エマのイメージCVは能登麻美子さんです。これは確定です。「ネト充のススメ」の盛岡森子みたいなトーンとノリです。
ラカムのイメージCVは、何人か候補があるんですが、自分は井上和彦さんとかかな……?
声が低いキャラで、まだアニワンに出てない大物声優さんと意識してますので。また設定がちゃんと定まったらイメージCV決めます。
〝
長い航海を経て、クロエは久しぶりの里帰りを果たした。
「よく帰ってきたな、クロエ!! 長い航海ご苦労!!」
「あ、ああ……」
漁師達の邪魔をしないよう港の端に船を停めると、中華風の衣装と丸眼鏡、頭に龍の刺青が特徴の男が歓迎した。
花ノ国の現国王であるラーメン王だ。
「随分と歓迎されてるな……」
「船長は幼少期、八宝水軍の棟梁の愛弟子だったからな……その縁もあるんだろ」
ラカムの説明に、レッドフィールドは「成程……」と顎に手を添えた。
「8年前のあの日から、ずっとお前の帰還を待っていたぞ」
「……師匠はどうした」
「チンジャオはガープに負けて以来、心が折れている。隠居の方針を固めているぞ」
おかげで懸賞金が解除できたが、とラーメン王は続ける。
8年前は、独り立ちして海へ出た頃。それとほぼ同じ頃に、師匠チンジャオはガープとの決闘で大敗を喫したそうだ。しかも自慢の錐頭をヘコまされるという悲劇ときた。クロエが幼少期の頃から錐頭を自慢げに語っていた分、潰されたショックは想像に難くない。
「師匠の力量が届かなかったとはいえ、確かに心が折れるのも無理はないか……」
「ゆえにクロエよ、チンジャオを説得してくれないか」
「私が?」
ラーメン王は、クロエにチンジャオの説得を依頼した。
八宝水軍の現棟梁はチンジャオであり、彼がこのまま隠居して国への奉仕が怠慢になるのは困る……そういう理屈だ。
クロエとしても、アポなしとはいえ久しぶりの帰省に顔を出さない師匠の体たらくぶりはカチンとくるので、ケツを引っ叩く必要があると判断してラーメン王の頼みを微笑みながら承諾した。
「美しい師弟愛じゃん」
「目が全く笑ってなかったがな」
「あれ半分「シバき倒す」って思い入ってるぞ」
一行は、チンジャオが宝玉氷床にいると聞き、早速向かった。
*
宝玉氷床に辿り着いた一行は、項垂れているチンジャオを発見した。
暗い影を落すその姿は、まさしく崖っぷちに立たされた人間。
追い込まれた人間の精神世界って、あんな感じなのかなとエマは暢気に思った。
「……久しぶりだな、師匠」
「……! ま、まさかクロエか……!?」
ハッと振り返るチンジャオ。
この宝玉氷床を容易く割った長い錐頭は見事にへこまされており、血が流れる痛ましい姿に、さすがのクロエも同情した。
「……私が出奔した間に、随分とイメチェンしたようだな」
「これのどこがイメチェンだと思っとるんだ貴様ァ!! ガープによって失った錐頭、二度と戻らんのだぞォ!!」
「もう一回殴ってもらえば直るかもしれないぞ?」
「己は私を殺したいのか!?」
涙ながらに髭と眉を逆立たせて怒るチンジャオに対し、クロエは相変わらずの無愛想。
しかし、軽口で叩き合える程の間柄ということは、互いの信頼があってこそ成り立つ。師弟関係は良好なようだ。
「……それで、どうしても開けたいのか?」
「決まっている!! 眼下の財宝は、私の全てなんだぞ……!!」
チンジャオは宝玉氷床の中に収められた財宝を見つめる。
全て売れば数百億ベリーはくだらないだろう。八宝水軍の歴史の重みも感じられる。
「……なあ船長、そんなに固いのか? この氷」
ふと、ラカムが疑問を呈した。
いかにとてつもなく分厚くても、氷は氷。割れないなんて事は無いはずだ。
クロエは「やってみればわかる」と告げる。ラカムは両手持ちで得物の戦鎚を振り上げ、内部破壊にまで至った武装色を纏わせながら叩いた。
ドォン!! と轟音が空気を震わせ衝撃波が迸るが、氷の様子を見たラカムは唖然とした。
「う、嘘だろ……!?」
「内部破壊できる武装色でも……!?」
「こんなバカなことがあってもいいのかい!?」
「キキィ!?」
ラカムだけでなく、エマやドーマ、猿のバンビーノまで驚いた。
宝玉氷床は、ほとんど割れてないのだ。
戦鎚は確かに氷を叩き、手応えもあった。なのに、宝玉氷床は表面に小さな亀裂が走り叩きつけた後も残ってるが、衝撃が内部までに至ってないのだ。
「船長、どういう事だ……!?」
「宝玉氷床は、火を使っても融けないし、兵器を使っても砕けない。割るにはただ一点に凄まじい力を込めなければならない」
つまり、錐のように尖った一点に覇気も含めた凄まじい力を集中させ、その衝撃を内部の隅々に伝導させねばならないのだ。
ラカムの場合、戦鎚は「面」の攻撃であった上、叩きつけたと同時に伝導させるべき衝撃が漏れてしまったため、表面に傷をつけただけで終わってしまったのだ。
「点」で突き刺し、強力な衝撃を漏らす事なく氷に伝導させる事で、初めて宝玉氷床は割れるのだ。それゆえにチンジャオの錐頭は宝玉氷床を割る事ができたのだ。
「……私もやってみる。昔は未熟だったからできなかった、今ならやれそうだ」
「は?」
クロエは化血を抜刀して刀身を武装硬化し、さらに覇王色の覇気を纏わせる。
すぐさま月歩で宙を駆け、平突きの構えをとり、急降下した。
「〝錐龍錐釘〟!!!」
クロエは宝玉氷床に化血を思いっきり突き刺した。
鍛え抜いた剣術に、八衝拳の防御不能の衝撃と強大な覇気が上乗せされた、あのカイドウにも傷を残した強烈な一突き。刀身を介して、その凄まじい衝撃が氷床に伝導していく。
そして、ピシピシという音が鳴り、一筋の亀裂が入り……!
バガンッ!!
『わ、割ったーーーーー!!!』
エマ達は口をあんぐりと開けた。
あの数十メートルはある程の分厚い氷を、平突き一発で割ったのだ。轟音を立てて真っ二つになった宝玉氷床の中からは、溢れんばかりの財宝が顔を出した。
クロエ海賊団の面々とその光景を目の当たりにしたチンジャオは、あっという間に目を潤ませていき……。
「ウオオオオオオオ!!!」
『!?』
ついに、滝のように涙を流して号泣。
ギョッとするクロエに詰め寄り、唇を震わせた。
「見事だ……見事!! よくぞ、よくぞこの氷の大陸を割った!!」
「師匠……?」
戸惑いを隠せないクロエに、チンジャオは彼女が海へ出奔してからの話を始めた。
クロエが在りし日のロジャーと対決したあたりか、チンジャオもまたガープと対決し、敗北を喫して錐頭を潰された。自慢の頑強な錐頭という〝力〟を失い、氷の下に眠る財宝に手が届かない現実によって〝富〟を失い、心が砕けて抜け殻となり、程なく海賊をやめたという。
錐頭を失って以来は、ただただ虚しく年月を過ごすばかりだった。大海賊〝錐のチンジャオ〟の伝説は、たった一発のゲンコツで終わらされたのだ。
「そんな牙を折られた私にとって……己の活躍だけが毎日の希望だった……!! 己が海軍に不都合な大ごとを起こす度に、奴の胃に穴が空くと思えば、これ以上の憂さ晴らしはなかった……!!」
「ガープよりもセンゴクとコングの胃の方だと思うが」
「クロエ、シーッ!! それシーッ!!」
遠慮なく言い放つクロエに、エマは人差し指を唇に当てる。
センゴク達や政府上層部の胃に穴が空く光景は目に浮かぶが、なぜかガープの胃に穴が空くのは想像できない。
「クロエよ……今まで勝手に名乗ってたようだが……認めよう……!! 己のその突き技に〝錐龍錐釘〟と名乗ることを!!!」
「あ、非公式扱いだったんだ……」
「一応は門下だったからな」
クロエは化血を鞘に収める。
――拾ったばかりは未熟だった小娘が、いつの間にかロジャーや白ひげに匹敵する海賊となるとは……!
愛弟子の成長ぶりに感動すると共に、彼女に八宝水軍の継承権がないことにもどかしさを感じた。
「遠縁であろうと私と血がつながっていれば、「八宝水軍」も己の物となり、歴代最強の〝女棟梁〟として私の正当な後継者にできたが……ままならぬものだな……」
「師匠……私は統治や支配といった
クロエは穏やかに笑うと、チンジャオは微笑みつつも「己の師として、面目が立たんな……」としみじみと呟いたのだった。
*
その夜、クロエ海賊団は八宝水軍のアジトへ案内され、宴に参加した。
仲間達は用意された大量の酒とご馳走に舌鼓を打つ一方、クロエはレッドと共にチンジャオと酒盛りをしていた。日が高くてもお構いなしという点では、クロエの一味も海賊らしい一面もあるようだ。
「ひやホホホ……!! しかし、己が我が愛弟子の船に乗るとは。
「我も気づかされたのだよ。安易に切り捨てるかつてのやり方では、ロジャーやニューゲートに追いつけないと」
「何かの縁ってヤツだな」
ゴキュゴキュと喉を鳴らしながら、樽のジョッキに注がれた酒を飲み進める。
すると、そこへ八宝水軍の構成員の一人が慌てた様子で駆け込み、大声で叫んだ。
「お頭!! 敵襲だ、ビッグ・マム海賊団がこっちに来る!!」
『!?』
部下の報告に、一同は騒然とした。
ビッグ・マム海賊団は、大海賊シャーロット・リンリンが率いる海賊団で、大海賊時代開幕以前からロジャー達と新世界の覇権を争っていた歴史の長い大所帯だ。海賊団としての組織力と情報力は業界随一とも言われており、リンリンの子供達が幹部層を占めているために高いチームワークを誇る上、応用の幅が広い
だが、個々の実力が船長直々の扱きで高くなっているクロエ海賊団にとって、ビッグ・マム海賊団は警戒すべき相手ではあるが恐れる相手ではなかった。
ましてや、状況が状況なのだから。
「……いつかは狙いに来ると思ってたが、こうも早いか。目的は〝ロード
「ほう……リンリンと
「当然」
クロエは徐に立ち上がると、声高に告げた。
「者共!! 船を出すぞ!! 花ノ国を戦場にはさせない!!」
「よし来た!!」
「がははは!! 人気者は忙しいなァ!!」
「まあ、仕方あるまい。ゴールド・ロジャーの部下が〝
クロエの声掛けに反応し、彼女の仲間達は各々の武器を片手に続く。
「せっかくの里帰りが台無しになるのは困る。師匠、手伝ってくれるか?」
「ひやホホホホ!! いいだろう!! 師弟の共闘は血が滾る……!!」
クロエの申し出を、チンジャオは快く快諾。
破竹の進撃を続けるクロエ海賊団と、数百年の歴史を誇る八宝水軍の「海賊同盟」だ。
「ちゃんとぶつかるのは初めてだな……リンリンは私がやる。エマ達は師匠と共に幹部共の相手を頼む。指揮も任せる」
「了解!」
クロエは指揮をエマに委ねると、最後通告とばかりに覇王色の覇気を海へ飛ばした。
水平線の先には、巨大な海賊船が確認できた。
「私から〝宝〟を奪うつもりなら……心を込めて壊滅させるぞ、ビッグ・マム海賊団!!」
花ノ国沖合にて。
ビッグ・マム海賊団の帆船「クイーン・ママ・シャンテ号」は、島から飛んできた覇王色の弊害を早速受けていた。
「ママ!! ママ!!」
「大変だ、チェス
甲板では、実力がある兵士達が倒れていく光景に混沌と化していた。
そんな中、水玉模様のバンダナと二角帽を被り、キャミソールのようなワンピースの上に白と黄色のマントを羽織った巨体の女が愉快そうに笑った。
彼女こそ、新世界に君臨する〝ビッグ・マム〟ことシャーロット・リンリンだ。
「ママママ……! ああ、〝鬼の女中〟の覇気だね……小娘にしちゃあ中々強い覇気じゃないか」
「んなバカな!! 何キロ離れてると思ってんだ!? ママやロジャー並みだぞ!!」
愉快そうに笑うリンリンに対し、ピエロのような出で立ちの長男ペロスペローは、規格外とも言うべき覇気の強さに頭を抱える。
狼狽える長男とは逆に、今日に至るまで全戦無敗の猛者である次男のカタクリは「当然だな」と呟いた。
「〝鬼の女中〟は現在活動中の海賊王の残党で、最も高い懸賞金が懸けられている……これぐらいの覇気を持っていても不自然ではない……」
「ロジャー海賊団……あまりいい思い出はねェな」
冷静に分析するカタクリに、三つ子の兄弟である四男のオーブンがボヤいた。
ビッグ・マム海賊団は、かつてロジャーによって〝ロード
ましてや、リンリンはクロエが在籍していた頃のロジャー海賊団とは交戦しておらず、悪名高き〝鬼の女中〟のチカラを把握しきれていない。あのカイドウと互角に渡り合うという情報も入手したが、それだけで推し測れる程甘くはない。
だが、長きに渡り同じ時代の強豪達と覇を競ったリンリンにとっては、そんなことなど些事でしかない。
「ハ~ハハママママ!! たとえ傘下がどんなにやられてもお釣りが出る一味だ、やるなら今しかねェ」
『ママ……!』
「奪い取るよォ!! 〝王直〟の
リンリンの呼びかけに、海賊達は雄叫びを上げた。
大海に君臨する二人の女海賊による戦争が、ついに勃発した。
ビッグ・マムなら加盟国相手にも侵略しそうだと思い、このような展開にしました。
次回は、女大海賊の頂上決戦。
クロエとビッグ・マムによる覇王色の衝突とか、レッドとカタクリの未来視対決とか、濃密に仕上げようと思います。