〝鬼の女中〟と呼ばれる女   作:悪魔さん

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アニメの内容も交えた流れとなってます。

無意識無自覚の涙って、シチュエーションとして最高な気がする。


第19話〝おでんとクロエ〟

 両海賊団がプレゼント交換をしている中、クロエはロジャーに呼び出された。

 クロエの前では、ロジャーと白ひげ、そして件の侍・おでんが酒盛りをしていた。

「グラララララ!! おう小娘、相変わらず愛想がねェな!!」

「つまらないこと言い聞かせに来たんなら帰る」

「まァ、待て。おでんが面と向かって話してェんだとよ」

 ガブガブと酒を飲むロジャーに、クロエは怪訝な顔をした。

 先の戦闘で一戦交えたとはいえ、自分に何の用だろうか。

「……あの時は名乗ってなかったな。クロエ・D・リードだ」

「うわ、スゲェ無愛想! ……おれはワノ国の九里大名・光月おでんだ」

 ビックリするぐらい愛想が無いクロエに驚きつつも、おでんは自己紹介をする。

 トキとは真逆だなと思いつつも、朗らかに対応する。

「せっかくだ、酒を注いでくれねェか? 女が酌した酒は一味違う!」

「自分で注げ、痴れ者が」

「えぇーーっ!?」

 秒で断られ、おでんは驚愕した。

「冷たすぎだろ!! お前の異名に〝女中〟って言葉付いてるだろ!?」

「それは私がロジャーの部下だからだ。文句があるなら海軍に言え」

「わははははは!」

 クロエの冷たい切り返しに、ロジャーは爆笑する。

 おでんはゴホンと一つ咳払いし、真面目な顔でクロエに尋ねた。

「クロエと言ったな……おれは、お前がもっと遠い場所から来ている気がするんだが、どうなんだ」

 単刀直入におでんはクロエを質した。

 クロエは意外過ぎる質問にキョトンとした表情を浮かべ、すぐにロジャーを睨む。

「私のことを話したのか?」

「いやァ、別に。おめェに前世の記憶があるってことも言ってねェ」

「現在進行形で言ってるだろうが!!」

 ドゴッ! とクロエはロジャーに武装硬化した右脚で踵落としを炸裂。

 脳天に直撃し、痛がるロジャーを尻目にその隣で胡坐を掻く。

「思いっきり口滑ってるじゃないか、この馬鹿船長が……」

「おめェ、武装硬化はねェだろ……!」

 大きなタンコブを作ったロジャーに、クロエは「それぐらいで死ぬ男じゃないだろう」と不貞腐れた。

「おい、そりゃあどういうことだ……!?」

「……詳しく聞かせろ、小娘」

「……ハァー……」

 白ひげとおでんの視線を受け、クロエは「別にバレても問題ないしな……」と前置きしつつ前世を語った。

 それは、閉ざされた祖国から飛び出したおでんどころか、大海に雷名を轟かす白ひげですらも驚く内容。ロジャーは一度聞いてはいるが、二人の反応が気になるのかニヤニヤしている。

「……以上が私の前世だ。眉唾物だろうから、信じるかどうかは自分で決めろ」

「……!?」

「グラララララ……! そうか、驚いたな。そうだったのか……」

 クロエの前世の話を聞き、おでんはあんぐりと口を開け、白ひげは含み笑いを浮かべた。

「……割と驚かないな、ニューゲート。おでんの反応が普通だと思うが」

「前世の一生も合わせりゃあ実質40年以上生きてるようなモンだろ? だったら納得いく部分もある」

 白ひげの言い分に、クロエは「そうか」と短く返した。

 どうやら白ひげは白ひげで、クロエが人とは違った特殊な事情を抱えていると勘づいていたようだ。ロジャーもそうだったが、この世界の頂点を争う者は妙に勘が鋭いようだ。

「俄かには信じ(がて)ェ……!!」

 一方のおでんは、情報量の多さに呆然とした様子だ。

 先程のロジャーの「最後の島」とそこにあるであろう〝莫大な財宝〟、そして()()()()()()()()()()()()()()で度肝を抜かれたというのに、さらに「〝鬼の女中〟の秘密」まで聞かされたのだ。

 いくら海外に興味津々なおでんでも、情報処理が追いついていない。

「じゃ、じゃあ聞くが……お前の前世とやらに、侍は何人いるんだ!?」

「武士という意味合いで言えば、私の生きた世界は帯刀して外に出ること自体が違法行為だ。そもそも武士の時代じゃないしな。武士は過去の存在として教わっていた」

「……!」

 クロエの証言におでんは言葉を失った。

 彼女が前世で生きていた時世は、ワノ国では当たり前の存在である侍が一人としていないのだ。価値観も何もかもが違うことに、おでんは何を言えばいいかわからなくなった。

「クロエ、お前そんなに(おも)(しれ)ェ話あんなら何で言わねェ!?」

「教えろと言われてないからな。そもそも教えたところで暇つぶしにしかならんだろうに」

「そんなにスゲェ話あんなら、もっと聞かせろよ!」

 クロエは自分の経歴しか語ってなかった分、まだ他の情報(ネタ)を持っていると知らなかったロジャーは目を輝かせている。

 おでんもまた、クロエの言う「前世」に興味を持ち始めたのか、「おれにも聞かせてくれ」と食いついてきた。

「ハァ…………私はロジャー海賊団だ、貴様といつまでもいることはないぞ」

「いや、おれ達にはおでんが必要だ!!」

「?」

 その言葉にクロエが首を傾げると、ロジャーが真剣な面持ちで白ひげに頼み込んだ。

「一年でいい、おでんを貸してくれ!! 後生の頼みだ!! こいつがいればきっと〝最後の島〟に辿り着ける!!!」

 ロジャーはそう言い、おでんにも「一年だけおれ達の旅につき合ってくれ!!」と頭を下げた。

「おいロジャー!! 敵に頭を下げるなんてやめろ!! レイリーやギャバン達も見てるぞ!?」

「頼む、おでん!!」

 白ひげに頭を下げるロジャーに、クロエは声を荒げるが、当の本人は意にも介さず頭を地面にこすりつけた。

 当然、ロジャーの申し出を聞いた白ひげは激怒した。

「フザけんなァ!!!」

 ドォン!! と大気を殴りつけてヒビを入れ、海ごと島を揺るがす白ひげ。

 グラグラの実の「地震人間」の怒りに、敵味方問わず慌てて逃げ惑う。

「ロジャー……おれから〝家族〟を奪おうってのかァ!?」

 そう、白ひげは〝家族〟を何よりも大事にする海賊であり、おでんは唯一の兄弟分だ。いくら顔馴染みの好敵手とて、家族を巻き込んだ頼み事は受け入れられないのだ。

 だが、おでんは違った。自分の一族――光月家がなぜ海外で解読を禁じられている〝歴史の本文(ポーネグリフ)〟と呼ばれる古代文字が刻まれた石碑を読めるのか、なぜ今ロジャー達に出会ったのか……己の血が騒ぐのをひしひしと感じ取っていた。

 そして気づいた時には、言葉が口をついて出ていた。

(しろ)()っちゃん……!! 行ってみてェ、行かせてくれねェか!! こいつが言う最後の島、見てみてェ!!」

「「!!」」

 おでんの思わぬ言葉に、ロジャーとクロエは目を見開いた。

 そして言われた白ひげは顔を歪め、心底嫌そうな表情を浮かべた。

「イヤそう……」

「イヤに決まってんだろうが!! おれとお前は兄弟分だろう!!」

「一年だけだ! (しろ)()っちゃん!」

 ロジャーの計り知れない可能性を感じ、白ひげを宥め続けるおでん。

 そして、最終的には白ひげが弟のわがままを心底不満気に受け入れる形となったのだった。

 

 

           *

 

 

 白ひげ海賊団と、自分についてきた三人の家臣に別れを告げ、おでんはオーロ・ジャクソン号に乗った。

 家族丸ごとロジャー海賊団に移籍したおでん一行の、海賊としての第二幕が始まった。

「赤ん坊なんて久しぶりだな!!」

「昔を思い出すな」

 船上でモモの助と日和を抱きながら、朗らかに笑うロジャーとレイリー。

 その様子を、シャンクスとバギーは樽の上に乗りながら睨みつけていると……。

「赤子に嫉妬するようじゃあ、お前らもまだまだだな」

「んなっ!?」

「ち、違うからなクロエ!! ただ船長と対等でいるつもりのおでんが……」

「フフ……そういうことにしといてやる。さて……一回樽から降りてもらおうか」

 そう言われ、素直に二人は座っていた樽から降りる。

 直後、クロエが刀を抜いて横に一振り。二つ並んだ樽に一本の線が入り、バキャアッという音と共に砕け散り、中から二足で立つ犬と猫が現れた。

「イヌアラシ!! ネコマムシ!! なぜここに!?」

「いや~……」

「わしらあ、おでん様が見ゆうがが一番楽しいぜよ!!」

 密航者の正体は、おでんの家臣であるイヌアラシとネコマムシだった。

 彼らは白ひげ海賊団に残っていたはずだが、我慢できず樽の中に潜んだようだ。

「……おでんのペットか……」

「ペットじゃねェよ!! 家臣だ!!」

「ニューゲートに何も言ってない様子だな。今頃怒り心頭じゃないか?」

 クスクス笑うクロエに、おでんは「あちゃー……」と頭を抱えた。

 いくら〝家族〟と言えど、白ひげだって仲間に怒る。勝手に出ていけば頭に来る。

 しかし、済んだことを掘り返したところでどうにもならない。おでんは「急に悪いな」と言いつつも、航海への同行を申し出たが……。

「何か勘違いしてんじゃねェか?」

 ギャバンがそう言うと、一味の面々は顔をしかめながらおでんを見据えた。

 シャンクスとバギーも、どこか苛立っているようにも思えた。

「おでん!! 船長がお前の〝知識〟を必要としただけだ!! おれ達がそう簡単に認めると思うなよ!? わかったか!!」

「ハッ、下らねェ茶番だ」

「何だと!?」

 そんなギャバン達の態度を、バレットは鼻で笑った。おでんの強さに興味を持っているからか、とやかく言わないスタンスのようだ。

 それに続くように、刀の手入れをしながらクロエが口を開いた。

「どうせすぐ絆されるくせに、よく言うものだ。素直じゃない奴らだ」

『おめェにだけは言われたくねェよ!!』

 無愛想な仲間(クロエ)の一言に、キレの良いツッコミを入れるギャバン達。

 漫才のようなやり取りに、おでんは愉快そうに笑うのだった。

 

 

          *

 

 

 その日の夜。

 クロエの読みは的中していた。

「「美味そうな匂い!!」」

「よーし、頃合いだな」

 やっぱり、というかもはや予定調和の領域となった絆されっぷり。

 その様子に、クロエは「事前に打ち合わせでもしてたのか」と呆れ返っていた。

「これがワノ国一の食いもんだ!!」

『おおー!!』

 一体どこから持ってきたのかわからない巨大な土鍋の蓋を、おでんは開ける。

 鍋の中には、具沢山のおでんがギッシリ詰まっていた。

「さァ、皆食ってくれ!!」

 おでんの一声に、各々がおでんに手を伸ばす。

 ギャバンはがんもどきを、シャンクスはちくわを、バギーはタコを……腹を空かせた屈強な海賊達が、一斉に一口で頬張ると……。

『うんめェ~!!!』

「そうか、うまいか!!」

 一味全員の胃袋を掴むことに成功し、おでんは大喜び。

 ロジャーもおでんを堪能し、バレットももち巾着を黙々と食べる。

「はい、クロエさん」

「……! すまない」

 クロエはトキから皿を受け取り、箸で大根を持った。

 出汁が隅々まで染み渡ったそれをかじると、口の中に旨味が一瞬で行き渡った。

「どう? おでんさんのおでんは?」

「美味しいさ」

 微笑むクロエに、トキはホワホワとした笑みを溢した。

 それを見たクロエは、トキの笑顔が前世の友人を重なったように感じた。

 

 ――黒江、どう? 私のおでん!

 

(……そう言えば、()()()もおでんが好きって言ってたな)

 前世の自分の唯一の友人が、好きな料理も得意料理もおでんだったことを思い出す。

 もう会えないとわかっているのに、また会いたいと願っている。あいつもどこかで転生しているんじゃないかと、心の中で思っている自分がいる。

 そんなことを未だに抱く自分を、馬鹿馬鹿しいなと自嘲気味に笑った時だった。

『……!?』

「?」

 クロエは、ロジャー達が目を大きく見開いて凝視しているに気づいた。

 あのバレットですら瞠目しており、おでん一行も固まっている。

 一体、どうしたんだ……? そんなことをクロエが思った時、シャンクスが口を開いた。

 

「クロエ……何で泣いてるんだ……?」

 

「……え?」

 クロエは、そう言われて気づいた。

 ロジャー達は、初めて見た〝鬼の女中〟の涙に静まり返っていたのだ。

「……?」

 クロエはクロエで、動揺を隠せなかった。

 痛いとか悲しいとか、そんな覚えは一切ない。ならば、この目から流れる雫は何だというのだろうか。

「なあ、クロエ」

「……ロジャー?」

 未だに涙が止まらないクロエの隣に座り、肩にポンッと手を置くロジャー。

 「実はおめェの秘密は、すでに全員に話してある」と前置きしつつ、〝鬼〟と恐れられる男とは思えない優しさに満ちた声で諭した。

「前世のおめェを知る奴がいなくても、おめェは一人じゃねェよ。おれがいる、レイリー達がいる。バレットも、シャンクスも、バギーもいるじゃねェか……」

「っ…………!」

「クロエ……おれァな、おめェが自分の抱える秘密のせいで苦しむのが我慢できねェ。この海を一人で生きてる奴なんていねェんだ、何でもかんでも背負うな。なァに、おれ達はそんなヤワな身体じゃねェから心配すんな!」

 ロジャーはニカッと笑った。

 レイリーも、ギャバンも、クロッカスも……皆がクロエを穏やかな眼差しで見据え笑っている。彼女が兄弟分として接するシャンクスとバギーも、腕を組んで笑っている。唯一バレットは呆れた表情を浮かべているのだが、彼らしいと言えば彼らしい。

「……人前で涙は見せたくなかったのにな……」

「わははは!! 泣きてェ時は顔がグシャグシャになるくらい泣いて、笑いてェ時はゲラゲラ腹抱えて笑っときゃいいんだよ!!」

 意外と頑固だな!! と大笑いするロジャーに、クロエも釣られるように微笑むと、おもむろに樽のジョッキを手に持った。

 クロエはそのままゴキュゴキュと喉を鳴らしながら一気飲み。酒が空になり、ジョッキの中身が氷だけになった所で漸くドンッ! と男らしくジョッキを置いた。

「……何だろうな……少し胸がすいた気がする」

「……!」

「ありがとな、ロジャー」

 憑き物が落ちたように笑うクロエに、ロジャーは「仲間だからなっ!」と快活に返した。

「ようし、野郎共ォ!! 朝まで飲むぞォ!!」

『うおーーーーっ!!!』

 ロジャー海賊団は、改めて盛大な宴を始めた。

 なお、本当に宴は夜明けまで行ったことで、一味の大半は二日酔いで苦しむハメになるのは言うまでもない。




これを機に、クロエはロジャーに好意を寄せます。
ただ、あくまでも「人間として」なので、ロジャーはそのままルージュと結ばれますよ。

そうそう、クロエのバストサイズはJカップです。
詳細はプロフィール設定が完成次第載せますので、ざっくりとした大きさで勘弁して下さい。
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