〝鬼の女中〟と呼ばれる女   作:悪魔さん

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最新話立ち読みしたんですけど。
ステューシー、あんたマジか……!!
クローン人間って聞くと、どうしてもマモーが出てきちゃうんですよね。マモー系キャラは勘弁してほしいッス。(笑)


第25話〝最後の島へ〟

 〝魔弾のエマ〟が加入して、さらに月日が流れたある日。

 ニュース・クーから新聞を受け取ったシャンクスは、驚きの声を上げた。

「えーーーーーっ!?」

「おい、うっせェぞシャンクス!!」

「いや、バギー見ろってこれ!! 手配書!!」

「あ? ……んなーーーーーっ!?」

 シャンクスから手配書を受け取ったバギーは、体がバラバラになるくらいに驚いた。

 騒ぎを聞きつけたのか、ロジャー達もゾロゾロと集まり始めた。

「どうした、おめェら」

「ロジャー船長!! 新しく発行された手配書の金額、スゴいことになってるんだ!!」

 シャンクスはロジャー達に三枚の手配書を見せた。

 それは、エマとバレットとクロエの三人の手配書だ。

「エマの懸賞金は……3億2000万ベリーか」

「えっ!? それ初頭手配だよね!?」

「巷で有名な狙撃手がロジャー海賊団の船員(クルー)になったんだ、当たり前だろう」

 アワアワするエマに、冷静なツッコミをかますクロエ。

 そう、懸賞金の額は何も当人の絶対的な強さだけで上がる訳ではない。上司の懸賞金が高い場合や世界的な影響力が強い組織は、幹部だけじゃなく下っ端すら軒並み上昇するケースも多く、本人が非戦闘員であっても懸賞金を懸けられることもある。

 エマの場合、海賊や海兵から注目を浴びている凄腕の狙撃手という事実に加え、規格外の猛者が集うロジャー海賊団に加入したことで、初頭手配ながら億を超えたのだろう。

「エマも大概だけど、クロエとバレットはもっとスゲェぞ!?」

 バギーはバレットとクロエの手配書を見せた。

 顔写真と名前の下に書かれた金額をよく見ると……。

 

 ――〝鬼の跡目〟ダグラス・バレット 19億8100万ベリー

 

 ――〝鬼の女中〟クロエ・D・リード 20億6000万ベリー

 

「おい、お前らいつの間にか跳ね上がってたのか!?」

「この間のシャボンディの件だな、絶対……」

「クロエなんか20億だぞ!?」

「私なんかその辺の海賊程度じゃん……」

 さすが「ロジャー海賊団の双鬼」と称されるだけあり、バレットとクロエは破格だった。

 懸賞金の額は3億を超えると簡単には上がらないと言われており、10億以上の懸賞金をかけられている者達は世界政府の最高戦力である海軍大将すら敵に回しても渡り合えるとされ、誰もが震え上がる大物達が該当する「怪物」なのだ。

 ましてや20億を超える賞金首になると、動向次第で世界が様々な形に揺れ動く程の影響力が出て、海軍や世界政府からも最重要警戒対象として扱われる。おそらくクロエの懸賞金額は、ロジャーに迫る戦闘力と天竜人を無慈悲に殺す攻撃的な性格という観点から導き出されたのだろう。

「……20億とかって、宝くじか何かだよ……」

「本当に私の首は安くなかったな」

 少し盛ってるな、と呑気に自分の手配書と睨めっこするクロエ。

 返り血を浴び、敵を射殺さんばかりの冷徹な眼光は、〝神殺し〟と呼ばれるに相応しい。こんな極悪人みたいな顔つきの瞬間がよく撮れたものだ。

「っていうか、クロエ怖いぜよ!!」

「おでん様やロジャーの顔写真より凶悪そうだとは……」

「これ絶対()った後だな」

「わははは!! 〝鬼の女中〟にピッタリな写真じゃねェか」

 一味の手配書の中で一番凶悪そうな面構えに、ドン引きする者もいれば、ロジャーのように大笑いする者もいる。

 こうやって印象操作するのだろう。世界政府は確信犯だ。

「まあ、別に首の高い安いはどうでもいい。それはそうと、バレット」

「ああ?」

 クロエはバレットに目を向けると、好戦的に微笑んだ。

「随分と溜まってるようだな。……付き合おうか?」

「……フッ」

「……え? クロエまさか!?」

 あんなに色恋沙汰と縁が無かったのに!! と頭を抱えるエマ。

 ロジャー達は「決闘だろどうせ」と呆れたように笑うが、そこへ待ったをかけたのがレイリーだ。

「そんなモン後にしろ! もうそろそろワノ国だぞ!」

 レイリーはクロエとバレットを怒鳴りつけた。

 この船の次の目的地は、おでんの故郷・ワノ国。そこに眠るロード歴史の本文(ポーネグリフ)の写しを入手するのだが、いくら豪快なおでんとてワノ国で暴れられるのは困るだろう。二人が暴れた拍子で碑石そのものが紛失したなど、洒落にならない。

 ゆえにレイリーは、バレットの戦闘欲の発散に付き合うクロエには感謝しつつも、副船長として諫めたが……。

「……だったら、空中でやりゃあ文句ねェな?」

「そうだな。最近空中戦はやってないからな」

『は?』

 ――何言ってんだこいつら?

 そう思った瞬間、二人の姿は一瞬で消えた。

「ハァァアアッ!!」

「ぬんっ!!」

 覇王色を纏った刀と拳が激突し、衝撃が走る。

 一同が空を見上げると、宙を蹴りながらクロエとバレットが空中戦を繰り広げているではないか。

「ハァッ!?」

「何で空を飛んでんだァ!?」

「〝月歩(ゲッポウ)〟……!! 使えて当然か」

 おでん一行が口をあんぐりと開ける中、ロジャーは不敵に笑って呟いた。

 人体を武器に匹敵させる「六式」は、何も海兵やサイファーポールの専売特許ではない。海賊達の中にも独学で習得している者もおり、その中でも〝月歩〟は使えること自体が珍しくない程に体得者が多い。かつて世界を震撼させた大海賊バーンディ・ワールドも、独学で覚えて戦っていた。

 クロエは幼少期、〝錐のチンジャオ〟が頭目を務める八宝水軍で修行していた。おそらく、その修行の過程で独学で覚えたのだろう。

「くたばれ!!!」

 バレットは武装硬化した拳で、クロエの顔を容赦なくぶん殴った。強烈な一撃を食らったクロエは、錐揉み回転しながら海面に落下。大きな水柱を立てて海に沈んだ。

 かと思えば、再び大きな水柱が立ち、その中からクロエが飛び出てバレットに迫る。船を傷物にしないよう、彼女は飛ぶ斬撃を封じつつバレットと同格以上に渡り合う。

 しかしそれが何分と続けば、互いに膠着した現状の打破を狙うところ。クロエは距離を取ると、覇王色で自らの気配の制御を始め、己の気配を完全に殺した。覇王色の高度技能の〝見聞殺し〟だ。

(気配が消えやがった……!!)

「行くぞ、バレット。覇気は全てを凌駕する」

 クロエは〝見聞殺し〟を発動しながら〝月歩〟で宙を駆ける。

 気配を完全に殺され、未来視すら封じた状態での空中戦は、流石のバレットも動揺を隠せない。見聞色は相手が気配を消したりカモフラージュしても、感情を読み取ることができればそこから未来視ができるが、〝見聞殺し〟は()()()()()()()()()()()()()()()()()からか、感情を読み取ることも不可能なのだろう。

 これが〝見聞殺し〟か……!! バレットは苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべた時、視界の端に影が映った。

 バレットは躊躇いなく武装硬化した左腕で殴った――が、手応えが全くなかった。

(刀!?)

 何と、視界に映ったのはクロエの姿ではなく、クロエの化血(あいとう)

 剣術を得意とする者が、ここへ来て得物を手放すとは愚の骨頂。

 百戦錬磨のクロエなら、何か仕掛けるはずだ――バレットは見聞色の先読みが困難な状況下で、必死にクロエを探すが……。

「〝降伏三界〟!!」

 

 ズドォン!!

 

「ぐあっ!!」

 真下から顎を目掛けて放たれた飛ぶ打撃に、バレットはもんどりうった。〝見聞殺し〟で気配を殺しながら〝月歩〟で真下に移動し、腰に差したままの鞘を抜いて一発かましたのだ。

 顎から脳天まで到達する衝撃に、バレットは口や鼻から血を吹いて甲板に落下した。頭から血を流しつつもどうにか体勢を立て直すが、その時には赤い刃が喉元に突きつけられていた。

「……チッ……」

「覇気の練度は私の方がまだまだ上だな」

 舌打ちしながら目を逸らすバレットに、クロエは化血を鞘に収めた。

 レイリーにどやされるのは面倒だと互いに判断したため、今回の組手はかなり短いやり取りだった。しかし、ロジャー海賊団の双鬼と恐れられる怪物二人のドツキ合いは、見る者を圧倒する大舞台だった。

 レイリーとクロッカスは「また傷だらけに……」と頭を抱えたが、シャンクスやバギー、おでん達は最強である船長(ロジャー)に迫る強さを有する仏頂面コンビの戦いぶりを称えた。

「強くなったな、二人共。今度はおれも交ぜてくれ!」

「そうだな、おれ達も負けられねェ!」

「止める方の立場だろうが、お前ら……」

 半ギレになるレイリーに、ロジャーは「固いこと言うな!!」と大笑いした。

 

 

           *

 

 

 程なくして。

 荒れ狂う海を進むオーロ・ジャクソン号。

 選ぶ潮の流れを間違えて座礁したり大破した船の残骸を一瞥したおでんは、「懐かしい海だ」と表情を綻ばせた。

「まさかおでんの故郷にロード歴史の本文(ポーネグリフ)が眠っていやがるとはな。最後まであと一歩だ」

「最後の島……そこに眠る莫大な財宝、楽しみだなロジャー」

 渦潮を避けながら、慎重かつ最速でワノ国を目指す。

 ロジャーは気合を入れろと船員達に檄を飛ばすと、シャンクスが慌てて駆けつけた。

「おでんさん!! 大変だ、トキさんが倒れた!!」

「何ィ!!?」

「今、クロエが運んでクロッカスさんが……」

 愛妻の急変におでんは血相を変え、すぐに医務室へと飛び込んだ。

 医務室には、発熱して横になっているトキと診断していたクロッカス、第一発見者のクロエがエマと一緒にモモの助と日和をあやしていた。

「トキ! 大丈夫だ! おれがついてる」

 おでんの呼びかけに、トキは苦しそうにも笑みを溢す。

 だが、無理矢理笑っているのは明白だ。

「トキはお前について世界を回っていたが、本来の目的地はワノ国。そのワノ国を目前に緊張の糸が切れて、長旅の疲労に襲われたのだ」

「こっから先の航海、トキは行けるのか?」

「続ければ命の保証はできん。ワノ国で船を降り、旅は終わりとするべきだ」

 海一番の名医と評されるクロッカスの判断に、おでんは何も言えなくなる。

 本当なら、もっとトキ達と冒険をしたいが、身に勝る宝なしだ。トキの命を考えれば、冒険はここで終わりにするのが最善だ。

 決断を迫られたおでんに、従者のイヌアラシとネコマムシが告げた。

「おでん様、こうなればモモの助様と日和様も、トキ様と一緒にワノ国に降ろすべきでしょう」

 イヌアラシの言葉に、おでんは振り向いた。

「錦えもんらは、トキ様の事をよう知らんき。おれとイヌアラシがお供するぜよ!」

「お三方も初めての土地で何かと心細いでしょう。トキ様のことは我々にお任せください」

「いや、勿論おれも……!」

 おでんも、致し方ないが自分も船を降りると言った時だった。

「行って!! おでんさん!!」

「何を言う! 無理をするな!」

「――「窮屈でござる」……あの言葉は、冒険にかけるあなたの思いはその程度だったのですか?」

 愛する妻の真剣な眼差しに射抜かれ、おでんは息を呑んだ。

「こんなことで止まるようなあなたなら、私は離縁を申し込みます」

「っ……!」

 その光景を眺めていたクロエとエマは、複雑な表情を浮かべた。

「……クロエ、どっちが正しいかな?」

「普通に考えれば、おでんも降りるべきだ。おでんは治世者だぞ? 国内情勢がどうなってるのかも知らない以上、早く手を打たねば取り返しがつかんぞ」

「トキさんの気持ちも、スゴいわかるんだよなァ……前世、結婚しなかったけど」

「……そうだな」

 

 

 ワノ国に上陸したロジャー海賊団は、おでんの家臣達に迎えられた。

「お久しゅうございます!! おでん様!!」

「ああ……紹介しよう、嫁と子供だ」

『えええっ!! お変わりあった!!』

 家臣達は驚きつつも、羨ましそうに見つめたり、朗らかな笑みを溢して頭を垂れたり、好意的な反応だ。

 それを甲板から眺めていたロジャー達――バレット以外――は、おでんがいかに慕われているかを改めて知り、ニヤニヤと笑いながら見守っている。

 ただ、一味の女性陣……転生者二人組は違った。

「……クロエ」

「……ああ」

 和やかな周囲に反し、クロエとエマだけは緊張感のある雰囲気を醸し出していた。

 二人共、剣呑な眼差しで顔つきもか険しい。冷静さを装っているが、明らかに怒気が露わになっており、かなり気まずい。いつもは構ってほしいと近寄ったり抱き着いたりするシャンクスとバギーも、二人の気迫に気圧されて生唾を飲み込んだ。

 そんな二人が見つめる先には、煙突から黒煙を吐く工場らしき建物。おでんの口から聞いたワノ国は、緑豊かで荒廃している風景とは無縁だった。しかし現実は、明らかに土壌汚染や水質汚染が進んでそうな雰囲気が立ち込めている。

 この国には、おそらく悪政を敷くバカ殿がいて、そのバックには圧倒的な力を持つ何者かがいるのだろう。それこそ、おでん並みかそれ以上の猛者が。

「……元日本人として、()()は放っておけないね」

「……そうだな」

 すると、そんな二人が気になったのか、ロジャーが声をかけた。

「……随分とお怒りじゃねェか」

「……まあ、そうだな」

「こればかりは、無縁とは言えないからね」

 殺気立つ二人に、ロジャーはふと思い出した。

「そういやあ、おめェらの前世の故郷はニッポンって国だったな……ワノ国に似てるのか?」

「むしろ私達が生きた日本の大昔の姿がワノ国だよね」

「……面影は感じる」

 ロジャーは二人の言葉に、短く「そうか」と返した。

 その後、おでんは「もうしばらく出かけるぞ」と伝え、ワノ国にあった歴史の本文(ポーネグリフ)を手早く写し取りオーロ・ジャクソン号へと戻った。

 四年ぶりにしてわずか数時間の帰郷に、家臣達は「この野郎」「ろくでなし」と散々に罵倒し、ロジャー達もイジり倒したのだった。

 

 

           *

 

 

 次に向かったのは、ネコマムシとイヌアラシの生まれ故郷・モコモ公国。

 国を治めるひつギスカン公爵に謁見し、ワノ国で船を降りたイヌアラシとネコマムシからの手紙を渡すと、涙声で口を開いた。

「生きておったか……あの悪ガキ共……当時は大変な騒ぎになったものだ」

 ひつギスカンはロジャー達に二人の手紙を届けてくれたことに感謝を述べ、クジラのような形をした巨大樹がそびえる〝くじらの森〟へと案内した。

 途中、ロジャーとおでんが「巨大な何かにずっと見られてる様な気がする」と落ち着かない様子だったが、特に体調に障ることなく頂上まで到達し、その先の隠し扉の奥の階段を下っていくと、例の碑石が鎮座していた。

「あった!! 最後の〝ロード歴史の本文(ポーネグリフ)〟!!」

 巨大樹の中に安置された〝ロード歴史の本文(ポーネグリフ)〟に、ロジャーは歓喜の余り両手を上げた。

 その奥には、大きな円の中に鶴、鶴のお腹のあたりに大きな円と小さな円が八つある家紋のようなマークが刻まれている。

「光月家の家紋! ミンク族と兄弟分ってのは本当なんだな!」

 おでんも、まさか光月家が外界と繋がりを持っていたとは予想だにしなかったようで、驚きを隠せないでいる。

「……まあ、別に不自然ではないな」

「歴史の授業で実際に先生にツッコんだしねー。貿易してんじゃんって」

 クロエとエマは、おでんの反応を楽しむように言葉を交わす。

 とにかく、これでついに全ての〝ロード歴史の本文(ポーネグリフ)〟が揃った。あとはそれぞれの〝ロード歴史の本文(ポーネグリフ)〟に記された地点を把握し、地図上でその四つの地点を結べば、最後の島が浮かび上がる。

「行くぞ野郎共!!! 最後の島へ!!!」

『おおーーーっ!!!』

 いくつかの〝真の歴史の本文(リオ・ポーネグリフ)〟と全ての〝ロード歴史の本文(ポーネグリフ)〟が手元に揃い、ロジャーは笑みを深めた。

 ロジャー海賊団の冒険の終着点が迫るのを感じ取ったクロエは、嬉しくもどこか寂しそうな笑みを浮かべるのだった。




次回、ついに海賊王誕生!
ちなみにクロエはラフテルに行きません。
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