魔法科高校のウイニングポスト! 作:京都府の南スラヴ人
駅前からポツポツ歩いていると見知った顔が二つ
北山雫と光井ほのかである。なるほど行動する時はペアで動いているのだろうと、昨日今日のノリで分かった継男だった
「おはよう」
「おはぁ」
先に声をかけたのは雫の方であった。ほのかも追う形であいさつをする
しかし、継男は未だに寝ぼけまなこで挨拶も力ない
「あの後何してたの?」
「みんなで焼肉食べに行った」
「焼肉」
「美味かったで~。ただ王様ゲームでドリンクサーバーの飲み物全部混ぜた奴飲まされたけど」
「雫、あの後って……?」
「昨日のこと、宇井保くん見てたでしょ」
「最初から見てましたわ」
ほのかの表情に少し影がかかる
一科生二科生の争いなどは珍しくもないのだろうが、昨日起きた事、そして自分がやろうとしたことはどうしてもやったやったと褒められたものではない
宇井保継男とは仲良しというほどではないにしても友達の友達で、クラスメイトだ。幻滅されただろうか、という一抹の不安にかられる
「そういうとこ、治した方が良い」
「言いたい事は分かるんやけどな。荒事は、ほら、思わず見入っちゃうんよ」
「職業病?」
「多分、なぁ」
「あ、あの」
勇気を出して、というか恥と承知してほのかが口を開いた。
「昨日の、見てたんですか?」
「気にしない気にしない! ああいうのはようあるって」
何を言いたいのか理解したようで、継男はそれを言葉にしないよう先んじてフォローした。
彼の安心できる笑顔にほのかも安堵のため息を漏らす。
ただ「ああいうのはよくある」という言葉がそれはそれとして引っかかった。
多くやりとりした訳ではないが、少なくとも嫌味をいう人間ではない。
それとも話題をきるために、それっぽい言葉を適当に選んだだけなのだろうか。
「で、そっちはどうやったん?」
「仲直りできたし、連絡先も交換した」
「すげぇ」
こちら側で何があったかを雫は簡潔に伝えると継男はそれ以上聞かなかった
興味がない、は言い過ぎでも詮索する程のことではないと考えたのであろう
その後、北山光井ペアは司波兄妹の方へと駆け寄ったので、継男はそのまま教室を目指した。
「おはよう」
教室に入ると既に何名かはいるものである
その中には、昨日校門付近でひと悶着起こした面子もいる
少し間を開けて入室した雫などは気にしていなかったが、ほのかは少々後ろめたい気持ちになった
あの後、お互い分かれてどうなったかは知らないまでも、どうにも壁を感じてしまうのである
「お前~、よくも昨日は変なもん飲ませやがって」
「良い飲みっぷりだったじゃない」
「あの後、家帰ってトイレに1時間籠ったんやぞ」
「今だから言えるけど」
「うん?」
挨拶も早々に継男は女子生徒へと詰め寄った
焼肉を食べに行ったという面子の一人なのだろう
ほのかと雫の視線は彼らに向けられていた
「焼肉のたれに醤油、七味とかも入れといたわよ」
「………ゆ、許せん!」
「まぁまぁ」
とびかかろうとした継男を周りにいた学友たちが抑えた
「そ、そこに! そこに直れ! 同じもの飲ませて、いや、シャンプーとリンス全部あれにしてやる!」
「森崎くん」
「うん」
「ぐ、ぐうぅぅぅ」
いつの間にか登校していた森崎駿が戯れに手刀を継男の首にあてる。
おおよそ理想的な高校生活の朝に、先ほどの不安はどこへやら。光井ほのかはクスっと笑みをこぼした。
時は過ぎて、お昼時
ランチタイムだ、と弁当を広げたり食堂に行ったりと様々な足取りが往来を極める
「森ちゃーん、一緒にお昼食べよー」
「すまない。今日はちょっと行くところがある」
「えー、なんでー、それよりもお昼食べながら桜花賞予想しようよー。楽しいよー、win5当たりまくりだよー」
「…そういや言ってなかったか」
教室から出る刹那、森崎は振り返った
いつになく真剣な面持ちに継男も少し構える
「風紀委員になったんだ。今から先輩方に挨拶しにいこうと思ってな」
「あー、風紀委員ね。うん、森ちゃんにぴったりやと思う」
驚かせようと思って隠していただけに、そつない反応が間を悪くする。
しかし、幼馴染とはいえ「ぴったり」というのはこのところすり減らし気味だったどこか自尊心がにわかに沸き上がり始めてくる。
もっとも、翌日には二科生の風紀委員の存在を知ることになるが。
何であれ継男の思惑は外れた。北山光井ペアは教室で弁当を広げているが継男は何も持ってきていない、昨日焼肉を食べに行った学友たちはドリンク全混ぜの復讐を恐れてか「逃げろ」と早々に教室を経っていた。
「(結局、一人で飯食うんかぁ)」
食堂
一人用のカウンター席で虚しくサラダバーで適当にとった野菜をもっしゃもっしゃと食べている。気分は飼葉を食らう競走馬だ。
とはいえ、量は多くない。昨日の焼肉でアホ程食べたので量を抑えているせいでい、食後も早くに訪れた。
教室に帰るにはまだ早い、学内を探索がてら遠回りしてみようかと思うと、目についたのは彼女だった。
「(エリカちゃん達まだかなぁ……)」
柴田美月。
昨日、校門前で一科生たち相手にひるまず啖呵を切った女子高生。
確か赤みがかった髪をしたお友達やガタイの良い男子生徒などが近くにいたはずだが、席取りでも任されているのであろうか?
そういった考えはともかく、自然と、継男の足は彼女の方へ向いていた。
「すんません」
「はい……っ!」
継男を、いやその腕の花弁を見るや否や、柴田美月の体はこわばった。
昨日の出来事から一科生に対して、どこか抵抗ができているのだろう。
おまけにこの男子生徒は覚えが正しければ、あの後かの一団の後を追っていた生徒に似ている。
目こそ泳がなかったものの、少々見開いているようで、継男はその心中を察した。
「いきなり驚かせてすんません。僕は1-Aの宇井保継男いいます」
「し、柴田美月です」
1-Aとは、司波深雪や昨日知り合った北山雫、光井ほのかと同じクラスであると同時に、あの森崎という男子生徒と同じクラスである。もしかして、というより十中八九昨日の出来事についてであろう。
彼のクラスの名前に思わず構えるが、それはそれとして思わぬ関西弁が、一種のギャップを生み出し、体のこわばりを少し和らげた。
「柴田さんですね。もし、記憶違いでなければ昨日校門前で何や一悶着あった時いましたよね?」
「………はい」
肯定するのに間があった。このまま正直に答えて良いのかどうかの逡巡であるが、嘘を吐くよりかはマシだと思ったのと、昨日の出来事は生徒会長、風紀委員長が直々に「不問」としたことが、ほんのりと自信になっていた。
「やぁ、ええもん見してもらいました」
「え?」
彼の反応は、予想外にも好意的であった。
一科生のことだ。てっきり「調子に乗るなよ」ぐらいの小言を言われると思っていただけに、その好意をどこか強く感じてしまう。
おまけにこちらの警戒を解こうと努めているようで、頭を下げているとは言えないまでも、腰がやんわりと曲がっていた。
「柴田さんかっこよかったで~。連中相手にああも啖呵切れるんはほんまに凄い」
「私が、かっこよかったんですか…?」
今までかわいいとか綺麗など言われた覚えはある。
しかし「かっこいい」というのは、初めての経験だ。
思わぬ新鮮な経験に、美月は聞きの姿勢をとってしまっていた。
「男やろうと女やろうと人前で堂々と啖呵切れる人はそういません。なんでか知りませんけど僕自身、啖呵切れる人ってのに、何と言うかこう惚れ込んじゃうタイプでして。いやー、ほんまに」
惚れ込むというのは、この場合男女の仲ではなく、あくまで人間的な尊重の意味であろう
なるほど、意図が少しずつ読めてきた。恐らく、昨日の出来事を見てしまい、同じクラスメイトとしてどこか罪悪感が芽生えたのかもしれない。
美月が言葉を返そうとすると、視界にお友達二人が入ってきた。
宇井保継男を見て、何やら怪訝な表情をしている。
「ちょっと」
「一科生……」
「うん?」
千葉エリカと西城レオンハルトの視線はいやにキツかった。
無理もない。昨日の事で、どこか警戒心を抱いているのは柴田美月だけではないのだ。
まして、気の弱い友人相手に何やら絡んでいるのである。視線はキツさだけでなく、圧を感じるものであった。
「あぁ! 昨日の! あいつのCADを弾いた!」
「千葉エリカよ」
「西城レオンハルトだ」
「千葉さんに西城さん! やーやー、どうも、僕1-Aの宇井保継男いいます」
「1-A……?」
クラス名を聴いて、エリカは前へ一歩出た。
料理が載ったトレイで両手はふさがっているが、継男を間合いに入れている。
「1-Aの生徒が何の用? 昨日のお礼参り?」
「はい! ええもん見してもろたな思て、そのお礼に」
警戒から少々喧嘩腰で出たが、継男はそれを真正面から受け止めた。
想像していなかった返答に、エリカもレオも面食らったような表情である。
「千葉さん、森崎のCAD、ガツンと弾きましたやろ? やー、胸がスっとするっちゅうんはああいうのやなぁと」
「…ぷっ、あはは! そういうことね」
「ふぅ」
敵意がないと分かり、両者は警戒を解いた。
一触即発ほどではないにしても、険悪な雰囲気にあわあわしていた美月も安堵のため息をこぼす。
「何や後で連中に話聞きましたら、言いがかりがのぼせあがっただけやな思いまして、それで柴田さんのお姿見たもんで。せめて一声かけよう思ったんすわ」
「私の事はエリカで良いわよ。美月が困ってる風だから勘違いしちゃった」
「一科生にも、お前みたいなやつがいるんだな」
「やぁ、あんま期待せんといてください。僕は僕やと思っていただければ」
「あ、あの、もしよかったらお昼一緒にどうですか?」
美月がおずおずと昼食へと誘った。
この宇井保継男という男子生徒は悪い人ではないようだし、その朗らかな姿勢からは好印象しか感じられない。友人とするのにそう隔たりを感じなかった。
「すんません。実はもうさっき食べたばかりでして」
「そうですか」
「残念だったわね、美月」
「だったら、また今度ってことってのはどうだ? お互い授業もあるだろうから、いつとは決めないにしてもさ」
「そうですな。そうさせてもらいます。こればっかりはタイミングですからなぁ。そうやそうや……」
「?」
継男は胸ポケットから何やら封筒を取り出した。中身は想像つかないが、少々、厚みがある
継男はそれをテーブルへと置き、美月のもとへ進めた。
「昨日の件はほんまにクラスメイトとして思うところがありまして。これは謝罪だの迷惑料だのという訳ではないんですけど、是非お納めいただければと思います」
「そんな! こ、こんなの受け取れませんよ!」
「いえいえ、是非お受け取り下さい。これは僕の赤心です。お食事の途中、すんませんでした。ほな」
「ちょ、ちょっと! 宇井保くん!」
エリカの呼びかけ虚しく、継男はすたすたと食堂を後にした。
席につくも、目につくのは料理ではなく、彼の赤心という封筒だ。
美月は料理に手をかけるよりも、これをどうするか考えあぐねた。
とりあえず中身を見てみなければ始まらない。中を広げた瞬間、美月は体を硬直させた。
「何が入ってたんだ」
「良かったら、私にも少しおこぼ、れ、を……」
エリカがたわむれに封筒の中を覗くと目を丸くしたまま視線をずらさなかった。
レオからはちょうど向かいの席になるため、何が入っているのか見えない。
美月はおどおどした手つきで封筒の中身を取り出した。
日頃、テレビでよく見るそれとは遥かに薄いが、札束と呼ばれるものだと認識できるものだった。
「多分だけど、5、50万円……かな?」
エリカもレオも、驚きの声をあげる以前に困惑してしまったのである。
入学から日も経っていないので、慣れ親しんだ学び舎という訳でもないが、日頃行かないだろうところに行くとどうも落ち着かないところがあり、新鮮な気分になる。
道行く上級生たちがちらほらこちらを見てくるのがその証拠だ。
「(第二小体育館か……)」
通称闘技場と言われている施設だが、継男はそのことを知らない。
中を拝見しようと持ったが、どうやら明日のデモンストレーションでそれぞれの部員たちが行き来しており、邪魔になるだけなのでその場を後にする。
どこからか揉め事の気配がした。女性の怒気を孕んだ声が、闘技場の裏より聞こえたのだ
荒事は思わず見入ってしまう、という性分がそちらへと足を運ぶ。
「あなたたち……っ!」
「へへへ、どうしたよ壬生さんよぉ」
「俺たちはただ、明日のデモンストレーションの順番を変えて欲しいだけなんだぜ」
建物のすみから顔を覗かせると、揉め事の正体が剣道部剣術部の争いだと判断するのに時間はかからなかった。
森崎から聞いていた学内の事情がここで役に立つ。
紺の胴着を着た男子生徒2人は剣術部で、制服を着た女子生徒1人は剣道部といったところだろう。
手にしている竹刀からは、悪くも闘志がにじみ出ている。
「もう決まった事よ! 今更そんな……」
「だから、それを何とかしてって言ってんだよ」
「別にお願いするのはあんたじゃなくても良いからなぁ」
「くっ……」
聞こえてくる言葉から、おおよそ何で揉めているかと言うのが把握できた。
デモンストレーションの順番を変えてほしいというのは、明らかに剣術部にしか有利にならない話だ。
魔法を織り交ぜる剣術部の後に、あくまで純粋な剣を披露する剣道部が演武だの技だのを見せても新入生たちが、それも実力のある新入生たちがどちらに入部するかと言われたら前者であろう。
そしてそれを剣道部の部長に頼まないと言うのがいやらしさに拍車をかける。想像に過ぎないが、彼女は恐らく2年生。外堀を埋めて要求すると言うのは常套手段ではあるが、継男は正直いってがっかりしていた。
「(おもんな)」
荒事を見るにも、面白くないと意味がない。
これが競馬のレースとなるとまた考えが変わるのだが、人の揉め事だとそうは思えない。
並み居る牡馬の中に牝馬が紅一点と出走する様は確かに絶頂を味わえるのだが、この揉め事からはそういったものが全くない。
意味深に靴の裏と校則違反を確認した継男がポケットから取り出したのはカードケース。中から1枚馬券を取り出すと、剣術部二人へと投げつけた。足元は既に起動式が展開されている。
「な!」
「うおっ!」
馬券がまるで意思を持っているかのように宙を舞い、彼らの竹刀を切り落とす。
驚いた二人は、剣道部女子が何かをしたのだと思い、魔法を発動しようとする。
起動式が展開されたその刹那。
今度は彼ら二人の頭に、大きめの扇子が勢いよくぶつけられた。
こちらも先ほどの馬券のようにまるで操られているかのように的確に狙いを定めている。
脳に相当の振動があったようで、剣術部二人はその場で倒れた。
「い、今のは……」
これ以上、当事者になるのは御免と思い、馬券と扇子を手繰り寄せようとするその瞬間。
学校のチャイムが鳴り響く。
「(もう、そんな時間!? あぁ、もう、しゃーないな)」
お気に入りの扇子だったが仕方がない。どうせだし、あの女子の先輩にプレゼントだ。
外れ馬券に思い入れが無いではないが、持っていなければならないものではない。
継男は足早に教室へと戻った。
「……これ」
襲われていた剣道部の女子生徒―壬生紗耶香が恐る恐る倒れた二人の近くに落ちた馬券と扇子を拾い上げる。
誰かが助けてくれたと思うと、これを持ち主に返したい、というよりお礼が言いたいと言うのは決しておかしな話ではない。
「宇井保……?」
広げた扇子の骨に書かれていた名前を口に出し、何度か覚えるように読みあげる。
剣道部の後輩が自分を探す声に、ハッと冷静さを取り戻すと、彼女は扇子と馬券を懐へとしまった。
教室へと足早で向かうが、どうやら他のクラスやそれこそクラスメイトの顔などもまだ廊下をいそいそと歩いていたことに継男はどこか安心していた。
1-Aの次の授業は座学だ。素早く自らの席に座ると、どうも滲んだ汗をかいていたようで、扇子を取り出そうとするが、先ほどプレゼントしたばかりだったと思い出す。
森崎はその一拍後に着席した。彼の性格を考えると先に着席していそうなものだが、風紀委員の先輩の挨拶が長引いたのであろう。継男自身も馬主同士の挨拶でよくある事だと納得する。
昔馴染みと隣の席というのはありがたく、分からない事は耳打ちしてもらおう、と無邪気な思いを抱いている。
しかし、森崎の顔は何かあったのか思いつめているように見える。少なくとも二科生がどうのという話ではないだろうな、と推測した。もし、そうなら怒りをこちらにぶつけてくるか、あからさまな態度を見せるからだ。
「継男、お前昼休み何をしていた」
「何を、とは?」
「CAD」
「……見とったんかい」
よりにもよって自分の事だったか、とバツの悪い表情をする
周りに聞こえないよう、声量は抑えめだ
「風紀委員の先輩に巡回ルートを案内されている時にな。闘技場をちらりと見たら、お前がいた」
「おう、おったで」
「僕も遠目でしか見えなかったし、先輩の話を聞いていたからまじまじと見ていた訳じゃない。だけど、継男の起動式の展開、奥に見えた……闘技場の裏で明日の日程を考えると、恐らく剣術部剣道部の諍いだろう。それは分かった」
「やっぱ鋭いなぁ」
森崎駿と宇井保継男の付き合いは小学生からべったりの幼馴染、という訳ではない。
四季の学期毎の休み、それぞれの家でお泊りしてよく遊んだぐらいのものだ。付き合いそのものとしては親戚のような友人である。
北山光井ペアほどではないにしても、互いがどういう人間かはそれなりに理解し合えているのだ。
「何があった」
「剣術部の男二人が、剣道部の女子生徒に明日のデモンストレーションの順番変われと迫っとった」
「訳はあったんだな」
「正直、肝冷やしたで。扇子も落としてもうたし」
森崎駿が二科生を快く思っていないが、継男と同じ状況にあった場合、風紀委員を務める以上は見過ごそうとは思わなかっただろう。その辺は石部金吉を名乗れる男の子だ。
だからこそ、継男を見過ごすわけにはいかなかった。
「CADを出せ」
「せやな。校則は守らなあかんもんな」
魔法の行使した事は致し方ないと判断しても、CADを許可なく携帯することはいただけなかった。
思いのほか、素直に応じてくれた事に驚きを隠す。こいつも成長したな、と昔馴染みながらに思うところがあるのだ。
「ちょう待ってや」
「そんなとこに。いや、お前らしいな」
継男が靴の裏、足先部分をちゃかちゃかといじるとU字型のCADが出てきた。
彼風に言わしてみれば蹄鉄型CADとでも言うのだろう。
どこでそんな代物を、と思うが、彼の家の資産を考えれば取り寄せたか作らせたかのどちらかだ。
「蹄鉄型CADかな」
「センス分かってる奴になら預けられるわ。頼むで」
「校門付近で落ちてたと委員会に報告しておく。下校時に取りに来いよ。闘技場でのことは黙っておいてやる」
「森ちゃん風に言うと、貸しができたな」
「言ってろ」
継男もまた森崎駿という男をわずかに分かっているのだ。お互い分かったような口を利いたところで、授業がはじまる。
明日から新入部員勧誘期間だ。しばらくは互いに距離も離れるだろう。
蹄鉄型の名に恥じぬ重みを胸ポケットに納めながら、森崎の意識は聴講へと向いていた。
魔法はおろかその他がとても細やかな諸設定に加えて、キャラの口調も恐る恐るって感じです。原作との時系列もめちゃくちゃ把握しておかないとなぁ……