普段はガルパンやら響け!ユーフォニアムなどの二次小説を書いています。感想、評価など、気軽にしてくれると嬉しいです!
4月も初め。まだ桜も散り切っていない春。日中は暖かく過ごし易いが、夜ともなるとまだまだ肌寒い。
日も沈み、街灯や家の灯りが目立つようになって来た中、とある家のとある玄関先で、二人の男女が対面していた。
「スクールアイドル?」
「うん!!ゆうくんにも手伝って欲しいの!!」
一人は、オレンジの髪をサイドに纏めた、元気だけが取り柄の様な女の子。
「凄いんだよ!大阪とか福岡にもあってね!?有名になるとテレビとか雑誌とかにも出て________」
玄関先で目を輝かせながら、件のスクールアイドルなるものを熱弁しているこの少女を、高坂穂乃果と言った。
穂乃果は興奮気味にスクールアイドルについて、目の前の少年に語っている。
「はぁ、……でも俺、アイドルとかあんま知らねーよ?」
そしてその穂乃果の目の前にいる少年は、彼女の熱の入った語りに困惑し切った顔を浮かべている。
「でもゆうくん、新体操やってるでしょ?じゃあダンスとか得意じゃん?」
穂乃果に"ゆうくん"と呼ばれるこの少年の名は、東雲 悠一(しののめ ゆういち)と言う。
穂乃果と同じ高校2年生。175センチと少し高めの身長に、スラっとしたスタイル。髪はスポーツマンらしく、短めに切り揃えられている、好青年と言った出立ちの男だ。
「新体操とダンスじゃあんま違くないか?」
「えー?違うのー?」
悠一がそう言うと、穂乃果は少し驚いた様な顔を浮かべる。
「でも、身体の動かし方とかはゆうくんが良く知ってるでしょ?」
「そりゃまあ、そっち方面でアドバイスは出来るかもだけど……」
穂乃果の問いかけに悠一がそう返す。
「じゃあお願い!!目の前の幼馴染を助けると思って!!」
すると、目の前で勢い良く手を合わせ、頭を下げて穂乃果がそう言って来た。
「助けるって……」
いきなり変なお願いをしてくるものだと、悠一は困惑の表情を返す。
そもそも何故スクールアイドルを始めるのか?何でこんなにも必死なのか?そもそもスクールアイドルって何だ?悠一には聞きたい事が山ほどあった。
「………まあ、話ぐらいは聞くよ。上がって行きな?寒いでしょ?」
悠一がそう言うと、穂乃果は満面の笑みを浮かべて、彼に飛びつく。
「ありがとー!!」
「暑苦しい!」
縋る様に抱きついてくる穂乃果に対し、鬱陶しそうに彼女を引っ剥がす悠一であった。
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幼馴染
それが穂乃果と悠一の関係だ。
そもそも互いの家が玄関先から玄関先まで徒歩20秒足らずとかなり近い。そんなスーパーご近所において、同い年の子供が居ると言う事もあり、必然的に親同士が仲良くなって行った。
その過程で穂乃果と悠一も仲良くなって行ったという、なんともありふれた話だ。
「……で、廃校を阻止する為にその、スクールアイドル?とやらをやろうと?」
「うん、それで有名になったら、来年来る子も増えるんじゃないかって……」
そして今は、悠一の部屋に場所を移し、穂乃果から詳細を伺っていた。悠一は椅子に、穂乃果はベッドに座っている。
彼女の話を要約するとこうだ。
どうやら穂乃果の通っている国立音ノ木坂学院が、ここ数年の新入生減少により廃校になってしまうらしい。歴史のあるこの高校は、穂乃果の母親、さらには祖母までもが通っていたと言う、歴史のある女子校だ。穂乃果としても、一族代々通って来たこの高校が無くなるのは、もちろん良い気はしない。
そこで彼女が目に付けたのが、スクールアイドル。
前にスクールという名が付く様に、これが普通のアイドルと違う点は、学校を名乗ってのアイドル活動が可能と言うものだった。
つまり、アイドル活動を部活動のノリでやろうと言うのが、このスクールアイドルである。
学校を名乗れると言う事は、もし自分がスクールアイドルとして有名になれば、必然的に学校の知名度も上がる。
そうするとその活動に興味を持った中学生達が、新入生として音ノ木坂に沢山入学してくる。穂乃果はそんなビジョンを浮かべているらしい。
そして幼馴染である彼に、こうして相談を持ちかけたと言う訳だ。
「甘すぎ」
「バッサリ斬られた!!」
一通り話を聞き終えた悠一が一言そう言うと、オーバーリアクションで穂乃果の反応が返ってきた。
「一生徒がどうこう出来る問題じゃ無いだろうが」
「うっ……そりゃあ、そうだけど………」
尚もバッサリとそう言い切る悠一に対し、今度はいじける様な反応を見せる穂乃果。
それに対して、悠一は腕を組んで少し考える仕草をする。そしてしばらくすると顔を穂乃果に向け、真剣な表情で口を開いた。
「……穂乃果は、音ノ木坂を廃校にしたく無いからって理由だけで、そのスクールアイドルをやんの?」
悠一は真剣に穂乃果を見つめる。それに対して穂乃果はなんだか悩む様な表情に変わった。
そして穂乃果は言葉を続ける。
「……それも大きいけど、私自身、スクールアイドルに興味があるんだよね」
「へぇ!」
穂乃果がそう返すと、悠一は表情を一転、面白がる様な笑みを浮かべた。
「この前、UTX学園ってところでスクールアイドルのライブ見たんだけどね?えっと、その……なんか凄かったの!!」
「なんかって何だよ?」
何とも抽象的な表現をする穂乃果に対し、困った表情を浮かべる悠一。
「とにかく凄かったの!!なんて言葉で言ったらいいのかなぁ?こう、キラキラしてるーって言うか……とにかく凄いの!!」
言葉には出来ていないが、そう言う穂乃果の目は、確かに光り輝いていた。それを見て、悠一は確かめる様に再び口を開く
「……そっか。じゃあ、穂乃果自身がやりたくて、スクールアイドルをやるんだな?」
「うん!!私、スクールアイドルやりたい!!」
返事は、即答だった。
それに悠一は困った様な笑顔を浮かべる。こう言う時の穂乃果は、言い出したら聞かない。それは彼自身も分かっていた。
東雲悠一にとって、高坂穂乃果は唯一無二の幼馴染だ。その彼女が何かに全力で取り組もうとしている。なら幼馴染として、最大限の協力はしたい。
「分かった。そう言う事なら、何か俺も協力するよ」
そんな気持ちから、その言葉はするりと悠一の口から出てきた。それを聞いて、穂乃果は満面の笑みを浮かべる。
「ホント!?やったー!!ありがとーー!!ゆうくんーーー!!!」
「鬱陶しい!!」
再び抱きついてくる穂乃果に対し、すぐさま引っ剥がす悠一。しかし、そう決めたならば、今後をどうするかを穂乃果から聞かねば。
「因みに、アイドル活動は穂乃果一人でやるの?」
「いや?、ことりちゃんと海未ちゃんも一緒だよ?」
穂乃果から出た二人の名前を聞いて、納得の表情を浮かべる悠一。
「お、やっぱあの二人もやるんだ」
「うん。………海未ちゃんはちょっと乗り気じゃないみたいだけど……」
「あー、あいつの性格的にそうかもな」
そう言って、互いに苦笑いを浮かべる。どうやら片方は確定でやる訳ではない様だ。
「まあ、穂乃果がやるって言ったら海未もやるだろ」
「そうかなー?」
「ああ。お前、人当たりだけは良いもんな」
「それって褒めてるの?」
何やら棘のある言い方をする悠一に対し、ジト目を向ける穂乃果。
冗談めかしているが悠一の言う通り、穂乃果は人当たりが良い。それが強みでもあった。そんな彼女がアイドルになる。
しかし悠一の頭の中では、まだ幼馴染がアイドルになるという想像が出来ていなかった。
「でも、穂乃果がアイドルかぁ……」
「えー?何ー?もうサイン欲しいのー?」
協力すると言われて調子に乗っているのか、穂乃果は揶揄う様に悠一そう聞く。
「いや、全く想像出来なくて」
「失礼じゃない!?」
この時の悠一は、まさか自分の幼馴染があんな有名になるなんて、露ほども思っていなかった。