Muv-luv BreakThrow 技術チートで変える未来   作:あるすとろめりあ改

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15『第2世代戦術機開発日誌-1』 1984.08.10

1984年8月10日

兵庫県 河崎重工 明石工場

 

 明石工場にあるオフィスに、一人の男が入ってきた。

 彼は一度辺りを確認する様に見渡してから、目的の席に座りデスクの上に置かれたPCの電源を入れる。

 

 

 

> JEC PC-9800 シリーズ パーソナルコンピュータ

 

> Starting B-TRON 0.0.08

 

> © 1984 Project HOKI / JEC Corporation / The University of Tokyo

 

 

> 確保した拡張メモリ容量は 65536 KB です

 

 

 

 

> Please Scroll ↓

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Version 0.0.08

© 1984 Project HOKI / JEC Corporation / The University of Tokyo

 

 

 

 PCの起動画面を確認した後、彼はログイン画面にIDとパスワードを入力。

 そしてデスクトップ画面から『邦畿計画』と記されたフォルダを選択し、その中に保存されていたデータの閲覧を始めた。

 

 

 

date:1983.02.04{edit:1984.07.01}

 

>本日より自律稼動フレームの開発プロジェクトは斯衛主導の邦畿計画に統合され再出発することとなった。

>先月末に行われた第一回目の邦畿計画全体総会にて提唱された新素材の進捗を待ちつつ、我々はそれらを組み込んだ新型フレームや装甲の開発を行っていく。

>我々はある意味、邦畿計画における戦術機開発の統括を務める訳であるから、尚一層気を引き締めていこう。

 

 

date:1983.02.21{edit:1984.07.01}

 

>本日、斯衛軍より黒い瑞鶴が搬入された。

>邦畿計画における開発では、帝国斯衛軍の協力が得られ、戦術機をはじめとした各種機器や装備の提供が受けられる。

 

>ところで、元々この自律稼動フレームを採用した瑞鶴は『瑞鶴弐型』などと呼称される案も出ていたのだが、そもそも瑞鶴の制式採用が昨年の1982年であった事もあり、既に納入された瑞鶴も総て自律稼動フレーム搭載機に改めた上で瑞鶴自体の仕様の変更ということに落ち着き、名称の変更は行われなかったという経緯がある。

>尚、帝国陸軍でも同様にフレーム搭載型の名称は撃震のままであるが、現場では運用上の区別が必要とのことで『撃震改』などと呼ばれているという。

>従来型の瑞鶴に、年月で言えば自律稼動フレームよりもより長い時間を開発に関わっていた身としては何処かやるせない気持ちがあるが、同時にたった数ヶ月でこれまでの常識を総て塗り替えてしまいかねない程の衝撃を与えた自律稼動フレームの躍進を真近で見るのも、また感慨深いものがあった。

 

 

date:1983.03.10{edit:1984.07.01}

 

>“アドバイザー”こと須和恭太郎氏が初めてこの明石工場に訪れ、その顔を拝むことが出来た。

>邦畿計画の公表の際にその話は聞いていたが、まさか17歳の少年だったとは。

 

>と言うか、自律稼動フレームのレポート自体は2年前には既に存在した訳で、当初の甲型フレームを設計・考案したのは15歳、中学生だったという事になるのだが?

>しかもその上で急な設計変更に応じてみせたり一晩で戦術機用の新型OSをたった一人で仕上げてしまったわけで。

>あまりこの事について深掘りして考えるのは精神衛生上よろしくないな、うん。

 

>今日は工場設備の視察と我々への挨拶の為に訪れたと言う。

>先のフレーム開発における我々への感謝の言葉を述べてきたのだが、正直あまり貢献したとは思えないので、微妙な心境である。

>また、現在は京都に居を構えているので以前の様に電話やFAXでのやり取りだけでなく直接アドバイスすることが可能になると言っていた。

 

>いや、しかし、一晩で作業を仕上げてしまう神業というのは……正直、真近で見てみたいという願望がある。

>それとも、鶴の恩返しよろしく作業を覗いてしまうとバチでもあたってしまうのだろうか。

 

 

date:1983.05.06{edit:1984.07.01}

 

>ミノムシの糸から生成した繊維を利用したOFRPのサンプルが到着する。

>ただしその量は1tにも満たず、どこか一箇所のフレームとして試験するのが精々だろう。

>これはそもそもミノムシが越冬の為に糸を吐くという生態である以上その糸を採集するのは現状では不可能であり、岩清水織機が衣服等の利用の為に保管していたストックから提供して貰った物を利用する他にないからだ。

 

>試験課によれば、このOFRPの強度はおよそ3GPa。

>この時点で既に超高張力鋼の2〜3倍近くの値だが、更にタフネスが300MJ/m³以上という驚異的な数値を見せている。

>タフネスとは、その物質が破壊されるまでに吸収するエネルギーのことで、高張力鋼が約1MJ/m³、炭素繊維が約13MJ/m³、タイヤなんかにも使われる合成ゴムで約100MJ/m³といったところだ。

>つまり鋼よりも圧力に強く、ゴムよりも衝撃を吸収する靭やかさと強靭さを併せ持つ素材であるということ。

>弱点は有機物のタンパク質であるが故に工業製品としては熱にあまりにも弱いという特性があったが、スターライトを使用することでこれも克服されている。

>丈夫さや強靭さで言えば炭素繊維やアラミド繊維があるが、柔軟さと衝撃吸収性においては他の追随を許さない。

 

>しかし、よくもまあ、こんなものを見つけ出したものだ。

>何時だか、科学雑誌で蜘蛛の糸が同じ太さの鉄のワイヤーよりも何倍も強靭で実用化すれば世界が変わる……なんて特集を読んだことがあったが。

>まさか、それよりも先にミノムシの糸なんかを実用化してしまうとは……

>何を食べていたらそんな発想に至るものなのかね? 

 

 

date:1983.07.28{edit:1984.07.01}

 

>神鋼製鉄所から新型装甲のサンプルが到着。

>この新型装甲の母材は発泡金属であり、その内部にセラミック球や炭素繊維を封入した様な構造になっている。

>それだけ言われても意味不明だが、俺は何となしにコレが複合装甲の進化系ではないかと悟った。

 

>装甲、特に戦車の装甲の進化というのは砲弾の進化と共に歩んできた。

>今から数十年前に戦車砲や戦術機の120mm砲弾にも使用されている装弾筒付翼安定徹甲弾(APFSDS)という堅い装甲を貫くのに特化した砲弾が誕生する。

>その優れた貫通性からAPFSDSには避弾経始という概念は通用せず、当時では主流だった均質圧延鋼装甲(RHA)で500~1000mmを貫通してしまう威力があった為に、最早RHAでは限界があるとして次世代の装甲が求められた。

>そういった経緯で生まれたのが爆発反応装甲や複合装甲で、この複合装甲が戦車や戦術機を含めて現代では主流になっている。

 

>複合装甲の祖はイギリスで開発されたチョバム・アーマーとされており、これを含めて基本的に複合装甲というのは2枚ないしそれ以上の金属板の間にセラミックやFRP、ゴムなどの層がサンドイッチにされている構造だ。

>セラミックやFRPなどはRHAなんかよりも非常に軽く優れた硬度を持っているが割れやすかったり耐熱性などに弱点を抱えている為、それを補う為に表面にRHAなどの金属のケースを設けている。

 

>そして発泡金属は、主にアルミニウムの合金──いわゆるジュラルミン等──にガスを注入させて膨らませたものである。

>それ自体は1920年代には既に発明されていたが、未だに製品としての実用化は困難という代物であった。

>内部が気体で満たされる為に密度が非常に少なく軽量で、高い衝撃吸収性能を有しているが、通常の金属に比べて脆いという弱点もある。

 

>この2つのはどちらも『ある程度破壊される事で高い防御力を持ち、本当に重要な部分は守る』という性質がある。

>新型装甲も、発泡アルミニウムで衝撃を吸収し、セラミック球や炭素繊維が更なる侵攻を喰い止めるというコンセプトで、旧来の装甲に見られた『壊れない頑丈な装甲』とは真逆だ。

>故に複合装甲もモジュール構造を採用し交換することを前提としているが、自律稼動フレームも装甲の脱着が容易な構造なので相性は良いと言えた。

>あとは、実際にテストしてどれだけ装甲材として適しているかを確認するだけだが……

 

date:1983.08.02{edit:1984.07.01}

 

>本日はミノムシの糸を用いたOFRPのフレームに新型装甲を装着した上で、その防御性能の検証テストを行った。

>そのテストを見守るために邦畿計画の主任である須和恭太郎氏も訪れる。

 

>実際の装甲として運用することを前提として、既存の戦術機の装甲にも用いられるアルミチタン合金によるマトリックスと保持板でサンドイッチされた形に。

>アルミチタン合金単体である程度の防弾性能を有するため、36mm砲弾によるテストは行われず、各種120mm砲弾と74式近接戦闘長刀を実際に瑞鶴が保持し攻撃する事でその防御性能を確認する。

 

>まずは劣化ウラン貫通芯入り仮帽付被帽徹甲榴弾(APCBCHE)……表面のアルミチタン合金を貫通し内部で炸薬が爆発。

>しかし内部では発泡アルミニウムが幾らか融解したものの、それが逆に弾頭を蓋する様な形になり爆発は拡散せずに固着する。

>その後4,5発と繰り返しAPCBCHEが撃ち込まれるも破壊することは出来ず、実際に破壊する為に必要な弾数は後に検証するとして終了。

 

>次いでAPFSDS。

>こちらもアルミチタン合金を貫通するが、着弾を確認した時には弾丸が地面に落下し、更に粉砕されていた。

>検証した結果、内部に達した瞬間に着弾部の発泡アルミニウムが粉砕されるも、その粉末になったアルミニウムとセラミック球とがAPFSDSを押し留め、更にその運動エネルギーが跳ね返った事により劣化ウラン製の弾芯は耐えきれずに粉砕され落下、50mm程度の穴を開けたのみで殆ど効果はなし。

>こちらも数度試験したが、現行のAPFSDSでは貫通することはほぼ不可能であると結論付けられた。

 

>粘着榴弾(HESH)も試験したが、こちらもアルミチタン合金は破壊されども装甲そのものを破壊する事は不可能で、内部が剥き出しになったところに撃ち込むもやはり破壊するには至らず、こちらも後日に追加検証することに。

 

>最後に74式近接戦闘長刀。

>こちらは突撃級や要塞級の堅牢な外殻を破壊可能であるという実績があるため、流石に防ぐことは不可能であろうというのが殆ど一致した予想であった。

>ただ一人、須和恭太郎氏を除けば……

>結果、用意していた3本すべてが折れるという衝撃的な結果が待っていた。

>APFSDSの時と同様に、その運動エネルギーが74式近接戦闘長刀に跳ね返ることでスーパーカーボン刀身に亀裂が入り、逆に破壊されてしまったのだ。

>装甲の方と言えば、こちらは3本を消費しても漸く半分まで達した程度で、切断される様な様子は微塵もない。

 

>凄まじい防御性能を実証した訳だが、開発した須和恭太郎氏本人は『この装甲は発泡金属の内部構造を改め、セラミックや繊維の配合や配置を最適化する事で更に堅牢にする事ができる。その為には半導体の研究を進め高性能なスーパーコンピュータを開発する事と、それを製造する為の技術を培っていく必要がある』などと述べていた……

>まさかこれ以上を求めていると言うのか?

>私は、もうこれで充分ではないのかと思ってしまうのだが……

 

>いや、というかもうこれ、戦車級や要撃級の攻撃では文字通り歯がたたないのでは?

 




邦畿計画のロゴイメージ

【挿絵表示】

水色の歯車の丸枠は海と、技術が日本を包み込み世界を作る、というメッセージを込めたものです
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