〝鬼の女中〟と呼ばれる女   作:悪魔さん

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久しぶりにクロエが新技を披露します。
ちなみに現在のクロエの戦闘力は晩年のロジャーとほぼ互角ですが、ロックスや全盛期のロジャーが相手だとクロエは善戦しますが敗北します。


第106話〝殺ぎ、穿つ〟

 クロエ海賊団が海賊島(ハチノス)を掌握した事を機に、新世界は大きくうねり出した。

 

 ビッグ・マム海賊団では、元王下七武海の〝海侠のジンベエ〟率いる「タイヨウの海賊団」に続いて超新星のカポネ・〝ギャング〟ベッジ率いる「ファイアタンク海賊団」が傘下入り。研ぎ澄まされた警戒心と防衛力、そしてビッグ・マムの傘下になった事実から、ベッジは1億3800万ベリーから3億ベリーの賞金首となった。

 白ひげ海賊団に代わって世界最大の海賊団となった百獣海賊団は、新世界に次々と進出する海賊達をことごとく叩き潰し、それらを吸収して勢力を拡大。その兵力は2万人を超えた。

 黒ひげ海賊団もまた、カイドウとビッグ・マムを刺激しないように影響力を強め、ドレスローザ近くの孤島「シルバーマイン」を手中に収めた。地下坑道に残された銀を資金に、その兵力を増強し続けている。

 唯一変化がない赤髪海賊団は、そのまま勢力を維持している。

 

 海賊界がクロエ海賊団によって勢力図が塗り替わっていく中、当の海賊の女王様は新聞の一面を見て声を荒げていた。

「何やってんだ海軍!?」

「うわっ!! ビックリした……どしたの、クロエ」

「これ見ろ…柄にもなく大声出した理由だ」

 クロエは頭を抱えながら新聞を見せた。

 その見出しには、

「……大将〝青キジ〟、海軍を脱退!?」

 クザンが海軍を辞めたという衝撃の一文が載っていた。

「次期元帥を決めるのに大将同士の決闘を10日間行ってたそうだ…」

「何で!? いや何で!!? おかしいでしょ、そんなの実績と人望で決めればいいじゃん!!!」

「同感だ、呆れてモノも言えん……」

 クロエは溜め息を吐いた。

 

 白ひげ海賊団との頂上戦争が終わり、時代の変わり目を悟ったセンゴクが元帥の職を辞した事でトップが不在となった海軍。

 センゴク自身は、上司であるコング総帥に次期元帥としてクザンを推薦したが、政府上層部からはサカズキを推す者が多く、有力候補となった。サカズキ自身も頂上戦争をきっかけに爆発的に増えた海賊達に対し、自身の想像以上に正義に徹底的な姿勢を求める将校が増えた事を感じ取り、次期元帥に立候補した。

 これに真っ向から反発したのは、他でもないクザンだった。普段はやる気を見せない彼だが、徹底的な正義は時に人を狂気に変えるとしてサカズキと対立。前代未聞の大将同士の抗争はある島での10日にも及ぶ決闘にまで発展し、その末にサカズキが勝利した。

 決闘をした両者は壮絶な深手を負い、流石のサカズキも対立したとはいえ犯罪者でも反逆者でもない同志(クザン)には情けをかけたが、「徹底的な正義」の下にいられない〝青キジ〟は海軍を去る事となった。

 

 正義は価値観である面も強い為、互いの掲げる正義で対立する事はあったろうが、まさかこんな大喧嘩になるとは政府も想像しなかっただろう。

「……海軍としても、デカい戦力を失ったね」

「ティーチとかにヘッドハンティングされなきゃいいがな」

 クロエはコーヒーを飲みながらそう呟いた。

「――ところで、提督の仕事は板についてきたか?」

「密貿易の責任者だから、まさかの書類仕事があるとは思わなかったよ」

 エマは苦笑いする。

 海賊行為と言えば、よく想像されるのが海上や島々での略奪行為だが、必ずしも海賊の収入が襲撃だけとは限らない。ナワバリを所有していれば支配している地域から金品などを徴収するし、中には人身売買や非合法の商取引などの海賊らしくない犯罪活動もしている。

 海賊島ハチノスを拠点に王直が行っていたのは、海賊行為と密貿易。海上で同業者から金品や物資を略奪する一方、ハチノスの金鉱脈で採掘した金を海賊船で密輸して新世界の各地で売り捌いていたのである。それをエマが引き継ぐ形となったのだが……。

「今、ハチノスの海賊船を襲撃する奴が増えてきてるんだよね……」

「この島の金鉱脈は裏の世界で知られてるんだろうな。……とはいえ、そこまでこの島の連中は柔じゃないだろう? なぜ奪われる」

「魚雷使ってくるんだよ」

 まさかの言葉に、クロエはピシリと固まった。

「ぎょ、魚雷…?」

「しかも潜水艇からの攻撃。一体どこで仕入れたんだか……」

 こめかみを指で押さえるエマに、クロエも考え込む。

 潜水艇は軍事兵器。海賊が独学で造れるような代物ではないはず。それを踏まえると、考えられるのは闇ルートの横流し。棄てられた海軍の軍艦を解体して改造してるのか、そもそも何者かが海賊専用の潜水艇を造っているのか、あるいは闇取引でどこかの国から買い取ったのか…いずれにせよ、ただ事ではない。

 新世界で進む「海賊の武装の軍隊化」は、クロエとしては不愉快極まりないものだった。真っ向勝負やドツキ合いを好む彼女としては、毒ガスや魚雷は邪道。命のやり取りに燃える海賊としては、軍隊の装備は野暮なのである。

「私はこういうのと縁がなかったから、どう対処すれば良いか……」

「……この手のタイプに興味を持つである知り合いがいる。そいつに聞けばいい。あいつの事だ、実際に絡んでるだろうしな」

「あいつ?」

「出航準備だ。全員に知らせろ」

 クロエはコーヒーを飲み干すと、壁に掛けてあったコートを肩に羽織った。

 

 

           *

 

 

 数日後、新世界「鬼ヶ島」。

 カイドウが20年近く前に起こしたクロエとの戦争により、ワノ国を出ていく事と引き換えに手に入れた「()()()()の国土」は、世界最強の海賊団となった百獣海賊団の本拠地である。

 その鬼ヶ島の中央の山と一体化した巨岩「ドクロドーム」の中の屋敷で、クロエ海賊団は百獣海賊団から酒宴のもてなしを受けていた。

「ウォロロロロ!! 久しぶりのダチだ、今日は無礼講と行こうぜ!!」

「カイドウさん、昨日も無礼講で〝火祭り〟やったばっかりなんだが…」

 巨大な盃を片手に好敵手(クロエ)の来訪に気を良くするカイドウを、組織の最古参である〝火災のキング〟がツッコミをしていた。当のカイドウは「細けェこたァいいんだよ!!」と笑い上戸で盛り上がっているが。

「ウィ~~……クロエ、聞いたぞ。エマが海賊島(ハチノス)のボスになったそうじゃねェか」

「…まあ、色々と考えた末にな。窮屈な立場にならずに済んでるからいいが」

 カイドウから酒を注いでもらい、クロエは盃を煽る。

 広間の奥ではヤマトが同い年である最高幹部の〝旱害のジャック〟と一対一(サシ)で飲み交わし、隣の大広間ではエマが双方を巻き込んで騒いでいる。

「…で、おれにわざわざ会いに来た用事は? また戦争してくれんのか?」

「いや…今ウチの方である問題があってな。お前ならこの手に詳しいと踏んで来たんだ」

 クロエは海賊島で起きている問題について、カイドウとキングにありのまま話す。

 二人はクロエの話に顔を見合わせると、もしやと確信を掴んだ様子で頷く。

「そいつァ〝JOKER(ジョーカー)〟のビジネスに絡んでるな」

「〝JOKER(ジョーカー)〟? 誰かの通称だな?」

「察しがいいな……ウチも武器をそいつから買い取っている」

 カイドウは、現在の百獣海賊団の武力について語り出す。

 元々カイドウ自身、武装や戦闘員の増強に極めて貪欲である。その上、自身にとって最初にして最強の好敵手(ダチ)であるクロエを意識してか、幹部格の強化には自らが指南するなど精力的に取り組んでいる。

 一方で闇のブローカーから高品質の武器・兵器も積極的に購入しており、自らのナワバリの中で工場を造り兵器開発・増産にも取り組んでいる。最近では独自の船舶用の長距離砲の実用化に成功し、鬼ヶ島だけでなく所有する船にも配備している。

 ちなみに唯一手を出してないのが化学兵器で、これは「真っ向勝負を好むクロエに対して無礼」という、狡猾な手段は選ぶ時こそあれど基本的に好まないカイドウの武人肌によるものである。

「そんな中だったな……今、新世界の闇で〝面白(おもしれ)ェモン〟が出回ってるって知ったのは」

「何だそれは」

動物(ゾオン)系の()()悪魔の実〝SMILE(スマイル)〟だ」

 キングは続いて、新世界の裏社会に出回っている果実について語る。

 〝SMILE(スマイル)〟は食した者に動物の能力を発現させる特殊な果実で、平たく言えば動物(ゾオン)系悪魔の実の劣化コピー版。天然物の悪魔の実よりも量が多く入手しやすく、中には動物(ゾオン)悪魔の実にも滅多にない飛行能力を得られるので、雑兵でも容易に強くなれる。

 ただしそのデメリットは天然物以上で、「能力を得られる確率はおよそ10パーセント」「アタリの実を食べたとしても発現の仕方が無茶苦茶」「ハズレの実を食べた場合は「笑う」以外の感情表現能力が一生消える」など、とんでもない欠陥品である。

「その〝SMILE(スマイル)〟は闇のブローカー〝JOKER(ジョーカー)〟が売り捌いている。今じゃあ新世界の闇ビジネスのバックには常に奴がいる状態だ」

「――成程な。話はわかった」

「何だ、潰す気か? 新世界の全部を敵に回すぞ…!!」

「……邪魔か?」

 ジャキッと刀を鳴らすクロエに、カイドウはニィッ…と笑った。

「おれァそいつに手ェ出してねェからな。そんなモンに頼るような強者に成り下がったおれは嫌いだろう? まァ、〝JOKER(ジョーカー)〟には「何でもいいから天然物の動物(ゾオン)系を寄こせ」とは注文してるがな。ウォロロロロ!!」

 盃の酒を飲み干すカイドウに、クロエはきょとんとした。

 ――戦力強化に余念がない最強生物が、人造悪魔の実を欲しないとは。

 こればかりは予想外だったのか、長い付き合いである彼女でも知り得なかった。

(……人はわからんな。長い付き合いでもなお、読み切れないとは)

「プハァ~~!! ……さて、酒盛りもここまでにして今日のメインディッシュだ。キング、あとは任せたぞ」

「はっ…」

 カイドウは徐に立ち上がると、壁に立て掛けていた金棒に手を伸ばした。

 それと共に彼の覇気が高まり、獰猛な笑みを見せる。

「屋上に来い、クロエ!! 久しぶりにドンパチしようじゃねェか…!!」

「……いいだろう、生きててこその〝殺し合い〟だからな」

 クロエもまた、生き生きと好戦的な表情に変わったのだった。

 

 

           *

 

 

 ドクロドームの屋上。

 カイドウに誘われたクロエは、酒瓶を持って対峙していた。

「何だそりゃあ」

「私が趣味で作っているコーヒーリキュールだ」

 クロエは酒瓶をカイドウに投げ渡す。

 左手で受け取ったカイドウは、瓶の栓を抜いて中身を飲み始める。

(あめ)ェ上にあまり酔えねェ……が、いい酒じゃねェか」

 カイドウはそう評すると、自身も持参していた瓢箪をクロエに渡す。

「意外と軽いな……まさか直飲みの飲みかけじゃないだろうな?」

「心配すんな、ちゃんと移して飲んでる!! ウォロロロ…!!」

「飲みかけではあるのか…」

 クロエは眉を下げつつも、瓢箪の中身を飲み始めた。

「……うまいな」

「お前にだけはマズい酒はやれねェからな!! ウォロロロロ!!」

 食前酒ならぬ〝戦前酒〟を交換して飲んだ両者は、それぞれの得物を構える。

 カイドウは金棒・八斎戒を振りかざし、クロエは腰を沈めて居合の体勢に入ると同時に、両者は覇王色の覇気を放ち始める。最強同士の気迫は島を揺らし、大気を震わせた。

「〝雷鳴〟……」

 先に仕掛けたのは、カイドウ。桁外れの速度で迫り、覇気を伴ったフルスイングをブチかまそうとする。

 しかし、その軌道を未来視で読んでいたクロエは爆発的な脚力で吶喊し、強力な覇気を纏った抜刀術を繰り出した。

「〝八卦〟!!!」

「〝(かむ)(とけ)〟!!!」

 

 ドォン!!

 

 両者がすれ違った瞬間、凄まじい覇気が周囲に拡散。

 ドクロドームの屋上の地面に亀裂が生じると、クロエは額から血を流し、カイドウも右肩から血を流した。

()っ……前より速くなってるな……」

「ウォロロロ…!! そうでなきゃあな…!!」

 カイドウは愉快そうに笑うと、超巨大な青龍に変身する。

 その巨体の為に接近戦に弱くなるが、硬いウロコにより防御力が非常に高く、カイドウ自身の桁違いの身体能力も相まって圧倒的な生命力とタフネスに拍車がかかる。並大抵の攻撃では掠り傷すらつかないが、覇気を極めたクロエには無問題だ。

「ハッ!!!」

 カイドウは口から咆哮と共に多数のかまいたちを発生。

 周囲の岩を次々と斬り刻むが、クロエは刀と鞘に覇気を纏わせ二刀流で対応。冷静に風の刃を打ち落としながら距離を詰め、跳躍して宙に浮くカイドウの頭上まで飛んだ。

 カイドウはすかさず〝熱息(ボロブレス)〟で迎撃。極太の火炎放射を吐き、クロエを焼き尽くそうとするが……。

「〝神威〟!!」

「ぬっ!?」

 クロエは覇気を纏った斬撃を飛ばして、破壊光線の如き業火を両断。カイドウは顔面で受けるが、衝撃で怯みこそすれど傷はついてない。

 しかし、その時にできた一瞬の隙を突き、クロエは鞘に武装色と覇王色を纏わせて振り抜いた。

「〝降伏三界〟!!!」

「ぐおォ!!」

 飛ぶ打撃が喉に直撃して悶えるが、撃墜には至らず。

 カイドウはすぐに態勢を立て直し、口から炎の散弾を発射。着弾と共に炎が爆ぜ、逃げ場を塞ぐように四方八方へ燃え上がる。

 その煉獄火炎を見聞色を駆使して的確に躱し、クロエは高速で接近。特大の火球が来る直前に跳んだ。

「〝神鳴神威〟!!」

「おっと…!!」

 覇王色の斬撃を、カイドウは未来視で回避。

 巨体を大きく揺らし、今度は雷を放射。無数の稲妻が地に降り注ぎ、クロエの頭上にも襲い掛かるが……。

「〝閃電娘娘(せんでんにゃんにゃん)〟!!!」

 クロエは覇王色を纏わせた化血を掲げ、刀身から覇気の雷を放つ。

 電撃の稲妻と覇気の稲妻がぶつかり合い、相殺されていく。

「ウォロロロロ…!! そういやあ、お前は覇王色の技巧に関しちゃ()()()()だったなァ…!! だがいくら覇気だけが全てを凌駕するとしても、そう簡単にゃあ行かねェぞ? 〝(たつ)(まき)〟!!!」

 好敵手の巧みな覇気の扱いを称賛しつつ、カイドウは複数の巨大な竜巻を発生させる。

 これにはクロエも「災害を小技みたいに…!!」と驚愕し、巻き込まれまいと回避行動を取るが、竜巻同士がぶつかってさらに巨大化。見聞色ではどうにもできず、飲み込まれて上空へ吹き飛ばされた。

「ぐうゥゥ……!!」

「〝(たつ)(まき)(かい)(ふう)〟!!!」

 風圧に耐えるクロエに目掛けて、カイドウは身体を畝らせ覇気を纏った風の刃の弾幕を飛ばす。体勢が悪い状態でどうにかクロエは剣を振るうが、完璧には捌けず、切り傷を増やしていく。

 並大抵の強者でも無傷では済まない容赦ない追撃だが、カイドウはわかっていた――この程度でクロエ・D・リードという女が戦闘不能になるはずがないと。

「〝武脚跟(ブジャオゲン)〟!!!」

 

 ボンッ!!

 

 クロエは右足に覇王色の覇気を込め、踵落としの要領で真下へ振り下ろし、覇気の爆発を起こす。自身の技の中でも屈指の攻撃範囲を誇る大技で、竜巻を内側から吹き飛ばした。

 力技で竜巻を撃破し、風の刃の弾幕を刀と鞘の二刀流で捌き、反撃に打って出た。

「〝劈風〟!!」

 お返しとばかりに、覇気を纏った斬撃の嵐を放つ。

 カイドウは龍の巨体をくねらせて回避するが、気づいた時には化血の柄を咥えて覇王色の覇気を纏った鞘を両手で構えたクロエが眼前に迫っていた。

「何っ!!」

「んんっ!!」

 

 ドカァン!!

 

「ぐおォ…!!」

 脳天に叩きつけられ、カイドウは地面に叩きつけられた。

 〝()(てん)(おう)(げん)(ラグ)()(らく)〟――カイドウの技を盗んだ彼女の強力な打撃技で、あのシャンクスもモロに食らってノックアウトした程。いかに最強の生物とて、覇王色を帯びた容赦ない振り下ろしは堪えたのか、カイドウの意識は一瞬だけ飛びかけた。

「っ……流石に効いたぜ、今のは…!!」

「今ので完全に沈まないあたり、やはり規格外だな」

 クロエは着地し、カイドウはフラつきながらも立ち上がる。

 ダメージは受けても共にまだまだ動けるようで、双方とも楽しそうに笑っていた。

「ウォロロロロ…クロエ、お前はどんな世界を望む?」

「? …何だいきなり」

「「戦争」だけが人間の価値を決める…!! 平和ボケした権力者を戦場に引きずり下ろす事が「平等」と「自由」…!! そう思わねェか?」

 カイドウは口から吐き出した炎を自らに纏い始めた。

 今までにない形態に、クロエは警戒を強める。

 

「〝火龍(かえん)(ダイ)()〟!!!」

 

 口から放出した炎を自身より何倍も大きな龍の姿に変えて纏うカイドウ。

 その熱量は凄まじく、熱波でクロエは丸焼きにされそうな気分になった。

(あつ)っ……!! 私は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()んだと思ってるんだがな」

 そう言いながら、クロエは化血を頭の右脇に構えた。

 直後、バリバリと激しく赤黒い稲妻が迸り始めた。覇王色の覇気を、刀身に溜めているのだ。

「…この世のどこを探しても、平等と自由の正解なんてないだろう? 正義論と同じだ」

「……ウォロロロロロ!! そういう事か、お前らしいな…!! 行くぞ!!」

 カイドウは一度上昇し、その直後に急降下してクロエに迫った。

「――〝()(えん)(はっ)()〟!!!」

 火龍と化したまま突進し、覇気を纏った体当たりを仕掛けるカイドウ。

 それに応えるかのように、クロエも渾身の一撃を放った。

 

「〝(かむ)(そぎ)〟!!!」

 

 化血に膨大な覇王色を込めたクロエは、破壊光線の如き勢いで覇気の衝撃波を放った。

 それを目の当たりにしたカイドウは、目を大きく見開いた。

 一瞬だけだが、()()()の幻影が重なったのだ。

(――ロックス!?)

 かつて世界を震撼させた、伝説の大海賊ロックス・D・ジーベック。

 彼の剣技は、まるで巨大なハンマーか砲撃のように周囲の全てを吹き飛ばす事で有名であった。

 それを彷彿させる剣技を、クロエは放ったのだ!!

 

 ドォン!!

 

「ぐおォ…!!」

 直撃と同時に、纏った炎をかき消す勢いで覇王色の覇気が暴発。

 青龍の巨体が弾かれ大きく仰け反ったところへ、クロエが地面を割る程に踏み込んだ。

「〝(かむ)穿(せん)〟!!!」

 クロエは化血を黒刀状態にさせ、竜巻状の覇王色の覇気を起こしながら突進。

 凄まじい勢いでカイドウとすれ違い、強靭な鱗を抉り斬って鮮血を噴き出させた。

「ぬおおおおおお!!?」

 最強生物の絶叫が木霊し、龍の巨体が縮んでいく。

 しかし、それと同時にクロエも膝を突き、刀を地面に突き刺して杖にした。初っ端から覇気を全開放したのは流石にまずかったのか、激しく息を切らしている。

「ハアッ…ハアッ…ハアッ……」

「ゼェ…ゼェ……流石に、今のは効いたぜ…!! もう数センチ内側だったら、勝負あったかもな…!!!」

「…フフ…数センチ数ミリの世界こそ、命のやり取りの醍醐味だろう…?」

「あァ、もっともだ…!!!」

 カイドウは人獣型になり、呼吸を整える。

 その規格外の生命力と回復力に、クロエは呆れた笑みを浮かべながら立ち上がる。

「相変わらずデタラメな回復ぶりだな……私も負けては、いら、れ…」

「?」

「ちょっとタンマ…覇気使い過ぎた…」

「バカか貴様!!!」

 羽目を外して覇気を遣いすぎたクロエに、カイドウはツッコミを炸裂。

 しかし直後、カイドウも意識が朦朧となり膝を突いた。彼女の覇王色の猛攻は、無敵の最強生物に確実にダメージを蓄積させていたようだ。

「……フフ…!! 何だ、お前も強がりか?」

「バカ野郎…死に体はてめェの方だろうが…!!」

「誰が死に体だ……!! 酒蔵を吹き飛ばされたいのか…!!」

 好戦的な笑みを浮かべ、互いに軽口を叩き合う二人。

 次第に覇気も体力も回復したのか、双方の全身から覇王色の覇気が迸り始め、ビリビリと大気を震わせた。

「ウォロロ……天に満月、地には敵…!!」

「共に極上、乾坤一擲…!!」

 得物の柄を握り締め、覇気を纏う。

 世界最強同士の次なる衝突に向け、静かに構える。

「行くぞ、クロエ……宴の続きだ!!」

「ああ…!! 一撃一撃に命を乗せよう!!」

 二人は同時に駆け、得物をぶつけ、覇王色の衝突を起こした。

 最強の海賊達の激闘は翌朝まで続き、ドクロドーム下層の屋敷内では屋上で暴れる二人の覇気に当てられて気絶する者で溢れたという。




今回はオリジナル展開・独自解釈の多い回だったと思います。

前半に触れた勢力図の変化は、アニオリのネタも入れてます。
ハチノスの金鉱脈が使えないので、シルバーマインの銀鉱を利用するティーチは流石です。

ハチノスの王直の活動は、何となくですが金鉱脈を利用した密貿易なんじゃないかなと思います。
元ネタと思われる本物の王直は後期倭寇の頭目で、東南アジアや日本との密貿易を行っていたそうですので、そこから引用しました。
エマは提督となってから、その管理も一任されたようです。……あれ? 王直の奴、義理の娘に面倒な仕事押し付けてない…?

後半は百獣海賊団の火祭りの直後。
本作の百獣海賊団は、人造悪魔の実には手を出してません。ただドフラミンゴのビジネスがパーになると彼を経由して得ていた天然物悪魔の実が手に入らなくなるので、ちょっと困るかも。
ちなみにドフラミンゴの人造悪魔の実は、ある大海賊が世界征服の為に大量購入しているとか。

そして本作の恒例行事、クロエVS.カイドウ。今回は新技を披露。
クロエの〝(かむ)(そぎ)〟は、ロックスみたいに渾身の一振りで直線上に存在する全てを吹き飛ばす大技です。威力としては、海軍の軍艦を一撃で大破・沈没できる程度ですかね。
もう一つの〝(かむ)穿(せん)〟は、「鬼滅の刃」の〝塵旋風・削ぎ〟の覇王色バージョンです。覇王色を撒き散らしながら突っ込んでくるんで、躱せてもクロエの覇王色に当てられて気絶するという厄介極まりない性能を持ってます。

次回は独自解釈のロッキーポート事件とか、思いついた小ネタをやろうかと。
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