神の騎士団とエマ・グラニュエール。
「神の騎士団って聞くと、顔の傷が疼くの」
「ほう…なぜか聞いてもいいかね?」
「ガーリングっていう男につけられたって訳」
「……ギハハハ!! そうか、感動的じゃねェか!! だが悪いな、生憎ガーリングは出世したんでな」
ソマーズは大笑いしながら、腰に差した宝剣・
それに呼応するかのように、軍子は矢印を、キリンガムは方天戟のような槍を構える。
「……それじゃあ、始めよっか」
ドォン!!
刹那、エマはライフルの銃口を地面に向けて発砲。粉塵が爆ぜ、視界が遮られた。
即興の煙幕に、隙を見せまいと構えるが……。
(気配が消えた…!?)
完全に気配が消えた事に、軍子は驚きを隠せなかった。
強い覇気使い程、気配はより強くなるのが常識。ましてや五皇の副船長ともなれば、その気配は強く感じ取れる。
神の騎士団の構成員も、全員が武装色と見聞色を操る強力な覇気使いだというのに、それでも感知できない。
「周囲に、完全に溶け込んでいる…!!」
軍子は戦慄した。
見聞色の高等技術だ。気配を周囲にカモフラージュさせる事で、自身の存在を限りなくゼロにする事ができるのだ。
これができるのは、世界でも一握りの猛者。それはつまり、エマの戦闘力は五皇に比肩し得るという事に他ならない。
「……見くびるな!!」
軍子はすかさず矢印を大量に出す。
粉塵は矢印の方向に飛ばされ、あっという間に視界が晴れ、銃身を両手で持ったエマが迫っていた。
「フンッ!!」
「がっ!?」
気合一閃。
エマの一振りが軍子の鳩尾に直撃。ミシリという嫌な音を立てて、軍子は吹っ飛んだ。
「なっ…!!」
「一対複数、あるいは一対多数の戦闘は
すかさずエマは武装硬化した足で金的。キリンガムは悶絶した。
不死の身体でも、やはり痛いものは痛いのだろう…。
「まずは一人…」
「させるかよ!! 〝
悶えるキリンガムの心臓を狙った銃口を遮るかの如く、ソマーズは地面から大量の棘を生やす。
それを回避したエマは標的を変更。バリバリと覇王色を纏いながらライフルを振りかぶってフルスイングし、飛ぶ打撃を飛ばした。
「うをォォ!!?」
「ちっ…」
「フザけんな!!! お前狙撃手だろ!!? 銃弾使えよ、銃弾!!!」
「? 銃弾は節約するものでしょ」
あっけらかんと返しながら、エマは銃口を向ける。
「今度は〝試し打ち〟……ちゃんと食らってよね」
「ハァ!?」
「〝
バァン! ドカァン!!
エマが引き鉄を引いた途端、赤い弾丸が発射。
軍子は矢印を飛ばして叩き落とそうとしたが、矢印の先端と弾丸がぶつかった瞬間に大爆発を引き起こした。
『何やってんだーーーーー!!!』
クロエ海賊団は、その光景を見て叫び声を上げた。
というのも、このエルバフは宝樹アダムの枝の上に村や住居が存在する為、落雷や火災の影響を受けやすいのが難点。ゆえに炎や雷を伴った攻撃だと周囲に燃え移って消火が大変なのだ。
そしてエマが放った弾丸は、兄弟分にして無類の大砲好きである〝千両道化のバギー〟から砲弾開発のノウハウを学んで完成させた特製弾丸なのだが……。
「狙撃手のクセに火薬の量ミスってんじゃねェよ!!!」
「何でそんな初歩的なドジを踏んだの!?」
「青キジとヤマトいなかったらヤバかったぞ!!」
非難轟々のラカム達に、麦わらの一味もエルバフの巨人達も呆気に取られてしまう。
ナミに至っては「何だかウチといい勝負ね……」とジト目で呟いている。
「クザン、消火頼む!!」
「人使いの荒いお医者さんだな……」
クザンはやれやれといった様子で駆けだし、火元へ向かう。
その間にも、キリンガムが能力で具現化した存在・
「雷雲に〝
「実物じゃねェのが幸いだが、な!!」
「神の騎士団をエマが仕留めに行ったのが現状だ。でもそれどころじゃないぞ……!!」
ドリーとブロギーの援護をするコル寿郎は、巨大な狼の
天竜人の組織よりもヤバい「イカレた五皇」が上陸しそうなのだ。クロエと戦争になればエルバフが壊滅しかねないので、一刻も早く事態を収拾させねばならない。
「確かに急がないと、面倒な事になりそうね」
「……残念だが、もう手遅れだ」
ドォン!!
『!!?』
レッドが諦めたように呟いた直後、強大な覇気がエルバフを駆け巡った。
覇王色の衝突だ。
「ウソだろ、マジで来やがった……!!!」
「リンリンはクロエに任せる他にない!! まずは目の前の脅威だ!!」
*
冥界では、やはりと言うべきかクロエとリンリンが衝突していた。
「〝
「〝錐龍錐釘〟!!!」
燃える巨剣を振り下ろすリンリンに、クロエは氷の大陸をも割る突き技で応戦する。
二つの刃はぶつかり合い、覇気を拡散させながら鍔迫り合いとなるも、互いに弾かれ距離を取る。
「邪魔すんじゃねェよ、クロエ……!! おれは麦わらもこの国に来た異様な覇気の持ち主も殺さなきゃならねェんだよ!!!」
「貴様の面子など知るか!! 足を掬われたリンリンが悪いだろう!!!」
そう言い合いながらドツキ合いを繰り広げる海の皇帝達。
片や世界最強のババア、片や世界最強の女――大海賊時代以前を知る女傑二人の抗争は、世界をぶっ壊すと評されたロキですら介入できなかった。
「おいおい、夜通し殺し合う気かよ…」
「「元ロックス」か「元ロジャー」か…どっちに賭ける、ルフィ」
「クロエ!!」
そんなルフィ達に対し、ビッグ・マム海賊団は――
「カタクリ兄さん、ママを助けないんで?」
「ああ、手出し無用だ」
「ママに殺されたいなら止めないぞ」
「いや、全力で遠慮します!!」
将星カタクリと幹部のオーブンの警告に、兵士達は怯んだ。
ビッグ・マムは機嫌を損ねると恐ろしい――その言われ様が世界政府から見たシャーロット・リンリンという海賊だが、それは味方であるシャーロット家及び従者の兵士や傘下海賊にも言える事なのだ。
「……そもそも、自分のナワバリを離れていいのか? 勘づかれたら切り崩しに遭うぞ」
「ママママ…!! 敵の心配かい? その必要はねェよ。おれの本命は〝麦わら〟の首だ、それ以外の命はどうなろうが知らないね」
「……大変だな、カタクリ」
「おれに振るな…!!」
顔に青筋を浮かべるカタクリ。
その時、上から悲鳴が聞こえ、全員が天を仰いだ。
「ハァ? 何だいありゃあ」
「……落ちてくるな」
戦闘中だったリンリンとクロエも、手を止めた。
その視線の先では――
「「島雲」は冥界では消えてしまうゆえーーーー!!」
「消える前のわずかな浮力があればいい!!!」
「リフトを使ってる時間はねェ!!!」
「ロキが解放されたら地獄でしゅよォ~~~!!!」
「ゲルズちゃんはおれが救う!!」
何と、ハイルディン率いる新巨兵海賊団全員が乗った巨大な船が、制御を失った状態で落下してきた。
なお、サンジはゲルズだけ救出したいようだ。
「――〝
すかさずクロエが跳び、化血を振るって覇気の竜巻を展開。「柔の剣」でハイルディン達を乗せた船を受け止め、衝撃を緩和させた。
船は轟音を立てて不時着するも、全員無傷で済み、船自体も最小限の損傷で済んだ。
覇気を極めた戦闘の達人の技術を目の当たりにし、ルフィ達は圧倒された。
「すまん〝鬼の女中〟!!! 助かった!!! だがロキの解放だけは――」
「そうしないと厄介な相手がいるぞ」
「……なっ!? ビッグ・マム!!?」
ハイルディンは最悪を突き詰めたような現状に愕然とした。
ロキとビッグ・マム――巨人族の嫌われ者が雁首を揃えているのだから。
「なぜここに…!! エルバフから出ていけ!!」
「ママハハハハ…!! 出ていくさ。〝麦わら〟の首を取ったらな」
「くっ…!!」
武器を構え威嚇するも、リンリンは意にも介さない。
すると、待ったをかけるようにゲルズが前に出た。
「待ってリンリン!! 彼らはエルバフの大事な客人!! エルバフとしても恩があるの!!」
「――おや、ゲルズじゃないか!! 久しぶりだねェ」
幼少期以降、長く疎遠になっていた女巨人との再会にリンリンは顔を綻ばせた。
すっかり上機嫌になったビッグ・マムに、ゲルズは言葉を選びながら交渉した。
「この国にいる以上、ルフィ君達への手出しは許せない!! どうしても戦うなら、エルバフの外でお願い!!」
「ママ…おれとしても、エルバフ中を敵に回してでも〝麦わら〟を討ち取るのはリスクが高いと思う」
「カタクリ…!」
ゲルズの懇願に加え、リスクマネジメントの観点でカタクリは進言。
あくまでも国内で抗争するなら容赦はしないというエルバフの立ち位置に、リンリンは思案顔になった。
その時――
バリバリバリィ!!
『!!!?』
突如、冥界の上…陽界から常軌を逸した強力な覇気の圧力が放たれた。
麦わらの一味の両翼と新巨兵海賊団、カタクリを筆頭としたシャーロット家の豪傑達は息を呑み、ビッグ・マム海賊団の兵士達や冥界の猛獣達は次々と泡を吹いて倒れていく。
新世界の強者達すら戦慄させる圧倒的な覇王色に、クロエ達は戦う意志を固めた。
「おいおい、この覇気…!! ゴッドバレーで覚えがあるぞ!!!」
「イムのクソガキか…!! 今度は実体で来てくれるんだろうな」
「ゾロ、サンジ!! おれ行ってくる!!!」
「全員リフトに乗れ!!! すぐ「陽界」に戻るぞ!!! エルバフが危ない!!!」
「ドガハハ!!! だったら必要だよなァ、おれの力!!!」
冥界に集った猛者達が、〝神〟の覇気に反応。
「五皇」「第六の皇帝」「エルバフの王族」――彼らは皆、国中に響き渡る覇気の持ち主に標的を変え、全面対決の構えを取ったのだった。
次回、御大&神の騎士団との対決。
ビッグ・マム海賊団、まさかの悪魔化の予感…!?
ソマーズ、趣味優先するとマジで死ぬよ? 原作みたいに甘くないから。(笑)