・天竜人殺害:30名以上
・海賊王遺体強奪
・沈めた船:70隻以上(民間の船はゼロ、大半は海賊船)
・襲撃事件:10件(奴隷船の奴隷解放も含む)
・聖地マリージョア襲撃
・世界経済新聞社襲撃(犠牲者はゼロだが代わりに政府と海軍の腹筋が崩壊)
・フールシャウト事件(記録から抹消)
・べコリ王殺害(革命軍との関係はバレなかった)
・他の五皇や七武海、大海賊との抗争:70件以上(政府が把握してない抗争も含む)
うん、これほぼテロ組織かなんかだ。(震)
ちなみにインペルダウンの脱獄囚をクロエ海賊団がボコボコにした事件はもみ消すそうです。
マリンフォード頂上戦争の結末は、全世界を駆け巡った。
しかし情報というものは巡る程に削ぎ落とされ、事実と真実は乖離していく。
戦争勃発から程なくして、〝鬼の跡目〟ダグラス・バレットが殴り込み。ロジャーの強さを継ぐ者の一人としての圧倒的暴力は海軍・海賊双方に牙を剥き、甚大な被害をもたらした。この際に白ひげ海賊団の救出対象であったエースは、バレットによってボコボコにされたが、一応は解放されたのでマルコ達に回収された。
そこへ戦争を起こした張本人と言える〝黒ひげ〟マーシャル・D・ティーチが新たな仲間を連れて乱入。満身創痍だった〝白ひげ〟エドワード・ニューゲートを討ち取り、さらに独自の技術で彼から〝グラグラの実〟を奪取する事に成功。〝世界を滅ぼす力〟の脅威が終わりではないと示し、最も名を上げ利益を得た火事場泥棒となり、マリンフォードを海に沈めんと暴れ始めた。
しかし終盤、ある事情で手負いの身となった〝鬼の女中〟クロエ・D・リードが見参。戦闘の達人にして覇気の達人である彼女との衝突は分が悪すぎると判断した黒ひげ海賊団は撤退し、その直後に乗り込んだ〝赤髪のシャンクス〟の仲裁によってついに終戦となった。
結果で言うと「エースを取り逃したが、伝説の海賊〝白ひげ〟が死んだ」という事になるが、そこは隠蔽工作に定評のある世界政府。五老星の指示によって「海軍が辛くも勝利を収めた」という情報操作が加えられ、海軍の「勝利」の2文字が海風に踊り、世界はこの大事件に浮き足だった。
しかし、大海賊時代の頂点であった白ひげの死により、彼を恐れていた海賊達の動きが世界中で活発化し、世界情勢は大いに不安定となった。白ひげという抑止力を失った海が、大海賊時代到来初期の動乱を彷彿させたのだ。
そして白ひげの
五皇の地位から転落した白ひげ海賊団は、崩壊の一途を辿り始めようとしていた。
そんな中、マリンフォードでは。
瓦礫に腰掛けるセンゴクの元へブランニュー少佐が駆けつけ、インペルダウンの状況を伝えてきた。
「マゼランは無事なのか?」
「酷いやられ様で、虫の息との事…現在医療班が集中治療を行っています。真面目な男です……体が動けば自決しかねない精神状態になりかけてます」
「そんなくだらんマネは絶対にさせるな!! 獄内では一体何が起きたんだ?」
「結論から申しますと、LEVEL6の状況は特にひどく…まさに惨劇…」
「惨劇…?」
――どうせ死を待つだけの余生!! どうだお前ら!? その檻の中で一丁殺し合いをしてみねェか!!? 生き残った奴らをおれの仲間としてシャバへ連れ出してやろうじゃねェか!!!
獄内の調査で発覚した事実に、センゴクは顔面蒼白になった。
LEVEL6に到達したティーチは、世界最悪の囚人達に殺し合いをさせ、生き残ったサンファン・ウルフ、アバロ・ピサロ、バスコ・ショット、カタリーナ・デボンの4人を仲間として連れ出したのだ!
「世界最悪の囚人達の中から、選りすぐりのメンバーを連れ出したというわけか…!!」
「はい…ですが連れ出された囚人はサンファン・ウルフ、アバロ・ピサロ、バスコ・ショット、カタリーナ・デボンの4名。LEVEL6からは明らかにそれ以上の数の囚人が消えており……」
「そうか…ではLEVEL6からの脱獄者は他にも…」
「はい…ただ、囚人達は軍艦を奪って逃走したのですが、そのほとんどはタライ海流を抜けた直後にクロエ海賊団によって壊滅してます」
ブランニュー曰く。
インペルダウンの脱獄囚達はマゼランを撃破した後、まだ残っていた軍艦を奪ってタライ海流を突破した矢先、バギーを救いに向かっていたクロエ海賊団と遭遇。激しい戦闘の末に壊滅させられたという。
なぜマリンフォードに乗り込んだクロエ海賊団が全員手負いだったのか……その理由が発覚し、センゴクとゼファーは納得した。世界最悪の囚人の中には、かつて海で名を馳せた大物海賊も多かった為、彼らをまとめて相手にしたとなれば、手負いで現れたのは納得だった。
「それでも行方がわからない囚人がいるんだな…!? LEVEL6クラスの囚人など、たった一人どこかの国へ紛れ込むだけで、人々に及ぶ危険度は甚大だ……!! 人数と名前を早急に照会し、すぐに手配書を世界に公表しろ!!!」
センゴクはブランニューに脱獄犯の手配書をすぐにでも公表し、危険を呼びかけるよう指示を出した。
だが、ブランニューは体を震わせながら、声を詰まらせながらセンゴクに伝えた。
「…ですが…その…世界政府より、この件は包み隠せと…!! これ以上の失態は、〝政府〟の信用に関わりますので……」
「……!? フザけるなァア!!!」
人々の命と政府の信用を天秤にかけて、後者を取った世界政府に、センゴクの怒りは頂点に達したのだった……。
頂上戦争から2週間後、新世界「スフィンクス」。
そこでは〝赤髪のシャンクス〟と白ひげ海賊団の残党によって、大海賊エドワード・ニューゲートの墓が建てられ、葬儀が執り行われていた。
墓前ではシャンクスとマルコ、そしてエースが三人並んで立っている。
(オヤジ……)
「赤髪…何と礼を言ったらいいか…」
「つまらねェ事を言うな、敵でも〝白ひげ〟は敬意を払うべき男だ。センゴクですらそうだった」
シャンクスはそう言うと、エースに視線を移した。
「これからどうする? 白ひげのナワバリの切り崩しはもう始まっている。ティーチもその辺りは熟知してる分、完全制圧も時間の問題だろう。姉さんに助力を求めるのは……あまり期待しない方がいい」
「ああ……わかってる」
「そうか……なァ、エース。クロエ姉さんがお前に何を求めてると思う?」
赤き覇王から出た言葉に、エースは反応する。
「これはおれの推測だが……お前が白ひげの部下になった時、姉さんは「ロジャー船長と戦う前に逃げた」と思ったんだろうな」
「おれが……ロジャーから逃げた…!?」
「父を否定する為に、ロジャー船長を愛し続ける自分を倒しに来るのか。それとも父の存在を受け入れつつも、海賊として超える為に倒しに来るのか。――姉さんはそこが知りたかったんだと思う。姉さんは必ず決着をつけるべきと考える人だ、喧嘩を売ったからには最後まで戦えって事なんだろうな」
エースは何度か瞬きをして、シャンクスを見据えた。
「……だはははっ! クロエ姉さんは、お前が誰の下にも付かないと思ってたんだろうな。自分の一味だけでロジャー船長を超えると」
「……」
「じゃあ…おれ達はもう行く。達者でな」
「ああ……ありがとよい」
シャンクスは一言告げると、レッド・フォース号に乗り込んで船出した。
船の甲板では、彼の娘であるウタが島を見続けていた。
「どうした、ウタ」
「あのエースって人、ルフィの義理のお兄さんだけど……大丈夫なのかなって。これから大変でしょ?」
「心配すんな。人間はそんなにヤワじゃない」
シャンクスはウタの頭を撫でながら、スフィンクスの島影を眺めた。
〝火拳のエース〟の新たな門出に想いを馳せながら。
*
さらに一週間後、〝
意識を取り戻し回復し始めたルフィから〝海賊女帝〟と親しい間柄と知ったクロエは、女ヶ島に立ち寄ってハンコックと再会した。
クロエがルフィを保護している事を知るや否や、彼女は男子禁制など知った事かと言わんばかりに入港をあっさり許可。一応、クロエとハンコックの協定として国の集落には入らないと事を条件に、一味は海岸でキャンプする事にした。
「……どう? 容体は」
ルフィの診察をしているラカムに、エマは尋ねる。
ラカムは「ガープの孫なだけある」と返し、その回復速度に感心していた。
「だが様子見も兼ねて2週間は安静だな」
「2週間!? おれ、今からビブルカードでシャボンディ諸島に行くつもりだっってのに…」
「仲間達に会いてェ気持ちはわかるが、本当にそれでいいのか? 副船長に聞いたが……くまに飛ばされなかったら、黄猿に皆殺しにされてたんだぞ」
その言葉に、ルフィは血の気が引いていく。
シャボンディ諸島において、麦わらの一味は一度
あの島で起きた事を思い出して身体が震えるルフィに、ラカムは前髪の隙間から目を見せながら穏やかに告げた。
「今は体力と気力の回復に専念しろ、ルフィ。それはお前の仲間達も同じはずだ。医者としてだけじゃなく海賊として言わせてもらうが…力を蓄え、知識を身に着け、傷を癒して出直してこい。お前の人生はまだ
「……わかった」
ラカムの言葉に、ルフィは頷いた。
しかし、そのやり取りをどうも気に食わない者がおり……。
「ミリオン・ラカム!! 早くルフィから離れて失せよ!!! 貴様の顔など見とうないのじゃ!!!」
「うっせェわ、バカタレ!! まだ診てねェ部分があんだよ!!!」
「本当に反りが合わんな…」
「全く、蛇姫には困ったもニョじゃ……」
喧嘩腰のハンコックとラカムに、クロエだけでなくアマゾン・リリーの最長老兼ご意見番のグロリオーサ――またの名を「ニョン婆」――も呆れていた。
というのも、クロエ海賊団と九蛇海賊団は、船長同士の一騎打ちをした間柄。その際に負傷したハンコックをラカムが医者として治療したのだが、それを機に彼女はミリオン・ラカムという海賊を異様に敵視しているのだ。
「一体、何があったというニョか……確かに蛇姫は大の男嫌い・政府嫌いじゃが、〝神殺しの左腕〟に関してはそれとは別の意味で嫌っておる」
「多分、ラカム君に論破されたのが原因な気がする」
「ああ……あの時「医者が患者の身体に邪心を抱くのは色々とアウトだろ」って言ってたな」
「うむ、物凄い正論じゃニョ……」
グロリオーサはジト目で言い争う二人を眺めた。
彼女の目から見てもラカムの言い分が正しいので、ハンコックは感情的に文句を言っているようにしか見えなかった。
そんなイザコザを他所に、ルフィはモグモグとハンコックが持ってきた食事をヤマトと一緒に食べている。
「ルフィ、早くいっぱい食べて元気になるんだ!! 強くなる為にはもっと身体を作らなきゃダメなんだぞ!!」
「おう!!」
「〝鬼姫〟ヤマト!! それはお前の為の食事ではないっ!!」
「細かい事は気にしない、気にしない♪」
覇王色を放って威嚇してくるハンコックを、ヤマトはサラリと受け流しながら食事を楽しんでいる。
その時、沖合の方で突如として巨大な水柱が上がった!
「何だ!? 敵襲か!?」
「海王類か?」
「よし、おれが行ってやろう!!」
クロエ海賊団唯一の魚人であるウィリーが、愛用の武器を携えて海に出ようとする。
しかし、クロエは一瞬目を見開いてから待ったをかけた。
「いや、その必要はない。知り合いだ」
「は?」
クロエがそう言うと、水柱が上がったところには血を流す海王類が浮き上がり、海岸に人影が出現した。
「いやァ、参った…船が嵐で沈められてしまってね。泳ぐハメになってしまった」
『〝冥王〟レイリー!!?』
海岸に現れたのは、元ロジャー海賊団副船長のシルバーズ・レイリー。予期せぬ超大物の登場に、クロエ海賊団は騒然とする。
ちなみに彼の発言通りだと、〝
「相変わらず平泳ぎが上手だな、レイリー」
「おお、クロエか。また会ったな…ルフィ君はいるか?」
「? え~~!? レイリーのおっさん!?」
「はは! 早速会えてよかった」
ルフィと再会し喜ぶレイリー。
すると、グロリオーサ達も嬉しそうに声を掛けた。
「レイリー!? レイリーではニョいか!?」
「おお、グロリオーサか! 懐かしいな」
「何だ、知り合いだったのか?」
「ええ、そうよ」
「レイさんは私達三姉妹の恩人なの」
サンダーソニアとマリーゴールドは笑顔でクロエに語る。
ハンコックらゴルゴン三姉妹は、13年前のクロエ海賊団とフィッシャー・タイガーによる聖地マリージョア襲撃事件の折、奴隷から解放される時にレイリー・シャクヤク・ニョン婆に保護されたのだ。その縁で男嫌いのハンコックはレイリーには心を許しており、自分達も恩義を感じているという。
「奇特な事だ…マリージョアから逃げた者達とマリージョアを襲った者達が相まみえるとは」
スレイマンが感心しながら言うと、レイリーは「それもそうだな」と笑う。
一方のニョン婆は、ルフィを女ヶ島が匿っている事を推測がつくのは困ると心配したが、レイリーは心配無用と笑った。
「海軍にこことは推察できまい。初めに彼をこの「方角」へ飛ばしたと、飛ばした
「あ、やっぱりくまちー話したんだ」
「ハハハハ! お前に蹴られたスネが痛かったと言っておったぞ、エマ」
シャボンディ諸島で麦わらの一味が崩壊した後、レイリーは張本人であるバーソロミュー・くまと邂逅し、飛ばした理由と方角を教えてもらったという。
レイリーは地図で確認したところ、くまがルフィを飛ばした方角のライン上に女ヶ島が浮かび上がり、さらにインペルダウンへの事件も加味すると「ハンコックと共に海軍の軍艦に乗り込んだ」と考えれば合点がいくが、男嫌いのハンコックが男と共に政府の船に乗るとは到底考えられなかった。
そんな時に、シャクヤクはこんな事を言ったという。
――こんな考え方はどう? ハンコックがモンキーちゃんに恋しちゃってたとしたら…全ての筋が通らない? モンキーちゃんかっこいいもの。そして私がハンコックなら軍をダマしてピンチの彼を女ヶ島に匿っちゃうかしら。
そんな主観的な推察にまさかと思いつつ来てみれば、シャクヤクの読み通り、ハンコックがルフィに恋をして全面協力していた。
「女の勘とは恐ろしいものだ」
レイリーにつられ、クロエも「見聞色とはまた別だからな」と笑う。
いくら何でも、そんなあられもない推察で海軍は動かないだろう。
そんな事を話していると、レイリーは本題を切り出した。
「ルフィ君、君はこれからシャボンディに向かうつもりそうだな?」
「ああ…でも、金鎚のおっさんに止められた」
「おっさん言うな、おっさん」
「やはりか。私も彼に同意見だ……そこで私から一つ提案がある。のるかそるかは勿論、君が決めろ」
レイリーの提案は、誰もが唖然とする驚愕の内容だった。
*
マリンフォード。
未だに破壊の跡が生々しい要塞と街には、世界各国から取材陣が集まっているのだが……。
「緊急事態!! 海賊船が一隻、沖合に現れました!!」
「海賊……こんな時にか!! どこの一味だ!?」
「クロエ海賊団です!!! 〝麦わらのルフィ〟を連れてます!!!」
その報告に、海軍本部に緊張が走る。
慌てて双眼鏡で確認すると、そこにはまだ頭や胴体に包帯を巻いて傷痕を残すルフィがクロエと一緒に船首楼甲板に立っており、元海兵のガスパーデが舵を取っていた。
海兵達がまだ稼働できる砲塔を動かし、照準を合わせようとしたが……。
「待て、お前ら」
「ゼファー教官!! ゼット中将!!」
「今の戦力じゃあ、あいつらに一方的にボコボコにされるだけだ。ここは様子を見ようぜ」
ゼットの言葉に、周囲は顔を合わせる。
新世界に君臨する五皇でも、とりわけ世界政府に攻撃的な姿勢であるのがクロエだ。大将達が不在の今、クロエ海賊団が海軍本部を攻めれば容易く陥落する。かと言って五皇との戦闘は上の許可が下りない限りは原則許されない。
多くの海兵達の冷や汗が止まらない中、オーロ・ジャクソン号の全ての大砲が一斉に空砲を撃ち鳴らすと、湾内に入らず面舵を切り、島の周りを周回し始めた。
「〝弔砲〟と〝水葬の礼〟…」
海兵の一人が呟いた時、ゼットはある事に気づいた。
オーロ・ジャクソン号に掲げられている海賊旗――赤い刀身のソードクロスが描かれた赤旗のドクロマークが、旗竿の先端から半分程下げて掲げられる〝半旗〟となっている。
半旗もまた、犠牲者や故人に対して弔意を表す為に行われるもの。つまり、クロエ海賊団と〝麦わらのルフィ〟の目的は、〝白ひげ〟を筆頭とした頂上戦争で命を落とした全ての者達への弔いだ。
「お前達、向こうから仕掛けない限りは手を出すな。責任ならおれが取る」
「親父……」
『ゼファー元大将……』
腕を組んで海賊達を眺めるゼファーに、海兵達は従った。
余程の事が起きない限り表立って前線に出ないゼファーだが、海軍においてロジャー時代から海軍に貢献した元大将の影響力は健在。彼の責任の下であれば、迂闊に行動できない。
そうこうしている内に島を一周したオーロ・ジャクソン号は、湾内に進入して堂々と停泊した。
「行くぞ。私がいる限りは問題あるまい」
「あくまでも戦闘じゃないけど、いざって時は私達がどうにかするから。安心して伝えてきて」
「おうっ!」
クロエはエマとルフィを連れ、オリス広場へ降り立つ。
途中、ゼファーと何も言わず通り過ぎ、オリス広場に鎮座する鐘――大昔に活躍した軍艦「オックス・ロイズ号」に取り付けられていた神聖な〝オックス・ベル〟へと向かう。
まず最初に、クロエが2回鳴らしてエマが愛銃の片手用ライフルで空砲を撃つ。鐘の音と銃声がマリンフォードに響き、大海賊二人の弔意に海兵達と報道陣は固唾を呑む。
「……ルフィ、お前の番だ」
クロエに促され、ルフィは無言で頷き、鐘を16回鳴らした。
(「16点鐘」……? 今は時期外れだぞ)
ゼットはルフィの行動に疑問を抱いた。
去る年に感謝し鐘を8回、新しい年を祈り鐘を8回、締めて16回鐘を鳴らすのが海兵のならわしなのだが……。
「……次はあそこか」
続いて、一行はマリンフォードにできた広場の大きな亀裂へと向かう。
この亀裂は、黒ひげが白ひげから奪ったグラグラの実の能力を行使した際に生じたもの。頂上戦争の爪痕の中でも群を抜く大きさだ。
三人はそこへ向かうと、クロエはコーヒーリキュール、ルフィは花束、エマは清酒をそれぞれ用意した。
「白ひげのおっさん…ありがとう」
「……ロジャーによろしく頼む、ニューゲート」
「ロックスのお頭さんにも、ね」
各々で弔辞を述べると、ルフィは亀裂の中に花束を投げ入れてから黙祷し、クロエとエマは瓶を傾けて注いでいく。
これはいい絵になると、記者達が一斉にカメラのフラッシュを焚いて写真に収め、メモ帳で目の前の出来事を記録する。
そして3人は踵を返し、何も言わずにオーロ・ジャクソン号へと乗船。そのまま去っていった。
「〝鬼の女中〟は海賊王の
「まさか、クロエがそれを認めた?」
「おいおい、〝麦わら〟はドラゴンの息子だぞ!!」
「とにかくこれは大ニュースだわ!!」
様々な憶測が飛び交う中、クロエ海賊団と〝麦わらのルフィ〟によるマリンフォード再訪は幕を閉じた。
この不可解にして衝撃的な大事件は「〝クロエ〟〝麦わら〟 海軍本部へ弔問」という
数日後、海軍の幹部達が一堂に集まり、緊迫した議論が行われていた。
議題は勿論、ルフィの16点鐘についてだ。
「あまりに不可解!! 戦争終結後、クロエ海賊団に回収されて以降消息不明だった海賊モンキー・D・ルフィ!! やはり生きており、再びこの海軍本部に現れ、クロエ海賊団と行動を共にした!!!」
復興慌ただしく、世界各国から取材陣が集まる中現れた一行の目的は、先の頂上戦争の弔事だった。
記事はゼファーの根回しか、それともジャーナリストの配慮か…海軍が手を出さなかった事を「麦わらを取り逃した」と記載せず報じたが、いずれにしろ大騒ぎになったのは変わらない。
「〝麦わら〟とクロエ海賊団の行動は単純に読めば、この戦争で命を落とした全ての者達への追悼。島の周回による〝水葬の礼〟とオーロ・ジャクソン号の武装を使った〝弔砲〟及び海賊旗の〝半旗〟、そして上陸後の〝2回の鐘〟はそうだと断言していいでしょう」
「……だが〝麦わら〟の16回は違うんだよな、議長」
「そう!! ゼット中将の言葉通り、16点鐘は新年を迎える時のものであり、今は時期外れ。つまり〝時代〟の終わりと始まりの宣言と取れる!!」
――16点鐘は、
ブランニューの言葉に、海軍の幹部達は眉を顰めるのだった。
そして同じ頃、聖地マリージョアでは五老星が世界情勢について話し合っていた。
「――全く、話題の尽きん男だな。〝麦わらのルフィ〟…ガープの孫といえば妙に納得だが」
「クロエ海賊団とは一体どういう繋がりが……? 関係性がまるで見えん」
「ジンベエもとうとう辞めたな…奴の〝七武海〟加入は種族間の和解を象徴していたのだが、実に残念だ」
「〝三大勢力〟の均衡などもはや目も当てられん。〝七武海〟に空いた二つの席をどう埋めるか」
「〝新世界〟の動きを少し待つべきだ。海賊達の中での勢力図も変わって来るはず。より影響力のある人材を選出せねば」
頂上戦争の後の処理についてまとめると、次の議題は新たな勢力〝黒ひげ〟の話に変わる。
「新世界では早速、〝黒ひげ〟が〝白ひげ〟のナワバリを侵略し、次々に征圧している」
サターン聖の言葉に続き、ウォーキュリー聖はティーチを「五皇の座を狙う海賊達の中では一歩リードというところだろう」と評した。
悪魔の実を二つも身に宿すという歴史的に前例のない事態が後押しし、黒ひげ海賊団の進撃は留まる事を知らない。もし止められる当てがあるとすれば、クロエを筆頭とした残りの五皇、もしくは〝白ひげ〟の残党達だが、後者はあまり期待できないだろう。
「厄介なのはいつも〝D〟だ…ポートガスもリードも然り…ここに来て少々その名が人目に触れすぎているようだな」
愛刀の手入れをするナス寿郎聖は、苦虫を噛み潰したように場をまとめるのだった。
過去の感想で、クロエ海賊団の一人一人どのくらい強いか気になるというコメントがありました。
現時点の話ですが、以下の通りです。
クロエ…ニカ状態のルフィにも余力を残して勝てる。
エマ…海軍大将と同格以上。
ラカム…ミホーク以外の七武海には厳しすぎる。
コル寿郎…シキやレイリーといい勝負できる。
レッドフィールド…将星や大看板がようやく張り合える強さ。
ヤマト…五皇も手を抜けない。
ステューシー…ルッチと互角。
ガスパーデ、エルドラゴ…土茶中将くらいならタイマンで普通に勝てる。
ドーマ、マクガイ…赤鞘九人男と同格。
デラクアヒ、
ウィリー…アーロンでも楽勝。
ナグリ…ギア4のルフィとギリギリで戦える。
レッドアロー…七武海の幹部くらいは圧勝。
バンビーノ…銃を扱えるのでベポと張り合える。
クロエが扱いている分、原作キャラはかなり強さを盛ってます。
今後はロッキーポート事件とか青キジの一件とか、本作オリジナルの展開で原作の大事件の数々に触れていこうと思います。