紅茶のおかわりはいかがですか?りめいくっ!   作:橘田 露草

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こんばとらー!
くーさんこと露草と申します。

そう言えば先日誕生日でしたぁ。
年齢は公開してない身なので何歳かは言えませんが、28歳双子座です♫
双子の妹か弟が欲しかった(謎報告)

紅茶第12話、投稿します。


御籤と夢の船

ある日の放課後。ある日のアジュガ寮。

御籤の自室の前には山のような荷物が届いていた。

 

「すまないね、ワンコくん。後その箱だけだから持って来てくれるかい?」

「はーい」

 

箱の中身は、小説に絵本にライトノベルに辞書のような分厚い本まで様々だ。

なんでも御籤の家の書斎を改修するとのことで、蔵書の一部を学園に寄贈することにしたらしい。

だが長年放置されていた本もあったのか、既に廊下は埃まみれだった。

後の掃除の大変さにため息をつきつつ、ダンボールを開く。

と、1番上の方にかなり古い本があるのを見つけた。

 

狛犬が本手に取り表紙を見る。

"空飛ぶ夢の船"というタイトルの本はいわゆる児童図書というやつだった。

 

「会長さん、この本やけに読み込まれていますけど」

「ん?どれだい?」

 

作業の手を止め御籤が近付いてくる。

狛犬の手の本に気付くと目を見開く。

 

「驚いたな。もう失くしたと思っていたんだが」

「会長さんの本ですか?」

「ああ、私がまだ幼稚園の時に亡き母からもらった本だよ」

「会長さんのお母さんですかー」

 

亡き母というワードにこれ以上話を突っ込んでいいのか悩む狛犬。

そんな狛犬の様子を察して御籤は微笑む。

 

「私の家族の話をしたことはあったかな?」

「いえ、初めて聞きます」

「なら少しだけ。私が家族だといえるのは父と祖父だけでね、後は名前だけ知ってる親戚が居るぐらいなんだ」

 

御籤の父親と祖父が、あるグループ会社の会長と社長だというのは学園でも有名だ。

そういうアンテナが低い狛犬でも知ってる。

 

「祖母は私が生まれてすぐに亡くなったから写真以外じゃ顔もよく知らないね。なんでも若い頃は私と似ていたらしいけど」

「美人さんだったんですね」

「それは間接的に私を美人だと言ってくれてるのかな?」

 

クスクスと笑いつつ御籤は言葉を続ける。

 

「母は体が弱い人でね。家にいるより病院にいる方がよく見るという人だったんだけど。ああでも優しい人だったね。うん、とても優しい人だった」

 

うなずきだけ返して黙って聞く狛犬。

御籤が話してくれる家族の話、しっかりした姿勢で聞こうと思っていた。

 

「カザやフゥとお見舞いに行くと、入院患者なのになぜか行くたびにケーキやお菓子を準備してくれていてね。後から聞いたら父や祖父に連絡して私たちが来る前に買ってきてもらってたみたいだけど」

 

母親のことを思い出す御籤は悲しむというより、昔を懐かしむように微笑む。

 

「でね、私だけの日もたまにあったんだ。その日に読んでくれたのがこの本なんだ」

 

優しく本の背表紙を撫でる御籤。

 

「主人公は、突然魔法の力で空飛ぶ船の船長になった少女でね。個性的な仲間たちと一緒に戦ったり、冒険したり、宝物を見つけたり、たまに敵になったり。そうして彼らは絆を深めていくという話」

 

御籤はチラッと狛犬の方に目を向けると、また上を向く。

 

「祖父や父からいずれ会社を継ぐようにかなり厳しく教育されていた身だからかな、そんな荒唐無稽な物語が楽しくてね。憧れって言ってもいいかもしれない」

 

話しながら椅子へと座る御籤。

思い出すように上を向く視線は変わらず。

 

「小学校4年生の夏だったかな。本の最後の章を読む予定だった日、母はこの世を去った。私の誕生日の3日前だった」

 

狛犬でも気づけるほど、明らかに御籤の様子が変わる。

それでも黙って話の続きを聞く。

 

「母の葬儀の後、本の続きを読んだんだけどね。"少女はある日目覚めると自分の部屋のベッドにいた。夢の船も仲間もどこにも居ないことに気付いた少女は家を飛び出した。そして夢の船を探すための旅に出るのだった"。だが私には家を飛び出す勇気も、夢の船を本気で信じる純粋さもない」

 

そう言って御籤は笑う。

さっきの母親の思い出話をする時の笑顔とは違い、何かを諦めたかのような笑顔。

 

「と、話が逸れたね。それが私と母の‥」

「いいじゃないですか。しましょうよ、冒険」

 

御籤の話を遮る狛犬。

そのまま言葉を続ける。

 

「会長さんが見たい景色、知りたいもの。色々探しに行きましょう。夢の船が無いなら代わりに僕があなたを連れて行きますよ」

 

一般家庭の狛犬には御籤の抱える悩みはわからない。

そもそも御籤がそれを望んでいるのかもわからない。

だが、わからないことがいっぱいでも今この瞬間御籤に笑顔になってもらうために。

そして、御籤が何かを諦めないために。

掴むように御籤に手を差し伸べる。

 

それを聞いた御籤は目を見開くと。

 

「ふっ、ふふふふふっ!」

 

なぜか笑った。

めちゃくちゃ笑った。

恥ずかしくなって手を引っ込める狛犬。

 

「すまないすまない、君を笑ったわけじゃないんだ。‥‥あった。これを見てくれるかい?」

 

御籤が棚から取り出したのは一冊の本。

否、本というよりそれは。

 

「‥‥日記帳ですか?」

「ああ、母が準備してくれていた最後の誕生日プレゼントだよ。最初のページを見てみてくれるかい?」

 

本を受け取り、最初のページを開く。

そこに書いてあったのは短い文章。

 

『あなたが将来、夢の船で冒険に出る時にはここに想い出を書き記してね。御籤に素敵な旅が訪れますように 御琴より』

 

いつの間にか近付いていた御籤が、狛犬の手を取る。

そしてしっかりと握った。

 

「さて、君は私にどんな旅を、どんな想い出を見せてくれるのかな」

 

にっこりと、そして優しく微笑むのだった。




〜御籤の独白〜
夢の船‥か。かのタイタニック号に比べたら豪華さには欠けるかもしれないが‥ん、悪く無いかな。
とりあえず‥母さんに報告しよう。
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