〝鬼の女中〟と呼ばれる女   作:悪魔さん

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前回のアンケートの結果、ガープとクロエが戦うことになりました。


第4話〝モンキー・D・ガープ〟

 リスキーレッドの港にて、短く刈り込んだ短髪と口周りの髭が特徴の大男が一隻の小船をみつめていた。

「……ガープ中将、なぜこのような小船に?」

「んん? ああ、少し見覚えがあってな」

 部下と思われる海兵からの質問に答える。

 

 男の名は、モンキー・D・ガープ。

 かつて世界最強と謳われた伝説の「ロックス海賊団」の進撃を止めて壊滅させた海軍の〝英雄〟だ。階級は現場指揮における最高階級の中将だが、実力は海軍の最高戦力である大将に匹敵し、同期の英傑達と共に一騎当千の大海賊達を相手に大海の秩序維持に務めている。

 

 そんな彼は、久方ぶりの新世界の任務で補給に寄ったリスキーレッド島の港で件の小船を見つけたのだ。

「この船はな、〝錐のチンジャオ〟んトコの船だ」

「ま、まさかあの八宝水軍の!?」

 ガープの言葉に海兵達はざわつく。

 錐形の石頭で海に名を轟かす大海賊〝錐のチンジャオ〟の船団の一隻が、こんな所に停泊しているなど夢にも思わない。

 何らかの事情で本隊から離れたのか、それとも新世界の海によって離れ離れになったのか……いずれにしろ、歴戦の大海賊の息がかかっている以上は警戒すべきだろう。

(だが妙に納得がいかんな。この小船は確かに八宝水軍のモンだが、新世界の海を渡るとなると……)

 両腕を組み、柄にもなく考え事をしていると……。

「他人の船の周りで何をたむろってんだ」

 

 ヴォッ!!

 

 女性の声と共に、突風にも似た波動が周囲を貫き、次々と海兵達が泡を吹き白目を剥いてバタバタと倒れた。

 ――〝覇王色〟か!?

 ガープはバッと振り返る。

(こやつ……只者ではないな)

 目の前の女を鋭く見据える。

 

 腰まで伸び、うなじの辺りで結った黒の長髪。

 複数の切り傷が刻まれた顔に、琥珀色の瞳。

 服装は群青のシャツと黒のズボン、腰には赤い布を巻き、裏地が赤い黒のコートを袖を通さず羽織っている。

 

 この小娘が、覇王色を……!

「……小娘、名前は?」

「先にそっちから名乗るべきだろう。寄ってたかって他人の船ジロジロ見といて」

 ビックリするくらい愛想がない返事に、ガープは「それもそうだ」と豪快に笑いながら己の名と肩書きを口にした。

「おれはガープ。海軍本部中将、モンキー・D・ガープだ!」

「……クロエ。クロエ・D・リード」

 クロエの名を知ったガープは、一瞬目を瞠ると、不敵に笑った。

 この世界では、度々「D」の名を持つ者が現れる。かつて敵対した最強の極悪海賊ロックスも然り、そして一度だけ共闘した間柄であるロジャーも然り……Dの名を持つ者は世界に大きな影響を与える。かく言うガープ自身も、海軍の英雄として大海で恐れられている。

 しかし目の前にいるクロエは、ガープにとっては未知の存在。脅威となるか、それとも平穏を望むのか、その目で推し量り判断する必要がある。

 ゆえにガープは、話し合いを始めた。

「お前さんの船だったか……すまなかったな。見慣れた船だったもんでな」

「とぼけるな。私が師範の関係者と読んだ上だろう」

「……という事は、貴様、チンジャオの娘か?」

「正確に言えば弟子だ。6年前に海で拾われた」

 ガープはクロエの言葉を聞き、興味深そうな表情を浮かべる。

 チンジャオもまた、激闘を繰り広げた間柄。近い内に必ずあの錐頭をカチ割りたいが、まさか奴の指南を受けた少女がいたとは。しかも覇王色の覚醒者ときた。もし海兵になれば、間違いなく自分や大将クラスに登り詰められる素質の持ち主。海賊稼業に身を投じれば、次世代の海の覇権争いで王座を狙えるだろう。

 だが、ここで海兵の道へ――正義の道へ誘うことができれば、海軍の未来は明るいのも一理ある。ゆえにガープは、交渉を始めた。

「クロエ、お前海兵にならんか?」

「……」

「お前の力は計り知れん。良い意味でも悪い意味でもな。その肩に正義を背負い、悪党共に立ち向かってくれるのなら、間違いなく海軍の最高戦力になれる!! おれは、お前には世界の正義を背負えると思って――」

 思っている、とガープが言い切ろうとした直後、クロエは覇気を纏った斬撃を飛ばした。

 咄嗟にガープは武装硬化した拳で斬撃を真っ向から殴りつけ、軌道を逸らした。

「すまないが、これが私の答えだガープ。無知愚昧の痴れ者共の〝奴隷〟にはならない。せっかく手に入れた自由を()()奪われてたまるか」

「っ……」

 クロエの言葉に、ガープは沈痛な面持ちで目を逸らした。

 それは正義の軍隊が抱えている重石。〝天竜人〟だ。

 最も誇り高く気高き血族として、世界の頂点に君臨する「世界貴族」。彼らの権力は絶対的なもので、傍若無人の限りを尽くす数々の所業は一般人だけでなく海兵ですら忌み嫌い、憎悪の対象である。

 そんな彼らがなぜ報復されないのかと言うと、手を出せば海軍本部大将率いる軍艦10隻が即座に派遣され、下手をすれば国家レベルで危機に陥る事態となるからだ。ゆえに恨みつらみをぶつけたくても泣き寝入りする他ないのだ。

 正義の名を目の前で踏み躙る。海兵であることに強い誇りを持っているガープにとって、何よりも堪える非情な現実であるのだ。

「それでも私を引き込みたいのなら、この私を倒してからにしろ」

「……ほう、大きく出たな」

 クロエは自分に負けを認めさせれば海兵になると提案。

 前線で大活躍する英雄に、決闘を申し出たのだ。

 とんだじゃじゃ馬ではあるが、これは絶好の好機だ。海軍史上初の女性の海軍大将の誕生に持っていくことができれば、世界中の悪党共に対する抑止の意味でのアピールポイントは大きい。潜在能力も計り知れず、それこそ次代の正義を担える存在になれるだろう。

 ガープに迷いはなかった。

「その提案、乗ったぞクロエ!! お前達は手を出すな、こいつの覇気で倒れた連中の介抱と周辺住民の避難をしろ」

『は……はいっ!』

 先程の覇王色をどうにか耐えきった部下達に指示を送ると、ガープは海軍コートを放り投げてネクタイを締め直した。

 クロエもまた、呼吸を整えて化血を構え直す。

「私の自由を阻むのなら、容赦しないからな」

「その意気やよし!! 歯ァ食いしばれ!!」

「行くぞ」

 クロエは一瞬で間合いを詰め、ガープへ斬りかかった。

 ガープは化血の刃を、武装硬化した腕で受け止める。

 しかし、クロエはすかさずガープの顎に蹴りを入れた。

「ぬっ……!」

 一瞬顔を歪めるガープに、クロエは間髪入れず鳩尾に掌底を打ち込んだ。

 それと同時に、ガープの肉体に衝撃が指先に至るまで全身を駆け巡った。

(この娘、やはり〝八衝拳〟を……!!)

 この感覚を、ガープは知っている。

 チンジャオが操る拳法だ。どうやらクロエも体得しているようだ。

「だが、この程度ではやられんぞ!!」

「っ!!」

 ガープは覇気を纏った拳でクロエの鳩尾を穿った。

 ……が、見聞色で先を読んでいたクロエは、化血でそれを受け止めた。

 それでも勢いを殺すことはできず、後方へと吹っ飛ばされて壁に激突する。

「いった……っ!」

 激突の痛みに堪えると、ガープが肉迫。

 すかさず回避すると、その拳は壁を粉々に砕いた。あのまま食らってたら、タダでは済まなかっただろう。

「ほう、見聞色もか。それも結構な精度じゃねェか」

「……数秒先の未来は視えてるつもりだ」

「ぶわっはっはっはっはっ!! 抜かしおる!!」

 斬撃と打撃をぶつけ合う両者。

 覇気を纏った拳骨一筋のガープと、剣術と拳法を組み合わせた独特の格闘技を魅せるクロエ。二人のドツキ合いは、あっという間に周囲を更地に変えていく。

(……このままじゃあ船にまでダメージが及ぶ)

 一瞬の隙を見計らい、クロエは森の方へと撤退。

 真意を汲み取ったのか、ガープは追撃。クロエを追って森へと入っていく。

 木々の合間を駆け、森の奥へと進む。そんなガープの前に、刀身を黒く染めて両手持ちで構えたクロエの姿が。

「ぬっ!」

「〝神威〟!!」

 クロエは横薙ぎに一閃し、覇気を纏った強烈な斬撃を飛ばす。

 木々や岩々を薙ぎ倒す一撃に、ガープは何と真っ向から拳をぶつけた。威力は五分。だがガープは、さらに一歩踏み込んで斬撃を弾き返した。

 しかし、その時には前方のクロエは姿を消しており、上方へ跳んでいた。

「はっ!」

 クロエはガープの脳天を狙った踵落としを繰り出し、ガープは真っ向から拳をぶつけた。

 空気が割れ、地面が抉れる。二人の覇気の衝突は衝撃波を生み、周辺に嵐の如く吹き荒れ、轟音は島中に響き渡る。

「クロエ、貴様やりおるな!!」

「くっ……!」

 ガープはクロエの実力に舌を巻いた。

 剣術も体術も目を瞠るものだが、一番驚くべきなのは「覇気の練度」だ。強大な覇気の使い手である自分と拮抗できる程なのだから、あと数年も経てば新世界の覇権を握る海賊達をも脅かすことになるだろう。

 ますます海兵に誘いたくなる逸材だ。

「だが……まだまだ青いわァ!!」

 ガープは気合一喝でクロエを弾いた。

 クロエは空中で受け身を取って着地するが、その隙にガープは瞬時に間合いを詰めて突進した。

 

 ドゴォ!!

 

「がっ!?」

 鍛え抜いた筋骨隆々の体躯を活かした、全速力のショルダータックル。

 さすがのクロエもこれは避けきれず、直撃を受けた。地面を何度も跳ねながら吹っ飛ばされ、港の建物に激突した。

「おおっ!!」

「流石ガープ中将だ!!」

 かつての世界最強を打ち倒した、圧倒的な強さ。

 英雄と称えられる男のチカラに、海兵達は歓声を上げた。

「クソッ……!!」

「おっ、結構丈夫じゃねェか」

 瓦礫の中から立ち上がるクロエに、ガープは意外そうな表情を浮かべる。

 チンジャオに鍛えられただけあって、タフに仕上がっているようだ。

 とはいえ、クロエ自身は肝を冷やしていた。

(危なかった……タイミングがズレてたら終わってた)

 クロエは体当たりを食らう直前、全身に武装色の覇気を纏わせていた。

 武装色は、見えない鎧。強大であればある程、強固な防御に転ずることができる。攻撃を受ける際に全身に覇気を纏って受ければ、完全ではないものの威力を軽減させることは可能だ。

 もし間に合わなかったら、相当なダメージを負って戦闘が難しくなったことだろう。

「クロエ。お前さん、やはり海兵にならんか?」

「断る。海賊稼業の方が性に合う」

「――そうか、海賊の道を選ぶか」

 刹那、ガープの纏う空気が変わった。

 圧迫感が強くなり、肌がピリピリし始める。

(……潰すつもりで来るな。さっきの言葉が地雷だったか)

 クロエは正義(かいへい)ではなく悪党(かいぞく)の道を選ぶことを宣言した。

 おそらくそれが、ガープの「迷い」を消したのだろう。

 約束通り倒して海兵へ引き込むのではなく、確実に倒して監獄へブチ込む。――そう決断したのだ。

(倒すのは無理だな。が……引き分けには持ち込める)

 クロエは刀を構え直す。

 力は明らかにガープが上だが、戦闘力と勝敗は別物だ。どんな猛者であろうと弱点を突かれたり油断したりすれば、実力差などお構いなしに倒される。それが勝負の世界だ。

 劣勢に立たされても、気概は失わない。

「私は自由で在り続ける。どんなに金を積んでも脅しても、絶対に屈さない」

「一丁前なことを言うじゃねェか。なら覚悟しろクロエ!!」

 両者が再び激突しようとした、その時だった。

「ガープ中将、センゴク中将からです!!」

 一人の海兵が、カタツムリのような姿をした生物を片手に叫んだ。

 同期である海兵から、緊急の連絡が入ったようだ。

「今それどころじゃないと言っとけ!! 偉そうに!!」

《聞こえてるぞ、ガープ!!!》

 電伝虫から、苛立ち交じりの男の声が響く。

 ガープの同期である海軍の英傑の一人・センゴクだ。

《ガープ、ロジャーが金獅子の傘下と衝突した!! 貴様今どこにいる!?》

「ロジャーはどこにいる!? すぐ行くぞ!!」

《話を聞けェ!! まず本部に帰ってこいバカヤロー!!》

 電伝虫越しで口論を始めるガープに、クロエはジト目で刀の切っ先を下ろした。

 今のガープは隙だらけであるが、攻撃する気にはなれない。騙し討ちは海賊の作法だが、それは自分のプライドが許さなかった。

「ったく、これからだというのにセンゴクめ……そういう訳だクロエ。()()()()()()

「……そうか」

 ガープの言葉に、短く返すクロエ。

 本部からの命令が下された以上、ガープは従う他ない。次会った時は続きが始まり、海兵としての責務を全うすべくクロエを牢屋に放り込むつもりだろう。

 それにガープは、誰よりもロジャーという海賊の拿捕に情熱を注いでいる。ルーキーのクロエと大海賊のロジャーを天秤にかければ、間違いなく後者を選ぶ。

「今回は大目に見てやる。だが次は覚悟せいよ」

 ガープの忠告に、クロエは鼻で笑った。

「その言葉はお互い様だろう。女だからって舐めるなよ」

「ぶわっはっはっ!! 大見得切りおって、後で後悔しても知らんぞ?」

「後悔は死んでからでもできる。私はその程度のことで止まるつもりはない」

 クロエの言葉は揺るぎない。

 一切の迷いなし。ガープは不敵に笑って踵を返した。

「引き上げるぞ!! 本部へ帰還する!!」

『はっ!!』

 部隊を引き連れ、英雄ガープは堂々と撤退していった。

 クロエは彼のコートに刻まれた「正義」の二文字を、黙って見届けたのだった。

 

 

           *

 

 

 翌日、海軍本部。

 会議を終えたガープは、センゴクら同期の海兵と上司のコング元帥から事情聴取されていた。

「クロエ・D・リード……また〝D〟か」

「おお、それも覇王色の覚醒者だ!!」

 バリボリとせんべいを頬張るガープに、コングは溜め息を吐く。

 ガープと真っ向から戦えるルーキー海賊が現れたと聞き、軍の上層部は誰もが冷や汗を流した。しかも聞けば、あの〝錐のチンジャオ〟に鍛え上げられたという異色の経歴で、彼が得意とする八衝拳は勿論、覇気の精度も高水準だという。

 とんでもない大型が現れたものだと、コングは頭を悩ませた。

「ガープ、そのクロエって小娘は相当強いようだな」

「ああ、お前といい勝負すると思うぞ? ゼファー」

 紫髪でガープと同じぐらい筋骨隆々の大男――海軍本部大将〝(こく)(わん)のゼファー〟は、茶を啜りながら考える。

 自分が覇気を体得したのは、34歳の頃。クロエはガープの証言から十代前半と思われるが、高水準の覇気の使い手な上に覇王色に目覚めているのは驚きだ。まだ一人海賊らしく、稼業もこれからといったところだが、その強さの上限が見えないのは厄介ではある。

「それで勧誘したのか」

「腕っ節は間違いなく将官クラス、数年もありゃあ大将も夢じゃないと思ってな。まあ痛いところ突かれて蹴られちまったが」

 ガープの言葉の意味を察し、一同はもどかしさを感じた。

 海軍に所属して出世すると、胸糞悪い天竜人絡みの案件が増える。しかも海軍において大将は天竜人直属の部下のような扱いとなり、危害を加えられたら一々派遣される羽目になる。これを指摘された上で断られたら、何も言えなくなってしまう。

「いずれにしろ、野放しにしてはならん存在だ。早速懸賞金を決めねばな。……ガープ、お前の見立てではどうだった?」

 コングが尋ねると、ガープはキッパリと言った。

「少なくとも5000万、初頭での億越えも異例だが妥当だな」

「お前がそこまで言うか……」

「それぐらいの潜在能力があるってことさね。それもこれから先も伸びる可能性もある。そうだろ?」

「ぶわっはっはっはっはっ! 流石おつるちゃん!!」

 同期にして〝大参謀〟と呼ばれる海軍屈指の智将・つるの一言に、ガープは豪快に笑う。

 今はまだルーキーだが、十年と満たない内に海の覇権争いを掻き乱す存在となりうる素質を有している。海軍でも群を抜いた実力を持つガープが言うのだから、センゴクやコングも注視せねばならないだろう。

「わかった……異例ではあるが、実力と潜在能力を加味して初頭手配は9600万とする」

「億の一歩手前か! ぶわっはっはっは、下の連中は大変だな!」

「お前が全ての原因だろうが!! ガープ!!」

 爆笑するガープに怒号を浴びせるセンゴクだった。

 

 

 同時刻、ミストリア島にて。

「本当にここから先は行けないのか?」

「そんな小船で新世界を渡れるわけないだろう!?」

 クロエは情報収集の最中に、島の住民から「前半の方まで戻るべき」と説得されていた。

 凪の帯(カームベルト)を突っ切って偉大なる航路(グランドライン)へ突入したクロエだが、そこはまさかの「新世界」。世界で最も航海が困難な海へ、世界一危険な入り方を果たしてしまったのだ。

 当然、この先の海はちゃんとした船でないとすぐ転覆してしまう。いくら航海術を覚えていても、海流も気候も信頼できる磁気もメチャクチャな危険地帯を小船で行く人間など絶対にいない。

「……どうすれば渡れる? 記録指針(ログポース)も三つあるヤツは手元にある」

「それなら前半の海にある「ウォーターセブン」を頼りな」

「ウォーターセブン?」

 住民曰く。

 「水の都」とも呼ばれるウォーターセブンは、昔から造船業が盛んな町で腕のいい船大工も大勢いるという。造船所からすれば海賊も客なので海賊慣れしており、治安もいいためゆっくりできるとのことだ。

「ウォーターセブン……わかった、恩に着る」

「いや……それはいいが、嬢ちゃんはどうやって戻るつもりだ?」

「また凪の帯(カームベルト)を突っ切って、リヴァース・マウンテンの運河を経由するさ」

「入り方も戻り方も危険極まりない……」

 クロエは島の住民に礼を告げ、再び凪の帯(カームベルト)を目指すのだった。

 

 

           *

 

 

 一週間後、とある海域。

 波のような口ひげのついたドクロを掲げる一隻の海賊船が波を突き進む中、その船の船長が一枚の手配書を眺めていた。

「どうした船長? また懸賞金額が上がったか?」

「いや……面白いのが出てきたぞ」

 ボサボサの黒髪と横広がりの大きな口髭が特徴的な男は、面白そうに笑う。

 

 男の名は、ゴール・D・ロジャー。

 ロジャー海賊団を率い、「ゴールド・ロジャー」の通称で知られる大海賊だ。

 

「見ろよ、初頭手配で9600万ベリーだってよ!!」

 ロジャーの興味は、先日発行された手配書に向けられていた。

「クロエ・D・リード……お前と同じ〝D〟の名を持つ海賊か」

 ロジャーの相棒にして一味の副船長、シルバーズ・レイリーはクロエの手配書を一瞥する。

「ルーキーの女だが、初頭でこんだけの額なんだ。相当(つえ)ェに決まってる!!」

「どうせまた戦ってみたいんだろ……」

 ワクワクした様子のロジャーに、レイリーは溜め息を吐く。

 基本的には楽天的で仲間思いなロジャーは、他の海賊達と比較しても残虐ではないが結構好戦的であり、好意的な印象とは裏腹に命のやり取りを愉しむ質だ。

 ルーキーの女海賊が、初頭で億に近い懸賞金を懸けられたということは、狂暴な性格であるか相当な実力者のどちらかだ。若手でそれ程の素質を持つのなら、ロジャーとしてはぜひ会って戦いたいものなのだ。

「クロエ・D・リード……どれ程の女か、会ってみてェもんだ!!!」

 彗星の如く現れた大型ルーキーに、思いを馳せるロジャーだった。




原作の方で緑牛が出ましたね。
ついに最終章……映画もですけど、原作も非常に楽しみです。

そう言えば、ロジャーや白ひげの初頭の懸賞金ってどんぐらいだったんだろう。案外マジで億超えてたり……?
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