〝鬼の女中〟と呼ばれる女   作:悪魔さん

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今回はクロエ海賊団の古参メンバーが登場します。
話の進み具合に合わせて少しずつメンバーを増やしますが、とりあえずはこれで固定です。

作者は、モブを強化したいのです。

現時点の時系列は、大海賊時代開幕から一年が経過したあたりです。


第30話〝ワノ国とバカ殿と龍〟

 大海賊〝赤の伯爵〟を仲間にしたクロエは、その後も仲間を集めた。

 

 二本の刀を逆手持ちにして戦う、二刀流剣士のドーマ。

 長い金髪と長いアゴを持ち、帯電した剣を扱うマクガイ。

 全身緑の服を頭まで着た、瓶底眼鏡のような目と極度のすきっ歯が目立つデラクアヒ。

 ドクロマーク付きの三角帽を被った、身長270センチのクロエも見上げる大男の(アー)(オー)

 

 彼らは皆、クロエの強さと度量に惹かれた者達でもある。圧倒的な戦闘力と器の大きさに惚れこみ、志願してオーロ・ジャクソン号に乗ったのだ。

 この大海賊時代の頂点は、ロジャー亡き今の世界で最強の大海賊と謳われる〝白ひげ〟だが、クロエも〝神殺し〟の悪名高さも相まって、ロジャー海賊団解散後に結成してわずか二年で世界屈指の女海賊となった。

 

 そして、今日も徒党を組んで攻めてきた海賊船三隻を返り討ちにし、宝箱や金品を奪いつくした。

「スゲェ数のお宝だど!!」

「大収穫じゃない!!」

「これで当分食っていけるぞォ!!」

 イェーイ!! と肩を組んだり万歳をして盛り上がるエマ達。

 クロエとレッドは落ち着き払っているが、順風満帆の海賊稼業に満足気な笑みを浮かべている。

「さてと……盛り上がったところで、次の目的地の説明をする」

『!!』

 クロエは樽のイスに腰掛けると、次の目的地の説明をした。

「次に行くところは、私とエマが必ず行く必要がある場所だ」

「ほう……一体どこだ?」

「〝ワノ国〟」

 クロエが口にした国の名前に、デラクアヒは目を見開いた。

「聞いたことがあるど!! 世界政府未加盟国で、侍と呼ばれる戦士が強すぎて世界政府すら立ち入れない強国だど!!」

「あの鎖国国家の? 船長と副船長は一体どういう関係が?」

 髭を弄りながら尋ねるマクガイに、エマが答えた。

「私とクロエが、ロジャー海賊団だってことは知ってるでしょ?」

「ああ、酒の席で聞いた。二人は海賊王の一団の若き戦力だと」

「それにしても、あの時の副船長の絡み酒は酷かった」

『うんうん』

 ラカムの罵倒に全員が首を縦に振ったのを見て、エマは「うるさいっ!!」と銃口を向けて一喝。

 全員が目を逸らしたところで、咳払いして話を続ける。

「ゴホン! ……そのロジャー海賊団の時の仲間だった光月おでんって人が、ワノ国の統治者なの」

「光月おでん……ニューゲートの船に乗ってたと我は聞いたが?」

「その光月おでんで正解だ。ロジャーがニューゲートに土下座してまでスカウトした」

『海賊王が土下座……!!?』

 クロエの口から語られる海賊王の秘話に、息を呑む一同。

「ゴールド・ロジャーが白ひげに頭を下げたのか……!?」

「だが海賊にも人間関係はある。ロジャーとニューゲートはライバルであったが、同時に親交も深かった。我としては別に不思議ではないな」

「海賊王世代はやっぱ違うな……」

 ドーマはしみじみと呟いた。

 レッドフィールドもロジャーと面識があった身。大海賊同士の付き合いもあるというものだ。

「そのワノ国に、一体何の用が? 顔馴染みとの再会ですかな?」

「それもあるが、一番はあの国の異変を知るためだ」

 クロエはワノ国の現状を説明した。

 ワノ国はおでんの言葉だと、自由な商売で賑わう緑豊かな国家らしいが、ロジャー海賊団時代に訪れた際は、土壌汚染や水質汚染が進んで荒廃していた。いわゆる「ディストピア」という有様だった。

 クロエとエマは、今のワノ国には悪政を敷く暴君と圧倒的な力を持つ何者かが手を組んでいると踏んでおり、ロジャー海賊団解散後に必ず立ち寄って倒そうと決めていた。

「ニューゲートは弟分のおでんにそんなマネは絶対しないし、シキはインペルダウンにいて一味の統率ができない状態。考えられる黒幕はビッグ・マムかもな……」

「いや、船長。その黒幕は〝百獣のカイドウ〟だと思うぞ」

 クロエの予想とは違う名前を口にしたのは、(アー)(オー)だった。

 彼曰く、ここ最近カイドウが率いる「百獣海賊団」が勢力を一気に膨らませ、保有する大砲や銃火器の性能が飛躍的に高まっているという噂があるという。ワノ国は高い加工技術を持つ国としても知られているので、その情報が真実ならば黒幕はカイドウの可能性が高い……という事だ。

 百獣海賊団は、圧倒的な強さを誇るカイドウに惚れ込んだ者達が集った集団。下っ端でも並の海賊とは比べ物にならない強さであり、幹部格は凄まじい強さを有する動物(ゾオン)系能力者が脇を固めているとされている。

「成程……カイドウは手強そうだな」

()()()()()()()()()おれ達でどうにかなるだろうが、侍達がどう出るかだな……」

 ラカムが不安視しているのは、ワノ国の侍達だ。

 ワノ国の侍は、世界政府でも警戒する程の戦士だ。彼らが味方に付けばいいが、弱みを握られたり心を折られたりして、百獣海賊団に味方されると厄介だ。それにワノ国を支配する将軍も、あらゆる手段を使って自分達を排除しに来るに違いない。

「ってことは、百獣海賊団とそれに従属する侍達との全面戦争って考えるべきか?」

「それだけではないぞ、ドーマ。将軍直属の配下にも能力者がいる可能性がある。そいつらの制圧も考えねば」

「兵力差ばかりは予想がつかねェ。こうして向かっていても、その時には倍以上に膨らんでるかもしれねェしな」

 ドーマとマクガイ、ラカムが意見を出し合う。

 クロエの方針上、一味は統率がしっかり取れるように少数精鋭と決めている。覇気の練度を考えると、クロエはカイドウと正面でやり合えるが、脇を固める幹部格はそう簡単にはいかない。

 そう考えると、クロエ海賊団だけではなく、おでん達と連合を組んで百獣海賊団を追い出した方が効率も都合もいい。

「……まあ、とりあえずはここまでだ。ワノ国に()()()入国したら続きをしよう」

「無事に? そんな危険なのか?」

「ああ。ワノ国は滝を登らないと入れないからな」

『……え゛ーーーーーっ!?』

 レッドフィールドを除いた一味の面子の叫びが木霊したのだった。

 

 

           *

 

 

 クロエとエマのロジャー海賊団時代の航海の記憶を頼りに、巨大な鯉に引っ張ってもらいながら一行はワノ国への入国を果たした。

 船がワノ国の者達に見つからないよう、近場の岩の洞窟に隠し、砂浜から山中の竹林を抜けると……。

「これがワノ国だと? 我が昔聞いた話とは違うではないか」

「そうなのか?」

 レッドフィールドは複雑な表情で、眼前に広がる荒れ果てた大地を見つめていた。

 彼がルーキー時代に聞いた話だと、ワノ国は他所者を寄せ付けない鎖国国家で、世界政府非加盟国ながら世界貴族の介入すらもできない国力を有しているとの事だ。国力は軍事力だけではなく経済力や技術力も含み、海軍ですら真面に近寄れないのだから、相当な富と武力を持っていると考えていたのだ。

 だが、蓋を開けてみれば噂とは程遠い荒廃ぶり。聞いて極楽見て地獄なんて言葉が生易しく感じる程だ。

「いくら海外との情報のやり取りも行われていないとはいえ、ここまで違いがあるのはおかしい。政変やクーデター、あるいは侵略を受けた可能性がある。……いや、それら全てが畳み掛けたのだろう」

 長年の経験で培った洞察力から、レッドフィールドはワノ国が危険な状態に陥っていると読んだ。その読みはクロエとエマも同様で、想像以上の悪環境に戸惑っていた。

「……確かおでんさんって、九里の大名だったよね?」

「ここはあえて、首都へ向かおう。おでんは将軍の跡目だ、政治の中心にいる可能性が高い」

 クロエは、おでんの立場がどうなってるかわからないが、ひとまず首都に行けば事情が分かるのではと推測する。

「あー……じゃあ船番一応おれがやっとくわ」

「おれもラカムと残るど!!」

「……気をつけてな」

 ラカムとデラクアヒが船番を担当すると言い、その言葉に甘えてクロエ達はワノ国の首都――花の都を目指した。

 そこでかつての仲間である光月おでんと出会うのだが、クロエにとって()()()()()()最悪の再会となってしまう事になる。

 

 

           *

 

 

 数時間後、花の都。

 その大通りでは、民衆からバカ殿呼ばわりされてる光月おでんが、大海賊クロエによって半殺しにされていた。

「貴様は何をしてるんだ……!!」

「ず、ずびばぜん……でじだ……!!」

 公衆の前でおでんをボコボコにするクロエは、ドスの利いた声で質した。

 烈火の如く怒る〝鬼の女中〟に、レッドフィールドは「あれでは君主は務まらんな」とボヤき、エマ達は顔を引き攣らせた。ああなった以上、誰も手に負えない。

「久しぶりに顔を出したら何だそのザマは? 天下無敵の光月おでんも地に堕ちたな。大通りで褌一丁で踊ってる最中に再会とは失望した」

「い、いやァ、おれもお前らが来るとはちっとも思ってなくてよォ……」

 おでんは弁明したいところだが、そう簡単に伝える訳にも行かず困り果てた。

 

 というのも、一年前におでんはこの国を支配する現将軍・黒炭オロチがカイドウと手を組み国民達を苦しめている事を知り、オロチを仕留めようとしたが、ワノ国中から誘拐した人々を見せつけられて手が出せなくなったのだ。

 オロチとしても、おでんと真っ向から戦うのは分が悪いと判断し、人攫いをやめる為にある取引をした。その内容は「おでんが週に一度花の都で踊る度に、誘拐された者を100人ずつ解放する」「オロチとカイドウは船を造り、5年後にその船でワノ国を出て行く」というもので、卑劣極まりない脅迫だった。

 だがおでんはこれを承諾した。オロチが将軍になった理由は「ワノ国を滅ぼす為」であり、国を二分した戦争に持ち込んで勝っても国力の疲弊は明白だからだ。オロチとカイドウを倒せたは良いが、それと引き換えにワノ国もまた滅んでいたとなれば本末転倒だからだ。

 おでんは決断し、国民に蔑まれながらも欠かさずに踊り続け、国中を回り誘拐された人々がいないかを確認した。無駄に血を流さない為に。

 そこへ幸か不幸か訪れたのが、ワノ国に想うところがあった〝鬼の女中〟と〝魔弾〟だ。前世は元日本人だった二人は、生まれた国と酷似した場所の荒廃ぶりを無視できず、独立後は是が非でも上陸して救おうと画策していたのだ。

 

 おでんとしては、かつて同じ船に乗っていた仲間が来てくれた事はとても心強いし、事態の打破に繋がると考えていたが……。

「い、一応ここはおれの故郷なんだ…!! いくら同じ釜の飯を食った間柄とはいえ――」

「黙れ、痴れ者が」

「ヒエッ……」

 覇王色の覇気を放ちながら吐き捨てるクロエに、引き攣った声を上げるおでん。

 するとクロエは、上空から強い気配を感じ取って抜刀した。エマとレッドフィールドも感じ取ったようで、それぞれライフル銃と傘に手を伸ばす。

 数秒後、突如として空が曇り、そこから巨大な水色の東洋龍が現れた。

「龍!?」

「何だありゃあ!?」

「おいおい、聞いてねェぞ……!」

 そこらの海王類よりも大きな生物の飛来に、マクガイ達は怯み、住民達は恐れ戦いた。

 おでんは「カイドウ……!」と忌々し気に睨みつけているが、当の本人は無視してクロエを注視した。

「……ウォロロロロ……!! 〝鬼の女中〟クロエ・D・リードだな?」

「……貴様が〝百獣のカイドウ〟か」

「いかにもそうだ……!!」

 カイドウは龍の形態から元の人型に戻ると、クロエの前に地響きと共に降り立った。

 長い髭と巨大な角、左肩から腕にかけて鱗のような赤い刺青、黒いザンバラの長髪が特徴的な魔人のような風貌だ。ジャケットの腕に紫色の毛皮のマントを羽織り、その手には巨大な金棒が握られている。

「まずは挨拶代わりだ!!」

 カイドウは金棒「八斎戒」を振り下ろし、クロエは化血を下から上に向けて弧を描く様に振るって迎撃した。

 

 ドォン!!

 

 両者の覇王色が衝突し、天が割れる。

 同時に凄まじい衝撃波や赤黒い稲妻が迸り、花の都を震わせる。

「ふんっ!!」

 クロエは化血に覇気を一気に流し込み、カイドウを大きく弾いた。

 大きく仰け反ったカイドウは、数歩後退り、その隙に跳躍する。

「〝神威〟!!」

 自身の得意技――覇気を纏った飛ぶ斬撃を、カイドウに放つ。

「〝(らい)(めい)(はっ)()〟!!」

 膨大な覇気を纏わせた八斎戒を振り抜き、クロエの斬撃を跳ね返す。

 跳ね返された斬撃はクロエに向かうが、〝神凪〟を空中で行って真っ二つに両断して急接近。迫る赤い刃をカイドウは真っ向から受け止め、そのまま弾き飛ばすが、クロエは空中で受け身を取って着地する。

「ウォロロロ……! 噂以上だな……流石と言うべきか?」

「それはこっちの台詞だ」

 睨み合う両者。

 その様子を見守る者は、何もクロエ海賊団やおでん、民衆だけではない。

「何なんだあの女は!? カイドウと互角に戦えるのか!?」

 都の中心にある城の天守から、紫色の丁髷頭に王冠を被った、獅子舞を彷彿とさせる顔立ちの男が望遠鏡で覗き込んでいた。

 ワノ国を悪政で統治する、現将軍の黒炭オロチだ。

(余所者の海賊が来たという報告はあったが……よりにもよってカイドウと互角だと……!?)

「ま、間違いない……あれは〝鬼の女中〟だよ、オロチ!!」

 オロチの隣に、占い師のような姿をした老婆――黒炭ひぐらしが狼狽えた様子で叫んだ。

「お、〝鬼の女中〟……?」

「そうさ、海賊王ゴールド・ロジャーの部下だった女さね!! 今この海で最も恐れられてる海賊の一人だよ……!!」

 ひぐらしの顔から笑みが消え、代わりに戦慄が浮かび上がっている。

 怒り狂ったおでんを前にしても余裕綽々だったというのに、クロエがいると知った途端に縮こまっている。オロチはクロエがとんでもない海賊だと察し、顔を青褪めた。

 城の天守がお通夜状態に近い中、クロエは刀を肩に担ぎながらカイドウにある提案をした。

「カイドウ、私から提案がある」

「ん?」

「私はこの国に思い入れがある。だからどうにかして自由にさせたいと思ってる。だがお前らは話し合いで折れる連中ではないのも事実。だからお互いに納得のいく解決方法にしよう」

 クロエはカイドウに切っ先を向け、覇気を放ちながら言い放った。

「――この私と、ワノ国を懸けて全面戦争だ」

「!!」

『ぜっ……全面戦争!?』

 クロエの宣戦布告にカイドウは驚愕し、おでんや民衆は勿論、ドーマ達も騒然とした。

 唯一、エマだけは「そうだと思った……」と呆れた笑みを浮かべている。

「……」

「嫌なら、やめたっていいぞ?」

「……ウォロロロ……ウォロロロロロロロォ!!!」

 カイドウは都中に響き渡る程の声で爆笑した。

 その顔には嘲りや侮蔑は一切なく、高揚と歓喜に満ちている。

 あの海賊王の部下として悪名を轟かせた、伝説の〝鬼の女中〟と戦える。前々から戦ってみたかった相手が、自分との戦争を申し出ているのだから、受け入れない訳などなかった。

「そう来なくちゃあ面白くねェ!! 受けて立つぞ!!」

「なっ!? おい、カイドウ!! ここはおれの国だぞ!!」

 カイドウがクロエの申し出を承諾したことに、天守から大声で怒りを露にするオロチ。

 それが酷く癪に障ったのか、カイドウは鬼の形相で城に向いて八斎戒を振るった。

「〝金剛鏑(こんごうかぶら)〟!!」

 

 ドゴォン!!

 

「「ギャアアアアアアアッ!?」」

 カイドウは飛ぶ打撃で城を攻撃し、天守閣を吹っ飛ばした。

 協力関係だった一族を躊躇いなく攻撃した彼に、クロエは思わずきょとんとした表情を浮かべ、因縁の深いおでんですら唖然とした。

「おれにとっちゃ光月家も黒炭家も、どうでもいい話だ!!! 今のおれにとって大事なのは、クロエとの戦争だけだ!!!」

 カイドウは覇気を放ちながら、八斎戒の先端をクロエに向けて叫んだ。

「クロエ、三日後だ!!! 三日後に()(どん)で、おれとお前の全面戦争を始めようじゃねェか!!! 勝った方がワノ国を手に入れる!!!」

「兎丼……あとで場所を聞いておこう。二言はないな?」

「ウォロロロロロ……!! 勿論だ、海賊の世界にも仁義はある……!!」

 カイドウはそう言い残すと、龍に変化してどこかへと飛び去って行った。

 その姿をクロエは見送ると、愕然とする一同に向けて告げた。

「そういう訳だ。三日後にカイドウと()るからよろしく」

「おお、そうか……ってなるかァァァァァ!!」

 化血を鞘に収めたクロエに、おでんは切羽詰まった表情で迫った。

 ボコボコの顔で迫る姿は、中々に不気味だ。

「クロエ、ここはおれの国だぞ!? いたずらに戦場にされてたまるかってんだ!!」

「おでん、()()()()()()()の奴は最終的に戦いで物事を決める。たとえ無血で解決しようとしても、どの道戦争だ」

「ぐっ……」

「それにわざわざ場所まで指定してくれたんだ。戦場になる兎丼の民衆の避難ぐらい三日もあればできるだろう?」

 クロエの言葉に、おでんは何も言い返せなくなる。

 ワノ国の国民を守る為、どうにか血を流さないようにとしてたが、クロエとカイドウのやり取りで察してしまったのだ。

 何の犠牲もなく、カイドウと百獣海賊団をワノ国から追い出す事はできないのだと。

「ぬぅっ……!!」

「おでん、私はこのまま三日後にカイドウと戦う。叩くなら今しかないぞ。下手に時間を稼がれて兵力差が広がられたら手に余る」

「……止まらねェのか」

「止まったら、この国は終わる。世界政府に付け入る隙を与えない為にも、このまま突っ走った方が被害が少ない」

 クロエは、今こそが国を取り戻す最後のチャンスだと語る。

 カイドウは「光月家も黒炭家もどうでもいい」と本音を暴露した。それはつまり、拠点と武力が欲しかっただけであって、ワノ国は単に都合がよかったに過ぎないのだ。

 それに海賊が相手である以上、遅かれ早かれぶつかっていたし、ロジャーや白ひげのように約束や取引をきっちり守る方が少数派だ。おでんはそのあたりの認識が甘かったのだろう。

「まあまあ。総力戦になるとはいえ三日も猶予くれたんだし。色々作戦会議しといた方がいいんじゃない?」

「そうだな……ひとまずは場所を変えよう。おでん、何かいい場所あるか?」

「っ……」

 おでんは苦い顔を浮かべるが、腹を決めたのか一呼吸置いた。

「……九里に来い。おれの城で全て話そう」

 

 

           *

 

 

 聖地マリージョアにて。

 世界政府の最高権力である五老星は、破竹の進撃を続けるクロエ海賊団に悩まされていた。

「これは面倒な事になったな……!」

 スキンヘッドと丸眼鏡が特徴的な白い和装の老剣士――イーザンバロン・V・ナス寿郎聖は、眉間に皺を寄せた。

「ロジャー亡き今、この女を御せる者はおらんからな……」

「厄介なのは、二人の実力以上に()()だ…クロエがチンジャオの弟子で、グラニュエールが〝王直〟の義子ときた……!!」

 大きな白いひげや頭部のシミのような痕が特徴の禿頭――トップマン・ウォーキュリー聖は、溜め息交じりに呟く。

 彼に続き、首元に傷があるカストロひげ――シェパード・十・ピーター聖も、同調するようにボヤく。

「ロジャーとロックスの両方の系譜を引く海賊団など前代未聞だぞ……!!」

「ああ…手の打ち方を間違えれば他の海賊達への抑止が困難になる」

 左目に傷のある巻き髪――ジェイガルシア・サターン聖は、白い長髪と長いひげをたくわえたマーカス・マーズ聖と共に一筋の汗を流す。

 大海賊時代が開幕し、海賊達の数は膨れ上がった。その中でも五老星が危険視しつつも迂闊に手を出せないのが、クロエ海賊団だ。

 というのも、クロエ海賊団の戦力はぶっちゃけた話、冗談抜きで国家戦力級である。一味のツートップが海賊王の元船員(クルー)であり、仲間になった面々の中には海賊王世代の大物であるレッドが在籍している。他に確認できてる面々は、まだ海賊としてあまり名を馳せてないが、クロエが仲間と認めるだけの実力はあるのだろう。

 何より、五老星が頭を抱えている通り、二人の育て親も伝説と呼ばれる海賊だ。しかもエマに至っては、あの忌々しいロックス海賊団の王直の寵愛を受けており、随分と気に入られているときた。

 ロジャーの痕跡の抹消は優先事項だが、だからといってクロエ海賊団と衝突してしまうと、せっかく大人しくしてる王直を刺激するという事態になる。最悪の場合、クロエ海賊団を壊滅させたら王直が報復に来る……という可能性すらあり得る。

「〝鬼の跡目〟やオハラの学者達もあるが……ひとまずは〝鬼の女中〟の動向だ」

「うむ。バスターコールも天竜人も恐れん女だ、一番何をしでかすかわからん」

「〝魔弾〟にも注意せねばな……王直との関係も見過ごせんぞ」

 世界政府の最高権力ですら、英雄ガープをもってして「筋金入りのじゃじゃ馬」と称される女海賊には手を焼くのだった。




本作のオリキャラですが、現時点でクロエ24歳、エマ21歳、ラカム16歳となってます。

エマの同い年はキュロス、首領・クリーク、雨のシリュウ。
ラカムの同い年はシャンクスとバギー。
ラカムはクロエ海賊団の年少さんなんですよね。

あと、ドーマ達は髭が短い感じですね。若いので。年齢的にはマルコやイゾウと同い年だと勝手にイメージしてますので、二十代前半で。
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