〝鬼の女中〟と呼ばれる女   作:悪魔さん

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ついに光月おでんが参上!
時系列は原作通りです。

なお、この話の前半では「FILM RED」の巻四十億でヒッジョーに気になってた〝見聞殺し〟について触れます。
シャンクスができるってことは、当然ロジャーも……。


第17話〝見聞殺し〟

 金獅子のシキを撃破し、冒険の航海を続けるロジャー一行は、とある無人島に上陸。

 記録(ログ)は半日ぐらいということなので、ロジャーは久々にクロエと手合わせをすることにした。

「おあああああっ!!」

「ハアァァァァァッ!!」

 気迫を高めながら、目にも止まらぬ速さで刃と覇気をぶつけ合う。

 一人海賊の時点でロジャーに善戦できる実力を有していたクロエは、ロジャー海賊団に加入したことでメキメキと力を付け、今ではバレットと共に副船長(レイリー)と互角の猛者に仕上がっていた。その強さたるや、世間はおろか海賊・海兵からも「怪物」と称される程で、実質()()()()()()()()()()()最強候補の一人という認識であった。

 そんな世間の印象に恥じぬ勢いで、クロエはロジャーとギリギリで渡り合う。

「強くなったな、クロエ!! 初めて会った時とは比べ物にならねェ!!」

「貴様こそ、相変わらず鬼のような強さだな!! 不治の病の正体は仮病じゃないのか!?」

「わははは!!! そいつァ褒め言葉と受け取っとくぜ!!!」

 余命僅かな人間とは思えない圧倒的な強さに、クロエは劣勢になりつつも笑みを絶やさない。バレットのような戦闘狂のきらいではないが、クロエ自身も前世の反動で自由に暴れることを楽しんでいるのだ。

 その事実を唯一知るロジャーも、余裕の笑みを絶やさない。仲間内ではバレットと共に無愛想コンビと称されている彼女は、加入したての頃は鉄仮面みたいに表情の変化が乏しかったが、今では喜怒哀楽がはっきりするようになった。そんな彼女に、ロジャーは愛おしさを覚えるほどに喜んだ。

 なお、今のクロエの立ち振る舞いについて、本人は「ロジャーの仲間愛に感化された」と語っているが、ロジャーは「本来の人となり」と捉えているのは秘密だ。

「食らえ!」

 放たれる斬撃を躱しながら接近し、跳躍して踵落としを繰り出すクロエ。

 ロジャーは真っ向から愛刀で受け止めるが、八衝拳の衝撃が伝導し、顔を歪ませた。しかしそれも一瞬だけであり、笑みを溢しながら力強く踏み込んで弾き返す。

 空中で受け身を取りながら着地し、クロエは覇王色を纏った斬撃を飛ばす。ロジャーはそれ以上の覇王色を纏わせて打ち破ると、一気に距離を詰めて斬り上げた。

「ぬんっ!」

「っ!」

 ギィン! という金属音と共に、弾かれる形でクロエの手から愛刀が離れた。

 ロジャーは無防備になった瞬間を見逃さず、容赦なく〝神避〟を放つ。が、クロエはすかさず腰にさしたままの化血の鞘を構えて武装硬化し、盾にすることで防ぎ切った。

「私が飛ばせるのは斬撃だけじゃないぞ、ロジャー!」

「何っ!?」

 クロエは鉄拵えの鞘に武装色と覇王色を纏わせ、赤みがかった黒い稲妻を迸らせながら勢いよく振り抜いた。

 

「〝(ごう)(ぶく)(さん)(がい)〟!!」

 

 ズドン!!

 

「ぐをォッ!?」

 飛ぶ斬撃ならぬ〝()()()()〟が、近距離からロジャーを襲った。咄嗟に未来視をしたため、どうにか愛刀(エース)を盾にすることができたが、威力を相殺することはできず、強烈な衝撃にもんどり打つ。

 その後も鞘を用いた〝飛ぶ打撃〟でロジャーを猛追。刀を回収させまいとする攻撃の嵐を掻い潜り、ついにクロエは化血の回収に成功する。

「〝神鳴〟――」

 クロエは微笑みながら覇王色を纏い、渾身の斬撃を飛ばそうとするが……。

(――ロジャーが消えた!?)

 見聞色で感知できるはずのロジャーの気配が消えたことに、呆然とするクロエ。

 意識を集中させて未来視を行使するが、それでも捉えられなかった。

(何だ!? 何をしたロジャー!?)

「〝神避〟!!」

 

 ドォン!

 

「ぐあっ!?」

 ロジャーはクロエの背後に回り込んでいた。

 完全に不意を突かれたクロエは、無防備の状態で吹っ飛ばされ、岩盤に叩きつけられた。頭から血を流しつつも体勢を立て直そうとするが、その時にはロジャーの刀の切っ先が自らの喉元に突きつけられていた。

「――そこまでだ」

「くっ……」

「わっはっはっはっはっはっ! まだまだおれが上だな、クロエ!」

 副船長(レイリー)の一声で、クロエは肩の力を抜き、ロジャーは切っ先を下ろした。

 手合わせはロジャーの勝利だ。

「さすがだぜ船長!!」

「当然だろ、ロジャー船長は最強なんだからなァ!!」

「いや、クロエもスゴかったぜ!! 見たことねェ技使ってやがった!!」

 手合わせを見ていた船員(クルー)たちは大盛り上がり。シャンクスとバギーも二人の戦いに圧倒されてポカンとしており、バレットは顎に手を当て真剣に何か考えている。

 一方、クロエはクロッカスに怪我の度合いを見てもらいつつ、豪快に笑うロジャーに尋ねた。

「……ロジャー、何をした」

「んあ?」

「あんなに目立つ貴様の気配が感知できなかったんだ、気になるに決まってる」

 クロエが目を細めながら質すと、ロジャーは「知りてェなら教えてやる」と返答した。

「覇王色は纏うだけじゃねェ。気配をコントロールして、相手の見聞色を封じることも可能なんだよ」

「……〝見聞殺し〟と言うべきか? そんな戦い方があったのか……」

「わははは!! まァ、まさか使わされるとは思わなかったぜ。おれもお前の〝飛ぶ打撃〟にゃあ面食らったしな」

 ロジャーは手当てを受けながら、いつもの無愛想に戻った紅一点の奮闘を称えた。

 剣士であると同時に格闘の玄人でもあるクロエが編み出した、覇気を込めた〝飛ぶ打撃〟は相当な威力だった。モロに食らえば骨はおろか内臓にまでダメージを与えていただろう。

 今年で二十一歳となったクロエは、まだまだ成長途中であり、全盛期はこれからだ。〝鬼の女中〟の全盛期となれば、それこそガープやセンゴクも手を焼く大物になるだろう。それはバレットやシャンクス、バギーも例外ではない。

 唯一残念なのは、この船を降りた若者達がどれ程の海賊になるのかを見届けられないことぐらいだ。

「おい、相棒! 記録(ログ)はどうなってる?」

「もう半日過ぎてる、いつでもいいぞ」

「ようし、野郎共!! 次の島へ向かうぞ!!」

 ロジャーは仲間達に号令をかけ、次の島へと向かうべく出航した。

 そのすぐあとに、運命的な出会いが待っていると知らずに。

 

 

           *

 

 

「あァ……今回も載ってねェか?」

「また〝白ひげ〟の記事か! おれ達も暴れてんのによ!」

 甲板でそうボヤくシャンクスとバギー。

 二人の視線は、新聞の一面に載ったロジャー最大のライバル・白ひげの記事。何でも、世界政府未加盟国のワノ国から〝光月おでん〟なる剣豪(サムライ)が加入し、一騎当千の大暴れで進撃しているというのだ。

 ワノ国は他所者を受けつけない鎖国国家として有名で、侍と呼ばれる戦士が強すぎて海軍ですら近寄れない強国と認識されている。侍の中には隠密活動や暗殺術に長けた「忍者」もおり、総戦力は相当なモノと言われている。また、入国の仕方が困難を極め、行こうにも行けないという話もある。

 そんな国から侍が出国し、白ひげの船に乗っているのだ。いずれワノ国に行くことを考えると、興味深い話ではある。

「相変わらずめちゃくちゃらしいな~、白ひげんトコのワノ国の侍は」

「ニューゲートの一味に誰かいるのか?」

「「クロエ!!」」

 潮風でコートをなびかせながら、クロエが二人の前に顔を出す。

 新聞の一面に記載された写真に目を向けると、そこには筋肉質で屈強な体格の大男が、二刀流で暴れている様子が写っていた。この男が光月おでんなのだろう。

「……思っていたのと随分違うな……」

「え? そうか?」

「図体はともかく、頭がな……」

 クロエは顔を顰めた。

 自分の記憶通りなら、侍の髪型と言えば丁髷だ。しかしこのおでんなる人物は、ちょんまげとは程遠い、角帽のように円柱と円盤を組み合わせたような頭だ。

 こんな髪型、前世でも見たことがない。なぜこんな髪型になったのだろうか。

「……まあ、ニューゲートの船に乗るくらいだ。相当な強者であるのは違いない」

「――おい、ちょっと貸してくれクロエ」

 そこへロジャーが現れ、クロエから新聞を分捕った。

 一面を凝視すると、ニィッと口角を上げた。

「閉ざされた国から〝侍〟が出て来たか!! 会ってみてェもんだ!!」

 海へと飛び出た侍を知り、ロジャーは期待に胸を膨らませた。

 

 

 同じ頃、とある海域を進む白ひげ海賊団の本船、モビー・ディック号の甲板にて、一人の侍が真剣な眼差しである手配書を見ていた。

 彼こそが光月おでん――大海賊エドワード・ニューゲートの兄弟分である、ワノ国の「九里大名」である。

「…………」

「おでんさん、どうしたの?」

「おお……トキか」

 エメラルドグリーンの長髪が特徴の和装美女・光月トキが、興味深そうに尋ねた。

 手配書には「CHLOE・D・READ」という名が記されていた。

「その女の人が気になるの?」

「ああ……」

「グラララララ……! おい、おでん。この期に及んで浮気か?」

「んなわけねェだろ、(しろ)()っちゃん!!」

 そこへ、不敵に笑いながら白ひげが茶化しに来る。

 おでんは「おれはトキ一筋だっ!!」と一喝しつつも、手配書に写る女海賊が気になることは肯定した。

「この娘、只者ではないな……(しろ)()っちゃんは知ってるか?」

「ああ、そいつは〝鬼の女中〟だ。ロジャーんトコの部下でな……生意気なじゃじゃ馬だが腕は立つぞ」

「その上、〝鬼の跡目〟ダグラス・バレットもいるんだよい……」

「あの二人は化け物だ、一対一(サシ)で勝てるのはウチじゃあオヤジくらいだ」

 マルコ達の証言に、おでんは驚愕した。

 大海原を冒険する中で、当然多くの敵と戦ってきたが、そんな彼らでも化け物と称する程の実力を、手配書の女は秘めているのだ。しかもロジャーの船にはもう一人化け物がいるという。そんな二人を束ねるロジャーは、器の大きさも実力もおでんの予想以上だろう。

「で、いくら何でも凝視しすぎじゃねェか? そのじゃじゃ馬がそんなに気になるか?」

「……(しろ)()っちゃん、この娘の故郷は?」

「ん? 一応は西の海(ウエストブルー)出身らしいが、それがどうした?」

「いや……これはおれの勘なんだが……」

 

 ――このクロエって娘は、()()()()()()()から来ている気がするんだ。

 

 おでんの呟きに、白ひげ達は呆気に取られた。

 しかし、おでんは冗談こそいうが噓を吐いて人を騙すタイプではない。妻のいる前でわざわざ嘘をつく必要性もない。

 つまり、おでんは何かしら感じ取ったのだ。

(……こいつらに会えば、おれの冒険の「答え」が出るかもしれねェ)

 おでんもまた、まだ見ぬ者達の出会いに期待を膨らませていた。

 

 

           *

 

 

 そして、運命の歯車は動き出した。

「おれを捕まえたいのなら、ガープやセンゴクやゼファーでも連れて来い………!! お前らじゃあ何も面白くねェ!!」

 とある島にて、ロジャー海賊団は海軍を一方的に叩きのめしていた。

 今回は海軍の大型艦五隻の、小規模な艦隊。海軍本部中将5人と軍艦10隻という国家クラスの戦力であるバスターコールには及ばずとも、小さい島なら焼け野原にできる。しかもロジャー達は島でキャンプをしている最中で、状況的に考えれば海軍の方が優勢だ。

 それでも、彼らはロジャー海賊団を一人も討ち取ることができなかったどころか、怪我人すら出せなかった。それぐらいの実力差があるのだ。

「鍛錬も戦略も覚悟も……何もかも足りなかったな」

「期待外れだ……」

 一味の若き戦力、クロエとバレットはそうボヤく。

 艦隊の半数以上の兵力は、実質この二人によって潰された。クロエは構えを解いているが、バレットは暴れ足りないのか不満気な表情だ。

「クロエ、クロエ! 今日のおれどうだった?」

「ん? そうだな……武装硬化もできてたし、バギーとの連携も問題なかったぞ」

「えへへ!!」

 クロエは麦わら帽子の上からシャンクスの頭を撫でる。

 すると、岩の天辺にいたバギーがロジャーに向かって叫んだ。

「うわーーっ!! 船長!! 島の反対側に〝白ひげ〟の船だ!!」

 その言葉に、船員達はロジャーに目を向ける。

「今一戦やったばかりだぞ、ロジャー」

「白ひげか~……クロエの時以来だな」

 直後、島中の鳥が一斉に騒ぎ飛び立った。

 白ひげが仲間を連れて上陸したようだ。

「鳥が騒いでる。上陸したな」

「よ~~し……!! いっちょ()るか、生きててこその〝殺し合い〟!!!」

 胸倉を掴んでいた海兵を放り捨て、ロジャーは笑みを深めた。

「おれももう寿命(おわり)が近い!! お前と会うのも最後かもしれねェからな、〝白ひげ〟!!!」

 ロジャーは白ひげ海賊団との戦闘開始を宣言する。

 その直後、バギーが双眼鏡で巷を騒がす男のことを叫んだ。

「何だあいつ!? スッゲー(はえ)ェぞ!! 〝侍〟かァ!?」

「〝侍〟!? 噂の!!」

 ロジャーは噂の侍が来たことに、歓喜の声を上げた。

 

 後に〝海賊王〟と語られるようになる、ロジャー最後の冒険が始まろうとしていた。




次回、原作のおでん加入の大激戦です。
おでんVSクロエを予定しておりますので、お楽しみに。
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