もう一方のは成り代わりですが、こちらはオリ主で執筆します。
第1話〝クロエ・D・リード〟
世界を一周する巨大な大陸〝
その世界を一周する航路〝
「ひやホホ!! 身の程を知れ、未熟者共が」
あごひげをゆすり、笑いながら壊滅した一団を見下す。
巨漢の名は、チンジャオ。
〝
今日もいつも通り敵対する海賊達を、十八番の頭突きと祖国発祥の防御不能の衝撃を操る〝
「お頭!! ガキを発見しました!!」
「何だと?」
部下の報告に、眉を顰めて甲板へ向かう。
視線の先には、野犬みたいに目つきが悪い荒んだ出で立ちの少女がいた。
何というか……びっくりするぐらい無愛想なのが見ただけでわかる。
「身元はわかるか?」
「いえ、全く……ただ服に名前と思われます刺繍が」
「おい、見せてみろ」
チンジャオが堂々とした佇まいで言い放つと、少女はムスッとした表情で服の裏を見せた。
そこには「CHLOE・D・READ」という文字が刺繍されていた。
(クロエ・D・リード……〝D〟の名を持つ女か)
チンジャオは目を細めると、少女を質した。
「小娘、貴様何歳だ?」
「……7歳。それが何なの?」
少女――クロエ・D・リードの一言に、海賊達は唖然とした。
ビックリするくらい愛想がない!
「……身寄りがないなら、私のところに来い」
チンジャオの言葉に、クロエは眉を顰める。
しかし残念な事に行くアテはなく、ましてや海賊が跋扈するこの世界だと今の自分は間違いなく無力だ。
チンジャオの言葉に、従わざるを得ない。
「ひやホホホ!! 私の所へ来るのを非常に嫌がっているが……この海で自由に生きたいのならば、生き残る術や強大な力が必要だ。私が鍛えてやろう。悪い話ではないと思うが」
フン……と不敵な笑みを浮かべるチンジャオ。
自信に満ち溢れており、自分ならお前を強くできるという確信を孕んでいる。
「…………わかりました」
『イヤそう!!!』
しかめっ面で応じるクロエに、武装した男達は声を揃えたのだった。
*
錐頭の男に保護されたクロエは、自分が置かれている状況を整理しようと思考に浸っていた。
記憶が正しければ、自分はビルから飛び降りたはずだ。冷え切った家族、無能な同僚、上司からの圧力……自由や自分らしさを奪われたも同然の生活に疲れ、生きる事に嫌気が差して〝世界〟に見切りをつけた。
しかし、次に目を覚ませばそこは何と物語の世界。しかも海賊がいる
本来なら混乱し慌てるところだが、どういうわけかすんなり受け入れられた。強いて言えばもっと幼い頃や
一応まさかと思って鏡を見たが、原作のキャラに成り代わっているわけではなかった。目つきの悪さは前世から変わらなかったが。
(いや……生まれ変われるなら自由気ままで生きたいとは願ったけど……)
クロエはこれからどうしようか悩んだ。
よもや異世界転生という形とは思わなかった。しかも海賊の世界だ。前世は確かに漫画や小説を読んでいたが、海賊の世界は〝にわか〟でしかない。
そういう意味では、あの錐頭の海賊に育てられるしか道はないのだ。
(……まあ、どうとでもなるか)
あの職場のような失敗は繰り返さない。
そう胸に誓い、自分を拾った錐頭の下で暮らすことを決意した。
*
中華風の建物がそびえ立ち、文明も発展しているこの国で、チンジャオはクロエをアジトで住まわせる事にした。
「強くなるって、戦うどころか喧嘩すらした事もない私にできるの?」
「ひやホホ、随分と大人びているな。……飯を食いながらで構わんぞ」
遠慮せず
「この海を生き残るには、「覇気」と呼ばれるチカラを会得しなければならん」
「「覇気」……?」
チンジャオ曰く。
覇気というチカラは、この世界の全ての人間に潜在する「意志の力」であり、目に見えない感覚を操る。無意識のうちに覚醒する事もあるが、開花させるには長期間の過酷な修行や実戦の極限状態が必要で、実際に体得する人間は極一部でしかない。
この世界で「絶対的正義」を掲げて海賊達を取り締まる海軍の幹部格も、この覇気と呼ばれる力を操り、海賊達の中でも強豪や大物とされる面々も当然扱える。覇気の有無で、大海における自分の寿命が決まると言ってもいいだろう。
「中には覇気に加え、武術を組み合わせる者や〝悪魔の実〟を口にして手に入れた特殊能力を駆使する者もいる。彼奴らの戦闘力は言語に絶する」
「……あなたはどうなの」
「私は覇気に加えて〝
「絶対にウソだ」
一点に集中した力は凄まじいのは理解できるが、流石に氷の大陸を割るのは信じ難い。
どうせ自分の偉大さ・強さを誇張する都市伝説的な話だろう――そう思うしかない。
「……ウソだと思うなら、あとで見せてやろうか?」
不敵な態度のチンジャオに、クロエは何とも言えなくなる。
真実かどうかは別として、己のチカラや強さに自信を持っている証拠だ。ましてやここはあの海賊の物語の世界だ、本当にやれる可能性もある。
「……〝八衝拳〟って何なの?」
「ほう? 随分と食いつくな」
「強くなんないとここから出て自由になれないじゃない」
「ひやホホ!! 気の強い小娘だ!! その威勢は認めてやる」
チンジャオは蓄えた髭をゆすりながら大笑いした。
八衝拳。
それは、花ノ国が生んだ独自の拳法。相手に防御不能の衝撃を与える事ができ、その威力は鎧や盾もいとも簡単に破壊してしまう程だという。そして与えた衝撃は相手の内部に直接ダメージを及ぼす為、いかに強固な肉体を持っていようと攻撃そのものは防げないという強力なアドバンテージがある。
言い方を変えれば、衝撃波を操る武術だ。
「……あなたはその八衝拳を極めてるというのね」
「ひやホホ!! 物分かりが早いのはいい事だ」
「……誰でもできるの?」
「何を言う、お前に覚えさせる技術だぞ?」
その言葉に、クロエは目を細めた。
やはりチンジャオは、素質云々を問わず戦えるように叩き込むつもりだ。
(……まあ、覚えておいて損はないか)
中国拳法のような、物語の世界ならではの拳法の会得。
異世界に転生したとはいえ、まさか自分が戦闘に身を投じるようになるとは、夢にも思わなかった。
だがこの世界は、自由で在り続ける為には強さが――チカラが必要不可欠だ。何者にも屈さない、確固たる強大な武力が。
「クロエ、もし本当に自由の身になりたければ、この私に認めさせてみろ。一端の強者としてな」
「それまでは束縛する気なの」
「無論だ」
笑うチンジャオに、クロエは苛立ちを覚えた。
この男に一矢報いなければ、自分は自由気ままに生きる事ができない。前の世界で束縛された生き方をしたというのに、転生してもなお強いられるのか。
それは我慢ならない。今度こそ自分は自由に生きるのだ。
「……抑圧と束縛は絶対に嫌だ」
「なら、選択肢は一つだ」
「――やる。その錐頭へし折ってでも私は自由になる」
クロエの意志の強い眼差しに射抜かれたチンジャオは、どこか満足気に笑みを浮かべた。
*
食事を終えたクロエは、チンジャオに連れられ修行場へ訪れた。
「ここは我が八宝水軍が長年使っている専用の修行場だ!!! ありとあらゆる武具と防具、障害物、罠も用意できる!!!」
「殺すつもりって事?」
「海賊の戦いは常に死と隣り合わせだぞ? 殺すつもりで鍛えねばお前は死ぬぞ?」
「ちょっと何言ってるかよくわからない」
要するに過酷な修行をつけさせ、突貫で強くさせるらしい。
短期間でどこまで強くなれるかはわからないが、確かに基礎戦闘力は是が非でも底上げしなければならないだろう。
「まずは貴様の能力を知りたい。どこからでも打ち込んで来い!!!」
「……上等!!」
クロエは自由を手に入れるべく、チンジャオに挑んだ。
30分後。
「……」
「ひやホホホホホホ!! 弱い弱い、弱すぎるわ小娘!! その程度では到底私に勝てんぞ!?」
(こ、このジジイ、化け物だ……!!)
ボロボロな姿で倒れるクロエは、心の中で悪態を吐いた。
相手は歴史の長い水軍の棟梁。当然尋常ならざる強さであり、力の差は一万メートルくらいあるだろう。事実、全力で脛や股間を蹴っても殴ってもビクともしなかった。……金的攻撃はちょっと効いたっぽかったが。
――だからと言って、子供相手に本気で殴るな!!
「本気で殴った事にも意味はあるぞ」
(心を読まれてる……これも覇気ってチカラ?)
「いかにも!! 〝見聞色〟の覇気と言ってな、相手の感情や気配をより強く感じる事ができる覇気だ。攻撃の先読みや力量の把握、昇華すれば未来予知まで可能だ」
完全に心を読まれてることを悟り、クロエは呆然。
先読みされれば、どこを攻撃しても捌かれてしまうのも無理はない。
「しかし、女だてらに中々タフだな。ひやホホ、仕込甲斐もあるというもの!! 覇気の扱いも八衝拳も、私の全てを叩き込んでやる!!! 覚悟しておけ!!!」
「……遺書はいる?」
「用意はしておくんだな」
チンジャオはクロエの体を掴むと、さっさと傷を治せと言わんばかりに救護班の下に叩きつけた。
その後もクロエはチンジャオのスパルタ修行に参加させられた。
ある時は柔軟性を高めると言って開脚を強制させられ、ある時は山を登って来いと言われて登ってる最中に山頂から石を落とされて巻き込まれ、ある時は水中戦に慣れておけと川に放り込まれ……児童虐待も真っ青な修行を強いられた。
しかし前世の二の舞は演じたくないというハングリー精神で必死に食らいつき、クロエは着々と力をつけていくのだった。
という訳で、本作は年表で言えば40年前から始まります。
ちなみにオリ主はバーソロミュー・くまやウルージさん、キングと同い年です。