Q.なんで妹ちゃんの名前が◯◯なの?
A.割とデリケートな部分だと思ったのであえて設定しないことにしました。
Q.何で妹ちゃんこんなキャラなの?
A.クール姉キャラの妹は天真爛漫キャラって相場が決まってるでしょうが!!!!!
アヤベさんの妹さんがもしも生きていたら、という話です。IFストーリーとか銘打っちゃってますが、所詮は個人の妄想100%ですので、かるーい気持ちで楽しんでほしいです。
『さぁ、晴れ渡る空のもと行われる芝2000! いまここに、9人のウマ娘が出揃いました!』
とあるレース場。
この日は朝から大盛況であった。様々な人々の歓声、懇願、応援がオーケストラのように複雑に絡み合い、レース場に一つのBGMを形成している。
見渡す限りでもスマホをいじっている者は一人もおらず、皆これから始まるレースを今か今かと待ちわびているようだった。
そしてかくいう僕ら───僕と愛バであるアドマイヤベガの二人も、不安と興奮を混ぜ合わせた感情で観客席からレース場を見下ろしていた。
「……いよいよ始まるね」
「大丈夫かしら……あの娘」
……もっとも、僕と違ってアヤベさんの感情は不安の比率の方が大きくなっているようだが。
そうこうしている内に、眼下のレース場に出揃っていたウマ娘が一人ずつゲートに入っていく。
その内の一人……僕らがずっと視線を向けていた一人のウマ娘は、観客席の僕たちに気づいたように顔を上げると、にぱっと笑いながら小さくコチラヘ手を振った。
「もう、あの娘は……レース前なんだからちゃんと集中しなさいよ……」
ため息を吐きながら小さく手を振り返すアドマイヤベガ。……呆れたように言っているが、耳や尻尾は満更でも無さげに揺れている。まぁ気づかないフリをしておいてあげよう。
『さぁゲートイン完了。出走の準備が整いました!』
実況のその言葉が聞こえた瞬間、先程まで響いていた観客の声が一気に静かになる。水を打ったようとはまさにこのことか、ウマ娘のみならず観客までも集中し始めたかのようにレース場から音が無くなる。
いつもながら、彼らのこの静と動の使い分けには感心してしまう。
……そして、僅かに
『スタートっ!!』
合図と共にゲートが開き、ゴールだけを目指す獣たちが一斉に野に放たれた。
それと同時に、呼吸を思い出したかのようにレース場も観客たちの声が再び響き始める。
『各ウマ娘、揃ってきれいなスタートを切りましたっ! 先行争いはサジタリスマナ、ムーンリブラ、タウラサラス! そこから2バ身差でアクアピスケスがいます!』
見る者を更に扇動させるように上がる実況の声。しかし、僕とアヤベさんは『まだ』先頭集団には興味がない。
僕たちの目は後方辺りのただ一点に注がれていた。
『さぁ二番人気の◯◯!! いきなり最後方からのレースになってしまいましたが大丈夫でしょうか!?』
実況の通り、いきなり8人のウマ娘の背中を見つめて走ることになっている◯◯。しかし、彼女の顔に不穏な様子は感じられず、余裕そうな顔つきで走っている。
もう既に彼女の中では勝つ算段がついているのだろうか。焦らずに自分のペースを保てているのは良いことだが、やはり見てる側としては不安になってしまう。
「本当に大丈夫かしら……」
特に隣に座るアヤベさんはその気持ちが強いらしく、さっきから落ち着かなさそうに腕を組んでいる。
まぁそれも無理もないだろう。
「今日はお姉ちゃんが見てるんだから、みっともない走りしないでよ、◯◯」
今走っているウマ娘は、アヤベさんの妹なのだから。
レースから数十分ほど経った後。
会場から隔てられたウマ娘用の控え室から、えらく上機嫌そうな声が聞こえてきた。
「いぇーーい! いっっちゃくっ、ですっ!! お姉ちゃんにトレーナーさんっ、見ててくれた!?」
声の主である、アヤベさんの妹である◯◯は、にぱっと笑いながら手でピースを作っていた。
仮にも2000mを走り終えた直後だというのに、その顔からは疲労を感じさせない。
「……結果的に一着だったから良かったけど……あなた中々に危なっかしい試合運びをするわね……」
それと対照的に、アヤベさんは彼女の方がレースをしていたんじゃないかと言うぐらい疲れたような顔をしている。
「レースになるとちょっとスロースターター気味になっちゃうあなたのクセ……早く直さないといけないわね。今回は2000だったから間に合ったけど、もう少し長かったら結果はわからなかったわよ」
こめかみに手を当てながら続けるアヤベさん。レース中もそうだったが、なまじ姉なだけあって、アヤベさんからは妹さんの良いところよりも悪いところの方が見えやすいようだ。
だがそれは当然あまり気持ちの良いものではないらしく、彼女は頬を膨らませると、
「む~、お姉ちゃんダメ出しばっかじゃん! 可愛い妹がメイクデビューで無事に勝利したのに、嬉しくないの!?」
「そこはもちろん嬉しいわよ。でもだからこそ、あなたがこれからも勝ちを重ねられるように私は……」
「むー!」
「『むー』じゃないの」
姉を想うが故に素直に褒めてほしい妹と、妹を想うが故につい口酸っぱくなってしまうアヤベさん。
なんと悲しいすれ違いだろうか。姉の心妹知らず。妹の心姉知らず。
ジジイみたいなことを思っていると、課題点を上げ続ける姉が面白くないのか◯◯は僕の方へと視線を向けた。
「ねっ、ねっ、トレーナーさん、私頑張ってたよねっ!?」
ターゲットを僕の方に変えて駆け寄ってくる。人懐っこく明るい雰囲気を纏わせながらやって来る様は、さながら大型犬のようだった。
アヤベさんと瓜二つで体操着が眩しい少女に見つめられ、DTの僕は思わず目をそらしてしまう。
「う、うん。よく頑張ったと思うよ◯◯は。まだまだ粗削りだけど、練習と経験を重ねればきっとアヤベさんに負けないぐらいの強いウマ娘になる」
そらしつつも一応称賛は惜しまないことにしておく。
……本来はこういう場面は褒めるだけじゃなく気を引き締めさせることも大事なのだろうが、まだトレーナー歴一年目の僕にそんな高度なテクは求めないでほしい。
「ふっふん!」
ようやく求めていたリアクションを貰えたからか、◯◯は先輩にあたるトウカイテイオーを彷彿とさせるようなドヤ顔になる。
……なんだか、僕とアヤベさんとで完全に飴とムチの関係が出来上がっているような気がする。
すると、◯◯はまた僕へ一つ歩を進めると、
「じゃあさっ、トレーナーさん頭撫でて~!」
にぱっと笑いそんな要求をしてきた。
「えっ、またいきなりだねぇ……。まぁいいけど」
初見ではまぁまぁに困惑する要求だが、実はこんな風な要望は今に始まったことではない。
クールビューティーで手がかからないアヤベさんと対照的に、妹の◯◯は中々に距離感が近くて快活なのだ。
僕はこの姉妹とはアヤベさんの方から先に知り合い、彼女に紹介される形で妹さんと出会ったのだが……アヤベさんとほぼ同じスタイルと顔でグイグイと積極的に来られるのは……なんというか、ね?色々と危なかった。
さすがに近すぎると思ったときは僕やアヤベさんが注意してはいるが……直す気配はない。正直最近は大人をからかって遊んでるだけなんじゃないかという疑惑さえ出ている……。
まぁでも、◯◯は割と身内に対してもこんな態度らしいし、『妹(弟)は甘えん坊』という定説はナリタブライアンでも証明されている。
なれば、別に構わないか……。
しかし、そう思った僕が彼女の頭を撫でてやろうと手を伸ばした時───
「◯◯。あなた、そろそろウイニングライブの時間でしょ。せっかく一位を取ったのに、そこで遅れたら全部台無しよ」
僕の代わりにアヤベさんの手のひらが、頭の代わりに彼女の肩へと乗せられた。
言われて初めて時間のことを思い出したのか、◯◯は壁にかけられた時計を見ると「うわっ!」と慌てたように声を上げる。
「ほっ、ほんとだっ!完全に忘れてた!」
遠足に出かける直前で忘れ物に気づいたような動きだった。
それからあせあせと掛けてあったハンガーからライブ用の衣装を取ると、
「じゃっ、あたし行ってくる!……あっ!この後もちゃんと見ててよ!?ウイニングライブを終えるまでが、メイクデビューなんだからっ!!」
「……あなたさっきまでその存在をすっかり忘れてたじゃないの……」
アヤベさんのツッコミが届く前に◯◯はさっさと会場へトンボ返りしてしまった。……月並な感想だが、嵐のような少女だった。
「……ていうか、
「あ、やっぱりアヤベさんもそう思う? 僕も疑問に思ってたんだけど」
二人して顔を見合わせ、ため息をはく。
そして、
「……本当、手のかかる妹ね」
額をおさえながら困ったようにアヤベさんは言う。
……だけど、僕は知っている。
実の所、アヤベさんはそれを全然迷惑になんか思っていないことを。
「……先に私たちは席に戻っておきましょうか」
「だね。僕たちがここにいたら◯◯も戻るに戻れないだろうし」
そうして笑い合いながら僕たちも会場へと戻っていった。
……ただそれはそれとして、なぜかライブ会場へ向かう道中、アヤベさんとの体の距離がいつもより近かったような気がした。
そうして、諸々あったメイクデビュー戦から数日後。
めでたくデビューできた◯◯と、そんな彼女よりも四ヶ月ほど早くデビューしていたアヤベさんをつれて、僕はトレセン学園の食堂へ来ていた。
◯◯はご機嫌そうに鼻唄交じりに足を動かしている。
「むっふふ~、これで私もデビュー完了っ! お姉ちゃんと同じステージにやっと立てるんだねぇ♪」
「……あのね、レースの世界はデビューしてからが大変なのよ?これからは生半可な練習じゃ……」
「大丈夫だって! お姉ちゃんのレースは何回も見てきたし、イメージトレーニングはバッチリだから!」
「いや、イメージトレーニングとかそういう問題じゃなくて……」
なぜか走りと関係ないシャドーボクシングをしながら笑う◯◯と、やはり呆れた様子のアヤベさん。
とはいえ、一応◯◯の方もアヤベさんに匹敵するほどの才能はあるのだから、後はもうちょっとノリで走る癖を直せば一流レベルになれるかというのが僕の見解ではある。
周りの者たちもそれは感じ取っていたのか、今月号の月間トゥインクルにて彼女のことは大きく取り上げられており、彼女のページには『まだまだ走りは発展途上と言えるが』と前置きされた上で、先のアヤベさんの写真と並べてこんなフレーズが添えられていた。
(『今年デビューの期待の
相変わらず記者の奴らは無責任に騒ぎ立ててくれる。
彼女らが大成できるかどうかは僕の双肩にかかっていると言っても過言じゃないのに。余計なプレッシャーをかけないでほしい。
「……トレーナー?」
また胃が痛むことになるかと僕が憂鬱になっていると、アヤベさんが不審そうな顔でコチラを振り返っていた。
「あれ、トレーナーさん何かあったの?」
「えっ。ああいや、なんでもないよ」
いけない。
担当バを正しく導けないのはダメだが、担当バに無駄な不安を与えてしまうのもダメなことだ。
頬を軽く叩いてから、小走りで空いた分の歩幅を一気に詰める。そのままさっきまでと変わらない様子で歩こうとしたのだが───
「……別に、心配しなくてもいいわよ」
「えっ?」
アヤベさんの方を見てみると、彼女はいつも通りのクールな表情だった。
「誰がなんと言おうと、私は勝ち続ける。担当バが問題なく勝利していれば、あなたに特に文句は無いと思うわよ」
「アヤベさん……」
……もしかしたら彼女なりに何かしら察してくれたのかもしれない。根拠の無い発言はアヤベさんには珍しいけど、それでもそう言ってもらえると多少は心が楽になる。
「……ありがとうね、アヤベさん」
「ん」
お礼を告げると、アヤベさんは話は終わりと言わんばかりにまた前を向く。
こういう所は本当にクールビューティーだなぁ、みたいなことを思っていると、なぜか反対側にいる◯◯が面白くなさそうに頬を膨らませているのが見えた。
「ど、どうしたの◯◯?」
「ねぇトレーナーさんっ! 私だって、お姉ちゃんよりももっともっと勝って───」
更に◯◯の台詞が続きかける。
だが、それらを言い終わる前に別の声が僕らの間に割り込んできた。
「ふふん、 待っていたよ!『期待の二つ星』!!」
よく通る、特徴的な声だった。声が聞こえた方へと目を向けてみると、やはりというかそこに立っていたのは見知った人物。
艶のある栗毛に王冠みたいなアクセサリー……うむ考えるまでもなく───
「テイエムオペラオー……!」
呟いたのは◯◯だった。そう、確かに僕たちの前に立っているウマ娘は(自称)世紀末覇王にて、アヤベさんの(一方的な)ライバルであるテイエムオペラオーで相違ない……の、だが。
なぜか僕たちの間で彼女に一番反応していたのは◯◯だった。
「ふふ……!」
そしてオペラオーもまた◯◯を正面から見据えている。
彼女らの間で無言の睨み合いが数秒ほど続いた後。突然───いや、おそらく彼女らの間では何かしらのやり取りがあったのだろう───オペラオーはピシィッ!と効果音が出そうなほどに鋭く指を突き出した。
「では最初のお題は……『荒野の大地に揺れるタンポポ』だっ!」
「はいぃーー!!」
オペラオーの口から謎のオーダーが出た直後、隣にいた◯◯が即興で考えたらしき謎のポーズを取る。
……文章ではなんとも形容できない独特のポースだったが……あえて言うなら、それは荒野の大地に揺れるタンポポのように見えなくもなかった。
オペラオーも同じように思ったらしく、なにやらダメージを受けたようにのけぞる様子を見せる。
「くっ……中々やるじゃないか……!」
「なら次は私の番だね! じゃあ……『海流に揺られる緑ワカメ』!!」
「はいぃーー!!」
今度は◯◯の口から謎のオーダーが来たかと思うと、オペラオーがまた謎のポーズを取る。
それもまた珍妙なポーズだったが……一応は海流に揺られる緑ワカメに見えなくもない。
「さ、さすがオペラオーちゃん……!」
「ふふっ、僕のターンだ……! 次のお題は、『苺部分を最初に食べられてしまったショートケーキ』!!」
「はあぁーー!!」
苺部分を最初に食べられてしまったショートケーキのポーズを取る◯◯。
「次は『片付け忘れて体育館に一つ残されたバスケットボール』!!」
「はあぁーー!!」
片付け忘れて体育館に一つ残されたバスケットボールのポーズを取るオペラオー。
こんな感じで、お互いがお題を出してそれに沿ったポーズを交互に取っていく謎の勝負(?)が二人の間で行われ始めていた。
そのやり取りが四巡ぐらい続いて、そろそろ他人のフリをしたいなと思いかけた辺りで、ようやく二人は同時に膝をついた。
「くっ……ボクが知らぬ間に腕を上げたね◯◯さん……!」
「オペラオーちゃんこそ……」
「ふむ……ならちょうどキリも良いし、この勝負はドローということにしようか」
「あら、オペラオーちゃんにしてはえらく素直ね……」
「なに、決着はレースまでお預けということにしようと思ってね……。◯◯さんも無事にデビューして僕たちの仲間入りを果たしたということだし!」
「なるほど……!」
不適に笑う両者。そこには純粋にお互いの力で鎬を削りたいという、強敵と書いて友と呼ぶような雰囲気があった。
そして、二人がゆっくりと拳を合わせようとした時───
「なにやってんのアンタたち」
ようやくというか、アヤベさんのチョップがオペラオーの頭に突き刺さった。
「痛あぁっ!? な、何をするんだいアヤベさん!!せっかくラストシーンの最中だったというのに!!」
「……うるさい。人の妹に変な遊びを仕込まないで」
「いいっ、痛いよアヤベさんっ! 頭が割れるからっ!」
追加で差し込まれるアヤベさんのチョップ。一応アヤベさんのことだから本気の怒りではないだろうけど……あまり力加減がされていないように見えるのは気のせいだろうか。
「ちょっ、お姉ちゃんやめてあげて!」
「あっ、お、オペラオーさんにアヤベさん! こんな所にいたんですねっ!」
アヤベさんを制止する声と、呼びかける声がかかったのは同時だった。
制止する声は妹さんだとして、呼びかける声の方に視線を向けてみると、そこには同じく見知ったウマ娘がいた。
「……ドトウ、どうしたの?」
「ドトウちゃん! こんにちは~!」
「あ、◯◯さんも……こんにちは」
メイショウドトウが僕らの方へ駆け寄ってきていた。栗みたいな口と渦巻き模様の目が今日も特徴的である。
「えっと……私とオペラオーさんはさっきまで向こうで昼食を食べてたんですけど、オペラオーさんが急に入り口の方へ向かって行ったので、何があったのかなって……」
「……なるほど」
合点がいったようにオペラオーを見下ろすアヤベさん。誤解(?)が解けたからか、オペラオーは頭をおさえながらシャキッと背筋を伸ばす。
「そ、そういうことさ! これはアヤベさんの妹さんの輝かしいデビューを祝してのボクなりの───いったぁ!?」
アヤベさんから二発目のチョップが繰り出された。
「だからって、ウチの妹をあなたの劇場に勝手に巻き込まないで。◯◯も、こんなふざけた王様に一々付き合わなくていいから」
「えー? でもオペラオーちゃんと騒ぐのは楽しいよ?」
「楽しく思い始めたら不味いのよ……」
深刻そうな顔をするアヤベさんと反対に楽観そうに告げる◯◯。
少々アヤベさんの対応が過剰すぎる気もするが、自分の可愛い妹がオペラオーみたいなウマ娘にどんどん染められているとなったらこんな反応にもなるのかもしれない。
すると、チョップのダメージから復活したらしいオペラオーがまた声を高々に上げる。
「まぁまぁ細かいことはこれぐらいにして! 今宵の昼休みは『期待の二つ星』の片割れがボクたちと同じ舞台に来てくれた歓迎会としようじゃないか!!さぁコチラヘ来たまえ!!」
「えっホント!? やったー! じゃ、じゃあ私アレ着けてていい!? あの『本日の主役』って書かれたタスキみたいなヤツ!!」
「えっ、えっとぉ~それはあるかわかりませんけどぉ……」
口々に様々なことを言いながら、三人はさっさと歩き去ってしまう。あれだけ騒がしかった食堂と入り口は一瞬で静かになってしまった。
「……とりあえず、『今宵』と『昼休み』とで早くも文章が矛盾してるんだけど」
何度目かの頭痛が来たらしくアヤベさんはため息をついて、観客と化し始めていた僕と顔を見合わせる。
───かと思いきや、
「ちょっと二人共ー! 早く来てよー!」
さっき席の方へ向かっていたはずの◯◯がまたコチラヘ戻ってきていた。……あの一瞬でどこかから調達したらしい、体には『本日の主役』と描かれたタスキがかけられていた。
「あ、ああごめん、今いくよ」
観客になりかけていたせいで足が止まっていた僕は、すぐさま動かして◯◯の方へ駆けていく。アヤベさんも後ろから僕を追いかけてきていた。
だが、
「……あ、ちょっと待って」
◯◯は今度はそんな声をかけ、僕らの方へまた小走りでやってくる。
そして僕───の隣をすり抜けて、アヤベさんの隣へ行くと、少し背伸びをして彼女のウマ耳になにやら語りかけていた。
『私、レースでは無事にお姉ちゃんと同じ舞台に立てることになったけど……恋においては同じ舞台に立つつもりはないからね?』
『っ!?』
距離が少し空いていたというのもあり僕の耳に彼女らの声は届かなかったが……何を話していたのだろう?
とりあえず小悪魔チックな笑みを浮かべる◯◯と、表情を固くするアヤベさんの姿が印象的だった。
「あの……何を話してるの?」
「ううん何でもないよトレーナーさん! じゃあ行こっか!」
僕が聞いてみると、またにぱっと笑ってコチラのもとにくる。バッタみたいにあちこち動き回るな、とか思ったのも束の間、僕の隣に来た時◯◯はギュッと腕を組んできた。
「ひぇっ!?」
あまりに急すぎる出来事にやっすい萌えキャラみたいな声が出てしまった。
だが◯◯がそれを気にした様子はなく、そのままグイグイと僕を引っ張っていく。
「ほらほらトレーナーさん早く行こっ!」
「ちょっちょっちょ……◯◯さん、ちょっと、当たってるから……!」
ヤバい。DTには刺激が強すぎる。さすがにこれは距離が近すぎるだろう。
そのあたりもたしなめてもらおうと僕はアヤベさんの方へ顔を向けたのだが───
「……早く行くわよ」
「えっ」
なぜかアヤベさんも反対側についてきていた。さすがに妹さんのように腕を組んできてはいないが、ほぼゼロ距離で僕の隣に並んでいる。
(な、なんでアヤベさんまで……!?)
いつものアヤベさんならば冷静に妹さんのことをいなしてくれるのに。なぜ今回に限って対抗するかのような行動をしているのだ。
さっぱりわからない。
結局、二人のアヤベさんにサンドイッチされる形で、僕はオペラオーたちが待つ席へと運ばれていった。心臓のバクバクがヤバかった。
……この後、妹さんがさらに勝利を重ねていったり、オペラオーと対決したり、夏合宿に皆で天体観測をしたり、ついにアヤベさんと妹さんの対決が実現したりするのだが……
それはまた別のお話である。
妄想キャラ設定
・妹
アヤベさんと瓜二つの容姿をしており、見分ける術は喋り方と耳メンコの位置ぐらい(姉妹で逆)。
絶対シスコン(鋼の意志)。あと天真爛漫の積極的(鋼の意志)。本編での個人的イメージはテイオーとマヤノとカレンチャンをぶっ込んで3で割った感じ。
勝負服はアヤベさんと色違いのほぼ同じモノか、アヤベさんのから若干露出を増やしたモノかの二択。
オペラオーとはウマが合い良好な関係で、ドトウのことは先輩ぶれる相手として可愛がっており、トップロードのことは委員長として素直に尊敬している。
でも一番尊敬しているのはアヤベさん。
冬のある日、自分の部屋が寒いからと布団乾燥機でホカホカになったアヤベさんの布団に潜り込んで、アヤベさんは『狭いし子供じゃないんだから』と追い出そうとするんだけど実は満更でもなくて、結局翌朝に二人仲良く眠っている様を両親に目撃されたという子供時代がありそう(高速詠唱)。
いつか姉と同じGIの舞台で走ることが夢。
お姉ちゃん大好き。だけどトレーナーさんは譲らない。
・アヤベさん
妹さんが生存しているため、強迫観念込みだったストイックさは鳴りを潜めている。
絶対シスコン(鋼の意志)。お転婆な妹に手を焼いているが、手のかかる妹ほど可愛い。妹にとっての目標であり続けるために日々努力している。
妹に妙なことばかり教えるので、オペラオーへの苦手意識は正史よりも若干大きい。
正史以上に面倒見の良さに定評がある。なので覇王ズクインテット(+妹さん)で何かしようとするともれなく彼女が過労死する。
基本的に『妹さんの保護者』として知り合いからは認識されており本人たちもそれを自負しているが、ふわふわに目が眩んだ時のみ妹さんが保護者側に回る。
大好きよ私の妹。だけどトレーナーは譲らない。
・トレーナー
両手にアヤベさんの姉妹丼状態。もげろ。
でも今は姉妹に両端から引っ張られてる状態なので多分その内もげる。
https://syosetu.org/novel/313974/
この度どこまで需要があるかはわかりませんがスピンオフすることになりました。よければこちらもよろしくお願いします。