紅茶のおかわりはいかがですか?りめいくっ!   作:橘田 露草

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こんばとらー!くーさんこと露草です。
6月最終日ですねぇ。
いや、だからといって露草くんは何もないんですけどね笑
夏休みがないタイプのお仕事なので7月も相変わらず社畜サマーさせていただきます、ぴえん。

さて、紅茶はリメイク前と同じように前後編は合わせて10話目、20話目といった区切りに特別編を書かせていただきます。IFストーリーだったり、狛犬の視点じゃなかったり色んな物語を考えていますのでよかったら読んでください♫

紅茶第13話、投稿します。


あるかもしれない未来〜Kazari First Story〜

暖かい春のある日のこと。

お腹の上に圧迫感を感じて、狛犬は目を覚ます。

 

「あっ、パパ起きたぁ!」

 

圧迫感の正体は小さな女の子だった。

かつて寮で暮らしていた時の風羽ちゃんよりさらに小さい。

それもそのはず、今年ようやくランドセルを背負って学校に行く年頃になったばかりなのだから。

 

チラリと時計を見ると朝5時半を指していた。

昨日遅くまで仕事をしていた身には、もう少し睡眠が欲しい気分ではあるが。

 

「‥風里(ふうり)、重たいから降りなさい」

「パパ、女の子に重たいって言っちゃダメなんだよっ!」

「‥パンツも見えてるし、はしたないよ」

「フーリのパンツでコーフンしちゃうの、パパ?」

「‥‥」

 

この子にこんな言葉を教えたのが誰か脳内で高速に推理する。

大人気漫画家でありながら数多くの同人誌を発行している元先輩か、はたまた毎日5人から告白されているらしい大学生の義妹か。

狛犬の直の上司の彼女の可能性もある。

『ワンコくんへの仕返しだ』とか言ってる姿が想像できるし、されるだけの理由も思い付く。

 

「それよりパパっ!フーリに言うことないの!」

 

バンバンと毛布を叩き怒る風里。

そんな風里に苦笑しつつ、狛犬は起き上がる。

そして、そのまま彼女の綺麗な薄紫の髪を撫でる。

 

「誕生日おめでとう、風里」

 

今日は風里の6歳の誕生日。

もちろん、素敵な1日になるように色々計画している。

 

「パパ、ありがとーっ!」

「うわっ!?」

 

ぎゅーっと抱きつく風里にベッドに再度押し倒される狛犬。

結局彼女が落ち着くまで30分間ずっと抱きしめられるのだった。

 

 

ジューっと音を立てて目玉焼きが焼かれていく。

カリカリに焼いたベーコンとミニサラダの横に添えたところでドアが開く。

 

「ママ、はーやーくー!」

「‥‥勘弁して、まだ2時間しか寝てない」

 

手を引っ張られダイニングキッチンに入ってきたのは風里にそっくりな女性だった。

学生時代よりほんの僅か伸びた身長に、いつもはポニーテールにしているブルーバイオレットの髪は寝癖でぐしゃぐしゃ。

同じ色の瞳も眠気を訴えるように半泣き半開きだ。

 

「おはよ、風鈴(かざり)さん」

「‥‥コマ、あなたの差し金?」

「違うって。風里が"ママを起こしてくる"って走ってたから止められなかったの」

 

ジト目で睨んでくる彼女に慌てて弁解する。

元気な風里を捕まえるのは容易じゃないし、捕まえたところですぐ逃げられてしまう。

 

「‥‥風里聞いて。今の時間は6時、ママが寝たのは4時。ママ2時間しか寝てないの」

 

風里の両肩に手を添え、死んだような目で娘へと語る風鈴。

ただの一般社員の狛犬と違い、風鈴は次期社長となるための仕事が大量に与えられている。

狛犬も手伝ったのだが彼女じゃないとできない仕事も多く、お茶を淹れたり夜食を作ったりとサポートを終わるまでやっていた。

 

「でも、フーリは2時間お昼寝したら元気いっぱいだよ?」

 

真っ直ぐと母を見つめ返す風里。

ちなみに風里の言う通り、彼女を2時間も寝かせたらめちゃくちゃ元気で困るぐらいだ。

 

「‥‥コマ、この体力バカをどうにかして」

「あーっ!人にバカって言っちゃダメなんだよ!」

 

やいやいと母娘(おやこ)喧嘩をする2人を横目に狛犬は朝食を並べる。

 

「‥食事中は仲良くしなきゃダメですよー?」

 

小さな呟きはそのまま消えていくのだった。

 

 

朝食が終わりお茶を飲んでいると、不意に風里が手を上げる。

 

「ママ殿、フーリは今日誕生日ですよっ!」

「‥‥知ってる。だからさっきおめでとうって言った」

「ちーがーうーっ!プレゼント!フーリはプレゼントをえっと‥ゴショショウです!」

 

ご所望って言いたいのだろうか。

 

「‥‥じゃあアレでいい?うちの部下からもらった商品券」

「嫌に決まってるでしょ!?」

「風鈴ちゃん流石にプレゼントに商品券は‥」

 

シャーと威嚇のポーズをする風里。

狛犬も苦笑しながら指摘する。

そんな談笑しつつ朝ご飯を食べると7時前。

お誕生日様に今日の予定を聞くと。

 

「フーリ遊園地行きたいっ!」

「遊園地?僕はいいけど風鈴さんは?」

 

風里のお願いに、風鈴の方を向く。

満腹と寝不足でうとうとしていた風鈴が僅かに目を開ける。

 

「‥‥いいけどこの子が行ける遊園地なんてあるの?ちっこいし何にも乗れなくない?」

「むぅー!ママだってちっこいじゃん!」

「‥‥母親に向かってちっこいと言うのはこの口?」

「‥いただだだっ!?ふぁふぁ、ほっふぇふぉれふぅー!」

 

かつては狛犬も食らっていた抓るのをほっぺで受ける風里。

賑やかな母娘を見ながら、狛犬は電車の時間を調べる。

遊園地には目星が付いている。

 

「じゃあ、行こうか遊園地」

「ふぁーい!!」

「‥‥コマは相変わらずこの子に甘い」

 

時刻は7時を少し過ぎたところ。

雛森風里の6歳の誕生日はまだ始まったばかりだ。

 

 

電車に揺られバスに揺られて約2時間、目的の遊園地に到着した。

 

「わぁーい!パパ、いっぱい乗り物あるよーっ!」

「あっ!風里、勝手に行っちゃダメだよ!」

 

嬉しそうに飛び回る風里。

その笑顔を見れただけで連れてきた甲斐がある。

 

「‥‥ふぁぁ、眠い。」

 

移動中に少し寝れたからか、小さなあくび1つの風鈴。

走り回る風里に苦笑しつつ狛犬の隣に立つ。

 

「‥‥よくこんな遊園地知ってたね」

「昔、風羽ちゃんと来たことがあるんだよ」

 

アジュガ寮にいた頃、ここには風羽と2人で何度か来たことがある。

東京の有名な遊園地と比べたら小規模だが、代わりに子供が楽しめるようなアトラクションが多く当時の風羽もとても楽しそうにしていたのを覚えている。

そう言えば、次回はみんなで来ようと話をしつつも、結局毎回風羽と2人だったなぁと思い出す。

 

「‥‥妻の前で浮気自慢?」

「いたたた!?ち、違うって!寮にいた頃の話だよ」

「……次に女の子と2人で行ったら許さないから」

「は、はいっ!」

 

黒い目で睨みつけてくる風鈴に、慌てて敬礼する狛犬。

実は寮を出てからも3回ほど風羽と来ているのだが言わない方がいいだろう。

 

「いったかったぁ‥‥」

「‥‥自業自得」

 

つねられた腕を痛がる狛犬を冷めた目で見る風鈴。

と、不意に2人手が引っ張られる。

 

「もー!パパもママも2人で喋ってないでよ!今日はフーリの日だよ!」

「はいはい、ごめんね風里」

「ダメですー!罰としてパパはフーリとメリーゴーランド乗ること!」

「え!?流石にあの子供向けのメリーゴーランドは恥ずかしいんだけど……」

「‥‥カメラは任せて」

「風鈴さん!?」

「よろしくママ!」

 

風里に引きづられて行く狛犬を悪戯っ子の顔で見送る風鈴。

 

「‥‥楽しい思い出にしなきゃね」

 

そう小さく呟いてカメラを構えるのだった。

 

 

「くぅ……くぅ……」

「‥‥よく寝てる」

「遊び疲れちゃったかな」

 

仔犬に背負われた娘の頬を指で突くと、ぶぅーと嫌そうに息を吐く。

そんな風里に笑いながら2人は園内を流れる川沿いを歩く。

 

あれから遊び続け、時間はすでに夕方。

後1時間もすれば閉館の時間だ。

と、目の前にベンチを見つける。

 

「ちょっと座ろうか?」

「ん」

 

2人並んで座り、眠り続けている娘は背中から下ろして膝の上に寝かせる。

 

「眠かったのにありがとね、風鈴さん。おかげで風里めちゃくちゃ楽しそうだったよ」

 

膝の上の娘をなでながら風鈴に言う。

風里はくすぐったそうに微かに笑みを作る。

 

「‥‥最近あんまり構えてなかったから。それなた私も楽しかった」

 

仕事の忙しさに加え、次期社長の研修もある風鈴は毎日帰りが遅いし朝も早い。

風里が寝るまでに帰って来れる日は月に数回あるかどうかだ。

何気に今朝の朝食も久し振りに家族3人で食べた食事だったりする。

 

「風里ね、ママが毎日遅くまでお仕事してるからって色々家事を手伝ってくれるんだよ。朝も自分で起きて支度も全部自分でやるようになったし。ママが娘として自慢できるいい子になりたいんだって」

「‥‥そうなんだ」

 

ふにーっと愛娘のほっぺを軽く引っ張る風鈴。

母親譲りのぷにぷにほっぺをいじられ風里はわずかに顔をしかめる。

 

「‥‥あなたはいつでも私の自慢の娘だよ」

 

優しく微笑む風鈴。

そんな2人に狛犬はまたつい笑みがこぼれる。

 

「‥‥もっとも、旦那さんの方は私が留守の間に女を連れ込んでるみたいだけど」

「連れ込んでるって。風羽ちゃんはお手伝いに来てくれてるだけだよ」

 

風里の保育園と学校の迎えだったり、狛犬が帰るまでの世話は、風羽が家に来てやってくれるのだ。

大学生だから大変じゃないかと聞いたが、『にぃさまの力になりたいんです〜』と有り難い言葉をもらったので頼らせてもらっている。

 

「‥‥やっぱりもう少し早く帰れるようにする。フゥは危険」

「危険?大丈夫だよ、風里も風羽ちゃんに懐いてるし」

「‥‥鈍感」

 

呆れたようにため息をつく風鈴。

狛犬はキョトンとした顔をするが、風鈴に説明する気はないようだ。

しばらく黙って夕焼けを見つめると。

 

「あ、そうだ」

「‥‥?」

 

横に置いてあったカバンを手に取り、中から1個の箱を取り出す狛犬

そしてそれを風鈴に差し出す。

 

「誕生日おめでとう、風鈴さん」

「……30歳の誕生日がめでたいってケンカ売ってる?」

 

軽く睨みながら箱を受け取る風鈴。

春の今日は風里の誕生日でもあり、風鈴の誕生日でもあったのだ。

6年前に風里が生まれてからは、風鈴自ら風里メインの誕生日にするようになったが。

それでも毎年プレゼントの用意だけは欠かさない狛犬だった。

 

「……ネックレス」

「この前、可愛いの見つけたんだ。ちなみにこの子がね」

「……ありがとコマ。風里もありがと」

 

返事したわけではないだろうが風里の頬が緩む。

と、風鈴が不意に仔犬の顔を見た。

 

「……その」

「うん?」

 

真っ赤な顔の彼女を見て察する。

多分数年前の自分ではきっと気付けなかっただろうが今ならわかる。

 

「貸して」

「‥‥ん」

 

風鈴からネックレスを受け取り彼女の首元に手を回す。

カチッと小さな音を立てて金具止まると、狛犬は手を離して彼女を見る。

 

「似合ってるよ、風鈴さん」

 

彼女の髪と同じ色の石のネックレスが揺れる。

まるで風鈴のために作られたようにそれは輝いていた。

 

「‥‥んっ!」

「へ?かざんむっ!?」

 

突然、風鈴が動いたと思ったら目の前全部に風鈴の顔が見える。

キスをされていることに気付いたのはその瞬間だった。

 

「‥‥ぷはっ」

 

軽く触れるようなキスは、数秒で離れる。

真っ赤な顔をした風鈴の可愛さに、狛犬は思わず抱きしめたくなる。

 

「風鈴さん‥‥」

「‥‥ん、もっと‥ふぇ!?」

 

トロンとした目で再度キスをしようとした風鈴だが、何かを見て目を見開く。

狛犬も目を向けると。

 

「ふぁ‥‥」

 

いつのまに起きたのか、風里が膝枕されたなままジーッと2人を見ていた。

その顔は風鈴に負けず劣らず真っ赤で。

 

「ふ、風里!?いつから起きてたの!?」

「ママとパパがちゅーしてたときからだよ~」

 

驚いて狛犬が聞くといたずらっぽく笑う風里。

そのまま起き上がると狛犬に抱きつく。

 

「パパ!フーリにもプレゼントちょうだい!」

「‥‥だ、ダメ。これは私専用」

「えー!?ママばっかりずるい!フーリもパパとちゅーしたい!」

「‥‥そもそも私もまだ足りないし」

 

言い争う母子と、それを眺めながら苦笑する父親。

誕生日終了まで後5時間。

家に帰ってからまだまだ大変そうだなぁと思う狛犬だった。

 




○琴町 風里【Furi Kotomachi】
年齢:6歳
学年:小学1年生
身長:108cm
髪の色:紫ベースに光を浴びると茶色が透ける。
瞳の色:同じ
家族構成:曽祖父、曽祖母、祖父(母方)、祖母(父母両家)、母(風鈴)、父(狛犬)、母方の叔母(風羽)、父方の叔母
好きな食べ物:父親が作った料理全て
嫌いな食べ物:特になし
備考:琴町狛犬と琴町風鈴の一人娘
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