〝鬼の女中〟と呼ばれる女   作:悪魔さん

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クロエ海賊団の登場からはアニワンのOST「ゴッドバレー」を聞きながらお楽しみください。(笑)


第119話〝エッグヘッド事件〟

 新世界。

 「未来島」エッグヘッドでは、国家戦力クラスの招集命令〝バスターコール〟を遥かに凌ぐ、20隻の巨大軍艦を含む大小100隻の船団が島を取り囲んでいた。

 乗船する海兵は3万人、このあり得ない戦力を率いるのは9人の海軍本部中将と大将〝黄猿〟である。それだけでなく、世界政府が禁ずる「空白の100年」を研究する天才科学者を抹殺せんと、反撃を想定した〝五老星〟ジェイガルシア・サターン聖も出航。

 世間では〝麦わらのルフィ〟とバーソロミュー・くまの共謀によるDr.(ドクター)ベガパンクを人質にした「立てこもり事件」が発生したと認知されてるが、実際はベガパンクと世界政府の戦争に等しい状況だった。

 そして事態は、サターン聖の上陸に加えて〝バスターコール〟発令にまで発展してしまった。

「「世界の秘密を探究する者」…「失われた種族の血を引く者」…「古き神を呼び起こしてしまった者」――この島は不都合に満ちている!!!」

「私さえ殺せば済む話じゃないのか!!? サターン聖!! このエッグヘッドにはありとあらゆる学問の最新の研究の成果が刻まれておる!! ここを壊せば科学の進歩は100年遅れる!! バスターコールを止めてくれ!!!」

 エッグヘッドは人類の未来だと訴えるベガパンク。

 しかし頭に牛や鬼の様な角を生やし、下半身が脚に鋭い爪を持った蜘蛛という異形の人獣型に変身したサターン聖は、世界政府に害を成すと判断したが故に「進歩など必要ない」と一蹴。

 それに追い打ちをかけるかのように、昨日エッグヘッドから脱出した民間人を乗せた船に対して追撃命令を出したと告げた。

「貴様が巻き込んだのだベガパンク。オハラと同様に法を破り、探究の〝欲〟に勝てず、過去を掘り下げた…!!」

 世界政府最高権力の無情な言葉と共に、軍艦の砲撃やパシフィスタのレーザービームで未来都市は破壊されていく。

 その光景にベガパンクは打ちひしがれた……。

 

 

 同時刻、エッグヘッドの周辺海域では、海軍にとって悪夢のような出来事が立て続けに起こっていた。

《緊急事態発生!! 緊急事態発生っ!!!》

 まず、北西の海域。

 島を取り囲む軍艦の艦隊目掛け、一隻の赤い船体の海賊船が突撃してきた。

 その正体は、世界で唯一「3種類の海賊旗(ドクロ)」を掲げた、現在の海における世界最強の海賊団――

「クロエ海賊団だァァァ!!!」

 その叫び声は、これから未来島の全てを焼き尽くす気である海軍を動揺させるには十分すぎた。

「バカな!! 聞いてないぞ!!!」

「なぜだ、一体何の目的で!!?」

 世界最強の海賊団の来襲に、海兵達は恐れ戦いた。

 直後、クロエ海賊団の帆船――オーロ・ジャクソン号の船首楼甲板から凄まじい衝撃波が放たれ、直線上にいる軍艦が巻き込まれて大破していった。

 世界最強の女が、覇王色を込めた大技〝神殺〟を放ったのだ。その破壊力は、巻き添えを食らわなかった海兵達に強烈なショックを与えた。

「いいか、者共!!! 今年のバスターコールは気合入ってるぞ!!! 「麦わらの一味」「バーソロミュー一家」「Dr.(ドクター)ベガパンク」――奴らを島から逃がしつつ敵軍を全滅させるのが今回の作戦だ!!! 私は真っ先にルフィと合流し、あの異様な覇気の持ち主を仕留めに行く!!!」

 欄干に片足を乗せたクロエは、凶暴な笑みを浮かべながらパリパリと覇王色を漲らせる。

「上陸したら、まずは確認を急ぐぞ! こっちの損害も気にしねェとな」

「これ程の規模となると、サイファーポールも大勢いそうだな」

「新型パシフィスタも敵に回ってると判断せねばなるまい」

 ラカムとコル寿郎、レッドフィールドは上陸後の立ち回りを伝える。

「パシフィスタはどれくらいだい?」

「防御兵器「バブルシールド」搭載の〝マーク(スリー)〟が50体、王下七武海の血統因子を基に造られた新兵器〝セラフィム〟が4体よ!!」

「七武海のクローンか……暇潰しにゃあちょうどいい」

 クザンはステューシーから人間兵器の詳細な情報を聞き、傍で耳を傾けていたガスパーデは獰猛に笑った。

「ガハハハ、船番はわしらに任せろ!!」

「必要ならば援護するが、この偉大な船を傷物にさせるわけにはいかない!!」

「…中将程度ならこちらで対処する」

「あのバカデカい海獣みてェなのはおれに任せろ」

 エルドラゴ・レッドアロー・スレイマン・ウィリーの四人は船の守り手を買って出る。

「ならおれ達は他の軍艦を相手しよう!!」

「キキッ!!」

「船番の負担を減らせば、少しは立ち回りやすかろう」

「ここはチームプレーだど!!!」

「逃げ道もちゃんと確保しろよ?」

 ドーマとそのペットのバンビーノ、マクガイ、デラクアヒ、(アー)(オー)は周りの切り崩しを実行すると宣言。

「それにしても、スゴい数の軍艦だ…!!」

「こりゃあ、私も全力でやらないといけないかな」

「やれやれ、こちとら老体じゃというのに…」

 大小様々な海軍船の大艦隊にヤマトは目を瞠り、エマとナグリもそれぞれ得物を片手に臨戦態勢に移行する。

「何をしている!! 一隻だけだ!!」

「撃て!! 撃てェ!!!」

 海賊の女王の進撃を阻止せんと、軍艦から集中砲火を受けるが、コル寿郎が能力で結界を張って防ぐ。

 オーロ・ジャクソン号はそのまま突貫し、そのまま浅瀬に乗り揚げた。

「無駄だ海軍!! 私に続け、「クロエ海賊団」!!!」

 クロエは声高に叫ぶと一気に跳躍。「月歩」で宙を高速移動し、未来都市へと突撃していった。

 一方、島の北東の海岸では、山よりも巨大であろう特大サイズの海賊船が急接近してきた。

「止まるか!?」

「いやァ突っ込む!!!」

 巨大な海賊船から、二人の〝鬼〟が飛び降りる。

 それは、誰もが目を疑う光景だった。

 なぜなら、彼らは100年も前に滅んだはずの、圧倒的な力で世界を震撼させた巨人族のみで構成された海賊団の二大巨頭なのだから。

《緊急事態発生!!! 「巨兵海賊団」が現れました!!!》

 海兵の悲鳴に近い報告と共に、〝青鬼のドリー〟と〝赤鬼のブロギー〟が軍艦に攻撃を始めた!

「ガバババ!!! 迎えに来たぞ〝麦わら〟ァ!!!」

「ゲギャギャギャギャ!!! 〝太陽の神〟よォ~~~~~~!!!」

 

 

           *

 

 

「クロエ海賊団に……巨人族ゥ!?」

「どうなってんだ、この島!!」

「流石に夢だろ!?」

 海兵達の間で戦慄が走るのも当然だった。伝説として語り継がれる猛者達が、目的不明のまま一斉に殴り込んでくるのだから、無理もない。

 しかし、これが全てではない。

 なぜなら、これからもっと悪いニュースが舞い込んでくるのだから。

 

 ゴゥッ!

 

「ぬっ!?」

「――控えろ、下郎」

 異形の化け物の姿になったサターン聖の目の前に、琥珀の瞳を持つ海の女王が現れた。

「〝神鳴神威〟!!」

「ぐおおっ!!?」

 横薙ぎに一閃。

 対象に刀傷を刻んでから衝撃で薙ぎ飛ばす事で有名なクロエの剣技を、サターン聖は至近距離で食らってしまい、くまの倍近くある巨躯は周囲の建物を巻き込みながら吹き飛んでしまった。

 華麗に降り立った伝説の女は愛刀を鞘に納めると、振り返って全身が真っ白になった麦わら帽子の少年に笑い掛けた。

「……元気そうだな、ルフィ」

「クロエ~~~~!!!」

 頂上戦争以来の再会に、ルフィは思いっきり抱き付いた。

 かなりの勢いで突っ込んできたが、クロエは微動だにせず受け止め、優しく抱擁する。

「あっひゃっひゃっひゃ!! クロエも来てたのか~~!!!」

「ああ、ちょっと用ができてな。皆で来てる」

「アレが〝鬼の女中〟か……」

「トムさんが言ってた、スーパーな女海賊……!!」

 子供のように純粋に喜ぶルフィに、クロエは微笑む。

 その光景を眺めていたサンジとフランキーは、我らが船長と世界最強の女との繋がりを実感していた。

「ところで、ベガパンクはどこだ?」

「わ、私はここだ!! ステューシーへの連絡を受けてきてくれたのか…!! だが今はくまを頼む!! 私とボニーを庇って重傷なんじゃ!!」

「……撤退するならエルバフの連中がいる北東がいいか。そこが手薄になるようにしておく」

 ベガパンクの背後で意識を失っているくまを見やり、クロエは北東の海岸を指差して退避するよう促す。

 サンジとフランキーは、ベガパンクの分身のアトラスと共にくま・ボニー親子を連れて撤退するが、それをボルサリーノが追った。

「いけねェ!! 〝黄猿〟が!!」

「諦めなよォ…」

 ボルサリーノはレーザービームを放とうとするが、一瞬冷気を感じ取って即座に退避。

 直後、彼がいた場所の真下から氷塊が隆起した。

「久しぶりだな……ボルサリーノ」

「……これ以上、(わけ)ェ衆に絶望を与えちゃあ困るんだよねェ~…!」

「ええ!? 〝青キジ〟ィ!?」

「お前……!!」

 何と、クザンが冷気を纏ってサンジ達を守ったのだ。

 まさかの再会にボルサリーノは忌々しげに舌打ちすると、それを皮切りに島のあちこちで砲撃とは別の爆発や破壊が巻き起こった。

《報告します!! クロエ海賊団の猛者達が海軍船とパシフィスタマークⅢ、海獣兵器(シービーストウェポン)を次々と襲撃!!!》

《巨兵海賊団、次々と上陸!!》

《被害の拡大が尋常じゃありません!!!》

 相次ぐ報告に、海兵達の動揺は広がるばかり。

 しかし、復活・再生したサターン聖は、意に介さずクロエを睨みつけた。

「〝鬼の女中〟……何をしに来た……!?」

 サターン聖がクロエを睨んだ途端、両目が赤く光った。

 それが攻撃だと気づいたクロエは――

「小賢しいっ!!」

 

 ドパァン!!

 

 一喝し、覇王色の覇気を放出。

 彼女の視線の先で破裂音が鳴り、周囲に衝撃波が走る。

「……流石に、この程度では話にならんか……」

「何をしに来たかだと? 決まってるだろう」

 クロエは化血を抜刀し、切っ先をサターン聖に向けた。

「貴様の首を取りに来た!!!」

『!!?』

 その宣言にボルサリーノら海軍は戦慄し、ベガパンクやサンジ達も愕然。

 殺害予告を受けたサターン聖も、まさか自分の首を狙っているとは思わなかったのか、虚を衝かれた表情を見せる。

 そんな反応に構わず、クロエは鋭い眼光で言い放つ。

「今日はイムのガキはどうした? タンスの角に指でも打ったか? 臆病者が上司だと部下は大変だな」

「?」

「イム…?」

「一体どういう事だ…?」

「――おのれ貴様ァ!!!」

 クロエの発言に首を傾げる者が多い中、サターン聖は憤怒に満ちた表情を浮かべ、人面の蜘蛛のような形態――牛鬼の獣型に変身。

 禍々しさと毒々しさを増した姿で、蜘蛛の脚による猛毒を込めた鋭い刺突攻撃を繰り出す。

 感情任せの攻撃に海兵達は巻き込まれるが、クロエは冷静に捌き、覇王色を纏った化血で次々と両断。サターン聖の斬られた脚はすぐパキパキと音を立てて再生していくが、ルフィ達から受けた攻撃の時と違ってかなり長い時間を要しており、無感情と思えた顔もどこか苦痛で歪めているようにも思えた。

「覇王色なら効くのか!!」

「そもそも覇気は悪魔の実の能力にも比肩する力だ。覇王色をいかに操れるかがこの先大事だぞ、ルフィ」

「そっか!! ありがとうクロエ!!」

「これが終わったら、あとでコーヒーを淹れてもらうぞ」

 悍ましい姿の五老星を前に談笑する二人。

 流石にガン無視は腹が立ったのか、青筋を立てている。

「〝麦わらのルフィ〟…クロエ・D・リード…!! 貴様らには死ぬべき理由がある…!!!」

「フッ…貴様もイムと同じ小心者か? 下種な上に小物が世界の頂点とは、呆れを通り越して不憫だな」

「なァ、さっきから言ってるイムって誰だ?」

「あとで教えてやる。あの虫けらを討ち取った後でな」

 クロエはルフィにそう約束を交わすと、サターン聖に容赦なく〝神避〟を繰り出した。

 

 

 一方、フランキー達はサンジとクザンにボルサリーノの足止めを任せ、北東の海岸へ向かっていった。

 それに気づいた海軍中将達は、持ち場を離れてベガパンク抹殺を図る。

 最初に彼らを見つけたのは、黒い髭を大量に蓄え軍帽を被った巨漢――海軍中将・()()であった。

「〝()()()み〟!!!」

「え!?」

「しまった、海兵!!」

 装甲も食いちぎる威力を誇る、武装色を纏った10本の指による()(ガン)が襲い掛かる。

 広げた両腕がフランキーと彼の背中に乗っていたボニーを捉えるが……。

「〝雷鳴八卦〟!!!」

「ホギャア~~~!!!」

 突然の不意打ちとはいえ、クロエ海賊団の主力級船員・ヤマトの一撃が炸裂。

 顔にモロに直撃し、そのままノックダウンとなった。

「お前は…〝鬼姫〟!!?」

「ボニー!! それと後ろにいるのは…くまさん!?」

「クロエの仲間か!! 助かった!!」

 心強い者が助っ人となり、安堵するフランキー。

 その直後、木々を割いてドリーとブロギーが覗き込んできた。

「君達はエルバフの!!」

「ガバババ!! クロエ海賊団か、また会ったな!!」

「〝麦わらの一味〟はまだ中か!?」

「そうみたいだ…僕もこれからルフィ達を助けに行くところ!! 手伝ってくれるかい!?」

 ヤマトの頼みに、二人は勿論だと了承。島内中央へ向かっていく。

 それに続くようにクロエ海賊団の面々も現れ、フランキー達と合流する。

「思ったより早く会えたな」

「ステューシーの言う通り、本当に頭を切ってるんだな」

「くまちー、大丈夫!? ジニーちゃんは!?」

 情報過多の状況下で、ベガパンクとアトラスは説明する。

「ジニーはパンクレコーズで他の〝麦わらの一味〟といる!! シャカ達も残ってる!!」

「早く脱出せねばならんが、バリアを解かねば……」

「バリアか……貴様なら干渉できないか?」

 結界を操るコル寿郎ならば対処できるのではないかと、レッドフィールドは視線を向ける。

 当の本人も「やってみよう」と頷き、腰に差した愛刀・秋霜の柄を握る。

「そうとなればコル寿郎の援護も必要か……おれが行こう」

「私も行くわ。彼らが心配」

 ラカムとステューシーが護衛を買って出ると、コル寿郎は〝創世〟と唱えて結界を展開。

 パンクレコーズを含むエッグヘッド全域を覆った。

「体力温存の為、バリアの性質はオフにした。もし体力が切れた時は頼む!!」

 ラカムとステューシーにそう約束させると、コル寿郎の体が宙に浮き、彼はそのままパンクレコーズへと向かった。

 二人もそれに続き、月歩で宙を駆けていった。

「よし、おれ達も動こう」

「中将共をどうにかしないとな」

 これから仕留めに来るであろう中将達の迎撃に備えていると、更なる混沌が発生した。

 それは、エッグヘッドの南の海岸からだった。

「伝説の巨兵海賊団もいるのか……!! おれじゃねェと捕えられねェなっ!!」

 男はそう言うと、大砲の弾を直接手で掴み、武装色の覇気を纏わせて投げつけた。

 着弾した砲弾は、軍艦による砲撃以上の爆発を起こし、海岸線で海兵達を相手取っていた巨人族が数名吹き飛ばされた。

「この覇気は……!!」

「おい、何か(つえ)ェの来てねェか!?」

 島の中央でサターン聖と攻防を繰り広げたクロエとルフィも、その強い覇気に振り向いた。

 それは、海の皇帝と巨人の一団まで相手取るハメになって絶望の淵に立った海兵達に、希望を与える存在。文字通りの地獄の中の光明だった。

《援軍到着!! ゼット中将の船です!!!》

「おれに任せとけ~~~!!!」

『ウオォォーー!!! ゼット中将ォ~~~!!!』

 新時代の英雄まで参戦し、エッグヘッド事件は混迷を極めようとしていた……!!




ようやく始められました、第二のゴッドバレー事件こと本作におけるエッグヘッド事件。
流石に軍艦100隻はクロエにとっても壮観だった様子です。(笑)

描写にはありませんでしたが、実はヤマトは衣装変更としていつもの和装の上に羽織を肩にかけてます。原作1162話の扉絵みたいな感じです。
あと、第3章におけるゼットの強さは全盛期の父親を彷彿させる化け物ぶりです。エッグヘッドに来たのはサカズキからの要請ではなく、ニュースを知って勝手に来ました。要は無断出撃です。

本作のエッグヘッド事件は、自分のやりたかった事をこれでもかと詰めてお送りいたします。
次回は五老星集結、そしてダグラス・バレットが乱入し、あの伝説の「ロジャー海賊団の双鬼」が復活して……!?
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