今年も皆さんが楽しんで読めるよう、精いっぱい努力しますので、よろしくお願いします。
そして新年一発目は、長くベールに包まれていたクロエの前世の友人が……!
シャボンディ諸島での大騒動が落ち着き、リュウグウ王国がある魚人島へ向かうロジャー海賊団。
途中、ロジャーとおでんが静かな海底なのに「誰かが喋ってる」とソワソワしていたが、それさえ除けば至って順調だった。
――魚人島の入り口の手前まで来るまでは。
「何をしに来た、地上の者!!」
現れたのは、屈強な巨体で赤毛の長髪と髭を蓄えた、威風堂々とした人魚の騎士。
〝海の大騎士〟と呼ばれるシーラカンスの人魚・リュウグウ王国国王のネプチューンだ。
「返答次第ではここで始末する!!」
「……」
三叉槍を構えるネプチューンに、クロエは一歩前に出て刀の柄を掴んだ。
一触即発の空気の中、ロジャーがクロエの前に躍り出た。
「おい、待て待て!! よく見ろ!! おれだ!! ロジャーだ!! 大騎士ネプチューン!!」
「ロジャー!? ……成程、わかったぞ!! お前らがやるのか!?」
まるで何か予言でも告げられたかのような返答をするネプチューン。
彼の言葉に疑問を抱きつつも、ひとまず魚人島へ入港し、事情を説明した。
「何も悪さはしねェよ!! 何だよ、お前程の男が〝予言〟なんかにビクビクしやがって」
ロジャーはムスッとした顔で、ネプチューンに反論する。
どうやら、占い師の「近々、魚人島の門が何者かに壊される」という予言を受け、そこへ現れたロジャー海賊団がその正体だと勘繰ったらしい。
「あの予言の後にお前らが来れば、十中八九そうだと思うわい。それにあの〝神殺しのクロエ〟もいれば尚のことじゃもん!!」
「私が?」
「お前さんだろう、一番のトラブルメーカーは!! あれだけの天竜人を手にかけといて、話題にならんのが無理な話……この国の一部の民からは英雄視されとる始末で困ったものじゃもん!!」
ネプチューン曰く。
クロエの天竜人に対する凶行は、人間に対する全体的な不信感と反発が根強い魚人島において、世界の頂点に立つ権力者を次々に殺める彼女を人間達への恨みが強い「魚人街」の住民から英雄視する声が相次いでいるという。
その言葉を聞いたクロエは、不愉快極まりないといった表情で口を開いた。
「私は思想犯でもテロリストでもない、ただの海賊だ。己の意志と力で変えようとしない痴れ者共に、勝手に祀られたくない」
「全く、耳が痛い話じゃもん。この国の歴史を考えれば――」
ドォン!
突如、轟音が響き渡った。
何事かと思っていると、兵士の一人が慌てて駆けつけた。
「ネプチューン様、やられました!! 海王類に門を噛み砕かれ……」
「ええ!? 大人しい海王類が!? ありえん…」
「当たった……」
予言が見事的中したことに、おでんは呆然とした。
しかも外のシャボンに穴が空いたようで、巨大なシャボンで包まれた魚人島にとっては非常事態。水圧で島が破壊されては溜まったものではないため、応急処置ですぐに塞ぐようネプチューンは命じた。
結局大ごとになってしまったが、海王類の仕業であったためにロジャーは「見ろ! おれ達じゃねェっ!!」と怒ったのだった。
――リュウグウ王国「海の森」にて。
「最近は国中があの子の予言に振り回されてる」
腕を組みながら、溜め息交じりにボヤくネプチューン。
リュウグウ王国は、アオザメの人魚であるシャーリーという三歳の少女の予言に手を焼いているという。先代国王がお亡くなりになった日も、金魚の人魚であるオトヒメの政治デモも的中してみせており、国民達は興味津々だという。
ネプチューンは当初こそ懐疑的だったが、百発百中の的中率には信じざるを得なくなり、自分も気になって仕方がないという。
「お前の身の上話を聞きに来たんじゃねェよ、ネプチューン」
「おお、そうだったな!!」
そうこうしている内に、〝
「どうだ? おでん」
「2つあって大収穫かと思ったが、片方はさして重要じゃねェな。ジョイボーイって奴からの謝罪文だ」
「何と、本当にこの文字が読めるとは!!」
(ジョイボーイ……?)
片方はどうやら、古代の人物からの謝罪文だという。
数百年前の人物からの言葉が書かれているのは、文化的な価値は非常に高いが、クロエとしてはどうでもよい話だった。
「それより海王類を動かす兵器がここにないか?」
「兵器だと?」
ロジャーはネプチューンに、空島の黄金の大鐘楼に埋められた〝
するとそれを聞いたネプチューンは、海の森へ向かう直前にシャーリーが「海王類が暴れるのは人魚姫が生まれるのを待ってるから」という予言をしていたことを思い出し、口を開いた。
「この国には数百年に一度、
「ポセイドンの正体は人魚か……だが所詮は予言だろう? 仮にその能力を持って生まれても、宝の持ち腐れもある」
「全くその通りじゃもん。たとえ覚醒しても〝力〟は使い方次第……その人魚が心優しければ、恐れるような事態は起きないのじゃもん」
クロエの言葉に、ネプチューンも同意する。
それならばと、ロジャー達はリュウグウ王国へと戻り、件の予言少女の元へと向かった。
「おい、シャーリー。人魚姫はいつ生まれそうだ?」
「10こ」
ロジャーは優しげな顔で尋ねると、シャーリーは両手を広げて答えた。
今から大よそ10年後に、例の人魚姫は生まれるそうだ。
「10年後のようだ……ロジャー、貴様そんなものに興味を示すとは見損なったぞ!!」
「ネプチューン、おれ達が欲しいのはそれを〝兵器〟と名付けた奴らがこの世に遺した莫大な〝お宝〟だ!!」
「わははは、安心したか? いつか生まれるお前のモジャモジャした娘を奪いに来やしねェよ!!」
「モジャモジャせんわ!!!」
*
魚人島を出発し、新世界へ進出するロジャー。
いつも通り〝ビンクスの酒〟を歌いながら航海していると――
「船長!! 遭難者だ!!」
「何?」
シャンクスの声に、ロジャーが反応した。
海を見て見ると、大量の漂流物と共に長身の女性が丸太に掴まりながら流されていた。
船員達が連携して引き上げ、クロッカスが聴診器を当てて容体を見る。
「どうだ? クロッカス」
「……フッ……気を失っているだけだ、命に別状はないし、体調も問題ない」
安心した様子で返答するクロッカスに、ロジャーは「そうか」と短く言って笑う。
「この新世界の海で遭難して、五体満足でいるとは……余程の強運らしい」
「漂流物から考えると、サイクロンにでも巻き込まれたのかもしれんな」
「少なくとも、見てくれから海軍じゃねェよな」
遭難者はレイリー達の注目を浴びる。
頭に巻いたバンダナ、炎の模様をあしらったコート、右頬の切り傷、腰布に差した片手用ライフルと拳銃……海兵ではなく、ルーキーとして名を馳せたばかりの海賊か、あるいは一海賊団の船員と考えるのが妥当だろう。
「……ん……」
『!!』
すると、遭難者が意識を取り戻した。
女性は目を瞬かせると、意識がはっきりしてきたのか、ゆっくりと顔を上げた。
「大丈夫か? 海を漂流してたんだ、覚えてるか?」
「ん……うん、わかってる」
女性はへにゃりと破顔した。
「助けてくれて、どうもありがとう。――ん?」
女性はロジャーを視界に捉えると、目をガン開きにさせて驚いた。
「……ま、まさかあなた、ゴールド・ロジャー!?」
「
「あ、ゴメンなさい…………」
「バカ、委縮させるな!! ――すまないな、お嬢さん」
ロジャーを窘めたレイリーは、一杯の水を渡す。
女性はグビグビと一気飲みすると、「プハーッ!」と豪快に飲み干した。
「お嬢さん、どうする? 次の島まで送っていくか?」
「それまで居ていいのなら……」
「構わねェよ。何ならしっかりくつろいでけ」
ニカッと笑うロジャーに、遭難者は「お言葉に甘えて」と返した。
「それにしてもおめェ、何で遭難してたんだ?」
「賞金首になった友人を探しに、ちょうど襲ってきた海賊船を乗っ取ったんだけど……時化に遭っちゃって」
「わははは!! 何だ、中々やるじゃねェか!!」
遭難者は単身で海賊団を壊滅させ、その船で捜索へ旅立ったのだという。
見かけによらず豪胆で腕も立つようだ。
遭難者の言葉に、おでんも「根性あるな……」と舌を巻いた。
「じゃあ、友人って誰だ?」
「それは……」
遭難者が、友人の名を言おうとした時だった。
部屋の扉を開け、クロエが姿を現した。
「おい、ロジャー。今度は何を拾った?」
「おお、クロエ!! ちょうどいいトコに来たな、遭難者だ」
「遭難者?」
「海賊船は女が多くねェからな、お前がいりゃあこいつも安心だろ」
ロジャーの言葉に、クロエは「そうか」と素っ気なく返し、遭難者の女に目を向けた。
瞬間、クロエは目を大きく見開いて携えていた刀を落とし、遭難者の女もビシリと固まった。
様子のおかしい二人を怪訝そうに見つめていると、クロエが口を開いた。
「エ、エマか……!?」
『は?』
「や、やっぱりクロエだ!!! 久しぶり~~~~~!!!」
エマと呼ばれた遭難者は、涙目でクロエに抱き着き、彼女の胸に思いっ切り顔を埋めた。
クロエも表情を綻ばせ、「まさか
その意味を瞬時に理解した一同を代表するように、ロジャーが汗を垂らしながら質問した。
「ちょっと待て、クロエ!! まさかこいつ……」
「ああ……前世の親友だ」
『――ええ~~~~~~~~~~っ!?』
その言葉に、ロジャー海賊団は度肝を抜かれた。
クロエとの再会を喜び合った後、エマは再びロジャー達に向き合った。
「改めて……私は
遭難者――エマ・グラニュエールはクロエの手をつなぎながら自己紹介する。
クロエは非常に鬱陶しそうな表情を浮かべているが、満更ではないのか、それとも友との再会は純粋に嬉しいのか、振り解こうとはしなかった。
すると、エマの本名を聞いたレイリーが顎のひげを弄りながら思い出したように呟いた。
「もしやお嬢さん、〝魔弾のエマ〟か?」
「〝魔弾のエマ〟?」
レイリー曰く。
この海で名を馳せる腕利きのガンマンは数多くいるが、その中でも〝魔弾のエマ〟の腕前は相当なモノらしく、その命中精度の高さゆえに海賊も海兵も一目置いている……という「噂」を耳にしたことがあるという。
レイリーはロジャーを疑うわけではないが、〝魔弾のエマ〟は本名と性別以外の情報が広く知られてないからか、警戒はしていた。ロジャーの首を狙う者は無数におり、賞金稼ぎなのかどうかすらも曖昧な存在となれば、堅気に手は出さない点を突いて討ち取りに行く可能性もゼロではないからだ。
だが、当の本人を目の当たりにしたレイリーは、杞憂だったと語った。百聞は一見に如かずである。
「あ、あのォ……これも何かの縁だから、仲間になってもいいかな!? 雑巾がけでも何でもするから!!」
「おう、いいぞ」
「即決!? ちょっと疑った方がよくない……?」
クロエと一緒に居たいからと頭を下げたエマだったが、ロジャーはあっさり承諾。
あまりの器のデカさに心配になるが、クロエは「いつものことだ」とバッサリ切り捨てた。
「クロエ。てめェの顔馴染みってんなら、相応に強いんだろうな?」
「バレット、多分期待しない方がいいぞ……どの道、あとでビシバシ鍛えてやるさ。それに私としても、共にいてくれた方が心強い」
通常運転の無愛想な顔で、エマに視線を向けるクロエ。
鬼の女中の言葉と眼差しにノックアウトしたエマは、パッと顔を明るくさせてクロエに抱き着いた。
「クロエ~~~!! もう大好き!! 結婚して!!」
「断る。男になっても断る」
「クロエ、前世より当たりキツくなってない!?」
『ギャハハハハハハッ!!』
クロエとエマの温度差の激しいやり取りに、ロジャー達は大笑いした。
だが、そんな二人の様子を快く思わない者もいた。
クロエの今世の弟分――シャンクスとバギーだった。
「……」
「……ケッ」
ムスッとした顔で不貞腐れる二人。
彼らにとって、クロエは少し年上の仲間であると同時に、強く慕っている姉貴分だ。彼女がいなければ強くはなれなかったし、バレットとの距離も近くなれなかった。当然ロジャーとレイリーには人一倍尊敬し憧れているが、クロエは本当に実の姉のように想っている。
そんな彼女を、いくら前世の親友だったとはいえ、いきなり初対面の人間に楽しく構われてもらうのは、どうにも気に食わないのだ。
それを見ていたロジャーは、二人に「
その意図を察したかどうかは不明だが、シャンクスとバギーは肩をいからせながらエマの前に立つ。
「おい、エマ!! クロエの友人だからって調子に乗るなよ!? 船長達やクロエが認めても、おれ達はそう簡単に認めねェからな!!」
腕を組み、鼻息を荒くするシャンクスとバギー。
態度は一人前な海賊見習い二人の言葉に、エマは驚きながらクロエに顔を向けた。
「え……まさかクロエ、ショタコ――」
「目覚めとらんわ、痴れ者め」
「イダダダダダダダ!! ギブギブギブギブ!! 頭が割れるゥゥゥ!!!」
額に青筋を浮かべながら、アイアンクローでエマを持ち上げるクロエ。
先程の失言が相当頭に来ているようだ。
「フフッ……
「それ思いっきり貶めてるよねェ!? あと
「わはははは!! まあ愉快な女ってのァよくわかった!! 歓迎するぜ、エマ!!」
ロジャーは豪快に笑うと、宴の準備をするように号令をかけたのだった。
はい、という訳で二人目のオリキャラ、エマ・グラニュエール(吉池恵麻)ちゃんでした!
詳しいプロフィールは、クロエと一緒に公開します。
時期的には、ロジャー処刑後以降かな……。
武器は銃です。ワンピースの世界では銃は何かと不遇なので。
小ネタですけど、オリキャラのエマ・グラニュエールの名前は、16世紀後半のアイルランドで名を馳せた女海賊グレイス・オマリーの別名から引用してます。クロエも名前のモデルがメアリ・リードなので、「もう一人出すなら女海賊が元ネタじゃないと」と思いまして。
ちなみに、エマが銃の使い手であるのは、メアリ・リードの親友であるアン・ボニーが銃の名手であったという逸話があるからです。