Muv-luv BreakThrow 技術チートで変える未来   作:あるすとろめりあ改

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49『理想の新幹線-2』 1989.11.29

「しかし……如何に車体傾斜装置が優れていたとしても、300km/hを超える様な超高速域では騒音も尋常じゃない筈だぞ」

「ええ、961形で試験した際には300km/hにてトンネルを通過時の騒音が120dBを越えていました。380km/hともなればどれほどになるか想像もつきません……」

 

 

 961形は0系をベースにした試験車両で、高速走行試験や200系新幹線のプロトタイプとして使われた車両で、1973年に製造された。

 確かに1979年には当時の電車における世界最速である319km/hを記録したが……多少ノーズが長くなっていたり雪の侵入防止の為に台車カバー等がついていたからと言っても、所詮は0系の派生型。

 基本設計が30年近く前の車両と同列で語って欲しくはないのだけども。

 

 

「ああ、では……その辺りも一つ一つ説明させて頂きますね」

 

 

 カーブの次は騒音問題。

 これも、新幹線のスピードアップを阻む原因の一つで、本質としては空気抵抗との戦いだ。

 その基準としては公害対策基本法にも明記されており、車両が通過する場所から25m離れた位置において住宅街では70dB以下、その他の商業区等では75dB以下にするようにと定められている。

 0系、100系、200系新幹線が運用されていた頃では40〜60%の割合でこの基準を超過しており、つまりそれをベースとした961形などは高速走行には適合しない形状であるのは明白。

 実際、E2系や500系が走行していた時期のデータを見ると、平均はおよそ72dBと低下しているのがわかる。

 つまり1989年現在においては未だに環境基準である75dBを平気で上回っていた頃だから、技術者達が騒音に敏感なのは致し方ない、とも言えるのだ。

 

 

「まず、新幹線の騒音の要因は大きく分けて5つ……『先頭部空力音』、『車両上部空力音』、『車両下部音』、『集電系音』、そして『構造物音』です」

 

 

 最後の構造物音だけは車両に対する工夫よりも、線路の両側に遮音壁を設けたりトンネルにダクトを設けたり緩衝工を設置した方が効果は著しい。

 これは別に対策を施すとして、今回説明を行うのは車体構造や設計に関わってくるのは大きく3つ。

 

 

「最初に先頭部空力音についてですが……つまり先頭車両の形状は、正直なところ単純にスピードを出すという意味だけで言えば0系の形状でも問題はありません」

 

 

 0系新幹線には第二次世界大戦で培われた航空機の技術がフィードバックされている。

 2000馬力級のレシプロエンジンをまともに量産出来なかった当時でさえ500km/hや600km/hを越える航空機を製造していたのだから、400km/h程度を出して強度不足だとか操縦不能になるような空力特性にはなっていない。

 ただし、騒音を論点とすると話は変わってくる。

 戦闘機にせよ旅客機にせよ空にトンネルなんてある訳も無く、高度数千メートルを飛行する事を前提としている航空機の設計が僅か25m先で聞こえる音を想定している訳がない。

 

 

「とは言うもののトンネルの無い場所……つまり、いわゆる“あかり区間”では300系の様な形状でも300km/h域にて70dB以下に抑えられるでしょう。問題はさきほど指摘にもあったトンネル微気圧波です」

 

 

 列車が高速でトンネルに突入すると、列車の先端に空気が押し出される形で圧縮波が形成され、その圧縮波はトンネル内を音速で伝播し、トンネル内という逃げ場の無い空間によって圧縮強調されて衝撃波の様になり、反対側のトンネル出口から外側に向かってパルス状の圧力波を放出する。

 その圧力波はトンネル出口から凄まじい衝撃音が生じ、また周辺の家屋を振動させる程である。

 この現象のことを『トンネル微気圧波』、または『トンネルドン』という。

 トンネル微気圧波を緩和する方法は主に3つ。

 

 ①表面断面積を極力減らすこと。

 ②先頭長(ノーズ)を長くすること。

 ③形状を最適化すること。

 

 表面断面積の減少は、つまり先端をできるだけ細くするという事だが、これには限界がある。

 新幹線の先端には連結装置を設ける必要があり、更に運転手の視界を確保する為の高さと運転席及び運転設備を設ける為の幅が必要になるからだ。

 なのでそれ以外の部分を可能な限り極力削るという方向性でデザインされる事が多い。

 

 次に先頭長、ノーズ。

 つまり、車両の一番前方にある乗車口よりも前方から最先端部までの事だが、500系以降の新幹線のノーズの長さは殆どが10m以上となっており、逆に旧式の0系では3.9m、また100系では4.8mと短い。

 ノーズが長ければ長いほど、先端部に集中した空気を後方へと受け流す余裕が生まれる為、E5系新幹線では15mという非常に長いノーズを有している。

 但し、ノーズが長くなるとその分だけ先頭車両の座席に確保できる面積が減少し、比例して乗車定員数も削減されてしまうというデメリットがある。

 故にノーズは輸送力の確保も念頭に置くと10m程度が現実的だろう。

 

 そして形状の最適化……これは一言で説明するのが難しいが、トンネル微気圧波の観点から言えば、トンネルに突入して空気の壁に衝突した時に空気を前に押し出さずにできるだけ後方へと受け流す様な形状が好ましい。

 

 これらの3つの観点からのトンネル微気圧波への対策に本格的に初めて取り組んだ車両こそが500系新幹線である。

 500系新幹線の表面断面積は10.2m²、ノーズ長は15mで、これは300系の6mから約2.5倍も伸ばしている。

 更に形状はカワセミを模倣したものとすることでトンネル微気圧波の緩和に成功している。

 

 

「よって、トンネル微気圧波を対策する為にはこの3つの観点から形状を模索する必要があります。事前に頂いた旧300系の設計のままだと……これは、気流が車体下部にまで流れ込むので300km/hまで加速させると凄まじい揺れが襲うのは当然と言えますね」

「むぅ…………」

 

 

 また形状に関しては断面積の変化率が一定であることが望ましく、これはN700系新幹線などを見ると分かり易い。

 運転席部分がどうしても視界を確保する為にはある程度の突出部が必要となり盛り上がってしまうのと、空気を後ろに流す為の翼の様な形状とする為に若干横に拡げる必要がある。

 故にN700系新幹線を真正面から見ると真ん中の辺りが内側にへこんで絞られた様な形状になっているのが見て取れる。

 つまり、表面断面積をできるだけ小さくする為に出っ張ってしまう部分と帳尻を合わせる為に別の部分を狭めるのだが、その比率を揃える事でより静音化に期待できるのだ。

 N700系が複雑な形状をしているのは、空気を後方に受け流しながらも、今度はこれが最後部車両となった時に背後から流れてくる空気を上手く前方へと逃がす垂直尾翼の様な効果を兼ね備えつつ、運転手の視界を確保する為である。

 殆ど白一色で分かり辛いが、実は運転席部分も楕円形に盛り上がった航空機のコックピットの様な形状をしていて、何だかんだ言って500系の設計の一部を受け継いでいる痕跡があるが……まあ、コレは余談だ。

 

 ちなみに、500系の様に“絞り”が一切無い純粋な流線形状で断面積の変化率を一定にしようとすると、運転席が狭く、かつ視界が悪くなってしまう。

 なので、この500系新幹線の形状の系譜にある試験車両のFASTECH 360S・ストリームラインとE7系新幹線では極端な流線型ではなく側面に“絞り”が設けられているのだ。

 

 

「以上を踏まえまして、先頭車両の形状はノーズ長を10m程度とし、表面積を減らす為にノーズから後方の断面形状は円筒形に、先端部も極力削り取った形状とします」

 

 

 そうして導き出される形状というのは、特に側面だけを見るとE6系新幹線やE8系新幹線、もしくはALFA-Xの1号車に類似した形状になっていく。

 当然と言えば当然で、同じデータと理論を参照して最適解となる形状を設計する訳だから、凡そ同じ場所に線が引かれる事になるのだ。

 

 

「し、しかし!実証も検証もしていない理論から車体形状を導き出してもそれが本当に静音化に繋がるか分からないじゃないか!」

「それに!円筒形状は運転席の視野と環境が悪くなると自分で説明していたじゃないか!しかも客車まで円筒形にしたら圧迫感も……」

「ああ、はい。検証に関しましては、コンピューター上でのシミュレーションと模型による風洞試験は既に終わっています」

「…………え?」

「車体部分はウチ(河崎重工)が製造する予定ですからね。弊社には戦術機開発用の風洞試験設備がありますので」

 

 

 

 戦術機は、地上戦だけでなく跳躍ユニットによる空中戦やハイヴ攻略の為に蟻の巣の如く張り巡らされた地下トンネルを幾つも通過する為、それらを想定した風洞試験が必要になる。

 なので、河崎重工の設備を借りる事でコンピューター上で設計された3Dデータを即座に3Dプリンターで成型し、そのまま400km/hでの通過に伴うトンネル微気圧波の影響を試験することが容易に可能であった。

 その結果、400km/hにおける25m先での想定騒音は80〜95dB程度。

 このままでは70dBの環境基準をクリアできないが、勿論解決策はある。

 

 

「ノーズ長を22m程度まで延長できれば車体形状の工夫のみで環境基準はクリアできるでしょうが、そうなれば先頭車両にはトイレを設置しないとしても精々20名程度の乗客しか収容できない…………ですので、トンネルの方を工夫します」

「トンネルを……?しかし、一々トンネルを改修していたら費用も時間も幾らあっても足りないと思いますが」

「ええ、ですから正確には緩衝工の改修と追加設置ですね」

 

 

 トンネル緩衝工とは、トンネルの出入り口部分に設置されるフード状の構造物のことである。

 トンネルを20〜40m程度延長する様な形で設置され、かつトンネル孔の直径よりも更に1.5倍程広い幅があり、よりトンネル内から放出される圧力波を拡散、分散させる事でトンネル微気圧波を軽減することが出来る。

 更にこのトンネル緩衝工に煙突の様な排気ダクトを設ける事によって圧力は10%程度軽減し、かつ騒音は緩衝工無しと比較して20dB近く軽減できるのだ。

 つまり、95dBであれば76dBまでの静音化。

 トンネルがあるのは山岳部であり、基本的に住宅地とは判定されない事と、試験では400km/hの速度域での想定であるが実際に走らせる時は380km/hを予定しているので、騒音は更に軽減される。

 

 

「そして客車部分まで楕円形状にすることによる圧迫感についてですが……これは車体上部空力音の軽減にも関わってくるので併せて説明させて頂きます」

 

 

 客車部分まで円筒形状にすることで断面積を小さくすることで空気抵抗を減らし静音化する事が出来るが、指摘された通り窓際の席の天井部が低くなり圧迫感を与えてしまう。

 これは実際に500系新幹線でもその問題点から一部の乗客からは不評だった。

 なので、この部分にも工夫を加える。

 

 後述するが、車体傾斜装置やモーター等の機器類は邦畿計画によってもたらされた技術を導入することで省スペース化が可能になる。

 基本的に新幹線は乗客の乗車部分の床から天井までが2.1m、床から台車底までが1.3mで、その1.3mに走行機器が収まっているが、省スペース化することでこれを1.0mにまで縮小、そして余った0.3mを乗車部分に充当することで床から天井の高さを2.4mまで拡張する。

 2.4mというのはジャンボジェットと称されるB747の床から天井までの高さとほぼ同値であり、また荷物置き場と円筒形状による傾斜で窓側は天井高が低くなるものの、それでも最底辺部にて1.8mの高さを確保しており、従来の新幹線と変わらない規模を実現する事が出来た。

 少なくとも、先頭車両にて荷物置き場を敷設する高さが足りないので座席を減らして荷物置き場を設置する、なんて荒業をする必要は無い。

 

 

「次に車体下部音ですが、これは台車の側面に遮音板や吸音板による台車カバーを設けます。これを側面全体に設置することで鉄輪等の音を発する部分を遮る事になり、かなり音を削減できます」

 

 

 これは結局構造物音とも関わってくるが、基本的に住宅地等を通る部分は線路の側面には防音壁が設置されており、ここからの騒音は余り響かない。

 なのでまあ、車両の方で手を加えられるとしたら車重の軽量化とそれこそ台車カバーを設ける事ぐらいだろう。

 

 

「最後に集電系音……つまり、パンタグラフの部分ですね」

「パンタグラフの形状を変更するとなると架線そのものを設備し直す必要があるな……」

「いえ、そこはどのみちBT饋電(きでん)からAT饋電(きでん)方式への変更は必要ですからね。どのみち架線は一度敷設し直す予定ですし」

「ああ、いえ。架線の改修や敷設は必要ありませんよ」

「ん…………つまり従来のBT饋電方式のままで行くと?」

「違います。そもそもパンタグラフが不必要になるので、架線も完全に撤去してしまいます」

「はあ────っ???」

 

 

 何を言っているんだ貴様は、と言わんばかりの表情が無数に降り注がれる。

 まあ……意味がわからんよな、電車の話をしていたのにパンタグラフが不要なんて言われたら。

 電気機関車でも作るつもりなのかと問われても不思議では無いが……実質的に、電気機関車と言っても相違ないのだから、何も言い返せないだろう。

 

 

「そもそも新幹線の騒音で一番大きい部分が集電系音、つまりパンタグラフの風切り音な訳ですが……根本的な話として、そのパンタグラフが無ければ騒音問題の殆どを解決出来るというのは明白ですからね」

 

 

 パンタグラフは架線へと伸びる突起部であり、車体の平滑化という空気抵抗低減の大前提を大きく崩す要因となる。

 更に常に架線と接触し摩擦を起こしているので速度向上に伴い架線とパンタグラフの両方に耐久性低下を招き、そもそも擦れることで騒音を発生させる。

 トドメと言わんばかりに、そのパンタグラフから発せられる騒音を外へ漏らさない様にと設置されるパンタグラフカバーも……結局突起部を増やし、空力を損ねる原因となってしまう。

 

 だからもう、くの字型のシングルアーム式パンタグラフにして軽量化するだとか、多分割すり板式パンタグラフにして摩擦を極力減らすだとか、そういう工夫もパンタグラフ自体が無ければ不必要になるのだ。

 

 

「いやいや……どうやってパンタグラフ無しで電車を動かすと言うんですか……」

「バッテリー駆動です」

「バッ、テリー……?そんな大容量かつ大出力のバッテリーなんて……?」

「まだ開発中の物ですが、富田自動車さんが試作した繊維積層型蓄電池を使います」

 

 

 従来のリチウムイオンバッテリーの体積エネルギー密度がおよそ300~800Wh/l、対して繊維積層型蓄電池はバッテリーは体積エネルギー密度は約1500Wh/lと2〜5倍の容量があり、更に重量エネルギー密度は2200Wh/hと非常に軽量なのが特徴。

 実際に新幹線でリチウムイオンバッテリーによる駆動が試みられたケースがあるが、それはN700S系新幹線においてで、災害等非常事態に備えての緊急退避用の装備としてだった。

 N700S系には帝芝*1製のSCiBバッテリーのモジュールユニット*2を搭載して、それはユニットあたり576セルものバッテリー積んだ物で、更に1編成あたり8ユニット*3が搭載されているから約238kWhの容量を有していた事になる。 

 しかし、N700S系新幹線の出力は17MWだから、1%も満たない容量しかないということに。

 故にバッテリー駆動では30km/hで数分程度しか走行できず、地震などの災害によってトンネル内で停車を余儀なくされた際に車両をトンネルから脱出させる為の用途等に限られている。

 

 だが繊維積層型蓄電池を採用し、更にN700S以上に走行装置を小型化したことで16両全ての全電動車に設置をする事が可能になり、そうすれば同サイズのユニットとして置き換えただけでも約50MWhという容量になる。

 新型車両は250kW出力のモーターを64基搭載予定なので、単純に消費電力を16MWとみても3時間は駆動させる事が可能で、つまり東京から下関あたりまでバッテリーのみで走行できるという訳だ。

 

 

「し、しかし……そんな大容量をどうやって充電すると?!新幹線の架線から供給される電力でも満充電まで2日以上掛かる事になります!」

「そうですね、新幹線の架線の出力は約1.25MWですから。まあ、架線から充電しませんけど」

「えっ、えぇ……?では、線路に電気でも通してそこから給電し続けるとか?」

「いえいえ、そもそも物理的接触による充電は行いません。主電源は軍事機密に接触する為に情報は公開できませんが、ブラックボックスを搭載して賄います」

 

 

 何のことはない、ハイドロゲンリアクターを搭載するのだ。

 輸送機に搭載したリアクターは70MW級の大型な物であったが、今回は既存の新幹線の規格に合わせて1.25MW出力の比較的小型な物を搭載する。

 バッテリーも態々50MWhをギチギチに詰めずに20MWh程度に留め、かつ基本的にはハイドロゲンリアクターからの給電で走行させる。

 では、何故バッテリーを搭載する必要があるのか?

 これは、ブラックボックスとして搭載するハイドロゲンリアクターを詮索されない様にする為に、表向きはバッテリーからの給電によって走行している事にして、かつリアクターが不具合を起こした時にはバッテリーで緊急走行できる様にという保険の為だ。

 

 

「じゃ、じゃあ燃料を使用する機関車という事になるのでは……?」

「いいえ、燃料の補給も必要ありません」

「どういうことなの……」

「永久機関でも搭載しとるんか、コイツは……」

 

 

 ノーコメントで。

 君のような勘のいい技術者は嫌いでは無いが。

 

 

「さて、これで漸く騒音対策の説明が終わって、走行機器等の説明に移れますね」

 

 

 先ほどもチラと触れたが、まずはモーターから。

 従来の直流直巻電動機やかご形三相誘導電動機は、大出力の物を作ろうとした場合巻線はより太く、巻き数はより多くなり、そして大きくなった力を伝播させる回転子もより太くなっていき、どうしても大型化してしまう。

 また、より高熱を発するのでそれ相応の大型の冷却装置も必要になっていく。

 そこで、超伝導モーターに置き換える。

 超伝導モーターは電気抵抗が0になる為に大電流を流しても高熱を発することが無いので超伝導体の巻線は細く、そして巻き数も少なくて済み、磁力を向上させる為の鉄心も不要になるので小型軽量化する事ができる。

 従来のモーターと比較すると重量もサイズも1/10まで抑える事が可能になり、例えば300kW級のモーターともなれば1000kgを軽く超えるのが普通であったが、それも100kg程度に抑えられる。

 そして勿論、超伝導状態を維持する為には冷却が必要だが、冷凍機を車体傾斜装置及びハイドロゲンリアクターで用いる物と一元化して共有することが可能。

 しかもこのモーターは小型軽量化によって鉄輪の中に収める、所謂インホイールモーターとする事が可能になり、ダイレクト駆動になる事で運動エネルギーの損失が抑えられるので、250kWという380km/hでの走行を想定しているにしては低出力のモーターでも充分にパワーが足りる。

 

 

「インホイールモーターとすることで、走行に伴う振動は当然ながらモーターに負荷を与えますが、OFRPとゴムの多層リングをモーター周囲に配置する事で衝撃を吸収させます」

 

 

 リアクターからモーターへ電気を変換しつつ供給するインバータはGaO-FET VVVFインバータを採用。

 GaOとは酸化ガリウムのことで、今まではロジック半導体としてCPUに使用されてきたが、そもそも酸化ガリウムが本領を発揮するのはパワー半導体としてである。

 旧300系新幹線では従来の直流モーターから交流モーターへ方式を変更するにあたってGTOサイリスタによるVVVFインバータを採用していたが、GaOはサイリスタ素子や同様にパワー半導体であるSiC(炭化ケイ素)等と比べても圧倒的な高耐圧、高耐熱、高速性能を持つ。

 つまり、より効率的に大電流を変換・制御する事が可能でありながら従来型と比較して1/1000以上の小型化が可能である。

 

 

「最後に車体の構成材料ですが、内部にフレームとしてOFRPを採用し、外装はアルミニウム合金の亜種とも言えるカグツチを採用します」

「それじゃあ、まるでレールの上を走る戦術機じゃないか……」

「まさにその通りのコンセプトです」

「ああ、そう……」

 

 

 新幹線と言えば16両の1編成による重量は100系で830〜850t、技術の進歩により軽量化されたN700S系でも約700t弱*4である。

 しかし新型車両では金属材料に比べて圧倒的に比重の小さいOFRPとカグツチを採用し、更に前述の通りの走行装置の徹底的な小型軽量化によって編成重量は580tまで抑えられた。

 

 

「勿論、この設計図のまま制式採用する訳にもいかないので試験車両を製造しテストを行います。ご不満があればNR東海さんで計画されている300系車両と比較試験を行ってコンペティションを行ってからどちらを採用するか決めるという形でも構いませんが」

「いや、もう良いです……」

「もう勘弁してください……」

 

 

 NR東海と帝国車輌製造の関係者は総じて打ちひしがれ、グッタリした様に項垂れてしまって声もまともに出せない様子であった。

 すまないな……別に新幹線にまで未来の技術を振りかざすつもりなんて無かったのだが、恨むのなら理想の新幹線とやらを求めた榊大臣を恨んでくれ。

 

 そして、そんな絶望した姿に憐れみを覚えたのだろうか、河崎重工と常陸製作所の技術者達が近付き、励ます様に肩に手を置いて何か声を掛けていた。

 

 

「まあ、気持ちはわかりますよ……今この世界の、というよりも須和さんの技術は光のスピードで突き進んでますからね」

「立ち止まってると一瞬で置いていかれて化石みたいになってしまいますから、あーだこーだと考えたり文句を言うよりもその流れに乗ってしまった方が良いですよ」

「なんなんですか、アレは……」

「なんなんでしょうねぇ……」

「誰にも止められない暴走列車……ですかね」

 

 

 何か失礼な事を言われている様な気がするんだが…………?

 

*1
東芝

*2
飽くまでも予想だが、報道にある情報を精査すると東芝の2P12Sモジュール・Type1-23を搭載していると推測できる。1モジュールあたり24セルで容量は1242Wh

*3
主変圧器を搭載した車両ではスペース的に搭載不可能で、主変換装置にバッテリーが組み込まれていると考えられる。報道ではN700S系では約200kWhのバッテリーを搭載、とあるので矛盾も無い

*4
700tを下回ったと報道されているが、公式には編成重量が公開されていない






☆参考資料

・JR東日本 新幹線高速試験電車FASTECH360における沿線環境対策
https://www.jreast.co.jp/development/tech/pdf_31/Tech-31-47-55.pdf

・JR東日本 トンネル微気圧波を低減する先頭形状の開発
https://www.jreast.co.jp/development/tech/pdf_1/22-28.pdf

・JR東日本 新しいトンネル緩衝工(ダクト付・軽量パネル型)の開発
https://www.jreast.co.jp/development/tech/pdf_31/Tech-31-56-59.pdf



もしもこの世界にあのCMがあったら〜という妄想、戯れ


平安神宮


京都には古臭い物しか無い、そう思っていませんか?
1895年、日本で初めての電車がこの街から走り出しました
時代の最先端を行く京都、ここは過去と未来の途中駅……なのかもしれません
鉄の擦れる音が優しく耳を木霊して、暖かな光を帯びながら夢の超特急が西へ東へと駆け抜けて行きます
今度は私達に、どんな素晴らしい望みを見せてくれるのでしょうか
ちょっと、未来を覗きに行ってみませんか?


行京そ
こ都う
う だ
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