アヤベさんとの日常の一コマ 短編集   作:トマリ

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お好み焼きを作る覇王世代(会話文SS)

 

お好み焼きを食べたい。

 

 

ある日にオペラオーが突然そう言い出した理由は、今でもわからない。

……まぁどうせオペラオーのことだから、『なんか食べたくなった』以上の理由はないだろうけど。

 

そうして、『覇王世代(非公式)』を束ねるリーダー格(非公認)の彼女がそう言い出すと、自ずと騒ぐのが好きな他のメンバーたちも「お好み焼きですかぁ~!」「いいですね!」となり、

 

「では今度、皆で作って食べてみましょう!」

 

という流れになるのは、半ば必然であった。

 

 

 

 

 

 

 

「───というわけでっ!ホットプレートを用意しました!」

 

「……なんで私まで。……しかも、今日土曜日なのに」

 

「まぁまぁいいじゃないですかアヤベさん! アヤベさんだって、皆でお好み焼きを食べたらきっと楽しいですよ!」

 

「はーっはっはっはっ! 材料もこれだけ買い込んで来たからね! このパーティーを極上のものへと引き上げる準備は万全さ!」

 

「……いや、どう考えても買いすぎでしょ。一般的な家族だったら三日ぐらい賄えそうな量なんだけど……」

 

「大丈夫ですってアヤベさん! もしかしたら失敗するかもしれませんから、むしろこれぐらいあった方がちょうど良いかもしれません!」

 

「……『足りなくなるかも』じゃなくて『失敗するかも』が念頭に置かれてるお好み焼きパーティーって嫌なんだけど……」

 

「心配はいらないよアヤベさん!なにせ君たちの背中にはこのボクが控えているのだからね!」

「わっ、私も精一杯頑張りますっ!」

 

「……主に貴方達がいるから心配なのだけれど」

 

 

 

 

 

【大まかなお好み焼きの作り方① まずはキャベツをみじん切りにする】

 

「ねっ、猫の手……猫の手……!」

 

「……トップロードさん、不安なら私が交代するけれど」

 

「い、いえっ! 大丈夫ですよアヤベさん! これでも私委員長ですのでっ! 皆さんが美味しく食べれるように、私が最高のキャベツを切ってみせますっ! だからアヤベさんは安心しててください!」

 

「包丁持ってる方の手でガッツポーズ作ってる時点でだいぶ不安なのだけれど……危ないからやめてそれ」

 

「さぁ! ここからテンポ良く一気に……痛っ!!」

 

「トップロードさん大丈夫!?」

 

 

 

 

 

【大まかな作り方② ボウルに水と山芋パウダーとお好み焼粉を混ぜて生地を作る。地味ながら、ちゃんと水 → 山芋 → お好み焼粉の順番で混ぜること。ここ大事】

 

 

「あっ!」

 

「? どうしたんだいドトウ」

 

「ご、ごめんなさい~……! ま、間違えてお好み焼粉から入れてしまいましたぁ~……」

 

「なんだそんなことか! 大丈夫だよドトウ! そんなの誤差さ誤差!」

 

「料理作ってるときに飛び出したらいけない言葉が出てきたんだけど」

 

「料理……たとえそれはどんなデキであっても、そこに人の手、そして想いが介在していれば全て至高の味となるのさ! どんな料理であろうとも、食べてしまえばそれは等しく覇王の血となり肉となるのだからね!」

 

「お、オペラオーさぁん……!」

 

「……なんか良い話風に言ってるけど、それ要するに『お腹に入れれば一緒』ってことよね? 料理作る人が一番言っちゃいけない類いの台詞だと思うのだけれど……」

 

 

 

 

 

【大まかな作り方③ ボウルにさっきのキャベツと、同じくさっき作った生地、天かす天華、青ねぎ(その他お好みで追加)、そして卵を入れる。混ぜすぎず、スプーンで空気を含ませるように混ぜること】

 

 

「あ、天かす天華と青ねぎ入れ終わりました~!」

 

「お疲れ様、ドトウ。さて、次は卵をいれるとこだけど……」

 

「っ! 私がっ! ここは私がやりたいです!」

 

「トップロードさん……? いいけれど……。急にどうしたの?」

 

「いえ……さっきのキャベツのみじん切りではアヤベさんに迷惑をかけてしまったので……。ここで汚名を……汚名……えっと、なんでしたっけ……あー、汚名洗浄をしたいのでっ!」

 

「……『汚名返上』ね。意味合いはなんとなく間違ってない気もするけれど、今料理作ってる途中だから洗浄するのはやめて」

 

「それにですねアヤベさん! 実は私……卵を片手で割ることができるんですよ」

 

「あっ、もうダメだわオチが見えた。やっぱりトップロードさん、卵は私が───」

 

「では行きますっ! ……あっ」

 

 

『…………』

 

 

「か、カラが大量に混入してますぅ~……」

 

「うわあああごめんなさい!! 今すぐ取り除きます!!」

 

「こういう場面では期待を裏切って良いのよトップロードさん……」

 

「全く仕方ない! ここはボクがお手本を見せてあげようじゃないか! 覇王の手さばきを見せてあげるよ!」

 

「やめてオペラオー。あなたももうやる前から結果が見えるから。ここは素直に私が───」

 

「はぁっ!」

 

「……なんであなたはできるのよ」

 

 

 

 

 

「空気を含ませるように混ぜる……どう混ぜるのだろう?」

 

「全然わかりません……」

 

「ふむ……わからないし、とりあえず普通に混ぜておこうか」

 

(さっきから『誤差』とか『とりあえず』とか料理を作る上での問題発言が多すぎるのだけど……)

 

「はっ!? 待てよ……そういうことだったのか!わかったよドトウ! 君が横から息を吹き掛けるんだ!」

 

「えぇ!? ど、どういうことですかぁ!?」

 

「ドトウが横から息を吹き掛け! ボクがその息を巻き込むようにしてかき混ぜるんだ! これが真実! この文字通り二人の息を合わせて行うデュエットこそがっ、お好み焼きを美味しく作るための秘訣だったんだよ!」

 

「そ、そうだったんですかオペラオーちゃん!?」

 

「全く……お好み焼きだけに、とんだ食わせ者だよこのレシピを作った者は……! さぁドトウ! さっそくやるよ!」

 

「は、はいぃ~! ふー! ふー!」

 

「はーっはっはっはっ! 良いよドトウ! これでこのお好み焼きは最高の仕上がりになる!! もっとやるよ!!」

 

「が、頑張りますぅ! ふぅー! ふぅー……げほっげほっ!」

 

(……胃薬、まだ人数分残ってたかしら)

 

 

 

 

 

【大まかな作り方④ 混ぜ終わったら、これをホットプレートの上に流し込み、スプーンを使って二センチぐらいの厚みになるよう広げる。温度調節と火傷に気を付けること】

 

 

「……じゃあ生地を流し込んで、そこから丸か四角になるように広げてくれればいいわ。厚みは私が見ておくから」

 

「わかったよアヤベさん! ボクに任せておきたまえ!」

 

「……ねぇ、あなた話聞いてた?」

 

「? 聞いていたけれど?」

 

「じゃあなんで生地を星形に広げようとしてるのよ!!」

 

「はーっはっはっはっ! これはボクたちが作るお好み焼きなんだ! 無難なものではつまらないじゃないか!」

 

「私は無難なものが欲しいのだけれど……」

 

「うわぁ~! お星さまみたいで綺麗です~!」

 

「ヒトデにも見えますね! ちょっと、写真撮っときましょうか!」

 

「ははっ! どうやら中々好評なようだよ! 観念するがいいさアヤベさん! そして民主主義を呪うがいい!」

 

「……もうどうでもいいわ。疲れてきたし」

 

「はーっはっはっはっ!」

 

(……一応、私も写真撮っときましょうか)

 

 

 

 

 

【作り方④補足 豚肉はなるべくひっくり返す直前に乗せること】

 

 

「……ちょっと。生地が星形になってるせいで豚肉が乗せづらいんだけど」

 

「はーっはっはっはっ! 早くしないと焦げてしまうよアヤベさん!」

 

「誰のせいでこんなことになってると……!」

 

「ふ、普通に星の一辺ずつに添う形で五枚置いていけばいいんじゃないでしょうかぁ~?」

 

「何かの儀式みたいな置き方になってませんか?それ……」

 

 

 

 

 

【大まかな作り方⑤ ひっくり返す。ここで失敗したら全部台無しになるので、慎重に】

 

 

「……焦げ目もついてきたし、そろそろひっくり返す頃合いね」

 

「よし! ならばここはボクがしっかり決めようじゃないか───」

 

「むしろあなたにだけは絶対に任せられないから。もう座ってて」

 

「……えぇ!? じゃ、じゃあ私ですかぁ~!?」

 

「ドトウも……申し訳ないけどちょっとあなたも……ひっくり返そうとしたお好み焼きを彼方まで飛ばして誰かの頭に着弾させる、ぐらいは平気でやりそうだし……」

 

「で、ですよねぇ~……」

 

「アヤベさん……私もちょっとパスしたいです……。今日の私はいつもにまして不器用で……キャベツと卵で前科二犯ですので……」

 

「……まぁ、それもそうね」

 

『……じゃあ……』

 

「……ここまで綺麗な消去法も久しぶりなんだけど」

 

 

(今更だけど、このチーム細かい作業に向かない人が多すぎないかしら……私も特別得意というわけではないのだけれど……プレッシャーもかかるし……)

 

 

 

 

 

「あ、そうだ! 良いことを思い付いたよ!」

 

「却下」

 

「さすがに早すぎないかいアヤベさん!? ちょっと聞いてくれても良いじゃないか!」

 

「……どうせロクなものじゃないもの」

 

「まぁまぁアヤベさんっ、オペラオーちゃんはいつもすごいアイデアを出してくれますから! 一旦聞いてみましょう?」

 

「さすがトップロードさんだよ!」

 

「はぁ……なんなの?」

 

 

「ボクたちは、皆あまり手先が器用というわけではない。誰に任せてもある程度の不安は残ってしまう……ならばだ!

 

ここは、ボクたち全員で同時にひっくり返すというのはどうだろう?」

 

 

「……はぁ?」

 

「ぜ、全員でぇ?」

 

「どういうことですかオペラオーちゃん?」

 

「『三人寄れば文殊の知恵』という言葉があるだろう? それと同じように、四人寄れば、つまりボクたち全員で協力すれば一人分の器用さに届くというわけさ!」

 

 

『…………』

 

 

「……いや、その理屈はおかしくないかしら───」

 

「さっ……さすがオペラオーちゃんです!!」

 

「え」

 

「確かにそれなら……不器用な私でも皆さんの力になれるかもしれません!!」

 

「お、オペラオーさんたちに比べればほ、ほんの少しでしょうけど……私の力も合わさって『一人前』に届くのでしたら……わ、私も頑張りたいでしゅっ! うう……噛んでしまいました……」

 

「ははっそうだろう! ……それに、これなら万が一失敗したとしても、それは『皆の失敗』であるわけだ。特定の誰かが責任を感じる必要は無くなるよ」

 

「…………!」

 

「なによりだ! この休日を使って苦楽を共にし作り上げてきたボクたちのカルテットの終わりに、これほど適任な方法はないだろう! ……さぁ! アヤベさんはどうする?」

 

「……はぁ。どのみち、これ以上迷ってたらお好み焼きが焦げちゃうし。もうそれでいいわよ」

 

「なら決まりだ! ではヘラをもう二枚持ってこよう! ボクたちが配置について、それぞれ四方向から同時にひっくり返すんだ!」

 

「が、頑張って力加減しないとぉ……!」

 

「あ! あの、これって『せーの』で一拍空けてひっくり返します? それとも『せー「の」』でひっくり返しますか?」

 

「せー『の』でいくよ!」

 

「わかりました! そこはハッキリさせとかないといけませんからね!」

 

「……早くしないと、そろそろ本当に焦げるわよ」

 

「じゃあ皆! 準備はいいね……?」

 

「……ん」

 

「はい!」

 

「だ、大丈夫ですっ!」

 

 

 

 

 

『せーのっ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はーっはっはっはっ! いやー美味しい! さすがはボクたちで作ったお好み焼きだ!!」

 

「ほんとですね! あの、生地がえっと……あの、なんといいますか、ソースと一緒になってて……えっと……やたら美味しいです!!」

 

「はふっ、はふっ……熱さもちょうど良い感じですぅ~……!」

 

「……ドトウ。ソースがついてる。じっとしてて」

 

「わぷっ」

 

「……むむ? アヤベさんのお好み焼き、他のより少し大きくないかい?」

 

「知らないわよ。誰かさんが星形にするから、均等に切れなかったんでしょ……はい、取れたわ」

 

「あ、ありがとうございますアヤベさん!」

 

「……別にいいわよ」

 

 

 

 

 

「うーむ本当に美味しい! 久しぶりに食べたけど、お好み焼きとはこんなにも美味な食べ物だったんだね! もっと焼こうじゃないか! 今度は一人一枚として、四枚同時に!」

 

「……止めはしないけど、失敗した分は自分で食べてよ」

 

「で、でしたらリベンジです! 今度こそ、卵を片手で割ってみせます!」

 

「わ、私は自信ないので……皆さんの手伝いをしますぅ……」

 

 

 

 

食べたばかりだというのに落ち着きなくはしゃぐ覇王たち。

彼女らが新しいキャベツやお好み焼粉を取り出していく様を、私はお好み焼きを食べながら見つめていた。

 

またあの目を離せない、心を落ち着かせる余裕がない料理が始まるのかと思うと、辟易としそうになる。

 

「…………」

 

……だがその一方で。

私の足は、一向にここから離れる気にはならなかった。

取り分けられた、自分の分のお好み焼きを見つめる。

 

……そりゃあ、プロが作ったものには届かないけれど。

トップロードさんが野菜を切り、ドトウが空気を含ませ(?)、そしてオペラオーが卵を割って生地を広げたお好み焼き。

 

 

(……まぁ、別にいいか)

 

 

四人で焼き上げたそれは、綺麗なきつね色をしていた。

 

 

 

 

 

 






作者はあまりお好み焼きを作ったことがないので、色々間違ってるとこがあったらすいません……。

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