ラブライブ!〜幼馴染は新体操部〜   作:キングコングマン

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第3話

 

 「あー!!疲れたー!」

 

 時刻は8時前。

 朝の6時から今までみっちりと練習した。運動不足気味の穂乃果にとってはこれすらもハードトレーニングだったのだろう。やり切った表情で再び仰向けに倒れる。

 

 「お疲れ。まあ、初めてにしては上々と言ってやろう」

 

 「相変わらず厳しいなー。ゆうくんは」

 

 褒め言葉としては微妙過ぎる悠一の言葉に、苦笑いでそう返す穂乃果。

 初日は柔軟、持久力、体幹。この3つのトレーニングをした。アイドルをやるとは思えない程の地味なトレーニングだが、どれもダンスをする上で重要になって来る。

 そしてこのトレーニング内容は、悠一が穂乃果を試す意味合いもあった。

 

 「で、どう?明日もやる?」

 

 確かめる様に、試す様に悠一がそう聞くと、仰向けの状態から上半身を起こして、穂乃果は満面の笑みを見せる。

 

 「うん!!もちろん!!」

 

 あれだけ地味でキツいトレーニングの後にも関わらず、穂乃果は即答した。

 やはり、この少女は本気だ。

 そう思わせるには十分過ぎる程、彼女の熱意は伝わって来た。

 やっぱりなと、満足そうに悠一は口角を上げる。

 

 「オッケー。じゃあ明日も6時集合。分かった?」

 

 「さー!イエッサー!!」

 

 確認する様に悠一がそう聞くと、穂乃果も元気良く返事を返す。

 

 「よし、じゃあ、最後は柔軟」

 

 「えー!?またやるのー!?」

 

 悠一の指示に対し、先程の激痛柔軟体操を思い出したのか、困った様な表情を浮かべる穂乃果。

 

 「最後は軽くだよ。そのままだと筋肉痛になるから。ほぐす様にな」

 

 「あ、なるほどー!」

 

 悠一の言葉に納得したのか、すぐさま穂乃果は再び柔軟体操を始める。

 

 そしてそんな彼女を尻目に、悠一は離れて見ていた二人の元へ近づいて行った。

 

 「どうだった?」

 

 「どうって……」

 

 悠一の問い掛けに対し、困惑気味にそう返したのは海未の方だった。

 

 「アイツ、本気だったでしょ?」

 

 悠一はニコリと笑って、嬉しそうにそう言う。

 2時間程度の朝練だったが、それでも穂乃果は途中で投げ出す事なく、悠一の言った練習メニューを全てこなした。

 そんな直向きな姿勢が、高坂穂乃果という少女の1番の魅力だ。そしてそんな彼女の幼馴染であるこの3人が、それを感じ取れない筈がない。

 

 「……そうだね。やっぱり穂乃果ちゃんだったよ」

 

 柔軟体操をする穂乃果を見やりながら、ことりもしみじみとそう返す。

 

 『アイドル』

 

 唯の憧れ。自分とは縁のない煌びやかな世界。ことりと海未にとってその様な印象でしか無かったこの言葉が、穂乃果の姿を見て少しづつ変わって行った。

 

 「覚えてる?昔さ、穂乃果の提案で木に登ったの」

 

 すると懐かしむ様に、悠一は口を開く。

 

 「あったねー。『絶対景色が良いから登ろうよ!』だっけ?」

 

 「あの時も穂乃果が言い出しっぺでしたね」

 

 悠一の問い掛けに、同じく懐かしむ様にことりと海未もそう返す。

 

 

 ____________

 

 

 それはいつ頃だったか、まだ今の半分程しか身長がなかった、小さい時の記憶。

 穂乃果の思い付きに真っ先に悠一が乗り、ことりと海未が振り回されるのはいつもの事だった。

 その日は確か高台にある大きな木を穂乃果が目に付け、これまた思い付きで登ってみようと提案したのだ。

 

 「いいよ!」

 

 「ほ、ホントに登るの……?」

 

 「落ちたら……」

 

 真っ先に穂乃果の思い付きに乗る悠一に対し、尻込みをすることりと海未。そんな二人に構わず、穂乃果と悠一はぐんぐんと木を登って行った。

 

 「わー!!きれー!!」

 

 「おー!!きれー!!」

 

 登った木の上で、興奮気味にリアクションをする穂乃果と悠一。

 

 「「そ、そんなに?」」

 

 二人とも必要以上にはしゃぐものなので、尻込みしていたことりと海未もなんだか興味が出て来た。

 

 「うん!!海未ちゃんとことりちゃんも来なよ!!」

 

 「絶対来た方が良いって!!」

 

 いつもそうだった。穂乃果の思い付きに悠一が真っ先に乗っかり、二人が楽しそうにするものだから、それに引っ張られる様にことりと海未も着いて来る。

 

 そして、その思い付きは絶対と言って良いほど、悪い方向には行かなかった。

 

 「わー……」

 

 「きれい……」

 

 木の上から見える景色は、絶景だった。夕暮れ時のオレンジの太陽が街を暖かく包み込んでいる。

 それに釘付けになる様に、ことりと海未もその景色を見つめていた。

 

 

 _______________

 

 

 「穂乃果の言い出した事に乗っかると、なんか楽しくなるんだよね。

……だから、後悔はしないと思うんだ」

 

 朝の神田明神。ジャージ姿の悠一が、二人に目線を移してそう言う。

 この4人は、幼馴染だ。昔は何をやるにもずっと一緒だった。

 だったら、スクールアイドルだって……

 

 

 「……どうかな?二人もスクールアイドル、やってみない?」

 

 

 3人でやった方が絶対に良いに決まっている。

 そんな直感が、悠一の中にはあった。

 悠一の問い掛けに、ことりと海未は再び穂乃果に視線を向ける。

 

 

 「………私は、やってみようかな?」

 

 

 最初そう宣言したのは、ことりの方だった。それを聞いて満足そうな笑顔を浮かべると、悠一は海未に視線を向ける。

 

 「……海未は?どうする?」

 

 確かめる様に悠一はそう聞くが、答えは表情で言ってる様なものだった。

 

 

 「ゆうくーーん!!柔軟終わったよーー!!」

 

 すると、柔軟を終えた穂乃果が駆け寄って来る。

 

 「ハリのあるところとか無い?」

 

 「大丈夫!!」

 

 「全く信用なんねぇな」

 

 「ホントだよ!?」

 

 そして、またしてもコントの様な会話を展開する2人。

 この遠慮のなさも、幼馴染特有のものと言ったところだろうか。

 

 「じゃあ、明日も6時にね。また遅刻したら階段ダッシュ倍に増やすから」

 

 「一番キツいの増やさないでよー!!」

 

 悠一の通告に対し、悲痛な叫びを上げる穂乃果。それを見て心底楽しむ様にクツクツと悠一は笑った。

 

 やっぱり、この少女と居ると心地が良い。

 

 それが、悠一が穂乃果に抱く感情だった。

 

 「そう言うな。明日からはもっと賑やかになるから」

 

 「?、それってどう言う意味?」

 

 発言の意味が分からず穂乃果が首を傾げると、悠一は再びことりと海未の方へ顔を向けた。

 そしてそれに応える様に、海未が口を開く。

 

 「……穂乃果。今日のあなたを見て、本気だと言うことが分かりました」

 

 「うん、だからね?私達もやろうって思ったの」

 

 海未の言葉に便乗する様に、ことりがそう言う。それを聞いて、穂乃果は満面の笑みを浮かべた。

 

 「そ、それって……」

 

 「ただし!やるからには中途半端は許しませんよ!!」

 

 アイドルなんて、自分とは程遠い存在。

 二人のそんな思い込みは、目の前の少女にどこかに吹き飛ばされていた。

 

 

 

 

 

 

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