Muv-luv BreakThrow 技術チートで変える未来   作:あるすとろめりあ改

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28『エネルギー戦争-2』 1986.08.13

『代金は、あなたですわ』

 

 

 恭太郎はその言葉の意味を理解すると同時に不可解さと面妖さに思考が言葉を理解する事に対して拒絶反応を示していた。

 狐につままれたというか、広大な宇宙空間で困惑した様な表情をする猫と対面したというか、そういう常識の成立しない未知の異空間に無理やり放り込まれた様な気分に苛まれる。

 

 この場が、石油輸出に関する話し合いの場となることは想定していたので当初はプランA……つまり、条件次第ではそれを飲んで取引に応じるという可能性もあった。

 しかし、須和恭太郎の身柄との等価交換という条件であれば、それはナンセンスだ。

 

 別に我が身が可愛いだとか、人身売買に対する倫理観だとかそういう話では無い。

 単純に価値が見合わないが故に取引が成立しないという根本的な問題だ。

 古鍛治サラが、いやここまでの規模となるとフェアチャイルド家やイギリス政府の関与まで疑わしくなるが、その見積もりがどの範囲にまで及んでいるかは想像もつかないが、見通しが甘いとしか思えなかった。

 

 須和恭太郎という存在の価値の本質が、その脳の中で巡る無数の知識の出力装置としてであったとしても、つまりその知識と須和恭太郎の価値はイコールであり、その知識の価値がたかが生産日量25万バレル程度の油田と等価である筈もない。

 例えば、まだ原料というか手段的に現時点において実現するのは不可能であるが、その気になれば常温核融合機構を作り出す事さえ可能なのだから。

 最早、須和恭太郎という存在は様々な観点においてプライス・レスな存在といっても過言ではないのだ。

 

 

「この身を差し出すつもりは無い。答えは、ノーだ」

 

 

 ハッキリと、拒否の言葉を告げる。

 それに対して古鍛冶サラは、意味ありげに妖艶な笑みを浮かべたかと思えば、椅子から立ち上がるとこちらへ歩み寄って来た。

 何事かと警戒し、こちらもその場から離れようとするが、既に古鍛冶サラは接近していて身体を縫い付ける様に椅子に抑えつけられてしまう。

 

 

「だめですよ……」

「はあ?」

「もっと冷静に考えてください……今は石油だけでもいずれは天然ガスや石炭にも影響が出ます、そうすれば日本は……」

「エネルギー資源が絶たれ、国自体が干上がると?」

「そういうこと」

 

 

 レースの手袋を纏った右手で、頬を撫でる様に触れてくる。

 そして、艷やかな口元を右耳のすぐ近くまで寄せてきて、吐息を溢しながら喋りかけてくるものだから、擽ったくて仕方がない。

 更にそんな体勢になっているものだから、何時ぞやと同様にバニラとかシナモンの甘くてスパイシーな芳香が漂い、かつ大きな胸を押し付けられる様な格好となってしまっていた。

 

 なるほど、典型的なハニートラップの手法だ。

 しかし、この程度は想定され、対策もされていたので今現在の恭太郎にはあまり効果はなかった。

 そして彼女は、これが初めて行うハニートラップか、若しくはその経験が明らかに少ないという事が僅かに表情に滲み、またその所作が不慣れによる焦りと動揺から徐々に拙くなっていくのが見て取れる。

 

 とは言え、これはつい最近に手解きを受けたときの受け売りに基づく分析なのだが。

 

 

「そちらが一方的に優位になる様な条件をそう易々と飲める訳がない」

「あら……これは公平な取引でしてよ?25万バレルもの油田はイギリスの他の油田と比較しても──」

「ただし、日本に渡すつもりだったのは、沿岸ではなく沖合の油田だろ?」

「…………」

「現在のイギリス周辺の情勢としては、西ドイツが陥落した事でオランダとベルギーも連鎖的に陥落、遂に昨年の10月にはイギリス本土にBETAが侵攻、一時はロンドン南部まで戦線が拡がった」

「ええ、その通りです」

「結果的には英仏海峡まで戦線を押し返すことに成功したが、このイギリス本土防衛戦の影響でイギリス軍、そして欧州連合軍の損耗は甚大。また北海に関しては……フィンランドのロヴァニエミにハイヴが建設されて以降、北欧は敗走を続けノルウェーも何時まで保つか不明、そんな状況で北海の油田を提案するとしたら、理由はあまり多くは無いだろう」

「そこまで仰るのでしたら、最後までどうぞ」

「ああ、つまりイギリスは須和恭太郎を人質に油田という生命線で日本を縛りつけた上で北欧側から侵攻してくるBETAを睨む防衛力を日本帝国海軍から拠出させるつもり……そうだろう?」

 

 

 つまり、結果的に日本が獲られるのは日産25万ガロン石油のみであり、更にはその油田を守る為に護送船団を組織して北海にBETAの魔の手が伸びない様に睨みつけておく必要がある。

 それだったら、当然無理やりにでもやりくりして他所から同等のエネルギー資源を輸入した方がコストもリスクも低い。

 初めから、日本にとっては割に合わない取引だったのだ。

 

 

「ええ、そうですわね……確かに、そういった思惑はあります。ただ──」

「イギリス政府が関与しているかまでは兎も角として……ここまでは飽くまでもフェアチャイルド家としての建前、そうだろ?」

「…………どういう意味かしら?」

「こちらが何も下調べをせずに来たと思っているのか?」

 

 

 彼女はイギリス人と日本人とのハーフという事もあって、情報省はその縁戚関係も念入りに調査していた。

 そんな中で出てきたのは、古鍛冶サラから見て父方の祖父にあたる人物……ウィンストン・J・フェアチャイルドの旧姓はクロックフォード。

 かつてアメリカの石油利権の総てを手中に収め、今も尚アメリカを裏から金融的にも政治的にも支配しているとまことしやかに噂される一族、その二代目現当主の次男であった。

 つまり、古鍛冶サラという人はフェアチャイルドの筆頭次期当主候補であると同時に、クロックフォード現当主であるジム・クロックフォードの曾孫にあたる訳だ。

 

 そして古鍛冶サラはジム・クロックフォードと連絡を取り合っている事が情報省の調査で発覚している。

 それは数日前にもあり、また情報省はとある手段を用いて傍受しており、この内容をある程度の段階まで把握していた。

 

 

「君が課せられた使命は須和恭太郎を日本政府および軍から引き離し、これ以上世界のパワーバランスが日本に傾くのを未然に防ぐこと……しかし、まさか真っ正面から人攫い紛いの様な手段を取ってくるとは思ってもみなかったが」

「…………あなたは、そこまでわかっていながら、何故?」

「それは勿論、商談をする為にさ」

「商談?」

「そう、貴女が言うところの公平な、フェアトレードをね」

「……」

「ただその前に一つだけ聞いておきたい事がある」

「なんでしょうか?」

「今、この場にいるのは──フェアチャイルド家の末裔か?それとも、クロックフォード家の名代(みょうだい)、どちらだ?」

「私は……」

 

 

 そこまでして、ようやく古鍛冶サラはしな垂れかかっていた身体を離した。

 重かった、とは口が裂けても言うつもりは無いが……圧迫感と緊張感から開放されて無意識に肺に溜まっていた空気が一気に漏れ出す。

 

 

「私は……サラ・古鍛冶・フェアチャイルドとしてこの場に来ています」

「よろしい。ならばフェアチャイルド家の者にしか頼めない話をしようじゃないか」

 

 

 元々、財団としてのフェアチャイルド家の興りはかつてのドイツの流れを組む神聖ローマ帝国に住まうユダヤ人であり、その息子達はフランクフルト、ロンドン、パリ、ウィーン、ナポリと欧州の主要な都市に進出し、血族としての繋がりも利用して世界最大の金融組織を築き上げたことに始まる。

 第2次世界大戦後から世界の金融の中心はアメリカはニューヨークのウォール街へと移行し、世界最大の資産家および世界経済の担い手という称号はクロックフォード家のものとなったが、それでも欧州、ひいてはユーラシア大陸の覇者は依然としてフェアチャイルド家だった。

 しかし、BETAの侵攻によって彼らの拠点であったドイツ、フランス、オーストリアは壊滅、フェアチャイルド家の力も大きく削がれることに。

 アメリカ企業にも投資の手は及んでいるので直ぐに破綻することは無いが……しかし、そのアメリカにある資産もアメリカ政府とクロックフォード家に握られているも同然。

 

 つまるところ、国としての屋台骨がアメリカに握られており、アメリカの匙加減一つで崩壊させられかねないという危うさと弱みを持っているのは日本もイギリスもさして変わりはなかった。

 

 

「まずはコレを見てくれ」

「何ですかそれは……液晶?タッチパネル?えっ、スタイラス無しでそんなに正確な反応を?!」

「これは携帯電話と言って……まあ、今秋にも発売する予定だからその時にでも触ってみてくれ」

 

 

 地図アプリケーションを開き、日本列島の南西、沖縄諸島の北で、丁度韓国のチェジュ島との中間にあたる海域を拡大し、表示する。

 

 

「ここは?」

「通称、第七鉱区……ご存じでない?」

「ええ、知りませんわ」

「まあ日本人でもよほど熱心な人間でも無ければ知らないからな……第七っていうのは韓国の基準で、北の海域から順番に見ていって7番目にあたる場所って意味だ」

「ということは、ここは韓国の領海?」

「いや、現在の国連海洋法条約における定義では日本の排他的経済水域ということになる」

「ええ?」

「まあ、どこの国でも領土、領海問題っていうのは根が深いだろうけど……」

 

 

 事の起こりは1968年にアジア太平洋経済社会委員会がエマリー報告書を発表したことに始まる。

 その報告書では、東シナ海の海底に石油などの資源が大量に埋蔵されている可能性を示すもので、これに対して日本と韓国は互いにこの海域の権利を主張した。

 その当時は1969年の北海大陸棚事件という背景もあり、陸地を基準とした自然延長説が主流であり国際司法裁判所は韓国側に優位な判決を下したが、韓国に採掘する技術力が無かったこともあり日韓共同開発協定が結ばれる形に。

 しかし、現在では200海里以下の大陸棚については地形よりも距離を基準とした排他的経済水域が優先される様になり、この問題の海域は日本の排他的経済水域に該当する事になる為、日本は日韓共同開発協定に伴う開発を協定の任期が満了する2028年まで実質サボタージュする腹積もりである。

 

 

「それが、フェアチャイルド家に何の関係があるというのかしら……?」

「話はここからだ、まずフェイズ1として日韓共同開発協定を破棄する、この段階において他国からも韓国に外交的干渉をかけてもらうが、それでも承服しない場合はフェイズ2として韓国側から国際司法裁判所に提訴させる」

「何故韓国側から提訴を?」

「これに関してはフェイズ3との二段構えで、もしも国際司法裁判所で決着がつかなければ、韓国は武力行使を検討するだろうから、そこまで行けば国連安保理の採択に委ねられるだろう?」

「つまり……最終的には拒否権の行使で有無を言わせない状況にするという事ですか」

「ああ、アンタには韓国への政治的干渉、国際司法裁判所の判事の買収、そして最終段階にまで至る様であれば常任理事国であるイギリスとフランスに拒否権の行使をさせる為の工作をして貰う」

 

 

 これは、要請や依頼といったモノではなく、命令だ。

 もしも飲めないのであれば、縁が無かったということでこの話は白紙になる。

 別にフェアチャイルド家に頼らずとも他の外交手段や複数のサブプランも用意してあるから、この強行プランに拘る必要は無いのだ。

 

 では何故こんなプランを提示しているのか?

 第一には感情的な話ではあるが、まあ随分とコチラの事を軽んじて戯れてくれたじゃないかという意趣返しとして。

 そして次点としては、既に1968年に国連主導で資源調査が行われ、石油が埋蔵されているポイントが発覚しているので調査の省略やライフラインとしての実用化までのスピードが考えうる限り最速であること。

 更にはこのプランが一番アメリカに対して牽制が出来る。

 『仮に浅はかな奸智術策を働いてきたところで当意即妙で殴り返してやるから覚悟しておけよ?』というプレッシャーを与えられる訳だ。

 

 

「………幾つか、私もお尋ねしてもよろしいでしょうか?」

「どうぞ」

「これは、日本政府の意向ですか?」

「まさか?そもそも、情報省が輸出制限の話を仕入れてきたのは一昨日のこと。弱腰な日本政府がそんな短期間で即応的に強気な外交戦略を取れる訳が無いだろう」

「随分と辛辣に言いますわね」

「事実だからな」

「つまり、貴方の独断ということですわね……ちなみに、その海底油田の埋蔵量はどれほどあるのかしら?」

「最低でも原油が2億バレル、現段階で技術的に採掘可能であるかを考慮しないのであれば、原油が1000億バレル、天然ガスが200兆m³というところかな」

「なんですって?」

「世界最大の原油産出国であったサウジアラビアの約1/3、天然ガスに至っては世界中のガス田の埋蔵量を総て足した数よりも多いな?」

「…………国際緊張度は確実に高まる大事にも関わらず政府の許諾は得ておらず、その埋蔵量だって飽くまでも推測値に過ぎない……そんな状態で、祖国を巻き込んだ大博打に賭けろと?」

「アンタは、自分で1兆ドルの価値があると見込んだ男の言葉が信じられないのか?」

「っ……!」

「いつBETAに総てを食い尽くされるかも分からないこの時代、そろそろアメリカのご機嫌を伺いながら窮屈な想いをして舵取りするなんて、いい加減にお互いもう終わりにしても良い頃合いじゃないか?」

「…………」

 

 

 一気に畳み込まれた故にか、それとも膨大な情報量を処理して飲み込む為にか、互いに沈黙が続いた。

 葛藤は大きかろう。何せ彼女の言う通り国を巻き込んだ大博打、しかもフェアチャイルドとイギリスはその腹に欧州連合を抱えており、つまりその影響は西欧の命運と未来にまで及ぶと言っても過言ではない。

 

 既に長考に入った古鍛治サラの身体は大きく距離を離し意識と視線は反れており、緊張と危機から解放された恭太郎は多少の時間を待つだけの精神的な余裕が生まれていた。

 そして、暫しの時間の後、彼女は決断する。

 

 

「わかりました、私も腹を括りましょう」

 

 

 

 

 

 

 RP社屋から出て待たせていた車に乗り込む。

 発進した頃にネクタイを外し、ワイシャツのボタンを2つほど外したところで、背もたれに身体を倒しながら思いっきり息を吐き出した。

 慣れないことはするものでは無いなと髪を掻きながら車内に備え付けられた水を飲んでから、漸くその気配に気がつく。

 

 

「中々おもしろいモノを見せて貰えたよ、須和恭太郎」

「鎧衣さん……」

 

 

 恭太郎の座った後部座席の隣には忽然と情報省外務二課に所属する諜報員である鎧衣左近の姿があった。

 彼は現状においても日本有数の能力を持ったスパイであり、後に“帝都の怪人”と称される程の逸材だ。

 

 

「いつの間に……?車に乗った時には姿は見えなかったと思ったのに」

「なに、ちょっとしたトリックさ」

「はあ……それよりも、見ていたのなら助けてくれるとか無いんですか?」

「アレくらいなら事前の予防処置でどうとでもなると判断した。実際、そうだっただろう?」

「まあ、確かに、そうですけど……」

 

 

 事前の予防という件で、少し頭痛というか目眩の様な感覚に苛まれて頭を抱えるように手を添えてしまう。

 いや、確かにそれは効果的な手段だったのだが────

 

 

「君みたいな若くて利己的で合理主義的な童貞は奇襲的なハニートラップにとても引っ掛かりやすい」

「む…………」

「しかし、如何に引き金の緩い銃だとしても弾を総て撃ち尽くしてしまえば暴発はし得ない、そうだろ?」

「…………」

 

 

 昨夜、結局恭太郎は実家に戻ることは無く情報省の庁舎で一夜を過ごす事になった。

 それは情報を取得する為ではなく……ハニートラップを対策する為の手解きを受ける為であった。

 実際に国外でハニートラップを仕掛けた経験のある外務二課で鎧衣さんの部下である女性諜報員を呼び付け……ありとあらゆる男を騙し情報を奪い去ってきた手練手管の技巧や閨房の甘言を延々と耳元で囁いたりなどして、恭太郎にその手の知識を叩き込むと同時に気をとことんまで絞り取られる羽目に。

 結果的に、そこに残ったのは燃え滓の如く煤けた恭太郎の残骸。

 そんな状態で、今日の交渉に臨んだのだ。

 

 

「お陰でとても疲れましたよ……」

「ハハハッ、若いんだからそれぐらいが丁度いいさ」

「ええ……」

「それよりも、彼女達の中から秘書官を選出してみてはどうかな?彼女達も情報省の諜報員としての知識や技術、武術を教育されているから君の役に立つ筈だ」

「ああ、それは……考えさせて貰います。割と、前向きに」

 

 

 再び古鍛冶サラの様な手合に近付かれても困るし、邦畿計画の事業は多岐にわたるし、何かと機密情報の扱いが多いので技術省の協力者が側に控えているのは有り難いことだ。

 恐らく、監視役というか首輪を繋げておきたいというのが本心なのだろうが……

 

 

「しかし、君も随分と大きな風呂敷を拡げてみせたじゃないか」

「え?」

「さきほど古鍛冶サラに話していた第七鉱区の件だよ」

「ああ……」

「だが、やはり君は素人というか未熟だな。交渉の為とはいえ手札としての詳細な情報を出し過ぎだ。正直、ヒヤヒヤさせられたよ」

「すみません……」

「安心したまえ、あの部屋には盗聴器も録音録画をする様な装置も無く、監視カメラはあったが事前に警備員を無力化して身代わりを置いておいたからね」

「本当に、お手数をお掛けしました……」

 

 

 いや、というか本当なら外務省が情報を漏らさなければこんな場に来なくて良かったし、交渉は自分の仕事では無いのだが……

 等と愚痴りたい心境もあったが、実際に不手際がありそのフォローを鎧衣左近が務めてくれた手前、何も言えなかった。

 

 

「しかし、本当にどうするつもりなんだ?君が語っていた壮大な計画を実行する為には内閣政府を動かす必要があるぞ?」

「動かしますよ、政府ぐらい」

「ほう、政府ぐらいと出たか」

「放っておいたら日本が沈むかどうかっていう癌なんですから……その治療薬が劇薬でも躊躇いませんよ」

「だが、首相や大臣連中は首を縦に振るかな?」

「頷かせますよ、外務省の不手際っていう攻め口がありますし、それに今回の交渉の内容は情報省として内閣に報告するんでしょう?そうしたら、須和恭太郎の置かれた立場の危うさも利用できる」

「自分自身を人質にするということか」

「ええ、実際にアメリカやイギリスに渡ってもどうやら働き口はあるみたいですからね」

 

 

 まあ、アレだけ啖呵を切っておいて『やっぱり拾ってください!』なんて弱音を吐いて泣きついたら滑稽にも程があるが。

 

 

「まったく、一介の技術者が国を動かそうだなんて前代未聞だな」

「それぐらいの事をやらなきゃならない程にまで、もうこの世界は終わっているんですよ……まったく、どこの国の連中もその危機感が皆無なのが困りものです」

「…………君は一体、何をするつもりなんだ?」

「世界を救うんですよ。そのついでに、日本も救っておきます」

 

 

 それから、鎧衣左近と雑談やら質問に応えたりしていたが……正直、疲労が限界で何を喋ったのか覚えていない。

 もしかしたら、尋問や拷問で良く使われる手段らしいので、疲れさせた上で情報を引き出しに来たのかもしれないが────

 





鎧衣さんがいなかったら、イギリス便かアメリカ便の船に乗せられてたかもしれないなぁ……
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