止まることのない連鎖   作:ぱーぷる

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2-10クリアしたての新米ドクターが調子に乗って何か書いてしまいました。
纏まりも内容も無い拙いなんてものではない作品ですが良ければどうぞ


狂気の発端は

 私はドクター

 私は偽物

 

 私はドクター

 私は愚か者

 

 私はドクター

 私は力なき者

 

 私は…………

 

 

 ────────────────────────────────────────────

 

部屋の中に紙をめくる音と何かを書く音が規則正しく鳴っている。

音の発生源は部屋の中にいる一人の男と一人の少女のようだ。

男は皆からドクター、と呼ばれている。

もはや常人には不可能ではないのかというべきスピードで書類の山を片付けていた。

少女は皆からアーミヤ、と呼ばれている。

こちらのスピードも中々のものだがやはりドクターには劣っている、定期的にちらちらと彼の方を見ているのだから尚更だ。

そのまましばらく続いていたが、ついに我慢できなくなったのかアーミヤが立ち上がりドクターへ語り掛けた。

 

「あの、ドクター

もう今日は休みませんか? もうすぐ24時を回りますし……」

「うん?ああ、しかし私はまだ仕事が終わってなくてね

なに、気にする事はない、先に休みたまえ」

「しかし……私は何度か休憩を挟んでるから良いですけど!ドクターは1度も休んでないじゃないですか!」

「仕事が残っているからな

心配しなくていい、今日の分が終わればちゃんと休むさ」

「むう……分かりました」

 

不満そうに頬を膨らませつつもドクターの言葉に折れ退室するアーミヤ。

執務室の扉が閉じると同時に、大きな溜息を吐く。

 

「……やっと行ってくれたか」

 

安心感と共に胸の奥から何かが込み上げてくる。

すぐさま懐から黒い袋を取り出し口に当て、それを吐き出した。

心因性嘔吐、ストレスによって嘔吐してしまう病、それに体を侵されている。

 

「ふう……駄目だ、まだ休んでは」

 

前回十分な休憩を取った(気絶し倒れた)のが3日前、故にあと2日はやれる。

無能だと思われないように、捨てられないようにと気合を入れ、書類作業に再度向かう。

そうして数時間後、時刻は既に朝の七時半を回っていた。

 

「おはようございます、ドクター

相変わらずお早いですね」

 

扉が開き、アーミヤが入ってくる。

こうして彼らの一日は始まっているのだ。

 

最も、ドクターの一日は終わってすらいないのだが。

 

「ああ、おはよう

早起きは三文の徳と言うだろう?さあ、仕事だ」

「その考えがあるならなんで早寝ができないんですか……」

 

呆れたような声を無視して 書類を片付ける。

昨日アーミヤが抜けてから量は変わっていないように見える、が

実の所ドクターが深夜の内に新たな書類の山を持ってきていたのだ。

そんなことは露知らず、変わらぬ表情のまま仕事へ取り掛かるアーミヤ。

これが、ロドスの執務室の日常だ。

 

 

ドクターの仕事はなにも書類仕事だけではない。

戦闘訓練、設備の管理、オペレーター達との交流、明らかなオーバーワークだ。

しかし彼は平気な顔でそれらを成し遂げる。

その仮面の中でどんな顔をしているのか、心の中がどれほどズタボロになっているのかは、誰も知らない。

 

そして、知らないからこそ、誰もこの事態を予想出来なかった。

アーミヤが事が遅くなる前に見つけることが出来たのは、本当にただの偶然だったのだろう。

そう、誰も予想できなかったのだ、言葉遣いこそ難しいがいつも皆のそばに居たドクターが

 

首を吊って自殺しようとしたなんて。

 

 

それは、本当に偶然でした。

たまたま執務室に忘れ物をして、それを取りに行こうと扉を開けた時。

目の前には首を吊っているドクターが居たんです。

 

「ドクターッ!」

 

焦る心とは裏腹に、頭は常に冷静で、アーツを使用してロープを切断、落ちてくるドクターを受け止め医務室へ搬送。

まるで自分が動かしてないみたいに体がスムーズに動きました。

それでも医務室へ着く頃には体が動かなくて、それからしばらく記憶がなくて、唯一思い出せるのは、もうドクターは目を覚まさないかもしれないという言葉だけです。

嘘だと信じたかった、嘘だと言って欲しかった、でも現実は非常でドクターは弱々しく息をしながらベッドに横たわっているだけ、目覚める気配は感じません。

 

……思えば、この頃から私は壊れていたのかもしれませんね

 

この事件の後、ロドスは混乱の中へ突き落とされた。

今まであらゆることを担当していたドクターが倒れ、その補佐であったアーミヤの精神状態も不安定

いや、アーミヤのみならずロドスの人員ほとんどの精神状態が不安定だった。

それほどまでにドクターの存在とは大きかったのだ、彼自身がそのことに気付けず、いつか自分は捨てられてしまうとばかり考えていたのは、悲しいことだが。

 

しかし人とは立ち上がり進むもの、少しずつ現状を認め、ロドス存続の為に全員が動き始めた。

アーミヤも仲間達のそんな行動に感化されたのか、精神状態が安定していき、かつてのCEOらしい頼もしい姿を見せるようになって行った。

 

そうしてまたしばらく経って、皆がドクターへのお見舞いを欠かさない様にしつつもロドスの経営を安定させることが出来るようになった頃。

アーミヤがドクターのお見舞いに来た時、ドクターが目を覚ましたのだ。

 

当然泣いて喜んだ、もう目を覚ますことは無いかもしれないと言われていたのだ、それが普通だろう。

だが、少し様子がおかしい。

目に、光が灯っていないのだ。

まるで泥のように濁った目、小刻みに震える手足、アーミヤの声を聞き入れることのない耳

ただ天井を見つめ、ぶつぶつと何か言葉を発している

 

何を言っているのか、アーミヤには聞こえなかった

いや、聞いてはいけないと肉体が拒否反応を起こしていたのだろう、しかしそんな肉体の静止を振り切って、彼女は聞いてしまった。

まるで呪詛のようなドクターの言葉を

 

「まだ休んじゃ駄目だまだ仕事は終わっていない寝る必要なんてない時間が惜しい捨てられたくない私は必要ないのかもしれない出来ることをしなければ私は役立たずだ出来ないことも出来るようにならなければ誰にも迷惑をかけないように私は所詮偽物私はただの人形誰か私を必要としてくれなぜ私は目覚めてしまった誰か私を見てくれ誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰か」

「ひっ…!?」

 

思わず悲鳴を上げ、後ずさる。

1度その言葉を聞いてしまえば、脳が嫌でも理解する。これは、ドクターが仮面の内に隠してきた本音なのだと。

そして、自分達が彼に押し付けてしまった事の重大さを、初めて知った。

彼は優しい人だった、だからこそ誰にも打ち明けられなかったのだろう。

彼の抱え込んでいた苦しみは、もはや誰にも手が付けられない程に肥大化していた。

 

それからまた何日か経って

ぶつぶつと呟き続けるのは相変わらずだがそのままにはしておけない、アーミヤが彼の身の回りの世話をすると申し出た。

幸いドクターが倒れてから様々なオペレーターがドクターの仕事を引き継ぐ為色々としてきたので問題はなかった。

そうしてアーミヤは、2人きりの病室で嗤って(泣いて)いた。

自分がドクターを苦しめていたことに泣き、こんな状況なのに2人きりでいられることに喜びを感じ、そんな自分に怒り。

彼女の感情はぐちゃぐちゃになっていた、もはや自分が何を思っているのかも分からないほどに。

そのせいで、彼女は道を誤ってしまう。

ドクターを、殺そうとしたのだ。

何を思ってなのかは分からない、これ以上苦しめないためなのか、自分だけのものにしたかったのか。

今となっては、分からないのだが。

彼女はドクターを殺すことは出来ず、自殺したのだ。

ナイフを取りこぼし、ロープに首をかけ、ドクターと同じように、首を吊った。

 

そして、その僅か数分後にドクターが意識を取り戻す。

いや、それは間違いだ。

ドクターは最初から、見ていたのだ。

アーミヤが自分を殺そうとすることも、自分と同じように死んだことも、見ていた。

狂ったふりをしていただけだった、彼自身もまた、アーミヤと2人でいられることに喜びを感じて居たのだろう。

彼女が段々と歪んでいくことにさえ、喜びを。

狂ったふり、などでは無かった。

彼もまた、狂っていたのだ。

 

ぐったりとして動かなくなったアーミヤを見て、嬉しそうに微笑む。

ベッドの横に落ちていたナイフを手に取り、心臓へ向ける。

 

「私はドクター

私は人でなし

 

心配するな、すぐに行くから」

 

そして、そのナイフを突き立てた。

 

後に残るのは、首を吊ったアーミヤと心臓にナイフを突き立てたドクターの死体のみ。

この光景は、次に誰を狂わせてしまうのか。

負と狂気の連鎖は、止まらない




1人でも胸糞悪いと思ってくれた方が居たらいいな
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