魔法科高校のウイニングポスト!   作:京都府の南スラヴ人

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入学編⑤

公開討論会!

七草真由美と壬生紗耶香の話し合いの結果、生徒会と同盟はひとまずそのように決着した。

二日後と極めて短い期間であるが、何であれ同盟側からすると論破できれば一挙に事態を打開できる好機なのは間違いない。

その為にも数が必要だ。同盟メンバーはまるで部活動勧誘よろしく方々で二科生に声をかけていた。

 

「お疲れ森ちゃん」

「全く良い騒ぎだよ」

 

この通り、森崎も風紀委員として方々を走り回っていた。

同盟メンバーに野次を飛ばす一科生、強引な勧誘に逃げ出そうとする二科生など諸々の事態の解決に先輩らと共に解散させたりで大忙しである。

 

「こうして、現場で一つ一つ見ていると生徒会長のお考えが分からなくなる。なんで公開討論会なんて開いたんだろうな」

「みんな納得するにはそれしか無かったんちゃう?」

「大体、二科生の要求なんて、それこそ勝手に組織作った連中だろ。無視しておけば良いんだよ」

「そんで風紀委員に迷惑がかかるわけや」

「何が言いたい」

「どうあっても二科生、それこそ同盟系の連中が事起こしたらそれに一々対応すんのは風紀委員や。ただでさえ、一科生が事起こす時もあんのに、そっちにまで手ぇ出さんなあかんのやで。まして同盟って組織まで作られた訳やしな」

「………………」

「会長さんがなに考えてるかは知らんけど、時間かけたくないんやろ。お話を伺うに生徒会ってのはほんまに忙しいみたいやしなぁ」

 

こいつはたまに本質を突くのかもしれないと思った森崎は閉口した。

確かに、魔法科高校の生徒会ともなれば、別に公開討論会を開いて論破されたとしても、それすら無視しても怒る生徒は二科生の内、今回のような過激な連中だけだろう。

七草真由美はじめ生徒会の面々は男女ともに容姿が良い。そもこの学校自体が一科生を中心としたカリキュラムを組まれているのは二科生とて承知の上で入学している。

でも、それが彼らを焚き付けると言われたら、認めざるを得ないのだ。

 

「なんや九校戦だかの選抜でそろそろ忙しくなる時期なんやろ? それどころか新学期に新入生であれこれと処理しやないかんものもたーくさんありそうやし」

「確かに、な」

「それに、や。別に討論会で負けても、それを馬鹿正直に受け入れんでもええ訳やし、後で考えますー言えばどうとでもなるやろ」

「やってますアピールってやつか」

「いや、わざわざ討論会やる以上は、アピールどうのではないな。やるべき事をやっている、のは間違いないし」

 

宇井保継男が一科生、ひいては魔法師とはどうあるかを森崎に尋ねる事があるように

森崎にとっても非魔法師としての将来が確定している魔法師の意見を新鮮に感じる事があった。

馬主の息子として、彼は多くのパーティに出席し、そして魔法師として求められるものとは全く別とはいえ、勝負の世界を知っている男なのだ。

 

「あんまりどうこう考えん方がええイベントちゃうかな。や、壬生ちゃん先輩がどう動いているかは気になるけどな」

「……今は他の同盟中心メンバー、で良いのかな。その面子と一緒に行動してるって報告は入った」

「サークルの姫やなぁ」

 

事の重大さと矮小さを分かると継男はともかく、森崎は目の前の事を精一杯頑張るしかないと自己満足する。

 

「ところで、お前討論会は聞きに行くのか」

「それなんよ。親父から土曜競馬は他の親戚行かせるから、放課後は友達と仲深めろって直々に言われててさぁ。とはいえ、討論会自体が興味のある話かと言われると、無いとは言わんけどそこまで……って感じやし」

「とりあえず、学校にはいるんだな」

「まー、そーなるなー。でも、何しとこ。ぶらぶらしとこっかな」

「実技棟で練習でもしてたらどうだ。お前、その辺ダメなんだし」

「なんで放課後にまで勉強せなあかんねん」

 

継男の返答が自堕落ではなく勉強方法だと思うと呆れるだけで済む。

事実、授業中は真面目で家業のことを口に出す事も無い。

魔法師としての才能は磨けばそれなりに光るだろうに、と思いつつも彼が目指しているのは馬主だということを思い出す。

 

「それなら図書館はどうだ。実技がド下手でも、知識で補うことはできるだろ。あそこには全部が全部は閲覧できないけど一校生なら読めるものがあるし」

「ド下手は言い過ぎやろ。C評価ぐらいはあると思うで」

「競馬だと重賞で勝てるかどうかじゃないか……」

 

予定が決まると自然にいつもの会話へと戻る。

放課後、森崎は風紀委員で明日の打ち合わせがあるというので、継男は一人で帰る事にした。

なんとなく北山&光井ペアでも誘うかと思ったが、二人は部活動ですでにいない

校庭に出たところである。

明日に控えるとなって、同盟メンバーによる勧誘は一層激しさを増していた。風紀委員の主力は討論会の打ち合わせでいないし、なるほど、良いタイミングである。

その中で目についたのが、同盟メンバーに囲まれた壬生紗耶香であった。

中心人物の一人、すなわち姫なのは間違いないようで、彼女を囲むメンバーはみな殺気立っている。

 

「壬生ちゃん先輩ですやん!」

「宇井保くん!」

 

彼女などは表情に喜色が宿ったが、その周囲は違う。

相手はにっくき一科生、紗耶香があれこれと宥めて場から離してようやく安心して継男と会話ができた。

 

「何やでっかい事になりましたなぁ」

「えぇ、これで学校が変わると良いんだけど」

「頑張って下さいね。まぁ、僕が何する訳ではないですけど」

「ありがとう。ところで、明日はどうするつもりなの?」

「やる事も無いんでねぇ…討論会も興味はありますけど、嫌ってわけじゃないんですよ? ただじっとすんのがどうにもできん性分でして」

「そんな気がする」

 

段々と宇井保継男という男の子がどういう性格なのか分かってきた気がする。

落ち着きはどこかにあるけど、体がそれに追いついていないのだ。

 

「今のところは図書館行こっかなぁ思ってるんですよ。や、勉強とかじゃなくて漫画おいてへんかなぁって」

「ま、漫画かぁ。無いと思うなぁ」

「マジすか!? おもんな」

「う、うん。それに明日図書館の周りで討論会とは別で集会を開く予定なの」

「別って、討論会には同盟さんから何人か行くんですよね」

「そうなんだけど……ここだけの話、その集会って明日の討論会にも反対っていう過激な人達がメインなの、だから正直な話図書館に来て巻き込まれたら申し訳ないなって」

「あーーーー、なるほろ。なんか分かりましたわ」

 

壬生紗耶香は嘘を吐き、ある事実を隠した。

巻き込まれたら申し訳ないというのは本心だ。しかして、その過激派というのが彼女自身であり、集会ではなく、なんと図書館に秘蔵されている非公開の論文や資料のデータを盗むと言うのだ。

紗耶香は未だその行為に疑問を感じているが、確信には至っていない。きっと差別撤廃に繋がると信じざるを得ないからだ。

 

「そんなら大人しく討論会行っときますわ。席には着きませんけど」

「そうした方が良いわ。私も図書館前での集会に参加しないといけないし」

「壬生ちゃん先輩は討論会でないんすか!? 言い出しっぺみたいなもんなのに!?」

「え、あぁ、いや、その……討論会を決めたのが私と七草会長だったのが他のメンバーに不満だったようなの。それで同盟で理論派っぽい子がいるからその子に出てもらう予定。そもそも、私あんまりああいうディベートって苦手だし」

「あぁ……それで」

「どちらかというと過激なメンバーのお目付け役ね。流石に沙汰を起こすようなことはしないと思うけど」

「サークルの姫って大変なんすねぇ」

「姫じゃない!」

 

話す事が尽きた訳ではないが、同盟メンバーの恨めしい視線に気づいた紗耶香は話を切り上げ、継男と別れた。

後姿を目で追う継男はほくそ笑んだが、その目はとにかくいやらしい。

性癖どストライク黒髪ポニテの剣道娘、だからではない。まるで何をするか見通しているような……

 

 

 

討論会当日

学校の雰囲気は全体的に浮足立っていた。

話題は言うまでもなく討論会を聴きに行く行かないの持ち切りである。

 

「継男」

「おー、森ちゃんどないしたん」

「これ持っとけ」

「お」

 

森崎から渡されたのは、継男が朝方提出した蹄鉄型CADであった。

本来なら学校側が預かっている物なのだが、風紀委員としての伝手で持ってきたのであろう。

 

「ええんか?」

「……今日の討論会、何かありそうだからな。風紀委員としての仕事もあるし、その間はお前を護衛できない。護身用に持っておけ」

「おー、気ぃ利くやん。ありがとう。それと今日なんかあるで」

「は?」

 

森崎の視線が継男に集中する。

いつものにやけ顔がどことなく真剣だったからだ。

 

「昨日、壬生ちゃん先輩から聞いてな。なんや図書館の前で集会するそうやわ」

「集会……?」

「言葉そのまま受け止めてええんやったら、過激な連中がやるんやと。せやから気を付けろ近づくなって」

「………」

「壬生ちゃん先輩もそっち行くんやて。なんやよう知らんけどそっちの面子がアホせぇへんか見張っとくって」

 

その言葉を真に受ける程、森崎は純粋では無かった

警備の仕事を何度か手伝った経験からして、集会はカモフラージュ。

本当の目的は何であろうか、まさか図書室に所蔵されているデータを盗むつもりだろうか。

いや、それこそあり得ない。そんな事をしてしまえば、学校の生徒ですらいられなくなる。

それに今日の討論会に、肝心要の壬生紗耶香が出ないという事が何より思考の速度を速める。確かに彼女が論争できる人物だとは思わないが、いなければならない人物だ。

 

「継男、今日どうする」

「図書館行くな言われたしなぁ。しゃーないし、講堂行って会場のお外で競馬中継聞いとくわ」

「そうしてくれると、助かる」

 

森崎は昨日の打ち合わせで講堂内の警備を担当する事になっていた。腰に提げた特化型CADを一撫ですると、いよいよ実感が湧いてくる。

風紀委員として、恐らくこれが初めての大きな仕事なのと、森崎の家として宇井保を警備する事は宿命のようなものだ。

無論、風紀委員としての仕事を優先しなければならないが、事と次第によればこの悪友を最優先で考えなければならない。

魔法師としての実力はともかくとして、同じ講堂にいるならそれも容易かろう。

壬生紗耶香が気がかりだとしても、まずは一安心であった。

 

 

 

 

討論会開催に迫り、講堂内は学生であふれかえっていた。目算、在学生の半数が来ていると言える。

一科生二科生問わず着席しており、それだけ注目されているという事だろう。

何も全員が全員では無い。例えば、二階席の奥にいる二人組などが良い例だ。

一人は風紀委員の腕章をつけており、もう一人は何やら大仰なゴーグルをつけて興奮している。

 

―さぁ、各馬ゲートに収まりました……スタートです!―

「おっしゃあ! スタートはええでー!」

「静かにしろよ」

 

森崎の注意虚しく、彼はお構いなしに盛り上がっていた。

着席した生徒が厳しい視線を向けてくるが、風紀委員の腕章をつけた人間が隣にいる以上、口出しもできない。

それに現在、同盟メンバーと七草真由美の討論が始まっており、向けるべき意識は競馬バカよりもそちらである。

 

「テレゴーグルなんてよく持ってたな」

「臨場感あるからな。出先で多用してるで。あ、森ちゃんゴメンやけど、ポータブル中継器もうちょっと上に上げてくれへん?」

「……なんかあったら放り投げるからな」

 

テレゴーグルとは、3年ほど前に発売されたテレビ中継が可能な携帯型ゴーグルである。

見た目はVRヘッドギアのようで、見ようによってはSFの特殊部隊感がある。

しかし、別売りのポータブル中継器が必要な上に、電波法上の問題などが取り沙汰され、個人向けの商品としてはあまり良いイメージが着かず、出回っているのはごく少数である。

 

「(本当にいない)」

 

森崎の頭に討論会の内容は全く入っていなかった。

それよりも『壬生紗耶香がいない』

この事に、彼の思考は占められていた。

本当に、図書館の方へ行ったのか?と晴れない疑念が脳裏を曇らせる。

風紀委員として分を超えるつもりはないが、それでも警備の手伝いをしてきた勘が一々刺激する。

 

「おーし、そう、そこそこ。さっすが、夏山騎手や。えぇ位置どりしてるで~」

 

継男の頭にも討論会の内容は全く入っていなかった。

それよりも『福島牝馬ステークス』

この事に、彼の思考は占められていた。

注目すべき馬は、歴史的名牝と名高いヴァンラマインだ。1番人気単勝オッズ1.3倍。

鞍上夏山騎手は過去にアメリカスーパーフェクタを制すなど、数々の栄誉に輝き、特に先行を得意とするジョッキーだ。

 

さて、討論会も佳境である。

言うまでもなく、というより想像通りの展開であった。

同盟側の、壬生紗耶香曰く理論派というよりかはただディベートが好きそうな子だったというオチであり、七草真由美がそれらに反論するという形に終始した。

継男が特に興味が無いと言うのは、こうなるだろうと思っていたからだ。

生徒会が学校運営の主体を担う以上、材料や論拠が生徒会側に豊富なのは言うまでも無いし、何と言っても1日後ととにかく短かったのは同盟側にとって手痛かったであろう。

 

それ故、こうして競馬に集中できるのだ。

福島1800mは高低差のあるレースだ。

さぁ、いよいよ第3コーナー。各馬が一斉に前へ前へと生き始める

ヴァンラマインはそれでもまだ後方だった。

直線、横一杯に広がる中で一頭先を行くのはオオトリダンサーだ。

いや、来た。ヴァンラマインがやってきた。一瞬できた隙間を突いて、一気にギュンと前へ行く。

オオトリダンサーまであと3馬身、2馬身、1馬身……

 

「おーーーし! 行けーーーーーーーーー!」

 

 

ドォン

 

 

轟音が鳴り響いた

 

 




ウイポ要素はまだ鳴りを潜めていますが、これから出していくから! 本当だから!
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