〝鬼の女中〟と呼ばれる女   作:悪魔さん

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おそらく今までの話で一番〝D〟の一族が出てるかも。


第104話〝Dの者達〟

 巷を騒がす海賊〝麦わらのルフィ〟がクロエ海賊団の手引きでマリンフォードに再訪するという事件から日数が経ち。

 クロエはレイリーを連れて女ヶ島に程近い位置にある無人島「ルスカイナ島」へと停泊した。

 ルスカイナ島は週に一回季節が変わる「48季」の島で、大昔に国があったが自然との生存競争に人が敗れ、今では恐竜に匹敵する程に巨大な猛獣が500頭以上も生息する天険の地である。

「レイリー、まさかお前がルフィの師をやってくれるとは思わなかったぞ」

「私こそ、お前がルフィ君の師匠になると思ってたぞ? ヤマト君の前例があるからな」

 レイリーはスキットルの酒を飲みながら、クロエを見やる。

 気まぐれで残酷なイメージが強い彼女だが、その性根は面倒見のいい姉御肌。身内と認定した人間には甘い一面があり、気に入った人間には見返りなしで力を貸すのも厭わない。

 だからこそルフィの師匠もやるのではと思っていたが、クロエはルフィの修行には不干渉のスタンスを取った。シャンクスやバギー、バレットとの関係性をよく理解しているレイリーとしては意外な展開だった。

「ルフィはいつか私を倒しに来る……あいつの拳に()()ができると困る」

「ハハハハハ!! 随分と心配性だな。昔はもう少し殺伐としてたというのに……〝女〟を捨てたんじゃなかったのか? クロエ」

「っ…!! 今でも変わらないっ」

 愉快そうに笑うレイリーに、クロエは思わず顔を赤くしながらそっぽを向く。

「クロエ!!」

「!」

 不意に、ルフィから声を掛けられた。

 クロエはその姿を視界に捉えると、彼はニカッと笑った。

「助かった…本当にありがとう!! エースにもよろしく頼む!!」

「…フフ…気が向いたらな。私の〝推し〟はお前だからな」

 クロエはルフィに穏やかな微笑みを向けると、仲間達に声を飛ばした。

「者共、これから新世界へ向かう!! 出航準備急げ!!」

『おおーーーっ!!』

 クロエ海賊団を乗せたオーロ・ジャクソン号は、新世界へと旅立った。

 残されたのはレイリーとルフィのみとなる。

「……行っちまったなー」

「そうだな……よし、付いてきなさい。君に今から教えるのは〝覇気〟というチカラだ」

 レイリーに促され、ルフィは森の奥深くへと足を踏み入れる。

 この日を境に海賊〝麦わら〟に関する情報の一切が途絶え、世間では死亡説が流れる事となるが、その真実を知る者はごく一握りである。

 

 三日後(3D)ではなく二年後(2Y)――シャボンディ諸島で会おうと。仲間達にのみ伝わる暗号で。

 

 

            *

 

 

 二週間後。

 新世界へ戻ったクロエは、ある島で思わぬ再会を果たした。

「……今更何の用だ、小僧」

 クロエの目の前には、ロジャーの息子――〝火拳のエース〟が立っていた。

 その後ろにはマルコを筆頭とした白ひげの残党達が揃っており、皆が緊張した面持ちをしている。

 それも偶然の鉢合わせではなく、どうやら待ち伏せされていた様子だった。

「あんたに話があってきた……〝ゴール・D・エース〟としてだ」

「!!」

 その言葉に、クロエは目を見開いた。

 あれ程ロジャーを嫌って母親の姓を名乗っていたエースが、自らの意思でロジャーの息子として名乗ったのだ。

 一体、どんな心境の変化なのか――クロエは彼の意図を探るべく話を続ける。

「話を聞こう」

「〝赤髪〟から聞いた……あんたがおれに期待したのは、()()()()と戦う事だってよ」

(シャンクス……)

「おれがどんだけ「親父は〝白ひげ〟一人だ」と言っても、この体に流れる血は変えられねェ……。だからおれは、おれのやり方で〝くい〟のない決着(ケリ)をつける」

 エースの言葉に、クロエは柔和に笑った。

「ようやく〝決闘〟の覚悟ができたようだな。…それで、どうするつもりだ?」

 クロエの問いに、エースは覚悟を決めて口を開いた。

 

「――おれは、大海賊時代を終わらせる」

 

「!?」

「クソ親父は自分(てめェ)の命と引き換えに大海賊(この)時代を作った。だったらおれは、クソ親父が作った時代を終わらせて決着(ケリ)をつける!!」

 導いた答えは、それだった。

 エースは白ひげ海賊団に入る前は、あらゆる〝高み〟を崩そうとした。遍く三千世界が敵であり、何物にも支配されない存在になるべく覇道を突き進んでいた。そして白ひげ海賊団に入り、頂上戦争を経て、今一度〝鬼の子〟である自分が何を為したいかを考えた。

 白ひげ(オヤジ)への恩返し、実父(ロジャー)との因縁、義弟(ルフィ)の〝夢の果て〟……それら全てをひっくるめて考え、そして幼少期に触れた「既成概念」を思い返し、自分の原点を見つめ直した。

 

 ――死んだ人間を、過去の存在を超えるには、それが最適解だと信じて。

 

「……出来ればよし、出来なかったら仕方ねェ。それがゴールド・ロジャー(あいつ)息子(ガキ)として生まれたおれのケジメだ」

 クロエはきょとんとした表情を見せた。

 そして数拍置いた後――

「フフ…!! ハハハッ!! アッハハハハハハハ!!! そうか成程、そうきたか!!! アハハハハハハハハハ!!!」

『!!?』

 クロエは腹を抱えて大声で笑い出した。

 エースをはじめとした白ひげの残党達は驚きを隠せずにいる。

「バレットと似たか寄ったかの答えが来ると思ってたが、私の予想以上だ、()()()!! ロジャーを超えるのなら、それぐらいの事は為さねばな!!」

「!」

「フフ…お前の事を勝手に期待して勝手に見限ったのは少し悪かったな。………だが、そのつもりならもっと力を付けないといけないぞ?」

「ああ…だから話以外にも頼みがある」

 エースは指先に炎を灯し、笑みを浮かべる。

 それが、エースの真の目的だった。

「おれを鍛えさせてくれ。野心も大事だが…オヤジが遺したものも守りてェ」

 それを聞いたクロエは、不敵に笑いながら目を細めた。

「私を踏み台にする、か。大いに結構。ただ……加減はできんぞ?」

 刹那、クロエは覇王色の覇気を発した。

 生前の白ひげのそれ以上の、強大すぎる〝圧〟。文字通りの規格外の威力に当てられ、マルコをはじめとした隊長格はどうにか踏みとどまるが、平の船員達はバタバタと倒れていく。

 そんな中、白ひげの残党達で唯一の覇王色の覚醒者であるエースは、仁王立ちしながら覇王色を飛ばした。

 

 ボッ!!

 

 ロジャーの遺児であるエースと、ロジャーの亡霊であるクロエ。

 睨み合いで生じた二人の覇王色の衝突は、大気を震わせ猛烈な突風を発生させた。

「ふむ…合格ラインではあるが、それだけでは〝高み〟には程遠い。基礎を極め、常に鍛え扱う事で覇気の質量はより強大かつ膨大になる……まずは持ちうる力を全て使って私に挑んで来い」

「上等だァァ!!」

 エースは炎を全身に燃え滾らせ、クロエへ立ち向かった。

 その後、1時間以上戦った末にエースはボコボコにされたのは言うまでもない。

 

 

 所変わって、〝偉大なる航路(グランドライン)〟バルティゴ。

 「海賊〝麦わら〟による16点鐘」の新聞記事が世界に拡散される中、世界を揺るがす革命軍の本部が置かれた白土の島で、総司令官ドラゴンは風に当たりながらカマバッカ王国のイワンコフと連絡を取り合っていた。

《今回の戦争の一件で、ヴァナータの素性も一気に世間に知れちゃっタブルわねドラゴン。革命軍の兵士達に動揺はなァい?》

「…フフ…得体の知れんボスが血の通った人間だったと、皆安心したようだ。――もう構うまい…ルフィは子供じゃない…だがまさかお前と共に行動していたとはな…」

 ドラゴンは不敵に笑いながら、同志と今後の方針について語り合う。

《ヴァターシもイナズマも、突然の脱獄で色々話したい事も聞きたい事も山程あっティブル》

「だろうな……近い内に世界中に散る幹部達を一度集める必要がある。〝白ひげ〟の死で、世界の風向きも政府の体制も大きく変わる。くまには引き続き、七武海として()()()()()()までは政府に肩入れしてもらう」

 ドラゴンの言葉に、イワンコフは不満気に言葉を返した。

《ヴァターシとしては、一刻も早くくまを革命軍に連れ戻したい気分だけどね!!》

「…」

《……ところで、サボやコアラは元気そう?》

「コアラは相変わらずだが……サボは少し大変だったな。サボはルフィと〝火拳〟とは義兄弟の関係だったと先程聞いた」

《ウソでしょ、そうなの!? ……でもサボって記憶喪失だったナブルよね? ――もしかしたら、そういう事かしら?》

 勘繰ったイワンコフに、ドラゴンは静かに「ああ…そういう事だ」と告げた。

 実を言うと、革命軍の参謀総長であるサボは長らく記憶喪失状態であったのだが、頂上戦争の結末の記事が出回ってから記憶を取り戻し、つい先程まで気が動転していたという。今はようやく落ち着きを取り戻したようだが。

《……まァ、ヴァターシの思ったような狂乱になってないあたり、流石の精神力かしら?》

「そうだな。……イワ、これ以上の無線は危険だからここで切るぞ」

《ええ、また連絡するティブル!!》

 イワンコフとの連絡を終えたドラゴンは、本部の室内へ戻る。

 そこには、金髪の青年・サボがココアを飲みながらソファに腰掛けていた。

「…気分はどうだ? サボ」

「…すいません、大分落ち着きました」

「まだ心の整理がついてないなら、無理をしなくていい」

「いえ……大丈夫です」

 サボはココアを飲み切ると、徐に立ち上がった。

「……こうしている間にも、世界各地で同志達が戦っている。心に傷を負いながらも、革命の為に命を懸けてるんです!! ……おれがここで止まっているわけにはいかない!!」

 サボは鋭い眼差しをドラゴンに向け、自身の決意を改めて表明する。

「――エースとルフィは、絶対大丈夫だ。……だからおれは革命に集中するよ、ドラゴンさん」

「……何か根拠はあるのか?」

「勘ですよ。ただの」

 苦笑するサボにつられ、ドラゴンも笑みを浮かべたのだった。

 

 

           *

 

 

 そして、新世界のとある「燃える島」。

 頂上戦争で半ば火事場泥棒のような形で白ひげを討ち取ったティーチは、好物のチェリーパイを頬張りながら仲間達と待機していた。

「あっつー…足ギリギリだ。体に力も入らねー。いてっ…魚にかまれつった」

「ぐちぐち言ってんじゃねェよウルフ!!! おめェのせいで丸太船がイカレそうなんだよ!!! おめェの為の交渉だぞ!!!」

 ティーチの言葉に、シリュウは酒を呷りながら「そもそもあんな丸太船で新世界を渡ろうというのが無茶な話なんだ」と正論を述べた。

 そう…黒ひげ海賊団の海賊船はスループ船でもなければキャラベル船でもなく、ガレオン船でもない。まさかの筏である。

 これだけでもよく「前半の海」を渡れたものであるが、流石に世界最強の海である後半の方は危なかったようだ。主にウルフの巨大さと重量で。

「こんな事ならマリンフォードで軍艦一隻奪って来るんだった!!」

「物には愛着ってもんがあるだろう!?」

 ティーチとバージェスの意見に、シリュウは「不用意だってんだよお前ら、全てにおいて」とさらに呆れ返った。

「おれに仕切らせろ!! 船長を代わってやろうかニャ、ティーチ!!」

「ホホホ、ブチ殺しますよ。ウチは黒ひげ海賊団です」

「天はすでに運命の全てを知っているのだ……」

 ピサロとラフィットが一触即発になると、ドクQは吐血しながら一人呟いた。

「酒がもたねェ。早く町のある島へ行かんのんか!?」

「そうそう。船より私は服が欲しいわ。囚人服はもうまっぴら」

 バスコ・ショットとデボンの言葉に、シリュウは「それぐらい我慢しろ」と諫めるが、我慢にも限界ってものがあると反論されてしまう。

 そんな中、ティーチは一味の狙撃手であるヴァン・オーガーに問いかけた。

「海軍の奴らどうした」

「様子を見て来る。あまりに遅いな」

「全くだ!! ()()()()もシビレを切らしちまうぜ。――なァ、〝赤旗〟(ディエス)・ドレーク!!」

 ティーチが顔を向けると、そこには満身創痍で拘束された超新星――ドレークの姿が。

 黒ひげ海賊団はこの島で2億2200万ベリーの元海軍将校の海賊を捕獲し、軍艦一隻と物々交換しようとしていたのだ。

「ハァ…ハァ…」

「残念だったが、ここでお前は脱落だ……!! 腕は悪くねェが、予定通り海軍にこいつを引き渡して代わりに軍艦一隻と交換だ。ゼハハハ!!」

 悠然と笑うティーチだが、オーガーが叫んだ事でハッとなる。

「船長!! 見えました、海軍が」

「約束の軍艦は持って来たろうな!!」

「軍艦はあるが、渡す気はないらしい」

 オーガーの返事にティーチは怪訝な表情を浮かべるが、その理由を知って血相を変える事となった。

「〝黄猿〟が乗っている!!!」

「畜生!!! ()()()()()()まだ望んでねェんだよ!!! ズラかるぞ野郎共ォ!!!」

「ウィーッハッハッハッハッハッ!! 大失敗!!」

 ティーチは海軍大将(ボルサリーノ)が向かってると知るや否や、即座に交渉を断念して撤退した。

 あてもない賭けに人生を捧げることができる覚悟を持つティーチだが、それ以上に厄介なのはリスクが伴う行動は避けるという一面。

 リスクを度外視する傾向が強いクロエとは、ある意味正反対と言えよう。

「……〝黒ひげ〟は逃げたようだねェ~…」

 大将・黄猿が到着した時には、黒びげの一味の姿はなく、ドレークとその一味だけが残っていた。

「ドレーク()()……とんだ災難だったねェ~」

「……面目ない限りです」

「まァ、君の件は〝上〟に通ってるからねェ~…一度休むといいよォ~…」

 ボルサリーノは燃え盛る土地で、意味深な言葉を口に出すのだった。




エース、よかったね。
本作では白ひげ海賊団の残党達は海賊連合みたいな組織に変わり、そのトップがエースという事になります。ただ、エース達は後にとんでもない貧乏くじを引く事になります。それはまたいつか。

クロエはエースがロジャーにどういう感情を向けてるかではなく、ロジャーとどう折り合いをつけるのかを気にしてる様子でした。
ちなみにクロエがエースだったら、父親の姓を名乗ります。事実、第64話で彼女は「何の縁もゆかりもない他人に一々慮って生きる義理はない」「恨みつらみを語っても現状が変わらないのは、根本的にそいつらの生き方の問題」「自分の人生を世間の物差しで測られるなど不愉快千万」って言ってますし。
ただ、周囲が勘弁してくれと言ったら、渋々別名を名乗るかもしれませんが。

サボは頂上戦争と16点鐘の件で全ての記憶を取り戻しました。
離れ離れになってる分、義兄弟達が心配ですが、性格はあまり原作と代わりません。
ちなみに戦闘力は、メラメラの実の能力者じゃないので武装色と見聞色、基礎戦闘力は原作よりも強めに盛ってます。

そして最後。赤犬の代わりに黄猿が、ボニーの代わりにドレークが登場。
機密特殊部隊の件があるので、黄猿はモルガンズのファッキンクソバードにすっぱ抜かれないように細心の注意を払ってます。(笑)
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