山賊略奪団   作:ポジョンボ

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ほう 英雄気取りのご登場か

 

 

 

冷え込んだスカイリムの夜、人通りなど無いある街道を

 

山賊長は数人の手下を引き連れて森の中を歩いていた。

 

 

それはいつぞやのような少人数での略奪を行おうとしているのではない。ましてやまた裏切られて住処を奪われたのでもない、だがかつての住処が山賊長以外の手に渡る、という意味ではある意味近い答えなのかもしれない。

 

 

違いをあげるのならば今回は住処を奪われたのではない

 

山賊長自らが住処を捨てたのだ。

 

 

山賊長達はとある鉱山を目指して歩いてた。遥か前に打ち捨てられてそのままにされた鉱山、予め目処をつけていた幾つかの候補のうち、最も最適だと判断された場所。

 

 

自分達の新たな住処を目指して歩いてた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「お知らせだ、ボス」

 

 

事の始まりは一ヶ月ほど前 山賊長は見張りをしていた部下から 帝国軍の兵隊 が砦の周りをうろつき、中の様子を監視していたとの報告を受けた。

 

 

 

 

 

 

 「!……そうかい、つまりそりゃあ……」

 

 

 

椅子に座り寛いでいた山賊長は、その報告だけで帝国軍の連中が何をしようとしているのか、その目的を理解した。

 

 

奴らのこの地に兵士を駐留させる拠点を欲しているのだ。

 

 

この古い砦はそのお眼鏡に見事叶ったと言うわけだ。

 

 

なにせこの砦は状態がいい。打ち捨てられた砦はこの地方には他にも幾つかあるが、どれも良くて半壊状態という有様だ。

 

 

当然ながら砦というのは強固な造りの上に設備が揃っている方が望ましい。この砦は(山賊達さえいなくなれば)設備を運び込み、兵士らを駐留させる、それだけでその条件を満たせるのだ。

 

 

 

 

 

 (連中は砦を奪いに来る…その過程で俺達との戦いになり、兵士共から死人が出ようとも…。)

 

 

 

 

今起きている内戦の最中に、この地方に足がかりとなる拠点を設けられる。それは連中の身になって考えてみれば、多少の犠牲は許容しても良いほどの利点になるだろう。

 

 

山賊長はそう結論付けた。

 

 

 

 

 「なるほどな、報告ご苦労さん」

 

 

 

今後の方針を決めた山賊長は、部下達に命令を下すため椅子から立ち上がった。

 

 

 

   

 

 

 

 

 

 

 

 

山賊長から砦を捨てるという命令が下されたとき、勿論手下の山賊達からは反対の声が上がった。

 

 

 せっかく手にした住処を何故明け渡さなければならない!

 

 すっとろい兵隊なんて何人来ようと皆殺しにしてやる!

 

 

 

しかし──

 

 

 

 

 「残りたい野郎は残ればいい、勝手にしろ 俺が行った後、帝国軍の相手をするなりなんなり好きにしな」

 

 

 

 

山賊長のその一声で反対の声も全て途絶える。

 

それに加え砦の実力者達、山賊長が去った後に次のボスの候補に上がる者達全員が山賊長について行くつもりだと知ったとき、反対していた者達も思う所はあれど彼らについて行く事を決めた。

 

無法者とて無謀なだけの戦いなどしたくはないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして現在 大人数での移動は目立つ為、何人かに分けた小隊でそれぞれ別々の進路から新たな拠点を目指していた。

 

 

 

 

 

 「だいぶ歩いたはずだが…まだ着かねぇのか…」

 

 「黙って歩けよ、無駄口叩いてっとボスを怒らせるぜ」

 

 「確かに寒いだけの外はもう沢山だ、着いたらホニングブリューのハチミツ酒をたらふく飲んでやる」

 

 「…俺はスクゥーマが欲しい…輸入物の奴」

 

 「だから黙って歩けって…」

 

 

 

ただ歩き続ける退屈に飽きて思い思いに喋りだす部下とは対象的に、先頭を行く山賊長は終始無言で歩いている。

 

 

 

 

 

「……………誰か来るな…」

 

 

その山賊長が不意に立ち止まり、背中の両手斧を構えた。

 

 

 「え?ボス…どうしたんです?」

 

 「なんだ、どうして立ち止まるんだよ」

 

 「いや、ボスが誰か来るって」

 

 「こんな夜に…クマか何かか?」

 

 「わからねぇよ」

 

 

 

 

 「人数は………一人か」

 

 

 

夜の暗闇の中でこちらに向かってくる松明の光が見える。

 

山賊長の言葉を聞いた部下達もその光に気が付いた。

 

 

 

深夜の街道 こんなところを一人で歩いている奴がいるのならそれは、暗闇で飢えた獣や怪物共に襲われて勝つ自信のある実力者、またはそう思い込んでいるだけの馬鹿者。

 

 

あとは街から離れて夜の暗闇の中を歩くという行為の危険性を根本的に理解していない真正の愚か者(そんな奴が実在するか知らないが)くらいしか考えられない。

 

 

そうして考えている間にも、その答えとなる何者かは街道の奥から歩いて来る。

 

近づいて全容が確認できたそれは鎧を身に着けた人物。

 

背中には黄金色の盾、店先でも余り見ないドワーフのインゴットを使った強固な盾が

 

左側の腰にはすぐに抜き放てるように下げられた剣、歪曲した片刃のそれは確かレッドガード達が使うシミターだ

 

 

着てる装備はバラバラで、胴体は盾と同じ材質のドワーフ製、手足は鋼鉄の籠手とすね当て、最も守るべき頭は何故か一番安価なありふれた鉄製のそれだ。だが重装備で統一されたそれは実用性の面でみれば十分と言えよう。

 

 

 

チグハグなその見てくれはまるで旅の最中に拾った物をそのまま身に着けたような印象を受ける。事実そうなのだろう。

 

 

 

 

 

 「へぇ…冒険者か」

 

 

山賊長は頭防具の中でこれは面白いことになりそうだと、笑みを浮かべる。

 

 

 

 

 

 「あら、山賊ね」

 

 

聞こえたのは女性の声だ。なんてことないように、まるで日常の風景の中で発せられたかのような声、だがそれにはお淑やかな雰囲気等とは無縁の、有り余る自身とこちらを見下す侮蔑の感情が含まれていた。

 

 

 

 

そこでようやく状況を飲み込めた手下の山賊達、途端に顔を醜い笑みで歪ませて武器を抜き放ちにじり寄る。

 

 

 

 

 「どうした姉ちゃん?夜のお散歩かぁ?」

 

 「感心しないなあ、夜中に出歩くなんて」

 

 「もし酷い目にあったって誰も助けちゃくれねぇぞぉ?」

 

 

 

その女性の周りを取り囲み、恐怖を煽ろうと語り掛ける。

山賊長はその光景を黙って見ていた。

 

 

 「はぁ」

 

 

女性が声を上げる、言葉というよりは溜め息に近い。

 

 

 

 

 「あんた達みたいなのが出しゃばって何が出来るのよ、大人しく家に帰ってママのミルクでも飲んでなさいよ。」

 

 

 

 

その場の空気が凍りつく、唯一山賊長だけが笑みを浮かべていた。

 

 

 

 「姉ちゃん…そりゃどういう意味だい?」

 

 「今、俺達を馬鹿にしたのか…?」

 

 

怒気をあらわにする山賊達。

 

 

 

 「えぇ馬鹿にしたのよ、どうするの?泣くの?」

 

 

そしてあろうことか彼らを更に煽る冒険者。嘲笑を交えたその侮蔑の言葉が山賊達の怒りに完全に火を付けた。

 

 

 

 「粉々に切り刻んでやる!」

 

 「死ね!薄汚いアバズレめ!」

 

 

 

松明を地面に投げ捨て、武器を手に斬りかかる。相手に戦いの心得があるのは一目でわかる。だが沸き立つ怒りが理性を吹き飛ばした。

 

 

だが相手が女性一人であること、こちらが複数人であるのとへの打算的な考えもあった。

ナマイキなこの女を組み伏せて甚振り、プライドをへし折り自分が弱者の立場であるとわからせてやるという下卑きった欲望も多いにあった。

 

 

だが予想外の事が起きた。

 

 

同じく松明を捨て、背中の盾を取り出した冒険者が前方から迫る山賊の剣を盾で軽々と防ぐ。そして反撃として振るわれた冒険者のシミターが斬り掛かった山賊の胴体を鮮やかに斬りつけた。

 

 

 

 「ぐっ…は……」

 

 

 

その光景に目を見張るもう一人の山賊、しかしもう自分も剣を振り上げていて止められない。とはいえあの女が攻撃を終えたばかりで隙を晒しているのには変わりない、そう思って剣を振った先には冒険者はいなかった。

 

 

 

 「何だと!?」

 

 

 

冒険者は横から振るわれる剣を予測し、背後へのステップでそれを躱していた。山賊の剣が空振りすると冒険者はその山賊目掛けて右手のシミターを前に突き出して飛びかかる。

 

 

 

そのまま山賊の胴体に突き刺さり貫通したシミター。

素早くそれを抜く、大量の血を吹き出し倒れ伏す山賊に目もくれず、先程斬りつけた手負いの山賊へとトドメを刺す。

 

 

 

左手の盾をそのまま振り抜くことによる殴打、それを顔面に2発浴びせれば手負いの山賊も倒れ伏して動かなくなった。

 

 

その光景を前に自分も襲い掛かろうとしていた山賊達が足を止める。その顔には動揺が拡がっていた。

 

 

 

 

 「はっ これじゃあトロールの方がまだ利口ね」

 

 

冒険者の言動はいっそ傲慢ですらあったが、今倒れた山賊達とこの冒険者では実力に大きな差があった。

 

 

 

戸惑う部下に構わずに山賊長が前に出た、その顔には先程までと変わらない笑みが浮かんでいる。

 

 

 「ほう 英雄気取りのご登場か」

 

 

 

場に全くそぐわない上機嫌な声色で山賊長が呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 「あら?貴方も挑むつもり?犯罪者らしく血の気が多いのね」

 

 

 「ふん、こうなると知ってて近づいたくせによく言う」

 

 

 

 

なおも侮蔑的な態度と嘲笑を辞めない冒険者

 

少しの動揺もなくそれに向かい合う山賊長

 

 

一瞬の睨み合いの後、お互いが同時に飛び出した。

 

 

 

 「あんたはクズ同然よ!」

 

 

 「お前のゴールドを数えるのが楽しみだ!」

 

 

 

 

まず振るわれたのは山賊長の両手斧 それを盾で防ぐ冒険者

 

しかし予想を遥かに超える両手斧のその威力、思わず体勢を崩しかける。

 

山賊長の追撃は力を溜めた渾身の振り下ろしだった

 

 

これは防ごうとしてはならない 本能でそう感じた冒険者は身を捻って右側に転がって回避する。攻撃の溜めの隙も相まって追撃を避けることができた。

 

 

この攻防により山賊長の笑みは更に深まり、冒険者は山賊長が先程の雑魚とは比べ物にならない強者だと理解した。

 

 

 

 

 

 (でも決して私ほど強くはないわ)

 

 

戦士としての自信か、生まれ持っての性質か

 

冒険者はこの状況でもそう判断を下す

 

 

冒険者が徐ろに盾を仕舞った その顔に焦りの感情は無く、その行為が諦めから来る戦闘放棄では無いことを物語っている。

 

 

 

冒険者が仕舞った盾の変わりに取り出したのは、もう一つのシミターだった それを左手に持ち、両手にシミターを装備した冒険者は改めて山賊長と対峙する。

 

 

 

 「二刀流か」

 

 

 山賊長は何処かつまらなそうに呟く。

 

 

 

 

 「そうよ?二刀流を相手にするのは初めてだった?」

 

 

言い終わると同時に今度は冒険者が先に攻撃を仕掛けた

 

二刀流を駆使した怒涛の攻撃 体を回転させ舞うように二本のシミターを振り回す。

 

 

盾を持たぬ山賊長は両手斧を掲げて攻撃を防ぐ

 

だがどうしても盾と比べて防御は脆くなる

 

 

 

防戦一方で反撃が出来ない山賊長を見て冒険者は嗜虐的な笑みを浮かべる。

 

 

 

 

 

 「今にも泣き出しそうね!」

 

 

連撃が加速して山賊長の鋼の鎧にも傷が付き始める

 

 

 「死ね!身ぐるみ剥がしてやる!」

 

 

冒険者が本性をあらわにして吠える

 

 

 「どうしたの?やり返しなさいよ!」

 

 

冒険者の嘲りが頂点に達したその時

 

 

 

 

ガキンッと金属がぶつかり合う音が響いて連撃が止まった 

 

 

 

 (…え)

 

 

それは山賊長が両手斧で防御したままの体制で武器を押し出し、振るわれるシミターの片方を弾いたのだ。

 

 

 

これは盾による防御術の応用 俗に言うシールドバッシュと呼ばれる技を、山賊長は両手斧で再現したのだ。

 

 

すぐさま両手斧を振るう山賊長 危機を感じ取り防御の体勢を取る冒険者

 

そう 左手にある盾で  

 

 

 

 「 あっ  しまっ   」

 

 

 

冒険者の左手にあったのは盾では無かった それは自分で取り出したシミターだった。

 

 

盾ではないそれ、ましてや両手で握ってすらいないシミターの防御など、山賊長の振るう両手斧の前では最早紙切れ同然の防御力だ。

 

 

あっさりとシミターは切り砕かれ、両手斧がドワーフの鎧を叩き割り冒険者の首筋へと食い込む。引き抜くと夥しい血が吹き出した。

 

 

 

 

 「あ、貴方の勝ちよ、降参するわ…」

 

 

力が抜け、地面に膝を付いて蹲る冒険者が命乞いを始めた。あれ程見せていた傲慢さと侮蔑の態度は消え失せていた。

 

 

 

 

 「そうかい、そりゃ嬉しいなあ」

 

 

そんな命乞いに耳も貸さずに両手斧で冒険者の首を切り落とす山賊長。そしてすぐにもう敵から戦利品に変わったそれを漁って金目の物を剥ぎ取った。

 

 

 「少しは楽しめたぜ お嬢ちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「オイオイ、笑えねぇぞ!」

 

 「クソッ!あのクソ女 二人も殺りやがった!」

 

 

山賊長と冒険者の戦いを見ているしか無かった生き残りの山賊達。馬鹿な獲物だと侮った相手に仲間が二人も殺されたのだ。何よりあのまま自分まで襲い掛かっていたら死んでいたという事実がより山賊達のプライドを傷つけていた。

 

このまま何も無しじゃあ我慢が出来ない

 

山賊達は持ち物と服ごと装備を剥ぎ取られた首の無い、元冒険者だった肉塊を見る。

 

コイツを切り刻んでバラバラにでもしたら少しは気が晴れるだろうか  あるいはコイツを……

 

 

 

 

 「おい、置いていかれたいのか?行くぞ」

 

 

 

そんな考えも山賊長の言葉でかき消える 

 

ここで置いていかれて獣のエサになるのも馬鹿らしい

 

 

 

山賊達は溜め息を吐いて、山賊長についていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから暫くして 山賊長は相変わらず無言で先頭を歩いていた。

 

 

後ろに続く部下達も無言だが、それはとても何かを喋る気分になれないだけだ。

 

 

そもそも山賊長が初めからあの冒険者と戦っていれば二人も死なずに済んだだろうし、自分らもこんな気分になることはなかったはずだ。

 

そう考えて そういえば奴に自分から近づいてったのは俺たちだ という事を思い出し、余計惨めな気持ちになった。

 

 

 

 

 

そんな風に考えていると また不意に山賊長が立ち止まる

 

 

 

 「おぉ?…今度は二人か」

 

 

 

山賊長のその言葉で下を向いてた視線を前に向け、前方の松明の灯りを見たとき山賊達は途端に警戒心を引き上げる。

 

 

 

 

 「おい、まさかまたか!?」

 

 「あんなのが何人もいてたまるか!」

 

 

 

 

灯りが近づき、松明を持つ者の姿があらわになる。

 

それはフードとローブを着込んだ二人の男女。

 

腰には鋼鉄のメイスが携えられていて

 

よく見れば手足には鋼鉄の防具が装備してある。

 

 

 

 

 

 「なんだアイツら…」

 

 「見たところ…魔術師…なのか?」

 

 

 

その者達を観察し様子を見る山賊。死んだ連中と同じ轍を踏まぬよう、いきなり接近したりはしない。

 

 

 

山賊長はよく観察するまでもなく彼らの正体を知っていた。

 

 

 

 

 「アイツらはステンダールの番人だ」

 

 

 

 「ナニモンなんですか…そのステンダールの番人って」

 

 

 

 「デイドラや吸血鬼を狩る集団だよ」

 

 

 

 「デイドラ…!あのオブリビオンの化け物…」

 

 「吸血鬼を狩るだって…!?」

 

 

戦慄する山賊達、デイドラに吸血鬼、それらは無知な彼らでも知っている、このタムリエルにおいて人を脅かす恐怖の象徴だ。

 

それらを狩るだなんて常人の為せる事ではない。

 

 

 

 

 「…ククッ」

 

 

山賊長が堪えられないといった様子で笑いだす。

 

 

 「安心しろお前ら、アイツらは口だけさ」

 

 

 

 「へ…?口だけ…ですか」

 

 

 

 

 「そうさ、アイツらにデイドラや吸血鬼を一方的に狩れる実力なんて無いさ」

 

 

 「準備も足りなきゃ技量も無い、使えるとすれば未熟な回復魔法にシールドスペル…それすらも奴らが着てる付呪付きのローブの力を借りてやっとってとこだ」

 

 

 「奴らが勝てるとしたら、思い上がった新米死霊術師か、スケルトンくらいだろうなあ」

 

 

 

 

 

 

 「ええっと…つまり…」

 

 

 

 「あぁ、雑魚だよ」

 

 

 

その言葉を聞いた山賊達、安堵の表情を浮かべた後に、何かを思いついたのか顔を笑みで歪ませる。

 

 

 

 「ならボス…奴らを殺すのは俺達がやっていいですか?」

 

 

何故そんな提案をするのか それは冒険者との遭遇により失った自信を取り戻す というよりも先程の一件の鬱憤をただの獲物に過ぎないと判明したあのステンダールの番人とやらで晴らしたいのだ。

 

 

 

(それに聞き間違いではなければボスは付呪のかかったローブといった…つまり奴らの着てるローブは魔法の掛かった高値の品だ)

 

 

そんな部下達の内心を察した山賊長は答える

 

 

 

 「良いだろう 逃がすんじゃねぇぞ」

 

 

 (まぁああは言ったが、技量はともかく気概だけはあるからな…お前らよりかは強いかもしんねぇが……)

 

 

そう思っても言葉にはしなかった

 

 

そうして山賊長はステンダールの番人達の前まで姿を表す。

 

 

 

 

 「…ん? なんだ!お前たちは!」

 

 

気付いたステンダールの番人が言うやいなや、山賊長の横にいた手下の山賊達が前に出る。

 

 

 

 「よぉステンダールの番人さん 遊んでやるよ」

 

 「金目の物を出しな、まぁ出したって殺すけどな」

 

 

 

 

 

 

 

 「お前達…山賊か!」

 

 「私達が人間には絶対に手を出さないなんて思ったら大間違いよ!」

 

 

 

 

互いが武器を構え、今にも戦いだそうとしている。

 

 

それを眺める山賊長 その心情は捕まえたオオカミ共を争わせる賭け事をしている時に似ている。

 

 

 

一触即発の殺伐とした空気が最高潮まで到達したその時

 

 

 

 

 

   「なるほどなぁ……素材が…5つ」

 

 

 

この場の誰でもない声が、両者の間に割って入る

 

 

視線を向ければ、それは闇に溶け込む様な黒ローブの人物、胸に白の染料で髑髏の模様が描かれている不気味なその男。

 

 

突然の乱入者を警戒し、注意深く観察する山賊と番人。

 

 

その乱入者はその視線を山賊と番人、双方に向けたあと

同様に山賊長にも視線を向ける。

 

 

 

 

 

 「一人は……合格だ…我が探究の礎となる資格がある……他は駒だな」

 

 

 

意味のわからない、だが何処か不穏な何かを感じさせる言葉を呟く男

 

 

 

山賊長は黙って男を見ていた。防具の下の顔に笑みは無い。

 

 

 

 

 「あぁん?なんだこの野郎は」

 

 「これからお楽しみだっていうのによお」

 

 

 

 

 

 「その格好は…魔術師なのか…?」

 

 「まさかデイドラの崇拝者じゃないでしょうね」

 

 

 

 

 「そうだ 私は魔術師だよ」

 

 

 

 「「…………………」」

 

 

 

 

辺りに静寂が満ちた 耐えかねて誰かが何かを言おうとして

 

 

 

 

 「ふーむ…ではまずはそう……やはり」

 

 

 

また男が何か言い始めた。

 

 

水を刺され、いい加減鬱陶しくなった山賊が男から始末してやろうかと思い至ったその時

 

 

 

 

 「こうだろうな」

 

 

男が右腕を山賊の一人に、左腕を番人の一人に向けた

 

それを見た山賊長は背中の両手斧を素早く取り出す。

 

そして男の両手から青白く光る何が放たれた

 

 

 

 「は?」

 

 

 「え?」

 

 

 

 

矢の様な速度で飛び出した、男の手から放たれたソレ 片方は番人の一人に命中し、もう片方は山賊の一人に命中した。

 

 

 

山賊は一瞬何が起きたのかわからなかった 気付いた時には自分の隣にいた仲間が、胸から巨大な氷塊を生やして息絶えていたのだ。

 

 

 

番人の方も同様で、仲間の突然の死、それも巨大な氷塊が頭蓋を突き破って死ぬという悍ましい光景を前に狼狽えている。

 

 

 

 

 「ッ ああ!嘘だろ!」

 

 

 

 

 

 「貴様!? 何を 突然!」

 

 

 

 

山賊と番人の叫びを無視して、男はまた両腕を残った山賊と番人に向けた。

 

 

それを見て凍りつく山賊と番人 先程と同じ光景を作り出さんとする男を前に死を予感する。

 

 

 

 

だが男の手から氷塊が放たれるより前に、山賊長が男に斬りかかった。

男の方も見えていたのか攻撃を止め、飛び引いて両手斧の横振りを躱す。

 

 

油断なく構え、相対する男と山賊長 緊迫した空気の中

男が不敵な笑みを浮かべる。男が突然腕を上げた その手のひらから不気味な青い光が迸る。

 

 

その時不思議な事が起きた

 

 

 

胸を氷塊で貫かれた山賊が、誰の目から見ても既に死んでいるその山賊が、まるで何かに胴体を引っ張られて動かされたかのような余りに不自然な動きで立ち上がったのだ。

 

 

 

 

 「なに…?…オイ、お、お前…」

 

 

 

残った山賊はもう完全に思考が停止していた いったい自分達に何が起こっているのかわからない。

 

 

胸に氷塊が刺さったまま立ち上がった山賊、そして立ち上がった瞬間その山賊の首を切り落とす山賊長。

 

 ほう と感心するような声を上げる乱入者の男

 

また倒れ、体が崩れて青白い灰の山になったその山賊

 

 

 

 

 「ひ…ひぃ…!」

 

 

ここで起きた何もかもが自分の理解を超えている

 

 

 

 

 「知っていたのかね」

 

  

 

 「まぁな」

 

 

 

 「感心だな…でも駒はまだ残っている…」

 

 

また男の手のひらが青く光りだす。

すると今度は氷塊で頭を貫かれた番人が先程の山賊同様に不気味な動きで立ち上がる。よく見れば体から男が手のひらから放つ青い光と同じ不吉な光を纏っている。

 

 

次は番人が恐怖に支配された 理解を超えた現象を前にステンダールの番人としての矜持は呆気なく崩壊した。

 

 

 「わ、私の手には終えない!た、退却するぞ!」

 

 

落とした松明を拾うのも忘れ、夜の闇の中へと走り去って行ってしまった。

 

それを気にも留めずに男が語りだす。

 

 

 

 「私はね、一人の探求者としてそろそろ新たな領域に至りたいのだよ 今はそう…アンデッドをより頑丈に仕上げる方法の研究をしている、どうせなら素材も頑丈な方が良いだろう?」

 

 

その言葉で唯一生き残った山賊はようやく男の正体に気付く。

 

 「アンデッドを仕上げるって…死霊術……!」

 

 

 

 「光栄に思うがいいよ、君は合格だ」

 

 

 

恐怖で竦み上がる山賊、男の話を聞いて鼻で笑う山賊長

 

 

 

 

男が構えるのと同時に、起き上がった番人が山賊長目掛けて突進する

 

 

番人を迎え撃つ山賊長と、両腕に青白い光を纏いながら背後へ飛び引いて距離を取る男。

 

 

男は自分の勝利を確信していた。

 

 

 

 素材の質が悪いあのアンデッドで奴を殺せるとは思わない

 

 ほんの少しの時間さえ稼げればそれでいい 私が仕留める

 

 

 

男の重ねた両手に青白い光と尋常ならざる冷気が収束する。

 

それは破壊魔法という系統に連なる、文字通り攻撃用の魔法の一種だ。

 

男は死霊術に加え、素材となる死体を作り出す破壊魔法、それも人体の原型を留めたままに命を奪えるこの冷気の破壊魔法にも精通していた。

 

 

これはその中でも精鋭にしか扱えない高位の破壊魔法。

 

更に両手で唱えることで威力を増す技法が加えられている。

 

念を入れてこの工程を行うための隙が必要だった、そのための先のアンデッドだ。

 

 

目の前で番人のアンデッドが山賊長に斬り倒されて、灰の山になっていくのが見える。

 

 

だがもう遅い 既に溜めは終わっている。

 

 

勝利の確信と共に男、精鋭死霊術師はその両手から極冷の氷嵐を放とうとして

 

 

山賊長の放り投げた両手斧に首から上を切り飛ばされた。

 

 

 

 

 

  

 

 

 「死霊術か…くだらねぇ」

 

 

首のない死霊術師の死体を見下ろしながら山賊長が吐き捨てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

変わらず先頭を歩く山賊長。そして新たな我が家まであと少しにも関わらずキョロキョロと辺りを見渡して、少しの物音も聞き逃すまいと警戒しきった手下の山賊。

 

 

 

 

 「そんなに怖がんなよ」

 

 

その様子を茶化すように笑って山賊長が言う。

 

 

 

 「つ、常に警戒しなきゃ…何が起こるか」

 

 

 「何をどうしたって死ぬときゃ死ぬさ」

 

 

 「そ、そんなの認められるか!!近づかれる前に殺してやる!!」

 

 

緊張からの興奮で大声で叫びだす手下の山賊

 

 

 「デカい声を出すもんじゃねぇよ」

 

 

笑いながら答える山賊長 手下の背後、街道脇道の大木から緑色の燐光を放つ羽虫を大量に纏った人影が這い出してくるのも勿論見えている。

 

木でできた人に似たその姿、体内が空洞となっており緑光の羽虫達がその中を飛び交っている。

 

 

 

 

 「俺は絶対に生き残ってやる!ぜっ…」

 

 

 

木でできたその怪物 スプリガンが音もなく走り寄り、鋭い爪を振るい山賊の首筋を深く掻っ切る。

 

 

 

 

「次は化け物か?」

 

 

血を吹き出し崩れ落ちる手下を捨て置き、山賊長は嬉しそうに笑いながらその怪物と対峙する。

両手斧を構え走り寄って斬り掛かった。

 

 

 「その首を壁に飾ってやる!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後

 

 

 

 

 

山賊長が化け物を殺して、新たな住処に着いた時には既に夜が明けかけていた。

 

 

 

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