〝鬼の女中〟と呼ばれる女   作:悪魔さん

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凶君の戦闘描写が少なすぎる件。
彼も覇王色の使い手だといいな~……。


第128話〝騎士団のゲーム〟

 冥界にて。

「えェ~~~~~!!? 鍵持ってきた意味ねェじゃん!!」

「ハハハハ! 悪いなルフィ」

「海楼石の錠って壊せるのか……」

 ギャバンとの絡みでロキを拘束する鍵を手に入れたルフィとゾロだったが、クロエによってすでに破壊された後だった。

 せっかく伝説の海賊から鍵を奪えた――厳密に言うと譲ってもらった――のに無駄足で終わった事にルフィは憤慨し、クロエは笑いながら謝罪し、ゾロは五皇最強の実力に感心する。

 だが、いずれにしろロキ解放という結果に変わりはない。ついに彼の拘束具は外れ、巨大な男は立ち上がった。

「せっかくだ。ロキ、ルフィ、ロロノア。いくつか()()()()()()が起きた」

「「「!!」」」

「上の方でエマが色々話してるだろうが……情報共有だ。臨時の作戦会議をするぞ」

 そう言ってクロエは、エルバフに迫る面倒な勢力を説明する。

 話の全てを聞いた三人は、目を丸くして驚いた。

「えェ~~~~!!? ビッグ・マム!!? こっち来てんのか!!? 何でだァ!!?」

「それはお前らがリンリンをコケにしたからじゃないのか? だがそっちは私の方で対処できる。問題なのは()()()()()()だ」

「天竜人の組織だろ? まさか戦える奴がいるとはな……しかも不死身ときた」

「ああ…だが覇王色の覇気が奴らの弱点。覇王色を纏った攻撃なら戦闘不能に追い込める」

「だとすりゃおれは〝経験者〟だ。神の騎士団を仕留められる」

 覇王色の使い手達は語り合う。

 現状、三つ巴の戦いが予想される。しかし神の騎士団も五皇が二人もいるとは思ってはいないはずで、しかも〝山喰らい〟と〝銀斧〟に加えて自由になったロキがいる。エルバフ側の戦力は十分だ。

 もし懸念すべき事項があるとすれば――

(イムのガキが介入するか否かだな……)

 この海で最強の覇気使いと自負するクロエ以上の覇気を有する、凄まじく強大な敵の乱入の可能性。

 あの支配者が来る可能性を鑑みると、五皇同士の〝戦争〟は避けねばならない。

(やはり神の騎士団は各個撃破だな。それにコル寿郎の情報通りなら、増援を見積もっても5・6人が限度だろう……マリージョアの警備もあるだろうしな)

 コル寿郎によると、神の騎士団は「人間離れした筋力」と「不死身の肉体」、遠距離移動能力である「〝五芒星(アビス)〟の生成能力」を有しているとの事。

 しかし世界最高峰の海賊達と長く渡り合ってきたクロエとしては、それ自体は別に大した事ではない。その上の存在である五老星との戦闘を先に経験しているからだ。彼女が問題視しているのは()()()()()()()()()()()()()()だ。

(エルバフは火と雷に弱そうだが、そういう系統の能力者ならこっちには冷気使いが二人いるからいい。厄介なのは、リンリンのホーミーズのように無限に軍隊を作れる能力者だった場合だな)

 どんなに強い猛者でも、数には手古摺るのが常。半永久的な物量戦を仕掛けられると、守る者が多い方がじわじわと追い詰められる。

 これを打破するには、そうなる前に壊滅させるしかない。幸い、それを可能にできる実力者は揃っているので、あとは戦略次第だ。

「……私としては、ロキは温存しときたい。エッグヘッドの時のように五老星が出てくる可能性もある」

「あの怪物達か!!」

「――確かに奴らがまた来るとなると、また苦しい戦いになるな」

 クロエの意見に、ゾロは素直に同意する。

 五老星の悪魔の実と思われる能力と再生能力は脅威そのもの。ましてやクロエは、マリージョアでイムが軍子に憑依したのを目撃しているので、イムが五老星の誰かに憑依してくる可能性も考えている。

 また、場合によってはイムが直々に殴り込む事も想定しなければならない。〝世界の王〟の具体的な能力と戦闘スタイルは不明だが、何らかのギミックは確実にあり、最悪()()()()()()()かもしれないのだ。

 しかし覇気がどこまで通じるかは不明と言えど、真に不死身の化け物ではないと確信している。そうだとしたら五老星は自分と戦って疲弊などしないはずだからだ。

「とりあえず、ビッグ・マム海賊団の出方が気になる。タイミングによってはしっちゃかめっちゃかになる」

「ビッグ・マムか……」

「しつこいな~…今それどころじゃねェのによォ」

「ドガハハハ!! 難儀だなァ!!」

 

 

           *

 

 

 世界最強の老婆が刻一刻と迫る中、冥界の猛者達がどう動くか決めかねていた頃。

 陽界では大事件が起きていた。

「クソ、数が多い上にデカい…!!」

「実物じゃないのがせめてもの幸いね……コル寿郎、この能力って」

「キリンガムだ!! 神の騎士団の侵略だろう…!!」

 森から現れる怪物達を迎撃するクロエ海賊団。

 世界最強の女に扱かれてるだけあり、全員が高水準の戦闘力を有しているが、それでも手古摺っていた。

 何せ身長20メートル以上が当たり前の巨人より巨大な上、雷を放ったり武器を振るったりとやたら攻撃力が高いのだ。囲まれれば面倒だ。

「参ったな、ラカムは医者として後方に行っちまったのはともかく、エマが一人でどっか行っちまった……!!」

 落雷と火災、そして怪物による襲撃が重なり、国中に異変を知らせる角笛が響き渡る中、ツートップが不在。

 伝説の〝鬼の女中〟の一味は、指示を飛ばす者がいない中で戦わざるを得ないが……。

「狼狽えんじゃねェ」

 

 ドォン!!

 

『!!?』

 巨大な斧を片手に、凶が怪物達を次々と撃破。

 金獅子のライバルとして知られる伝説的海賊は、老いてなお健在――その事実に、クロエ海賊団は唖然となった。

「つ、(つえ)ェ……」

「アレが〝銀斧〟の凶…!! スゴい!! これがロックス海賊団!!!」

「フン……シキのクソ野郎よりは(つえ)ェつもりだ」

 不敵に笑う凶。

 そこへ、島雲を使った「〝霧舟(スヴァル)〟エディション」でグレート・エイリーク号が姿を現し、ギャバンも参戦。怪物達を次々に薙ぎ倒していく。

「おい!! クロエはどうした!? エマもいないじゃねェか!!」

「クロエはビッグ・マム海賊団の対応をすると言って不在だ!! エマはどこへ行ったかは知らん!!!」

「ハァ!!? リンリン!!? 聞いてねェぞ!!!」

「何も知らないで来たのね、あなた……」

 麦わらの一味とビッグ・マム海賊団の因縁を知らない凶は憤慨し、ステューシーはジト目で呆れ返った。

 ルフィとリンリンの抗争はかなりの大ニュースのはずなのに、どうやら新聞を読んでなかったようだ……。

「ったく……まァいい、あの女ならどうにかなるだろ。おめェら、確か見習いかなんかで元大将いたろ。どうした?」

「サウロって親友の巨人を助けに行ったど」

「ってこたァ、火消しはカイドウの娘に一旦任せるって事か。眠りながら歩くガキ共は、逆に歩かせながら誘導経路を変えるのが良さそうだな」

 そう言いながら、凶はサングラス越しにギャバンを一瞥。

 その意図を察し、ギャバンは一人でどこかへ行ってしまった。

「いいか、クロエの部下共。おれ達はデコイだ。あの化物共を相手取り、高みの見物を決めてるクソ共をギャバン達に任せる。相手が卑怯なマネするんなら、こっちもやりたいようにやる」

「生き残りに卑怯など存在しない。――そうだろう?」

「昔の海を知る連中がいると心強いのし」

「ハッ、まさかてめェらと手を組むとはな」

 凶の隣に、ナグリとレッドが立つ。ロジャー世代の大物達の共同戦線だ。

 するとそこへ、ラカムが月歩で宙を駆けながら戻ってきた。

「ラカム!!」

「悪い、ケガをした巨人達の処置をして遅れた!!」

 ラカムは地面に降り立つと、セイウチの学校の体育教師・ウォルフが血まみれで倒れていた事とその理由を説明した。

「――子供達が透明な荊に包まれてる!?」

「……ソマーズだ。〝イバイバの実〟の能力」

「じゃあ、騎士団は3人?」

「それ以上になる可能性もある。しかもそこへビッグ・マムが殴り込んで来るぞ」

 本当に気が滅入ると、コル寿郎は頭を抱える。

 そして、その様子を高みの見物どころか食事を楽しみながら非道なゲームを始めた神の騎士団は見ていた。

「ギハハハハ!! ホラ見ろ、コル寿郎が苦しんでるぞ!! 天下のクロエ海賊団も哀れだな!! 肝心のツートップも不在だぜ!!!」

「ハハハ……だが麦わらの一味に加えて「五皇」も抑えられるこの現状、むしろ違和感があるな」

「こうも容易く攻略できる相手ではない」

 ぬるゲーだと語る暢気なソマーズに対し、キリンガムと軍子は訝しんだ。

 孤高の少数精鋭で知られるクロエ海賊団が、本当にこのままで終わるのか、と疑問視する。

「ひとまず、飯を食ってからだ。その後ゲームを楽しくさせようぜ」

「じゃあ余興でここにいる誰かの頭を銃でぶち抜くってのはどう?」

「おっ!! いいねェ、それもまた〝感動〟………は?」

 突如として知らない声が交じった事に、全員が声がした方向を向いた、次の瞬間。

 

 バァン!!

 

「プギャアアアアアア!!!」

 銃声と共に覇気の稲妻が迸ると、ソマーズの頭が文字通り吹っ飛び、その余波で胴体の方も一緒に飛んでいった。

 キリンガムと軍子は、気づかぬ内に急接近していた敵に反応・迎撃態勢を取る。

「――〝魔弾〟エマ・グラニュエール…!!」

「いつの間に…どうやってここまで」

「見聞殺し――聞いた事ない? 見聞色の未来視をも封じる究極の気配殺し」

 エマは愛用の片手用ライフルに次弾を装填しながら語る。

 彼女は驚異的な探知能力を有する自身の見聞色で居場所を特定し、覇王色の使い手でもほんの僅かな猛者が扱える技術で完璧に気配を殺して現れたのだ。

 だからこそ、至近距離で近づいても声を掛けるまで気づかなかったのである。

「……まァ、この程度で死ぬような連中じゃないのは百も承知。少しおばさんも気合入れていくから、覚悟してね」

 そう言うと、エマの身体から赤黒い稲妻――覇王色の覇気が迸る。

 軍子とキリンガム、それに再生したソマーズは、緊張の糸を張り詰めた。

「あらためて()()へようこそ。クロエ不在につき、私が代わって歓迎してあげる」

 エマは銃の撃鉄を起こす。

 神の騎士団とエマの戦いが、今、始まろうとしていた。

 

 

 そして、時同じくしてエルバフの沖合。

「ママハハハハ……懐かしいねェ」

「ママ……誰が行く?」

「勿論おれが行く!! ただクロエの覇気も感じるね……それに異様な気配が三つだ」

 天候を従える女は、巨人の王国で不穏な出来事が起きていると直感する。

 その隣に立つ、ルフィと壮絶な激闘を繰り広げた次男もまた、今のエルバフで何かよからぬ事が起きているのではと推測する。

「……ママ、もしかすればエルバフで何か起こってるかもしれない」

「……一旦麦わらの首は後回しだねェ。お前達、まずは上陸の準備をしなァ!!!」

 誰も来るのを望んでない勢力が、ついに到着してしまった。




次回、世界最強のババア降臨。
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