ラブライブ!〜幼馴染は新体操部〜   作:キングコングマン

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第5話

 

 「副会長さん……?うわっと!?」

 

 突然話しかけてきた巫女服姿の少女にそう言ったのは、ことりだった。いきなりの登場人物に気が抜けたのか、バランスを崩している。

 

 「おはようございます。境内使わせてもらってます」

 

 一方、悠一は片足立ちのままバランスを崩す事なく挨拶をする。ポーズと言葉のギャップがなんともシュールだ。

 

 「おはよー。スクールアイドルの練習?」

 

 「え、なんで知ってるんですか?」

 

 練習が始まる前の会話を聞かれでもしていたのだろうか?見透かした様にそう言う少女に対し、驚いた表情で悠一はそう聞く。

 

 「そりゃ、何度も生徒会室に来よるからなぁ」

 

 「ああ、だから副会長さん……」

 

 なるほど。つまりはこの目の前の少女は、穂乃果達が通う学校の、生徒会の副会長さんらしい。

 一旦片足立ちを止めて少女に真っ直ぐ向かうと、悠一は礼儀良く頭を下げる。

 

 「穂乃果達がお世話になってます。自分は東照大附属の2年、東雲悠一と言います。彼女らの……まあ、コーチみたいなものです」

 

 実のところは唯の幼馴染なのだが、実際やってるのはコーチみたいなものなので、間違いでは無いだろう。

 

 「いえいえ、こちらこそ。ウチは東條希(とうじょう のぞみ)。音ノ木坂の生徒会副会長をやってますー」

 

 なんとも特徴的な関西弁で、希と名乗った少女もお辞儀を返す。垂れ目でなんとも柔らかい雰囲気がある女性だ。

 

 「ここで巫女のアルバイトを?」

 

 「アルバイトと言うか、お手伝いやね。神社は色んな"気"が集まる、スピリチュアルな場所やからね」

 

 悠一の質問に、笑顔でそう返す希。やんわりとした雰囲気の人だが、なんだか掴めない人だなと言うのが、彼女に対する悠一の第一印象だった。

 

 「それにしても、随分と本格的なトレーニングしよるんやなぁ」

 

 すると、希美は未だ片足立ちで悪戦苦闘している3人の方を見て、感心する様にそう言う。

 

 「ええ。基礎トレーニングです。出来上がってない身体で無理な動きをして怪我なんかしたら元も子もないですから」

 

 対して、当たり前だと言う風に悠一はそう返す。その言葉を聞いて、希は少し目を細めた。

 

 「ふぅん。……随分と詳しいんやねぇ。……君は、ダンスとかやってるん?」

 

 何かを探る様に、希は悠一にそう聞く。

 

 「新体操です。ダンスならいくらか教えられそうだという事で、こうして朝練してるんですよ」

 

 「へぇ、男の子で新体操ねぇ……エリチが聞いたらどう反応するやろうなぁ?」

 

 「エリチ?」

 

 希から出た聞き慣れない言葉に、悠一は首を傾げる。

 

 「ううん、こっちの話や。……まあとにかく、頑張りいやー」

 

 そう言い残すと、4人に再び背中を向け、希は本殿の方に歩いて行く。

 なんだか最初から最後まで掴みのどころのない人だなと言うのが、彼女に対する悠一の感想だった。

 

 「……ほら、休まない。続きやるよー」

 

 しかし、今はそんな事よりもトレーニングだ。悠一が2回手を叩いてそう言うと、再び4人の片足が上がった。

 そして、その言葉を聞いて背を向けたまま、気づかれない様に希は微笑むと……

 

 

 「……ふふっ、あの子、ジョーカーかも知れんなぁ」

 

 

 最後に誰にも気づかれない様、ボソリと呟いた。

 

 

 _____________

 

 

 

 和菓子屋、穂むら。

 

 老舗の和菓子屋であるここは、悠一の家から徒歩20秒と抜群のアクセスを誇る。創業からもう何十年と経っている、穂乃果の実家だ。

 時刻は午後8時過ぎ。店の入り口の扉を、いつもの様に悠一は開ける。

 

 「こんばんはー」

 

 「あら、ゆうくん。いらっしゃい。部活帰り?」

 

 「はい」

 

 扉を開けると、穂乃果の母親が出迎えてくれた。今日の売り上げを計算してるのか、何やら帳簿らしきものにペンを走らせている。

 

 「いつもこんな時間まで練習してるの?」

 

 「ええ。もう慣れましたけどね」

 

 「そうー、新体操部も大変ねー」

 

 ありがちな近所のおばさんとの会話。そんなやり取りをしながら、悠一は辺りをキョロキョロと見渡す。

 

 「穂乃果?」

 

 すると、そんな悠一に気付いたのか、穂乃果のお母さんの方から要件をズバリと言い当てられる。

 

 「え?あ、はい。居ます?」

 

 「多分、自分の部屋に居るわよ?呼んでこようかしら?」

 

 親切にも穂乃果のお母さんはそう言ってくれるが、悠一は首を振る。

 

 「いえ、自分で行きます。アイツに呼び出されたんで」

 

 苦笑いでそう言うと、穂乃果のお母さんも困った様に笑った。

 

 「またあの子に振り回されてるの?もう、ホントに子供の頃から変わらないんだから」

 

 「まあ、いつもの事ですから」

 

 いつもの様に、店内で他愛もないやり取りをする。

 悠一としても物心ついた時からお世話になっている人なので、リラックスして会話をしていた。

 すると、奥の方から階段を降りてくる音が聞こえる。自分が来たのを察知して穂乃果が降りて来たのだろうか?

 

 「あれ?ゆう兄?」

 

 しかしやって来たのは、赤みがかった茶髪をショートに切り揃えた、穂乃果よりもまだ幼さが残る少女だった。

 

 「おっす雪穂。穂乃果居る?」

 

 「うん居るよ?海未ちゃんとことりちゃんも一緒」

 

 お互いに慣れた様子で会話を交わす。

 この少女の名は、高坂雪穂。穂乃果の2つ年下の妹だ。

 

 「了解。ちょっとお邪魔するよー」

 

 「珍しーねー?4人で集まるなんて」

 

 最近は悠一が家に来る事も少なくなっていたので、意外そうな表情で雪穂がそう聞く。

 

 「うん、まあ、いつもの思い付きだよ」

 

 「うっわ、ゆう兄かわいそー」

 

 思い付きという言葉だけで穂乃果に振り回されている事を理解したのか、同情する様に雪穂にそう言われる。

 ……実の妹にここまで信用されてないのはいかがなものだろうか?そんな事を思いながら、悠一は穂乃果の部屋に向かって階段を登って行った。

 

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