鉄の巨人が海に沈み、配信が途切れる。
それを見届けた五老星は、次に「
「〝神避〟!!!」
「ぐおっ!!?」
サターン聖に覇王色を帯びた衝撃波が直撃。
身体が木っ端微塵になるも、すぐさま再生が始まる。
「私達を無視してガラクタを優先するとは、いい度胸だ」
「チッ…あのロボットは使えそうだったんだが」
ロジャー海賊団の双鬼が、覇気で土煙を払う。
苛烈な戦闘でところどころ血が滲んでいたが、まだまだ余力十分という様子だ。
「クロエ、今どういう状況だ」
「剣士の方は上に、デカい鳥がルフィ達の方、残りが今ここにいる。剣士と鳥の方はエマ達に任せて、あの3匹を叩き潰すぞ」
「ならあの豚野郎を寄こせ…!! それ以外は柔そうだ」
「ハァ……私も潰し甲斐があると思って余りものを譲る気だったんだが…」
怪物達を前に軽口を言い合う両者。
ベガパンクの分身の始末は、ひとまず海賊王が遺した伝説二人を無力化してからだ――五老星は同時に攻撃態勢に入る。
「これ以上、お前達には好き勝手させん…!!」
「やりたいようにやるのが海賊だ、殺せるものなら殺してみろ」
手負いの獣と化した二人の鬼は、凄みを増した。
*
一方、ナス寿郎聖と戦っているゾロ達は――
「この、クソジジイィィィィ!!」
「…!!」
ドォン! と武装硬化した戦鎚と黒刀となった太刀が激突し、火花と稲妻状の覇気を散らす。
ラカムの猛攻をナス寿郎聖は容易く受け止めるが、クロエに次ぐ武装色の練度を誇る彼の一撃は、わずかながらよろめかせた。
その隙を見逃さず、コル寿郎が距離を詰めた。
「ラカム、ロロノア!! 退け!!」
「!」
咄嗟に離れるラカムと入れ替わったコル寿郎は、愛刀・秋霜を鞘に収めてバショバショの実の能力を発動。
自身の影が「影領域」として広がり、そこから二振りの太刀が飛び出した。
コル寿郎はそれを手に取ると跳び上がり、バリバリと音を立てて溢れる程の武装色を刀身に帯びさせた。
「〝
「っ!!」
――ドガガガガガガガ!!
二刀を振りかぶり、無数の斬撃をナス寿郎聖に叩き込む。
顔が、手が、足が、胴が……身体中を斬り刻まれ、そこへゾロがすかさず〝
しかし、常人はおろか
「チッ、キリがねェ…!! やっぱ覇王色じゃねェと、足止めはできても突破口にならねェか……!!」
舌打ちするラカムは、襲い来る黒刀の一撃を受け止める。
一味とベガパンクが無事に脱出するには、ナス寿郎聖をどかさなければならない。だが凄まじい移動速度を誇る為、確実にその場に留める手段が必要だ。それこそ、強力な引力や磁力のような、対象を引き寄せるチカラが。
そう思った時、ふとコル寿郎はエマとのあるやり取りを思い出した。
――コル寿郎君の能力って、磁力も扱えるの?
――……おそらく。だがどうして急にそんな事を?
――私がロックス海賊団と仲が良かったの知ってるよね? そのメンバーの一人にジョンさんがいて……。
「磁力か…!!」
コル寿郎はハッとなった。
強い磁力ならば、あの海賊船の加速を落とさないで済むのではないか。幸い、相手も刀使い――磁力に反応するはずだ。
そう結論付けたコル寿郎は、結界を展開してゾロとラカムを自分の傍へ瞬間移動させた。
「ロロノア、ラカム。余に一つ策がある」
コル寿郎は思いついた作戦を二人に伝える。
「……行けるな」
「ああ」
二人は意気揚々と頷くと、早速行動を開始。
ゾロはサニー号に飛び乗り、ラカムはコル寿郎と共に構える。
「ゾロ!?」
「ジンベエ、すぐに飛ばせ!! あいつらを信じろ!!!」
「――よし、行くぞ!! 判断が遅れたら後悔しそうじゃ!!」
「ブルックやれェ!!!」
ゾロの叫びに呼応するかのように、ブルックは緊急加速装置〝
すると、そこでコル寿郎が動いた。
「〝
「何っ…!!?」
コル寿郎はバショバショの実の真髄たる「結界内に存在するあらゆる「力」と「場」に干渉し、支配する特性」を応用し、強力な磁力を発生。
さらにサニー号を結界で包み、磁力の干渉を拒否。結果、サニー号を覆う結界以外の全ての金属を引き寄せ、ナス寿郎聖をどかす事に成功。
サニー号は一気に飛んでいき、そのまま海へと向かっていった。
「その手があるなら早くやれよ…」
「はっはっは!! すまんな」
ラカムにジト目で睨まれ、コル寿郎は大笑いする。
しかし、それも束の間の事。今は目の前の脅威をどうにかしなければならない。
「問題なのは、我々だな……」
「ああ…本気であの二人、この島を沈めちまうぞ!」
下層から響く轟音と、地震のような揺れ。
自分達の船長が、五老星を討ち取るつもりで暴れている。
麦わらの一味の船が脱出した今、これ以上エッグヘッドに残るのは危険だ。
「……あとやるべきなのは、あの馬ジジイをどう出し抜くかだな」
「その心配は無用だ。〝創世〟!!」
コル寿郎は島を覆う程に巨大な結界を展開。
それを見たナス寿郎聖は、二人を一刀両断にしようと斬撃を放ったが――
パッ!
「……逃げたか」
結界内での瞬間移動により、二人は姿を消した。
ナス寿郎聖は二人の追撃を諦め、島から逃げようとする巨兵海賊団の船を狙った。
同時刻、巨兵海賊団の帆船「グレート・エイリーク号」は、五老星の一人・マーズ聖の襲撃を受けていた。
「〝
人獣型のヤマトが、向かってくる炎熱系の破壊光線を氷のブレスで相殺する。
マーズ聖は「氷の息か……厄介な……!!」と舌打ちすると、彼らとは別で出航し出した海賊船から大砲や弓矢の攻撃を受けた。
「クロエ海賊団…!! 船長を島に残してどうする気だ…?」
「――敵に集中させる為に決まってるでしょ!!」
「ぬっ!!?」
不意に前方から女性の声がした。
バッと前を見ると、そこには拳銃の銃口を向けて笑みを浮かべるエマの姿が。
「〝
バァン!!
強力な武装色の覇気を流した銃弾は、獣型のマーズ聖の顔面に着弾。覇気の稲妻を発生させながら爆ぜた。
エマはそのまま
「ヤマトちゃん、あの鳥は私がやる!! オーロ・ジャクソン号に戻って!!」
「エマさん!?」
「クロエも言ってたでしょ? 今回のバスターコールは気合が入ってるって。オーロ・ジャクソン号も狙われるよ!! 海面を凍らせるよう伝えて!!」
「わ、わかった!!」
副船長命令に従い、ヤマトは自分達の海賊船に撤退。
残ったエマは、次弾を装填しながらルフィ達と言葉を交わす。
「ルフィ君、まだ戦える?」
「勿論だ!!」
「よし! サンジ君、フランキー君、申し訳ないけどくまちー達をお願い!!」
「くまちー!? まさかバーソロミュー・くまの!?」
「友達なんだ! 頼ん――」
ドォン!! バリバリバリィ!!
『!!?』
不意にエッグヘッドから、とてつもない強さの覇王色が放出された。
同時に、その余波で島内の瓦礫が周辺海域に飛び散り、まるで火山弾のように降り注いでくる。
「何だあの空!? 割れてるぞ!!」
「それどころじゃねェ!! 瓦礫の雨だ、船を守れェ!!!」
『うわあああああ!!!』
降り注ぐ瓦礫が全方向に飛び散り、避けきれなかった軍艦が大破していく。
かと思えば、再び島の方から激しい轟音が響き、今度はエッグヘッドの高層建築が次々と根元からへし折れていく。
一刻も早く島を離れなければ、怪物達と伝説の海賊達との死闘に巻き込まれてしまう――その認識が敵味方関係なく支配した。
「いかん!! このままではマザーフレイムが!!」
マーズ聖は血相を変えて島の方へ引き返していく。
その直後、海が盛り上がり、沈んだはずの鉄の巨人が姿を現した。
『うおおお!! 鉄の巨人族~~~!?』
「巨大ロボ~~~!!!」
「あれは…!?」
巨人族とルフィが興奮する中、エマは冷や汗を垂らす。
こんな代物が、エッグヘッドに眠っていたとは……!!
《――その脈々と受け継がれる、意志と言える。その理由に翻弄された者達に…――この声が必ずや届く事を祈っている》
(ベガパンクの配信…!!)
鉄の巨人の復活と共に、ベガパンクの配信が再び始まった。
どうやら、ウォーキュリー聖の突進で一時的に電伝虫の念波が途切れただけのようだ。
《「過去から声が聞こえてくる」と誰かが言った…歴史は〝勝者〟達が語り継ぐもの…海底に深く沈んだ敗者達の声は極めて小さい…――だが多くの犠牲の上に見出す事ができた「真実」を今…世界に伝えた…》
映像のベガパンクは、自分の配信が無事伝わっている事を祈っていると言いつつ、話を続ける。
《900年も昔の争いの話を一方向から聞くのも愚かである。歴史はより多角的に捉える必要がある。もっと時間が欲しかった……!! しかし!! もう! 止める事ができない者達がいる》
ベガパンクは、〝空白の100年〟が呼び起こされる日は必ず来るとして、この先の未来について結論を述べた。
《ロジャーが死んで24年!! 白ひげが死んで2年!! 伝説達の陥落に伴い、リード一族最後の末裔が海の覇者となったのは「新時代」の幕開けにすぎない!! 今!! 押さえ込もうにも抑え込めぬ者達が…!!! くしくもその真実に最も近づいておる!!! ――いや、ロジャーは仕掛けたのかもしれん》
――おれの財宝か? 欲しけりゃくれてやる。探せ! この世の全てをそこに置いてきた!
死んで時代を変えた男が遺した、最期の言葉。
最も純粋な過去の声を聞いた、海賊の王者の散り際の一言こそ、この先の未来の道標なのだ。
《――「
――〝
「……くだらん」
全世界が熱狂に湧くであろうベガパンクの結論を、クロエだけは一蹴した。
「未来とは、自分の力で今を戦った事で選べるものだ。過去の遺産に頼るものじゃない。――そうだろう、ロジャー」
地獄絵図と化す島内で、彼女は小さく呟くのだった。
次回かその次辺りでエッグヘッドは終わりにします。
原作通りにするか、それともゴッドバレーみたいに崩壊させるか悩んでます。
ちなみにクロエ海賊団は戦闘に関するスキルは何でも吸収するので、勝手に他人の技をコピーする悪い癖があります。(笑)