紅茶のおかわりはいかがですか?りめいくっ!   作:橘田 露草

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こんばとらー!くーさんこと露草と申します。

Twitterにも書きましたが無言の空間っていいですよねぇ。僕が割と喋るのが苦手で聞くのが大好きっていう会話力低めな人なので、落ち着く人とただただぼぉーっと過ごす時間が好きなんです。まあ一緒に過ごしてくれる人は募集中なわけですが笑

紅茶第15話、投稿します。


風鈴と過ごすゴールデンウィーク

ある日のお休み。ある日の商店街。

GWの初日の今日、狛犬は風鈴に連れられて外出していた。

ちなみに目的地は聞いてない。

朝ご飯の後、部屋を訪ねてきた風鈴から『‥‥30分後、玄関』と言われ急いで支度して出掛けたのだ。

 

「‥‥」

「‥‥」

 

寮から歩いてしばらく経つが2人に会話は無い。

風鈴はほぼ喋らない無口だし、狛犬も軽快なトークができるほどの会話力は無い。

それでも何とか会話をしようと話題を考える。

 

「きょ、今日はいい天気ですねー」

「(コクッ)」

 

風鈴の頷き1つで会話は途切れる。

狛犬の話題チョイスもあんまりだったが、風鈴にも会話を続けさせる気が無いように見えて狛犬は困ってしまう。

 

「‥‥ワンコ」

「はい?なんですか、副会長さん」

 

と、風鈴が口を開く。

何か話そうとしてくれるのかと期待する狛犬だが。

 

「‥‥別に話さなくていい」

 

言われたのは会話拒否の言葉。

そう言われたら何にも言い返せず、狛犬も無言になってしまう。

そのまま歩き続けること数分。

風鈴は商店街のある店で立ち止まった。

 

「‥‥ここ」

「ここ‥ですか?」

 

目的地だというのは古い服屋だった。

周りの店よりは広いがそれでも風鈴が来るにはやや寂れたような場所だ。

 

「服を買いに来たんですか?」

「‥‥」

 

その問いには返さずドアを開けて中に入っていく風鈴。

慌てて狛犬も追いかける。

 

「いらっしゃーせぇ」

 

やる気が無い声と共に、店の奥から出てきたのは咥えタバコの女性だった。

20代前半ぐらいだろうか、眠そうな半開きの目の若い女性は、風鈴の姿を見ると僅かに目を開く。

 

「ありゃ、琴町さんとこのお姉ちゃんじゃん。どしたんお使い?」

「‥‥久しぶり、マイ。あと私はもうお使いする年齢じゃない」

「いやしなさいよ。アンタまだ16でしょ」

 

と、マイと呼ばれた女性が狛犬に気付く。

目線が狛犬と風鈴を行ったり来たりすると、ニヤリと笑う。

 

「デート?」

「‥‥ち、違う」

 

ニヤニヤ笑う女性と僅かに顔を赤くする風鈴。

なんだか居た堪れなくなる狛犬だが、風鈴がこっちをじっと見ているのに気付き、こっちに来なさいという視線だと察する。

 

「雛森狛犬といいます。中等部1年生で、琴町先輩の後輩です」

「あんらぁ、ご丁寧に。ドッグデイズの店長してます桔梗屋舞(ききょうや まい)っていいますぅ」

 

ドッグデイズとは何のことかと思うが店内を見てここの店名だと気付く。

 

そして、ダラダラと自己紹介する女性----舞に思わず苦笑が漏れる。

容姿は全く違うが何となく御籤と重なる部分がある気がしてくる。

そして恐らく風鈴の彼女への対応も何となく想像がつく。

 

「しっかし、あの琴町のお嬢ちゃんが彼氏を連れてくるなんてなぁ」

「‥‥彼氏じゃない、しつこい。あとタバコ臭い」

「相変わらず辛辣だねぇ」

 

予想通りの塩対応で話す風鈴だが、不意に狛犬の方に歩いてくる。

 

「‥‥ワンコ」

「えっと、服を見るなら待ってますよ?」

「んっ!」

「イタタタッ!」

 

気を遣って言ったつもりだったが、風鈴につねられる。

不正解の理由と他の可能性を考えると。

 

「もしかして、僕の服ですか?」

「‥‥ん」

 

どうやら正解だったらしいが、急に服を買わされる理由はさっぱりわからない。

すると、タバコを灰皿に捨てた舞がニヤニヤと口を開く。

 

「アンタくんの服が2、3種類ぐらいしかないからプレゼントしたいんだってさ。昨日突然連絡が来てびっくりしたよ」

 

そう言う舞。

最初から来るの知ってたんじゃないかとツッコミたいのはさておき。

 

「プレゼントなんて申し訳ないですよ」

 

確かに狛犬が実家から持ってきたのはほんの数種類だ。

元々服にそこまで興味が無いし、狭い男子寮のつもりだったから荷物が嵩張るのを避けたのもある。

だが、何の理由もないのにいきなりプレゼントされるのは気が引けた。

 

「‥‥んーっ!」

 

だがそう言う狛犬に不満そうな顔を向ける風鈴。

困ったように舞の方を見るが、今度は何も教えてくれずニヤニヤと笑うだけ。

仕方なく狛犬は根負けする。

 

「わかりました、プレゼントいただきます。でも値段はしっかり見ますからね」

 

チラリと周りの服を見ると、商店街の店なのにそれなりにいいお値段がする。

超有名会社の社長の娘である風鈴が利用してる店だから当たり前と言えば当たり前だが、あんまり高いのを貰うのは流石に困る。

 

「‥‥ん(コクッ)」

 

やや不満そうに、それでも頷いてくれる風鈴。

そんな2人を見て、座ってニヤニヤ見ていた舞が立ち上がる。

 

「さって、話がまとまったところで商売といきますかいっ!アタシのオススメはコレなんだけど‥」

「0が2つぐらい多いですっ!」

 

手渡された超高級な服は即突き返すのだった。

 

 

「どうだい?中々のもんだろ?」

「おぉ‥」

 

試着を始めて数分。

さっきの服とは違い、真面目に狛犬に似合う服を着せる舞。

慣れない帽子やアクセサリーに若干違和感を持ちつつ鏡で自分の姿を見る。

 

「アンタくんは平均より小柄な方でしょ?だから男でも可愛い感じが似合うのよ」

 

満足そうな舞の横では、ボーっと狛犬を見ている風鈴。

反応してくれないのが気になり話しかけようとするが。

 

「はい、次はこれ着てみてー」

 

舞に服を手渡され、カーテンを閉められる。

着替えながら、外から僅かに声が聞こえるのに気付く。

 

「‥ふぅん、やけに今日は静かだと思ったらねぇ」

「‥‥別にいつも通り」

「はいはい。ウチの服着ている時以外で初めてアンタが可愛いって思ったわよ」

 

会話の内容はよく分からないが、風鈴からも急かされたため急いで着替えるのだった。

 

そして、約1時間後。

大きい紙袋を持って店を後にする2人。

狛犬1人ではとても持てず、風鈴も前に抱えるように紙袋を持っている。

 

「ホントによかったんですかこんなに」

「‥‥マイがいっぱい割引してくれたから」

 

確かに会計の時に舞が『いいもの見せてもらったから特別サービスしとくわよ』と言ってくれた。

それでも全部合わせたらそれなりの金額に行くのは確実なわけで。

 

「でも‥」

「‥‥ワンコ、しつこい」

「うっ。は、はい」

 

ジト目で睨まれこれ以上の言葉はやめる狛犬。

ふと、この前見たテレビの情報を思い出す。

 

「そう言えば、この近くに美味しいケーキの喫茶店があるみたいですよ」

「‥‥ケーキ」

 

耳をピクピクとさせる風鈴。

 

「はい。寄り道していきませんか?」

「んっ」

 

返ってきたのは恐らく肯定の頷き。

何とかお礼できそうだと、地図アプリを頼りに喫茶店まで歩く。

道中また無言にならないように会話を考える狛犬だが。

 

「‥‥ワンコ」

「はい?」

 

風鈴に名前を呼ばれ、そっちを向く。

風鈴はなぜか反対側、狛犬からは顔が見えない方を向いている。

 

「‥‥別に話さなくていい」

 

さっきと同じく会話拒否の言葉。

やっぱり自分と話したく無いのかと思う狛犬だが、今度はまだ続きがあった。

 

「‥‥別に話さなくてもこうやって歩いてるだけで楽しいから」

「副会長さん‥」

 

相変わらず風鈴の顔は見えない。

どんな表情をしているのかも狛犬にはわからない。

 

「‥‥」

「‥‥」

 

2人の中に会話はない。

それでも何となく。

何となく、楽しいなって気持ちになるのだった。




〜帰宅後の会話〜
狛犬:ケーキ美味しかったですねー。寮へのお土産もみんな喜んでくれましたし。
風鈴:んっ。
狛犬:そう言えば副会長さん。僕が着替えていた時カメラのシャッターみたいな音が聞こえた気がするんですけどわかります?
風鈴:‥‥。
狛犬:副会長さん?副会長さんってば!
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