばっちり張ってるから雨取さんが寝てないの知ってるな。一応はぐらかすか。わかっているのに聞く。小南の性分だからな。ご愛嬌ということで。

 

「安心してください。何もしてないですよ」

 

「あっそ。ならもういいわ。にしても二人とも今日は早く起きたのね」

 

「僕も雨取さんもパッと目が覚めただけです。そういう小南はどういう理由で」

 

「ア、アタシも急に目が覚めただけよ!」

 

「わかりました、そういうことにしておきます」

 

はぁ~、なんでいっつも見え見えの嘘つくのかな。空閑君とか僕じゃなくてもわかるような演技してる。これでよく気品なお嬢様キャラを守り抜いているんだか。どんな箱に詰められて育ってきた素直な奴ら()なんだか。あきれそうだ。

部屋に戻って今日のニュースでも見るか。そしたら漫画の続きを読もう。さっさとこの微妙な空気の漂う空間から逃げ出そう。

 

「どこ行くのよ幹斗。今日の朝食担当アンタでしょ」

 

………忘れてた。

 

 

 

 今日の朝ご飯は鯖おにぎり茶漬け。この前読んだ漫画にあったから試してみた。作り方はとっても簡単。鯖を塩コショウを振って焼いて切って塩昆布おにぎりの中に入れる。その塩昆布おにぎりを薄めの昆布茶をかけてあげるだけ。みそ汁は適当なジャガイモの味噌汁。お茶漬けにみそ汁ってチョイス完全に間違えてる。それでも食べてる人たちは

「やっぱり幹斗の飯はうまいなぁー」「さすがは幹斗君」「若宮先輩の腕前もなかなかのものですな」「アンタいつこんな料理覚えてるわけ?」

と高評価。僕的にもこれはおいしくて簡単だから評価は高い。あの漫画難易度の高い料理ばっかり出すけど主人公とヒロインはそれぞれ定食屋と田舎者だから背伸びしなくてもできるレシピだから挑戦したくなっちゃう。

 

「小南、幹斗、栞、京介。夜、話がある」

 

呼ばれた面子は各々返事をして了解の合図を示した。あんまりこういうことをレイジさんからいうことってないな。よっぽど大事なことなんだな。そのことについてはその時に話すし、今のところ何も見えないから今までと違った胸騒ぎが起きてもいい状況。気張らなくていいか。さっさと学校行くか。

 

 

 

「よう、幹斗」

 

「おはようございます」

 

いつもの光景。出水君と米屋君が僕の席の前で待ち構えている。ほぼ毎日この関門を潜り抜けるだけでも一苦労だ。今日は何のことについてなんだ。

 

「俺らって、槍バカ、弾バカって言われてるじゃん?だったら幹斗は何バカだろうなぁって思ってんだけど幹斗は自分でどう思う?」

 

はぁ。なんてくだらないことを話してるんだこの人たちは。しかも本心で聞いてきてるから余計に呆れる。まったく、そういう思考をしてるから何とかバカって不名誉な称号(二つ名)を付けられてるんだと思うんだけど。寡黙な正統派部隊(三輪隊)馬鹿と天才は紙一重の集団(太刀川隊)にいるから気づくきかっけがないんだろうな。かわいそうだな、いろんな意味で。

 

「僕は何バカでもありません。君たちみたいに突出している部分がないので」

 

「いいや、お前は俺と渡り合えるレベルの射手で、コイツ(陽介)より強い攻撃手だ。そんなに謙遜すんなよ」

 

「そうだぜ、お前はA級トップクラスの実力者なんだよ。いい加減認めたらどうだ?」

 

「そうですね。もっと実力が付いたら認めるかもしれませんね」

 

はぁ~って溜息を大きくつかれた。なんかすごい申し訳ない気持ちになったんですけど。二人とも「やれやれ」「まったくもう」って呆れてるんだけど。けど見放した感じの呆れじゃなくて「「やっぱり」「相変わらず」幹斗だな」って思っている。ほっとした。またいつかみたいに見放されるんじゃないかと思った。

 

「なぁ幹斗、今日の夜飯行かね-?この前の打ち上げっていうかそんな感じでさ」

 

「すみません、今日は支部で話があるので」

 

「そっかー。じゃあ明日は?」

 

「いいと思いますけど」

 

「よしじゃあ決まり!お前もわかっただろ公平」

 

ほんとテンション高いなこの二人。なんとなくこの三人でいるときも居心地がいい気がする。昔の純粋になっていた時期みたい。そう思えばクラス一緒なのがこの人たちだったの意外と当たりだったかもしれないな。チームを組めばまた違う関係になるからこの距離感が楽なだけかもしれない。でも今それが保てているならOKだって言える。

 

「そういえばメガネ君は?」

 

「そろそろ退院できるんじゃないですか?たぶん今日かもしれないですね。ランク戦までには必ず戻ってきますよ」

 

よかったよかったと安心する二人。三雲君の人脈ってすごいんだな。それに比べたら僕なんてまともに話せる人が十人ちょっとしかない。この二人が社交的だからってことも考えられなくはないけど木虎さんや緑川君、風間さんとも交友があるのは三雲君自身が持ってる力なんだ。他人と比べちゃうな、よくないってわかってるのに。やっぱり憧れてるのか部隊(みんなの力)に。

 

「おい幹斗朝のホームルーム始まるぞ。さっさと寝ぼけ面直して座っとけよ」

 

「ありがとうございます、出水君」

 

虚しくなりかけていた僕を出水君が現実に引き戻してくれた。そんな彼に僕は軽く感謝の礼をして席に着いた。

 ホームルームではこの前の大規模侵攻についてと今後の授業内容。その確認が終われば長い長い億劫な時間が続いていく。

 

 

 

今日も特段かわったこともない。毎日が同じで代り映えのない日常の風景。変わったのは街の風景。近界民に攻められてボロボロになった個所がまだある。本部付近は形を取り戻してきたけど、それ以外は手がかかってない様子。いまいち安心できなさそうだけどボーダー隊員がなんとかするだろ的な魂胆が透けて見える。そんな不安とか不満、回想を募ったところで何にも起きるはずがないから支部に帰ろう。

 

「若宮先輩」

 

「何ですか烏丸君」

 

「シフトが急に入ったので遅れるかもしれないって伝えといてください。一応レイジさんたちにも連絡したんすけど万が一のためにもお願いします」

 

「いいですよ。バイト頑張ってください。無理しないでくださいね」

 

「ありがとうございます」

 

まじめな烏丸君。わざわざ報告しなくてもいいのに。しかも校内でガッツリ話すなんて。人少ないから問題ないと思うけど、しかもプライベートの事情堂々と簡単に話せるんだね。びっくりしちゃったわ。たとえ人に尋ねられようが絶対そんなことをしない自信が僕にはある。

帰ろうか。さっさと戻って夕飯の準備もしなきゃいけないし、読んでた漫画の続きとか掃除したりしなきゃいけない。ついでに課題もあるけど。今日は何がいいかな。

 

ヴー ヴー ヴー

 

宇佐美さんからだ。

 

「はい、もしもし」

 

『あっ、幹斗君?修君が退院してきたよ。一応まだ完治はしてないから気を付けてねってお知らせ。私からはこれくらいかな。幹斗君からは何かある?』

 

「そっちに三雲君はいますか?いたら三雲君の好物を教えてほしいんです」

 

『了解~。修君好きな食べ物は何? カニクリームコロッケです カニクリームコロッケだって』

 

「ありがとうございます」

 

退院祝いに作ってあげるか。じゃあ食材を買うか。カニ缶と薄力粉、ウスターソース、パセリ。これ以外は確かそろってるから簡単に済みそうだな。いやでも、三雲君の退院&色々祝いとしては少ない気もする。逆にそんなことをすれば僕が三雲君に甘いのではないのか?そうだなカニクリームコロッケだけでいいだろう。そうと決まれば早速スーパーに行こう。

 

 

 

よし、買うものは買った。あとは適当になんか買うか。何にしようかな。

 

「あれ?若宮君?」

 

ん?誰だ?僕に話しかけれて君付け。思い当たる人物がパッと出てこない。……ぅぐ、人脈の少なさがここでも響いてきた……。一方的に知られてて僕がわからないことがあるとは……。

とりあえず振り返ろう。無視は一番良くない。反応しなきゃお互いいい思いをしない。

 

「はい、そうですけど」

 

く、熊谷さん?僕話したことないんだけど。逆になんで僕のこと知ってるの?あれ確か迅さんが前に「メガネ君も遊真も有名人だけどお前もっと有名だぞ。だから俺みたいに胸を張ってもいいんだぞ」とか言ってたな。それが本当だとしたら意外と知られてるのか。

朝の失敗を活かすんだ。話しかけろ。若宮幹斗。

 

「あ、あの、く、熊谷さん。僕に、何か御用が、あるんですか?」

 

やっぱりだめだ。他の人と話すなんて。熊谷さんも「え?」「小夜子みたい」って思ってる。小夜子ってことは支岐さんのことか。テンパる様子が似てたんだろうな。僕も自覚あるし。そう思ったら恥ずかしくなってきた。

 

「若宮君って人見知りなの?」

 

核心を突かれてしまった。こういうこともあるから人と付き合うのが嫌なんだよな。

 

「あ、はい。話せる人じゃないとテンパっちゃうので。ところで僕に何か用があったんですよね?」

 

「うーん、用があったわけじゃなくて、たまたま若宮君を見つけたからお話してみたくて………」

 

この考え方は完全に彼ら(出水君と米屋君たち)と一緒だ。経験上仲良くできそうだけど上手くいかない気もする。とりあえず会話を成立させよう。

 

「あの、熊谷さんは、どうしてこんなところにいるんですか」

 

「来月からのランク戦に備えて玲の家で作戦を練るから、買い出しに」

 

そっか。那須隊もB級か。しかもB級中位以上となれば実力派も沢山いるからな。鈴鳴とか柿崎隊、荒船隊の実力者揃いだからな。対策を練らないと勝ち上がれない。ランク戦ってのはそういうものだ。僕も対策とか運び方は大切にしているから良くわかる。

 

「若宮君は?」

 

「僕は、あのっ、今日の支部の夕飯担当なので、その……」

 

「あー、そうなのか」とかってに納得してくれた。納得してくれた内容に偽りは全くないからいいけど。知らない人と話すのができないな。たじたじになるし、歯切れも悪い。出水君と米屋君と一緒になった時はパンクしかけた。それでも接してくれて、仲良くしてくれてる。感謝はいつもしてる。

 

「私はもう行くけど若宮君は?」

 

「僕は、まだここにいます。ランク戦、頑張ってください」

 

「ありがとう。またね」と告げられて熊谷さんと別れた。

ふー。落ち着け若宮幹斗。いきなり話しかけられたくらいで胸騒ぎが止まらないなんてことはあるはずがない。いや過去に何度もあったけど、今更なるのは仕方ないけど、ここはスーパーだ。迷惑にならないようにしろ。深呼吸だ。深呼吸しながらレジに並ぼう。

 

スー ハー スー ハー スー ハー

 

「どうしたんですか若宮先輩」

 

「か、烏丸君?」

 

「そうですけど。それより若宮先輩はどうしたんですか?そんなに息が上がって」

 

「実は熊谷さんに話しかけられて」

 

「それでこんな風になったって訳ですか」

 

「はい」

 

「もう大丈夫ですか?」

 

「はい」

 

「じゃあお会計1925円になります」

 

「はい」

 

「2000円お預かりしますます。まず先にレシートと75円のお返しになります。お買い上げありがとうございました」

 

烏丸君がいたなんて。逆に彼がいて気が落ち着いた。さっさと帰ってカニクリームコロッケを作ろう。にしても烏丸君ボロボロの僕のこと笑ってたな。小南に嘘ついてる時と同じだった。なんか嬉しいような気難しいような。まぁ、気にしなくていいか。

 

 

 

さぁ料理するか。初めて作るし漫画にも載ってなかったからちょっと不安なんだよな。レシピ通り作れば大丈夫か。

 

 玉ねぎはみじん切りにする。

 弱火で熱したフライパンにバターを溶かして、玉ねぎをしんなりなるまで炒めて、カニ缶、白ワインを入れて炒め合わせる。レイジさんに白ワイン使っていいか聞いたらすんなりOKを出してくれた。ありがたい。

 薄力粉を加えて粉気がなくなるまで弱火で炒める。

 牛乳を3回に分けて加え、弱火で混ぜながら全体がまとまってきたら塩コショウと顆粒コンソメで味を調えてバットに移し、ラップをして冷蔵庫で冷やし固めて、分けて成形する。

 ボウルに卵を割り入れ、水を加えてまぜる。さらに薄力粉を加えよく混ぜ合わせる。これでバッター液の完成。

 成形したタネをバッター液につけてパン粉をまぶす。

鍋底から3cm程の高さに揚げ油をそそぎ、180℃に熱したらさっきのを入れて、衣がきつね色になるまで揚げたら油を切る。

 ボウルにケチャップとウスターソースを入れて混ぜ、お皿にひく。油を切ったコロッケを盛り付け、パセリを添えて完成。

 

結構綺麗にできた。けど時間かかるなこれ。1時間以上かかったんだけど。そのお陰で夜7時過ぎの夕食の時間を少し過ぎてしまった。誰も責めてないし根に持ってないからいい。

 

‘‘いただきます’’

 

「三雲君の退院祝いです」

 

「美味しいです」

 

よかった。三雲君の母親さんには敵わないけど認めてくれてる。スーパーでの出来事(不幸)がどうでもいいと思えるくらい「やってよかった」って思える。

 

「アンタっていつ料理の練習してるの?」

 

「してないですよ。イメージトレーニングだけです」

 

「本当に⁉︎」

 

「そうですよ」

 

「若宮先輩はウソついてないよ」

 

イメージで練習なんてよくあることだ。方向性は違うけど作戦を練るのと変わらないと思うんだけどな。考えてみれば攻撃特化の小南にはあんまりわからないのか?天然だから理解してないだけなのかもしれない。

 

‘‘ご馳走様でした’’

 

「お前たち俺の部屋に来てくれ。朝の件についてだ」

 

口調と声色はいつもと変わらない。けどいつもより真面目だ。まだ内容を隠している。大人しく話を聞く他ないか。

 レイジさんの部屋。質素でまとまっている。でも筋トレ用道具が沢山置かれている。レイジさんのイメージにぴったりな部屋だ。

レイジさんはベンチプレスの上に、小南はベッドの上、宇佐美さんはキャスター椅子に、烏丸君は壁に、僕はもう一つの椅子にそれぞれもたれている。

 

「いきなり本題に入る。幹斗に玉狛第一(うち)に戻ってきてほしいことだ」

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