〝鬼の女中〟と呼ばれる女   作:悪魔さん

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またの名を、クロエ襲撃前夜。
イムがなぜコル寿郎を欲するのかという理由が判明します。

素敵なクリスマス()()を楽しみましょう。

あとすみません、タイトル忘れました。(笑)


第113話〝バショバショの実の真髄〟

 コル寿郎を奪還すべく聖地マリージョアに殴り込みをかける事にしたクロエは、同行するラカムとクザンにある物を渡していた。

 それは――

「……蝶結びのヒモ?」

「この期に及んで何だこれ? 神頼みするような人間じゃねェだろ」

「阿呆。それは一人海賊の頃にやってた「保険」だ」

 クロエ曰く。

 若き日の一人海賊――ロジャー海賊団に入る以前のルーキー時代――の頃、何らかの形で覇気を消耗しすぎて使えなくなった際に備え、緊急時の逃走用として自身の〝覇王色の覇気〟を封印したヒモを必ず一つ用意していたという。

 結果的には終ぞ使われる事はなかったが、今回は相手が神の騎士団とそれ以上の強き存在という事もあり、念には念を入れての備えである。

「保険はいくらあってもありすぎる事はねェからな…ありがたく受け取るぜ、船長」

「あ~……ちなみに()()解くとどうなんの?」

「まァ、一番気になるよなクザン。解くとこうなる」

 クロエは試作で作っていたヒモを解く。

 すると、結び目を中心に込められていた「クロエの覇王色」が拡散。バリバリと音を立て、海面を震わせた。

「……スゲェ」

「まァ、お前達に渡した完成品はこれ以上の威力だ。気休めにしかならんだろうが…」

「殺意高くねェか、このお守り…」

 改めてヒモを眺めるラカムは、引き攣った笑みを浮かべた。

 クロエの覇王色の強大さは、本気でやれば能力者の能力を強制解除できる程。一体どれぐらい込められてるかわからないが、かなりの量の覇気が封じられているのは確実だった。

「……ところでなんだが…どういう計画なんだ?」

「そんなもの決まってる。コル寿郎を見つけ出すまで破壊し尽くし、見つけ次第トンズラだ」

「シンプルでわかりやすいな」

「いや、ただ暴れて帰って来るだけだろうが!!!」

 

 

 同時刻、ハチノス。

 神の騎士団襲撃からの復興が進む海賊の楽園では、提督兼副船長のエマが海賊達に指示を飛ばしていた。

「武器をありったけ集めてきて!! 弾もたくさん必要だからよろしくね!! 港は使い物にならないようボッコボコに!! でも堅気への手出しはダメ、絶対!!!」

「了解、提督ゥ!!」

「行くぞ野郎共ォ~~!!!」

 エマの命令に従い、海賊達が続々とハチノスを出航していった。

 彼らは皆、ある島へ向かっていった。

 それは、世界政府加盟国にして王下七武海のドンキホーテ・ドフラミンゴが支配する国家――ドレスローザである。

 ドレスローザの王宮の地下には、ドンキホーテファミリーによる人造悪魔の実や武器・兵器の密貿易を行う闇の交易港がある。これにより近隣諸国がバランスを失って国家間の戦争が絶えなくなっており、ドレスローザは「野蛮な海賊の王国」と嘲られている。

 その情報に目を付けたエマは、交易港に奇襲をかけて武器と兵器を略奪し、海賊島の防衛力を強化しようと企んだのだ。ハチノスの海賊達は、そこいらの海賊とはレベルが違う。あっという間に港を破壊し、ドンキホーテファミリーの影響力を落としてくれるだろう。

「……エマ、まさか七武海が支配する国を乗っ取る気か?」

「そのつもりはないよ、お師匠。でも今回の襲撃で、他の五皇より〝神の騎士団〟の方が断然厄介だってわかった。私達が一番警戒するべき敵は、マリージョアの天竜人だ!!」

 王直の問いかけにそう答えるエマ。

 ただでさえ神の騎士団三名でかなりの被害が出たのに、聖地には残りの騎士団の面々に加えて二軍である〝神の従刃〟が控え、さらに五老星とその上の存在もいる。正直、海軍本部との全面戦争の方がまだ易しいかもしれない。

 一方、クロエとの交戦だけは避けていた事から、本気で〝鬼の女中〟を殺すには騎士団の方も万全を期しておかないと勝算が低いと判断している事に他ならない。実際、ヤマトの覇王色を纏った攻撃には手間取っていた為、クロエの覇王色だと命の危険が生じるのだろう。

 よって、天竜人との抗争で荒れてしまったハチノスでやっておくべき事は、島の復旧と軍拡である――エマはそう決断したのだ。

「それに朗報もある…!! ルフィ君がロー君と海賊同盟を結び、ドレスローザに潜伏しているらしいんだ」

()()()()のガキ共か?」

「あの二人がドンキホーテファミリーを倒せば、地下の交易港を守る者がいなくなる!! ハチノスの防衛力を強化するには、今しかない!!」

 〝最悪の世代〟の活躍を利用しようと策を巡らすエマに、王直は「流石は我が娘」と感心した。

 

 

           *

 

 

 聖地マリージョア。

 神の騎士団が待機する神殿「シャンガラ」の内部にある牢屋に、コル寿郎は拘束されていた。

「ったく…証明チップを放棄したとはいえ、元天竜人が〝神々の地〟で大暴れしちゃあダメだろ」

「……」

 怪我を負って痛々しい姿で睨むコル寿郎を、眼鏡をかけた屈強な体躯の壮年――ソマーズ聖は格子越しに呆れ返る。

 実はコル寿郎は、聖地に帰還してパンゲア城に連行された際、ガーリング聖が帰ったのを見計らって脱走したのだ。バショバショの実の能力と強力な覇気をフル活用して衛兵やサイファーポールを薙ぎ倒し、その場に居合わせた海軍大将を振り切ってボンドラ――シャボンのゴンドラ――の発着駅へ向かったが、先回りしたシャムロックと軍子との交戦の末に敗北。そのまま御用となった。

 現在は海楼石の手錠を掛けられ、神の騎士団の監視の下で拘禁されているが、〝御大〟から尋問を含めた一切の危害を固く禁じられている為、ソマーズ聖としては八つ当たりで嬲る事ができずモヤモヤしていた。

「あ~あ……てめェがバショバショの能力者でなきゃあな」

「……なぜそこまで〝王〟は余にこだわる」

「ギハハハ!! 何だ、知らねェで能力者になったのか?」

 ソマーズ聖は大笑いしながら、〝バショバショの実〟の真髄について語り出した。

「〝バショバショの実〟は、無限の可能性を秘めている悪魔の実だ…結界内に存在するあらゆる「力」と「場」に干渉し、支配できる…!!! お前がさっきやってのけた「重力操作」もそうだが、過去の能力者には「磁力操作」や「影領域の支配」を可能にしたんだ…!!!」

 〝バショバショの実〟の真髄――それは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()「万能性」であった。

 

 世界徴兵で新たに海軍大将に特任された、(ふじ)(トラ)ことイッショウの〝ズシズシの実〟。

 かつては大海賊キャプテン・ジョンが所有し、現在は「最悪の世代」ユースタス・キッドに受け継がれた〝ジキジキの実〟。

 王下七武海を務め、過去には()()カイドウを相手取れる新世界の強豪として名を轟かせたゲッコー・モリアの〝カゲカゲの実〟。

 

 コル寿郎の前任者と、それ以前の能力者は、これらの超人(パラミシア)系悪魔の実の能力を再現したという。

 あくまでもバショバショの実で展開した領域内だが、一つの能力で複数の悪魔の実の力を兼ね備えるも同然というのは、異例中の異例。まさに、神々が用いるに足る力なのだ。

「ギハハハハ!!! 宝の持ち腐れのまま下界に放置なんざ勿体ねェだろ!!?」

「……まるで余がすぐ屈すると言いたげだな」

「さァな。……ところで、ミョスガルドがどうしてるか気になんねェのか?」

 突然話題を変えたソマーズ聖に対し、コル寿郎は顔を青ざめた。

 こんな時に実兄の話を出すという事は……!!

「卿ら…貴様ら、兄上に何をした!!? まさか父上もか!!?」

「ギハハハハハハ!! 兄貴の方はお前次第だ、コル寿郎!! 親父の方は残念だったな!!」

 ソマーズ聖から実父――ドンキホーテ・シヴァーカレロ聖の末路を知り、コル寿郎は言葉を失った。

 つまり実父は、神の騎士団の手によって殺されたのだ。

 その理由も、大よその見当がつく。コル寿郎を隷属化させる為の見せしめだろう。

「……」

「何だ、思ったより取り乱さねェな。ギハハハハ」

「そんな訳ないだろう……余の罪とは無関係なんだぞ……!!」

 地獄の底から響くような低い声を発するコル寿郎に、ソマーズ聖は気圧された。

 そして灰色の瞳で射殺さんばかりの眼光を向け、怒りの言葉をぶつけた。

()()に伝えろ…!! これで穏便な落とし所は失った!!! 余は死んでも卿のような臆病者の為に命は捧げないとな!!!」

「!!? て、てめェ…!!!」

 明確な敵対宣言に、ソマーズ聖は目を血走らせた。

 実父を手にかけ、実兄の命を脅かす下劣極まりない所業に対し、コル寿郎はついに堪忍袋の緒が切れたのだ。

「今のお前は首の皮一枚繋がってんだぞ、わかってんのか!!?」

「そんなに言うならばいっそ始末すればいいだろう!! 〝鬼の女中〟に怯える世界一気高き騎士団よ!!!」

「言ったな!! この野郎がァ~!!」

 怒りが頂点に達したソマーズ聖は、腰に差していたサーベルを抜いた。

 だが、そこへ軍服を着た青髪オッドアイの女性が現れ、制止した。軍子宮だ。

「軍子……!!?」

「何をしている…御大の意向に逆らう気か」

 同僚に諫められ、渋々抜いた剣を鞘に納めるソマーズ聖。

 軍子宮は「シャムロックが呼んでいる」と監視を代わるようソマーズ聖に言うと、立ち去った彼が座っていたイスに腰掛けてコル寿郎と対峙した。

「……愚か者め」

「ゴミクズに無理矢理帰宅させられた余の無念くらい、多少は忖度してほしいものだな」

 呆れ半分・哀しみ半分でボヤく軍子宮に、コル寿郎は憎まれ口を返した。

「何故、()()()()()をそこまで嫌がる? 私は理解できん……」

「……余が欲するのは〝自由〟……!! この世に生を受けた以上、生きたいように生きようとするのは不自然ではあるまい……」

「……」

「一つ言っておくぞ……卿ら世界貴族は近い内に破滅する…!!」

 その言葉に、軍子宮は眉をピクリと動かした。

 コル寿郎は続ける。

「軍子…卿の恐れるニカは、ジョイボーイは帰って来るぞ…!! 御大から世界が解放される日も近い!! ……その時は、卿もシャムロックと共に来い」

「この期に及んで、まだ私に神の地位を放棄しろと……」

「余は本気だぞ」

 真っ直ぐな眼差しで訴えるコル寿郎に、軍子宮は目を閉じて溜め息をつくのだった……。




……というわけで、コル寿郎をイム様が欲するのは彼の能力の万能性でした。
〝バショバショの実〟は「支配力」という点では悪魔の実の中でも最上位で、何でも支配したがるイム様としてはめっちゃ欲しい力なんですよね。ドミリバが対人とすれば、バショバショは領域内に働く力が対象なので、イム様がコル寿郎に憑依すれば無敵です。
感想欄では「コル寿郎が前世の記憶を持っているのを知ったから」みたいなニュアンスの考察がありましたが、流石のイム様もそこまでは把握できてません。

そして冒頭で出た、クロエのお守り。
あれが次回以降のキーアイテムです。(笑)

次は世界会議(レヴェリー)。年末か新年早々にクロエとイムがいっちょやってくれればなと思ってます。
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