〝鬼の女中〟と呼ばれる女   作:悪魔さん

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ついに120話目。これからも精進します。
今回からカオスさが加速します。(笑)


第120話〝集結〟

 生ける伝説とその系譜を継ぐ者が、続々とエッグヘッドに集う。

 世界政府を裏切った天才科学者を抹殺する――その密命は「麦わらのルフィ立てこもり」という形で情報操作されて発信されたが、事もあろうに新世界の猛者達を刺激してしまった。

「観念しろ、クロエ海賊団~~~!!!」

「ゼットだ、逃げろ!! 長引くぞ!!」

ゼファー(おやじ)よりガープに似てねェか!?」

 島に上陸したゼットは覇気を纏った拳を振るい、パシフィスタを相手取るクロエ海賊団に猛攻を加える。

 海軍新世代の筆頭は、頂上戦争以降は伝説の海兵達が太鼓判を押す程の実力者に成長。一味の古参海賊であるドーマ達も、かつてクロエにコテンパンにされていた頃とは違う今のゼットに驚きを隠せなかった。

 これもある意味、伝説の元海軍大将の血筋ゆえなのかもしれない……。

「仕方ねェ、一旦島の中央に行くぞ!!」

「全員、島内中央に撤退!!」

「!! 奴ら、ベガパンクのおっさんが狙いか!! そうはさせねェ!!」

 ドーマとマクガイの声に反応し、一味は島の中央へ向かう。

 ゼットはベガパンクが目的と判断し、それを追跡して仕留めようとする。

 それを眺めながらキリン型の海獣兵器(シービーストウェポン)でエッグヘッドへ乗り込もうとする老婆の海軍中将――ブルーグラス中将は、ある事に気がついた。

「――そういえばあいつ、ベガパンク抹殺の事知ってるのかね?」

「……あいつまさか、無断出撃か!?」

 ブルーグラスの隣でタバコを吹かすパンクな格好をした女性将校――ドール中将は、顔面蒼白になった。

 何を隠そう、ゼットは上層部の命令違反をよくやる問題児。無断出撃の常習犯で、軍内で「野犬」と称されるスモーカー中将が可愛く思える程の暴走ぶりである。

 戦力としては大将級なので、とても心強いのだが……今回のような密命を帯びた作戦では致命的だ。

「何かとてつもなく嫌な予感がするねぇ…!!」

「急がないと、またとんでもない事に…!!」

 二人は既に起こりつつある事を直感し、慌ててエッグヘッド島に上陸する。

 その同時刻、クロエとルフィのタッグはサターン聖と激闘を繰り広げていた。

「あいつ、あんなに殴ったのに効かねェ!!」

「お前は私と違ってボルサリーノと戦った疲労がある。ここからは矢面に私が立つから、ルフィは隙を突いて攻撃しろ」

 不死身とも言うべき脅威的な再生能力を前に、クロエはルフィに覇気の消耗を抑えるよう助言しつつ構える。

 しかし海賊王に匹敵する覇気を有する世界最強の女が相手では、流石のサターン聖も一度攻撃を受ければ再生に相当手間取るとわかっているようで、決定打に欠ける。

「大人しく死ねばよいものを……」

「体力の削り合いか。ルフィには通じるだろうが、私はそうはいかないぞ」

 クロエは化血の性質を利用し、覇気の出力を高めて短期決戦を図る。

 彼女の全身から放たれる覇気に、サターン聖とルフィは肌がピリつくのを覚えた。

「……こっちもギアを上げないとな」

 

 

           *

 

 

 一方、クザンはサンジにベガパンクの援護に向かうよう告げ、ボルサリーノと一進一退の攻防を繰り広げていた。

「そこをどいちゃくれないかねェ~、クザン…!!」

(わり)ィな、おれァ見習いだから上に逆らえねェのよ」

 氷の刃と光の剣が覇気を帯びてぶつかり、鍔迫り合いとなる。

 軍を辞めた上に片足が義足とはいえ、元海軍大将としての実力は健在。ましてや2年前は同僚として最高戦力を担ってた事もあり、ある程度の手の内も知っている。しかもクロエの部下になったせいか覇気が2年前よりも強くなっている。

 ボルサリーノとしては、ただでさえキツい任務だというのに実力拮抗した元同僚との連戦は堪えた。

「……そういやあ、ゼファー先生の息子も来たな」

「あの子は多分、無断出撃だろうねェ~……サカズキと大揉めしそうだよォ」

「だったらベガパンクを逃がせばいいだろ。こんな混沌とした状態じゃあ、任務遂行もクソもねェ」

 元同僚が投げかけた言葉に、ボルサリーノはサングラス越しに目を細める。

 海賊王ロジャーと覇を競った伝説の大海賊を倒した〝麦わらのルフィ〟に加え、イムとの最終決戦に備えて五老星討伐を画策するクロエに、何の因果かルフィの援護に駆けつけた巨兵海賊団。ただでさえ「麦わらの一味」が五皇に匹敵するとも言うべき力を得たというのに、この場に乗じてそれ以上の脅威が殴り込んでくるという事態。

 これを考慮すると、ベガパンク抹殺など達成不可能に近い。だが、今更後には退けないのだ。

「それができりゃ苦労はしねェよォ!!!」

「うっ!?」

 不意にボルサリーノの両目がギラリと発光。

 サングラスをしていたとはいえ、至近距離の目眩ましにはクザンも思わず後退りしてしまう。

 視界の霞みを振り払って前を見据えれば、その時すでにボルサリーノはフランキー達の元へ向かっていた。

「げっ!! 黄猿!!」

「麦わらの一味か!! 今日は大漁だぜ!!」

 そこへ運悪く、ゼットに追跡されていたクロエ海賊団の船員達が合流。

 立ち止まった隙を突き、ゼットは麦わらの一味ごと吹き飛ばそうと右手に膨大な覇気を溜めた。

「ぶっ飛べ!! 〝スマッシュ〟――」

 

 ドスッ!!

 

「ウ!!」

 刹那、光の剣がベガパンクを背中から貫いた。

 誰がどう見ても致命傷だと一発でわかる上、手をかけたのが選りにもよって海軍大将。

 その光景に、誰もが愕然とした。

「くそォ!! すまん、ベガパンク!!!」

「ちっ!! 〝アイスタイムカプセル〟!!!」

 慌てて駆けつけるサンジに、どうにか視界が回復したクザンが掌から冷気の弾丸を射出。

 ベガパンクの傷口に着弾すると、そこから凍結が始まっていく。

「青キジ、てめェ何のつもりだ!!?」

「少しでも時間を稼ぐ…!! 医者がいねェんだ」

 クザンは〝アイスタイム〟を使い、あっという間にベガパンクを氷漬けにした。

 いわゆる仮死状態にさせたようだが……解凍後は一刻どころか一秒を争う事になるだろう。

 そして密命の事もエッグヘッドへのバスターコールの事も何も知らないゼットは、海賊達を無視してボルサリーノの胸ぐらを掴んで怒鳴った。

「黄猿さん、あんた正気か!!? ベガパンクはおれら海軍の味方だろうが!!!」

「……ハァ…ハァ…」

 荒く震える息遣いをするだけで何も発さないボルサリーノに、ゼットは苛立ちを剥き出しにしつつも振り払って翻す。

 精神的ダメージがあまりにも大きい様子から、少なくとも不本意な任務を言い渡されたのだと理解したのだ。

「っ……ベガパンクのおっさん、すまねェ」

 立てこもり事件の真相を察し、ゼットは苦い顔で氷漬けになったベガパンクに謝罪した。

 その時――

《世界~~世界ィ~応答せよ……》

『!!』

《えー…私はDr.(ドクター)ベガパンク。しがない天才科学者だ……!! ――これから残すメッセージに皆驚くと思うが、それが世界の「真実」である…!!!》

 何と、氷漬けになって言葉を発せないはずのベガパンクの声が響き渡った。

 音源はどこか探っていると、ゼットはもしやと思って沖合の軍艦に振り向いた。

 どうやら軍艦の電伝虫からの強制配信らしく、発信源がわからないと切れないようだ。

「ベガパンクの声…!!」

「おい、どうなってんだ…!?」

(自分の死をきっかけに強制配信を始める仕掛けか…だがこいつはクザンさんが凍結させてからの発信。氷漬けにされた事が〝受信側〟が「生体反応なし」だとバグを起こしたんだろうな)

 動揺する麦わらの一味に対し、ゼットは冷静に分析。

 紛いなりにも海軍中将を務めるだけあり、頭の切れもいいのだ。

「フザけやがって…!! 正義もへったくれもねェ!!」

 やり場のない怒りを込めて叫ぶゼット。

 その時、島の反対側から爆発音が響き、地面が揺れるのを感じた。

『!!?』

「おいおい、マジかよ…今日は厄日だな…!!!」

 爆発音の直後、強い覇気を感じ取る一同。

 それに覚えがあるゼットは、この島が頂上戦争を超える異常事態になりつつあると予感した。

 

 

           *

 

 

《あと9分半、どうする? 発明でもするか? 私は忙しい》

《コーヒーでも飲まれては?》

(ベガパンクの〝声〟が消えた……それにさっきの覇気……)

 強制配信の記録が流れる中、クロエはサターン聖が振るう鋭い爪を斬り刻む。

 それを瞬時に再生したサターン聖は、先程感じ取った覇気に何かを察したらしく、一度距離を取って呟いた。

「呼ぶぞ」

 

 ――ドドドドン!!!

 

 直後、巨大な黒い稲妻が4本落ちた。

 同時に落下点に魔法陣が現れた。

「何だァ!!?」

 文字通り目玉を飛び出しながら驚くルフィに、クロエは鋭い眼差しで愛刀の柄を強く握る。

 その時、クロエとしては思わぬ援軍が駆けつけた。ベガパンクがボルサリーノにやられた直後に強襲した、強い覇気の持ち主だ。

「――カハハハ!! 面白い戦場になってるじゃねェか!!」

「あーっ!! 戦争ん時の軍服のおっさん!!」

 空から物凄い勢いで着地したのは、碧眼と金髪が目立つ山のような筋骨隆々の巨漢。

 かつてクロエと共にロジャー海賊団の若き戦力として暴れ回った大海賊、〝鬼の跡目〟ダグラス・バレット。ルフィはマリンフォード頂上戦争にて遭遇しており、クロエも2年ぶりの再会であった。

「別に呼んだ憶えはないぞ。手伝ってくれるのか?」

「勘違いすんな、お前がここでくたばったらおれが世界最強になれねェだろうが」

「――ハハハハ!! お前らしいなバレット」

 遠回しにクロエを最強と認めつつ、バレットはニヤリと笑う。

 そんな旧友のあくまでも自分を倒しにいく変わらぬスタンスに、クロエも自然と微笑んだ。

 そうしている間にも、魔法陣からは巨大な黒い影が盛り上がって来る。

「〝麦わら〟……〝金獅子〟のジジイを倒したそうだな。その白い身体……覚醒していたとはな」

「お前と戦うのは今度だからな!!」

「カハハハ…悪くねェ。――それよりもクロエ、ありゃあ何だ?」

「怪物が5匹にィ~~~!!?」

 魔法陣から姿を現したのは、4体の怪物。

 

 巨人族を超えるサイズの巨大なミミズの怪物「サンドワーム」――シェパード・十・ピーター聖。

 血の色のような鬣を持つ白骨化した巨大馬「馬骨」――イーザンバロン・V・ナス寿郎聖。

 黒色の羽衣を纏う緑色の体表を持つ4本牙の巨大猪「(ほう)()」――トップマン・ウォーキュリー聖。

 毒々しいまでにカラフルな翼を持つ禍々しい巨大怪鳥「()()()()」――マーカス・マーズ聖。

 

 何と世界政府最高権力〝五老星〟が、エッグヘッドに全員集結したのだ!!

「アレが何かだと? そうだな、さしずめ…アレは〝()(ぼく)〟!!!」

 不敵に笑うクロエは、化血を両手持ちで構えて縦に振り下ろす。

 刹那、一際強烈な斬撃が島の半分程を抉り、その衝撃で飛んだ瓦礫が五老星に被弾していく。

「老人とて強者ならば私は労わらん!!」

『……!!』

 さらに覇気を高め、クロエは不敵に宣言する。

「来るがいい、芥虫共!!! 滅ぼしてくれる!!! その次は貴様だイム!!!」

 それを合図に、五体の怪物は身構える。

 降星した武神達と、太陽神と二人の鬼による戦端が開かれた瞬間だった。




本作ではパシフィスタの無力化をクロエ海賊団の猛者共がやってくれてるので、五老星はルフィと「ロジャー海賊団の双鬼」を相手取る事になります。そこに巨兵海賊団も加わるので、中々面白い展開になるかと。

ちなみに芥虫はゴキブリの古名です。クロエは古い言い回しをするので、気になったら調べてみてください。
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