〝鬼の女中〟と呼ばれる女   作:悪魔さん

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ついに記念すべき100話目…!
今後ともよろしくお願いいたします。


第100話〝頂上戦争・乱入〟

 海は凍える。

 

 マリンフォードの三日月形の湾内は厚い氷で埋め尽くされ、血も凍る戦場と化した。

 大艦隊を率いる新世界の海賊達と、世界中から集まった海軍の精兵が、大乱戦を繰り広げる。

 

 数十年に渡り海に君臨した生ける伝説〝白ひげ〟と、海軍総戦力による一大決戦。

 地震、津波、氷に光、ダイヤモンドに不死鳥、そしてマグマ……シャボンディ諸島のモニターでこの戦いを見る人々は、あまりの次元の違いにこの世の終わりを見ているようで、言葉を失った。

 そんな戦場に、新たな勢力が乱入する。

「エース~~~~!! 助けに来たぞ~~~~!!!」

「ぎゃはははははは!!! 世界よ、覚悟しろ!!!」

「流石に総戦力!! ハンパじゃナッシブルね!!!」

 銃弾と砲弾が所狭しと飛び交う戦場のド真ん中に、エニエス・ロビー陥落で名を上げたルーキー〝麦わらのルフィ〟が参戦。クロコダイルとジンベエ、革命軍にインペルダウンの脱獄囚達……到底まとまった目的があるとは思えない面々と殴り込みをかけてきた。

 計画も罠も関係なく、ただエースの元に一直線に突き進むルフィに触発され、白ひげ海賊団の隊長達も各々の部隊を率いて突撃。傘下の海賊達も、ルーキーに後れを取るわけにはいかないと加勢した。

 

 互いの総大将が指示を飛ばし、双方にとっての敵を薙ぎ倒し、生と死の密度が増す。

 だからなのか。その戦塵に紛れて、ゴールド・ロジャーを継ぐと恐れられた男が推参した事に、誰も気づかなかった。

 

「狼狽えるな!! 指示通り動け!!」

「センゴクの野郎…海賊相手に処刑時刻を守る必要はねェってわけか。――ん?」

 不意に、モビー・ディック号の側を巨大な影が高速で通り、それに伴って突風が吹き荒れた。

 船だ。白ひげ海賊団が保有する黒い鯨の船首の海賊船が、何者かにぶん投げられたのだ!

 それは一直線にエースの処刑台に向かっている。あのまま直撃すれば、海楼石の錠と繋がれたエースは能力で受け流す事ができず、そのまま死んでしまう。

「「いかん!!」」

 ガープはエースを庇うように立つと、センゴクはすぐさま能力を発動し、身の丈十数メートルの巨大な大仏に変身し、覇気を纏った仏罰の拳で飛んできた海賊船を破壊。

 船は木っ端微塵に破壊され、衝撃で内部に積まれていた爆薬が炸裂。爆炎と共に凄まじい量の黒煙が処刑台前の広場を包み込んだ。

「ぐっ…!!」

「ちっ…!!」

 

 ミシミシ…!! バガンッ!!

 

 直後、センゴクとガープは足場が崩れる感覚を覚えた。

 船はデコイだと気づいた時には、処刑台が真っ二つになりかけていた。

「処刑台が!!」

「火拳のエースはどうなった!?」

「センゴク元帥!! ガープ中将!!」

 戦場はまさかの出来事に大混乱。

 敵も味方も、崩れゆく処刑台に釘付けになる。

「くっ……誰の攻撃だ!?」

「船をぶん投げる豪腕……いや、まさかな……」

 大海の平和維持に長く務めたセンゴクとガープも、この予想だにしない展開に混乱気味。

 そんな中、彼らの同期の一人であるゼファーが、焦燥に駆られた表情で呼びかけた。

「センゴク、ガープ…!!」

「!」

「何じゃい!? ――んなっ!?」

 戦場は、あっという間に戦慄した。

 土煙が晴れ、崩れた処刑台の頂上に立っていたのは……たくさんの勲章徽章をつけた軍服を着た、金髪碧眼の筋骨隆々な大男。その手には血塗れの何かが掴まれていた。

 エースだ。処刑台に上がる時よりも酷いケガを負っている。

『エース~~~~~!!!』

 白ひげ海賊団は、悲鳴に近い叫び声を上げた。

「何がロジャーの息子だ……死ね」

「っ…!! バレットォォォ!!」

 ガープは武装硬化した拳を構え、一気に跳躍。

 それを瞳に捉えた軍人――バレットは、エースをガープ目掛けて放り投げた。

 ガープは咄嗟にエースを受け止めようとするが、その迷いをバレットは逃がさない。

 

 ――ヴォッ! バキィ!!

 

 投げつけたエースを追い越し、バレットは武装色を纏った拳をガープの横顎に叩き込む。ガープは口から血を吐きながら広場の地面に激突、身体が減り込んだ。

 拳一つで海を渡り、幾度となく伝説と呼ばれる大海賊と殺し合ってきた英雄が返り討ちに遭った現実に、敵も味方も驚愕し青ざめた。

「ぐっ……今更何しに来たんじゃい…!!」

「ほう…流石にタフだな」

 頭から血を流しつつも、どうにか起き上がって凄むガープ。

 老いても英雄の〝強さ〟は健在か、とバレットは笑う。

「ゲッ!! あの野郎、何でここに……!?」

 一方、湾内から見ていたバギーは、バレットの出現に冷や汗を流しながら絶句していた。

「バギー、知ってんのか」

「あいつはダグラス・バレット……クロエ姉さんとタメを張る程の化け物だ!!」

 少なくとも、戦闘力という意味では世界最強の女(クロエ・D・リード)と同格。

 その証言に、エースを傷つけられて怒り心頭だったルフィだけでなく、インペルダウンの脱獄囚達やイワンコフ、ジンベエですら驚いた。

「まさかこのタイミングで来るとはな……」

「厄介だねェ~……」

「おんどりゃあ、何しに来たんじゃァ…!!」

 三大将は〝鬼の跡目〟の襲来に身構えると、ズゥン…!! と地響きのような音が轟き、大気が震えた。

 モビー・ディック号の船首から、白ひげが降り立ったのだ。世界最強の男が動いた事に、海兵達は後退った。

「おい、ロジャーんトコの合体小僧……!!」

「……」

「おめェ、おれの〝家族〟に手ェ出したらどうなるか……ロジャーと一緒にいた頃から知ってるはずだよなァ……!!?」

 白ひげは怒りを露わにする。

 確かにバレットとは、ロジャー存命時に何度も戦ってきた。しかしそれは海賊団同士の奪い合いであり、白ひげもロジャーも線引きをして殺し合っていた。

 だが今回は違う。一方的に手を出し、叩きのめしたのだ。それは海賊団全てを敵に回して戦争するという意味なのだ。バレットはそれをやったのだ。

「家族? 懸賞金0ベリーの海賊も殺せねェこのカスの事か」

 バレットは挑発する。

 四の五の言わずかかって来いよ、と。喧嘩上等だ。もうこれは拳に訴えねばシメシがつかない。

「バレット、貴様!! 何が目的だ!?」

「〝仏のセンゴク〟か……カハハハ……変わらねェよ。〝世界最強〟だ!!」

 バレットは獰猛に笑う。

「五皇・七武海・海軍……この戦場には海の〝三大勢力〟が揃っている…!! だからこそ、ここにいる全員を殺す!!! おれの最強への野望の為だ!!!」

「狂犬め……!!」

 センゴクは冷や汗を流しながら吐き捨てる。

 大海賊時代の危ういパワーバランスを担う〝三大勢力〟を、マリンフォードに集結した全海賊海軍を()()()()()()滅ぼす――それがバレットが乗り込んだ目的だった。

 その宣言を、誰も馬鹿げてると口にしなかった。いや、できなかった。〝鬼の跡目〟の強さは、冗談抜きでその野望を十分に叶える可能性を有しているのだ。

「どいつもこいつも、エースってクソガキの首が相当大事らしいな」

「っ……!!」

「そんなにこいつの首が欲しけりゃ、全員まとめてかかって来い!!!」

 バレットが一喝すると、マリンフォードが震えた。

 〝覇王色〟だ。孤高を貫く男の覇気に当てられ、白ひげ傘下の海賊達や海軍の兵士達はバタバタと泡を吹いて気絶し、白ひげ海賊団の隊長や海軍中将も続々と膝を突いていく。

 戦わずして倒れていく者が続出する中、まともに立ってられるのは一握りだ。三大将やガープを筆頭とした海兵の中でもトップクラスの猛者と七武海。白ひげ海賊団側は、白ひげ本人と隊長格の中でも古株であるマルコ達。そして脱獄組はクロコダイルとジンベエ、イワンコフに……ルフィとバギーだった。

「お、おいィ!! バレット!! てめェおれ様も威圧しやがったなァ!?」

「……バギーか。てめェもクロエの覇気に慣れてるだろうが、赤っ鼻」

「それとこれとじゃあ話が(ちげ)ェってんだよ!! あとわざわざ他人の地雷踏むんじゃねェ!!」

 バギーは激怒しながらバレットに抗議する。

 その様子を見ていた海兵――彼を捕らえたゼットは驚きを隠せないでいた。

「あの覇気を耐えた……!? あん時は全力じゃなかったのかよ…!!」

「そうだとすると、たかが3000万ベリーと見てた私らは甘く見過ぎてたね。どんなに懸賞金が低くても、あのクロエの弟分なんだ」

「こいつァ、心してかからねェとな」

 ゼットに続き、つるやゼファーも袖をまくる。

 伝説の海兵の警戒心……というか誤解が強くなったのを察したバギーは、泣きたくなった。

(ヤベェ!! 今の見られちまった!!)

 道化の化粧が落ちるんじゃないかと思う程に汗だくになる。

 そもそもの話だが、バギーも何だかんだがシャンクスやバレットと同様、ロジャー海賊団在籍中はクロエの扱きを受けていた身。彼女の扱きを受けたシャンクスは見習いの時点で覇王色をある程度コントロールできるレベルに到達しており、バレットに至っては覇王色を纏う領域まで足を踏み入れていた。これでバギーだけが何も変わらないなどあり得ない。

 ロジャー海賊団解散後は〝東の海(イーストブルー)〟でひっそりと海賊稼業していたバギーも、()()()()()()()新世界でも活動できる程度の実力はあるのだ。本人は全くそのチカラを振るわないが。

「ちっ……まァいい。てめェは邪魔だからとっとと失せろ、赤っ鼻。何かあるとクロエがうるせェ」

(よ、よかった……)

 バレットの一言に、バギーは心底ホッとした。

 少なくともこの戦場で、自分は標的から外される。それがわかれば、あとはタイミングを見てトンズラすればいい。

「……どうした? おれはこんなに隙だらけだったぞ。白ひげ海賊団も今の海軍も腰抜けの集まりか?」

『……!!』

 戦闘狂のバレットは、バギーと言葉を交わしている間に誰からも攻撃されてない事が不快だったのか、さらに挑発を重ねた。

 しかし、その場にいる全員が攻撃のチャンスを掴めなかった。堂々と佇むだけなのだが、全くと言っていい程に隙が無いのだ。

「…来ねェなら行くぞ」

 

 ドンッ! ゴォオオオオオオオオ!

 

 バレットは地面を蹴り、白ひげを狙った。

 オヤジが狙われた――すかさずマルコが不死鳥と化して跳び蹴りを放ち、鬼の如き豪腕に立ち向かう。

 ドォン!! と覇気と覇気がぶつかり合うが、バレットは拳を押し込んで不死鳥を弾き飛ばした。

「ぐわァッ!!」

「マルコ!! ――〝ブリリアント・パンク〟!!!」

 ジョズは腕をダイヤモンド化させたまま突進し、強烈なショルダータックルを見舞う。

 しかしバレットは直撃を受けたにもかかわらず微動だにせず、むしろ笑みを浮かべながら拳を固めてジョズの脇腹にぶち込んだ。

「ぐふっ……!?」

「――足りねェんだよ」

 海軍大将とも真っ向から戦えるダイヤモンド・ジョズの巨体を、バレットは一撃で沈めた。

 どんな悪魔の実だろうと関係ない。バレットの拳は、全てを直接破壊するのだ。

「〝鬼の跡目〟の影…!! 悪くねェ!! 行け、ゾンビ兵共ォ!!」

 ここへ来て、七武海が動き出す。

 ゲッコー・モリアが指揮するゾンビ兵が、一斉にバレットへ襲い掛かる。しかし、バレットは四方八方から躍り出たゾンビを次々と殴り飛ばし、隙を突いてモリアを薙ぎ倒した。

 モリアは声を上げる暇すら与えず吹き飛ばされ、ノックダウン。他の海兵海賊達を巻き込みながら、マリンフォードの街の瓦礫の山に突っ込んだ。

「わしらを忘れちゃありゃあせんか!? 〝大噴火〟!!!」

 そこへ、サカズキが灼熱の正拳突きを放つ。

 自身の何十倍もあろうかという氷塊を一瞬のうちに溶かし尽くす熱量を有するマグマが、バレットに狙いを定める。

「ハッ……今の海軍大将か」

 バレットは自身の覇気を浴びて気絶した海賊二人を持ち上げると、そのまま盾にした。

 マグマを受けた海賊二人が身代わりになって炎上すると、何とバレットは二人を思いっきり投げつけて攻撃。ただでさえ悪魔や鬼としか表現のしようがない攻撃に、強力な武装色の覇気を付与させてる為に威力は倍増しており、人間火の玉の着弾によってマリンフォードのあちこちで爆発と崩壊が連鎖する。

 ちなみにこの戦法、英雄ガープも結構やる戦い方だったりする。

「逃げろーーーー!!」

「武器にされちまうぞーーー!!!」

「カハハハ!! 貴様ら全員、叩き潰してくれる!!!」

 無双の強さで全勢力を相手取るバレットに、誰もが恐れ戦いた。

 そこへ、とうとう世界最強の男が乗り込んだ。

「おめェの相手は、このおれだァァ!!!」

「カハハハ!!! 来たか〝白ひげ〟!!!」

 最上大業物である薙刀「むら雲切」にグラグラの実のオーラを纏わせ、白ひげは豪快に振り下ろすと、バレットはそれを武装硬化した拳で真正面から受け止めた。

 

 ドォン!!

 

 両者の攻撃は拮抗し、衝撃がマリンフォード全体に伝播する。

 迸る覇気の余波で周囲の建造物が軒並み吹き飛び、戦場に残された者は否応なしに二人の怪物の戦いに巻き込まれていく。

 もはやエースの奪還や処刑など関係ない。サイクロンのように暴れ回る〝鬼の跡目〟をどうにかしなければ、全員死ぬ。そう思わせる程に、バレットは暴虐の限りを尽くしていた。

「……ガープ…!!」

「わかっておる……!! 今一度多くの血を流し、ここで奴を止める!!」

「こいつを唯一止められる女がいねェ以上、仕方ねェな……」

 海軍古参の豪傑は、覇気を高めた。

 目の前のもの全てを破壊する災厄を止められるのは、奇しくも共にロジャーに強い拘りを持つ者……この世では彼の()()()()()()であるクロエ一人だけだ。

 いかなる正義も仁義も通らない「〝強さ〟の化身」であるバレットを受け止められる者がいない以上、全勢力がこの怪物(バケモノ)を迎え撃たねばならないのだ。たった一人の海賊に三大勢力が壊滅したなど、決して許されないのだ。

「マルコ……あの小僧はおれが食い止める…!! エースを奪還次第、息子達と新世界へ帰還しろ……!! 奴は本気でおれ達を潰しに来てやがる……!!」

「オヤジ…!! ……わかったよい…」

 どうにか復帰したマルコに、白ひげは命令を下す。

 白ひげ海賊団が滅べば、自分の友人達が危険に晒される。ティーチとのケジメが付いてない今、ここでバレットを止めねば世界中の海が滅茶苦茶になる。白ひげはそう確信していた。

 マルコは苦い顔をしながらも、仲間達と意識を失って倒れ伏すエースを救出に向かう。

「おどれら……全員生きて帰れると思うちょるんか!?」

「サカズキ、そいつらは後回しだ!! このバケモノどうにかするぞ!!」

「ぐっ…!!」

 クザンの怒号に、サカズキは悔しがりながらもバレットへ意識を向けた。

 そう……今この場において最も危険なのはダグラス・バレット。海賊次世代の頂点に立つ資質を発揮するであろうエースよりも、余程世界を脅かす存在。

 故に、エースよりも優先して始末せねばならない。たった一人の男の暴走で、世界を動乱の渦に飲み込ませるわけにはいかないのだ。

「カハハハ……やっとやる気になったか?」

 激しい戦闘でボロボロになった軍服を破り捨て、銃創と刀傷だらけの肉体を露わにする。

 〝鬼の跡目〟ダグラス・バレットが、本気を解放する。

「鍛え抜いた本物の〝強さ〟ってもんを、見せてやる……!!!」

 その言葉と共に、武装硬化した両腕から赤黒い稲妻がバリバリと音を立てて迸り始めた。覇王色を纏ったのだ。

 ただでさえ規格外の基礎戦闘力なのに、そこに加えて覇王色を纏うというダメ押し。しかも彼にはまだ()()()がある。

 事態は想像以上に悪化していると悟り、センゴクは表情を歪めた。

「いい緊張感だ…簡単に死ぬなよ…!!!」

 

 

           *

 

 

 一方、クロエ海賊団は。

「……どこの馬鹿の仕業だ、全く」

 水平線を見つめるクロエは、思わずそう呟いた。

 彼女の目に映るのは、海軍の艦隊。しかしそれ自体はどうって事はない。問題は……軍艦に搭乗している面子が全員囚人服を着ている事と、何となく見覚えのある顔ばかりだという事だ。

 

 ――いたぞォ!! 〝鬼の女中〟だァ!!

 ――ギャハハハ!! ここで会ったが百年目だァ!!!

 ――ぶっ殺してやらァ!! 白ひげの前にクロエだァ!!

 

 艦隊から聞こえる、野蛮な脱獄者達の声。

 彼らは、かつてクロエとの戦いに負けた敗北者達。中にはLEVEL6に収監されている最悪の犯罪者も紛れており、一人でもどこかの国に潜めば甚大な被害をもたらす奴らばかり。

 そんな連中が徒党を組んで、クロエに復讐しに来たのだ。圧倒的武力で全てを叩き潰してきた、海賊王最強の部下の首を貰う為に。

「最悪、うーわサイアク……」

「結構知ってる顔もいるぞ……あれ全員相手すんのか」

 一味の両翼は、思いもよらない敵の登場に気が滅入りそうになっていた。

 見聞色を使わなくてもわかる程、軍艦を乗っ取ってる連中の危険度を知っているからだ。

「……まさかこんな事になるなんてな」

「ざっと数百人……覇気使いも多いぞ」

「船長、どうすんだ」

 古参の船員(クルー)達に、クロエは化血を抜いた。

「……私は挑みに来る者は誰であれ歓迎する。心を込めて相手をするさ」

 不敵に微笑みながら、クロエは覇王色を纏う。

 戦う準備は万端だ。

「船長命令だ。――私に続け!! クロエ海賊団!!!」

『おうっ!!!』

 クロエの一声に、仲間達声を張り上げる。

 大海賊時代開幕以来最大の戦いの裏で、クロエ海賊団と地獄から這い出てきた無法者達との戦争が勃発した。

 

 

 同じ頃。

 百獣海賊団との小競り合いを繰り広げた赤髪海賊団は、急ぎマリンフォードへ向かっていた。

「まさかバレットが動いていたなんてな……てっきり武者修行中だと思ってたが、迂闊だった…」

「〝鬼の跡目〟……ゴールド・ロジャーを継ぐと恐れられた男、か」

 苦い顔をするシャンクスの隣で、ベックマンは煙草を咥えながら思考を巡らせた。

 バレットはロジャー海賊団解散後、世界中で強者達と戦ってきたが、ここ最近は情報が途絶えており、戦争の直前まで動向を把握してなかった。

 シャンクスはどうせ〝凪の帯(カームベルト)〟で海王類を薙ぎ倒しているんじゃないのかと楽観的に考えていたが、それは大きな間違いだった。

「バレットは……マリンフォードに集った連中を皆殺しにする事でロジャー船長とクロエ姉さんを超えようとしてる。バレットらしいっちゃバレットらしいが……流石に見過ごせねェ」

 シャンクスはそう言って、表情を引き締める。

 バレットは、ただロジャーに従っていたのではない。ロジャーを倒す為に仲間になり、その過程でクロエも倒す事も目標と掲げた。ロジャーとクロエを倒す事こそ世界最強の証と信じ、彼は修羅の道を歩み続けた。

 自分が尊敬し敬愛する二人の圧倒的実力に憧憬し、それを超えんとする強さの求道者は、その悲願を成就すべく、たった一人で戦争を終わらせるつもりなのだ。

 人の夢、それも義兄弟の野望に茶々を入れる気はない。だが、バレットを野放しにすれば……。

「……こういうのは柄じゃねェし、もしかしたらクロエ姉さんにどやされちまうかもな……けど、やるっきゃねェ」

 シャンクスはそう呟くと、心配そうに見つめるウタに声を掛けた。

「ウタ……もしかすれば、お前の能力を頼らざるを得なくなるかもしれねェ。その時はお前のウタウタの能力が世界政府にも知られ、狙われやすくなる。当然、おれ達は最善を尽くすが……」

「大丈夫……任せて、シャンクス!」

 ウタはシャンクスに言われ、覚悟を決めたように頷いた。

 その強い眼差しに、シャンクスは穏やかに笑い、仲間達に船長命令を下した。

「野郎共、そういう事だ!! マリンフォードに急ぐぞ!!!」

『おおーーーーーっ!!!』

 シャンクスの号令に、赤髪海賊団は気合の入った返事をした。

 あらゆる強者の思惑を孕みながら、頂上戦争は佳境へと向かっていく。




最新話の方であのロックスがとうとう降臨しました。
エマは王直とは義理の親子関係ですが、実は幼少期にロックス本人とも面識があります。その話もいつか投稿します。
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