随分と長く旅をした……なんて。
これからもこんな作者をよろしくお願いします。
さて、今回は新たな仲間が加入。
仲間意識の強いロックス海賊団こと、クロエ海賊団に加わるヤバい奴とは?
翌朝、再会の宴が終わった両海賊団に別れの時が訪れた。
「うおぇっ……まだ気持ち
「お前なァ……!」
「クロエ、我慢我慢……!!」
真っ青な顔のシャンクスに、クロエはちょっとキレそうになり、エマが必死に宥めていた。
別れの時ぐらいはビシッと決めたいのに、よりにもよってシャンクスが飲み過ぎで苦しむという体たらく。一海賊団の船長にあるまじき光景に、若干の殺意が湧いてしまう。
「すまねェな、お頭は調子に乗るとすぐこうなっちまう」
「ま、まあ私もハメ外しちゃったからさ、そこは反省するけどさ……」
「こっちとしても灸を据えとく。なァ、お頭?」
ベックマンと視線があったシャンクスは、すかさず目を逸らした。
「おいおい、しっかりしろよお頭」
「そうだぜ、海賊にもシメシってもんがあるんだしよ」
「……」
「パンチ、ライム、ガブ!! お前ら、何だよその顔は!?」
ニヤニヤ笑う赤髪海賊団に、シャンクスも苛立った。
そんな弟分に、クロエはウタの件について強い口調で忠告した。
「シャンクス、ヤマトを育てている私からの忠告だ」
「!!」
「海賊が子を拾ったら二つに一つしかない。物心つく前に堅気に押し付けるか、責任もって強く育てるかだ。お前は後者を選んだという事は、ウタと真正面から向き合え」
クロエは抑え気味に覇王色を放ちながら、忠告を続ける。
「くれぐれも選択を誤るなよ。私はシャンクスの姉としていつでも手を差し伸べるが、お前の行動次第ではいつでも手を上げる――そこに一切の躊躇いはない。……努々忘れるな」
低く告げる言葉が言っている。
自分の忠告に対する「はい」以外の返答は認めない、一切の反論も許さない、断るなど以ての外だ、と。
大海賊〝鬼の女中〟の威圧感と言葉の重みに、一同は冷や汗を垂らした。
「……シャンクス」
「わかってるさ。ウタはおれの娘……おれ達の大事な家族だ」
「フッ……なら、心配ないな」
「でも実際問題、シャンクスの娘という肩書きは他の海賊にとって恰好のネタだよ。護りたいならしっかり護んないとダメだからね?」
表情を綻ばせたクロエに続き、エマが口を開く。
自身が王直の義娘であるという立場ゆえ、色んな勢力に狙われた経験があるのだろう。
「……姉さん達には敵わないな」
「姉に勝る弟などこの世に存在しないからな」
クロエは穏やかに微笑むと、エマと共にオーロ・ジャクソン号まで跳躍する。
そろそろお別れの時だ。
「ベックマン、それと赤髪海賊団。私の弟をよろしく頼む」
「ああ、手のかかる人だってのはわかってるから安心してくれ」
「おい!!」
『ぎゃはははははは!!!』
盛大に大笑いする赤髪海賊団とクロエ海賊団。
両海賊団の帆船は、見る見る内に離れていき、青きその先へと向かっていく。
(ウタ、次に会う時はたくさん話そう。お前の夢もシャンクスの愚痴も受け止めてやる)
――あの子は、いつか大物になる。
そう直感したクロエは、鼻歌交じりで舵を切り、水平線を目指すのだった。
*
弟との再会を終え、大海原を行くオーロ・ジャクソン号。
かつてはロジャーの部屋であった船長室は、クロエの自室となっているが、〝
それは、この世界の成り立ちに関する書物。クロエの前世で言う「国生み神話」に関する歴史書だ。歴史書自体は、この世界には
「……何が神だ、くだらん」
本を閉じ、クロエは嫌悪感丸出しで吐き捨てた。
自らを〝神の末裔〟と称する者達は、どれも狭量にして外道。そんな連中の祖先など、ろくでもないに決まっている。
そもそも輪廻転生という神の御業に等しい奇跡を経験したクロエですら、神の姿を見たことがないのだ。この世界の住人にとって天竜人は「創造主の末裔」だろうが、クロエから見れば「歴史の長い血族の一つ」に過ぎず、彼ら彼女らを一度たりとも神に等しい存在だと思ったことはない。そしてこれからも思わない。
「……ああ、イライラする」
苛立ちが募り、身体から漏れる覇気が部屋を震わせる。
時々、天竜人を見かけたり相対すると、前世の家族を思い出してしまう。あの醜悪に嗤う肉親共の顔は、転生して自由を得た今もしつこく記憶に残っている。ロジャーには死してなおも敬愛の念を抱いているが、前の肉親には憎悪と殺意しか湧かない。
(――もし転生してきたら、すぐ殺してやる。命乞いも取引にも応じず、心を込めて殺す)
「ちょっとクロエ、殺気立ちすぎ!!!」
「!」
そこへ、眉間にしわを寄せたエマがズカズカと入ってきた。
副船長である親友は、イスにドカッと座るとクロエの頬を強く引っ張った。
「いっ!?」
「あいつらはクロエの心を殺して嗤うクズ一家なの!! どう足掻いても地獄は確定でしょ? 思い出しても一々気に留めないのっ!!」
頬から手を放すエマは、呆れた笑みを溢す。
無際限なまでの大らかさに、クロエも釣られるように口角を上げた。
「お前の
「前世からの取り柄だからね」
「……で、何の用だ」
気を鎮めたクロエは、本題を切り出した。
「そうそう!! クロエさ、いい加減人数増やさない?」
その言葉に、クロエは怪訝そうな顔で問い返した。
「何で」
「クロエ、この一味はバンビーノ含めてもたった10名なんだよ!? 作業を行う以上は人手が欲しいじゃん!! ラカム君もコーティング技術覚えたいってこないだ言ってたし!!」
ズバズバと言うエマに、クロエは何とも言い難い表情をした。
確かにオーロ・ジャクソン号を9名と1匹で操船するのは中々ハードだ。しかしクロエがあまり仲間を作りたがらないのにも理由がある。
なぜなら、海賊団は寄せ集めではなくれっきとした「組織」だからだ。組織は人が増えれば増える程に制御統一が難しくなるもので、しかも海賊という荒くれ者を統制するのは堅気の職業や軍隊より難しい。だからこそ、少ない人数の方が統制しやすく、下の者達の暴走を抑えやすい……という訳だ。
「いや、この船でクロエに逆らうなんて不可能でしょ」
「そうか?」
「そうだって。むしろ逆らっても無駄って感じじゃん」
きょとんとした顔で首を傾げるクロエに、エマは引き攣った笑みを浮かべた。
この大海賊時代において、クロエはロジャーに代わって白ひげやビッグ・マムと肩を並べる強豪海賊だ。しかも海賊界屈指の悪名高さの持ち主で、世間的には危険性の高い海賊と見なされてるし、何より滅茶苦茶強い。
並大抵の強者では歯が立たない圧倒的武力を有する女傑に、謀反を起こせる奴などそうはいない。それこそ、海軍大将くらい強くないと彼女の寝首を搔くことなど不可能に近い。
「だからさ、仲間増やそう? 後々響くよ? ロジャー海賊団でも30人以上いたんだし」
「ハァ~…………わかった。ただしちゃんと選べ」
盛大に溜め息を吐くクロエに、エマは内心ガッツポーズを決めた。
クロエはかなり我が強い女であり、親友とて彼女を妥協させるのは相当骨が折れる。前世からの付き合いであるエマですら、性格を把握した上でこれなのだ。
このじゃじゃ馬を御することができたのは、ロジャーただ一人。今は亡き彼の器のデカさを改めて思い知った。
「甲板に全員集めるぞ」
「了解!!」
そう言って船長室を出ると、仲間達がホッとした表情で出迎えた。
部屋の中だったとはいえ、クロエが殺気立ったのが相当堪えたようだ。
「悪かった、嫌なことを思い出してしまってな……」
「ったく、びっくりさせないでくれ船長。ヤマトとバンビーノが
「流石にヒヤリとしたど」
苦笑いするドーマ達に、クロエは申し訳なさそうに頭を掻いた。
感情をむき出しにしたせいで、ただでさえ強力な覇王色の〝圧〟が増し、ヤマトとバンビーノが気を失ってしまった。エマとレッドフィールドは平気だが、他の面々も冷や汗を垂らしている。これは不覚としか言いようがない。
「弁明の余地もないな……すまない」
「ハァ……人前で弱さを見せないのも考え物だぞ、船長」
眉を下げるクロエに、ラカムは呆れたようにボヤいた。
仲間を心配させまいと毅然とした態度で振る舞うのは結構だが、それゆえに一人で思い詰めるのは精神的によくない。人間、逃げても泣いてもいいのだから、一人で背負い込もうとしないでほしい。
遠回しにそう言われて何も言えないクロエに、エマは「ロジャー船長にそっくり」と思った。偉大なる海賊王も、人前で弱さを見せない男だった。
「……じゃあ、二人を横にさせとく。あとは任せるぞ」
「お前、猿も見れるのか?」
「ウチは元々医療系。獣医も医療系だろ」
ヤマトとバンビーノを抱え、医務室へ直行するラカム。
直後、
「おい、海軍の軍艦だ!!」
その言葉に、一斉に武器を構えるドーマ達。
だが、クロエとレッド、エマだけは怪訝そうな表情を浮かべていた。
「クロエ、気づいたか?」
「ああ……〝声〟がないな」
「たまには私が見てくる?」
愛用の片手用ライフル銃を腰布から引き抜くエマを一瞥し、クロエは仲間達に待機命令を下す。
高精度の見聞色の覇気を発動しているのに、軍艦から人の気配を察知しにくいなど、明らかにおかしい。何かあったようにしか思えない。
エマは宙を蹴りながら軍艦まで移動し、甲板に降り立つ。
「……うわあ」
エマは目の前の光景に顔を強張らせた。
甲板は、まさに死屍累々。海兵達が軒並み全滅しており、見渡す限りに海賊の屍も転がっており、血の海とかしていたのだ。その中には、手錠や首輪を嵌められた民間人と思われる者達もいた。
「生存者はなし、か……ん?」
エマはふと、背後から視線を感じた。
ゆっくりと振り返ると、そこには一際ガタイのいい将校の男が片膝を突いていた。しかも人相は海兵というより海賊だ。海軍本部が誇る窓際部署のG-5支部の出身だろうか。
「ちっ……せっかく生き残ったのに新手とはツイてねェな」
「……驚いた、生き残りがいたなんて」
唯一の生存者に、エマは目を見開く。
手負いの身ではあるが、受けた傷自体は少なくそこまで深くない。この軍艦で一番の腕だったのだろう。
「手負いの身で絶体絶命なのに、一切怯みもしないなんて。一応私も大海賊だよ?」
「ハッ……! んなこたァ、誰だって知ってるぜ……クロエ海賊団副船長の〝魔弾〟エマ・グラニュエールさんよォ」
気概を失わない将校に、エマは口角を上げた。
――腕も度胸も申し分ないのなら、クロエも文句は言わないはず。
そう思い、将校に言葉を投げかけた。
「君さ、名前は?」
「……おれァ、ガスパーデ。
「うわ、海軍と縁を切る気満々!!」
エマは将校の男――ガスパーデが海軍を脱退する気でいることに驚愕した。
しかし、現場を見ればこの軍艦に乗った海兵達の任務は大方予想がついた。確かに海軍を見限ってもおかしくはない。
「いいの? ちゃんとケジメつけてからでも遅くないよ?」
「そもそもおれが海軍に入隊したのは、力を手に入れるためだ。力さえあれば何だって手に入る。海賊なんざ夢抜かすゴミばかりだ」
「確かに最近の海賊はそういう連中が多いかもね」
ガスパーデの言葉に、エマは淡々と返した。
大海賊時代の幕開けから名乗りを上げる海賊は、大体が〝
ガスパーデの言い分は、全てが間違いとは言い切れないだろう。
「おれがお前らの船に乗れば、何が手に入る?」
「自己責任が大前提だけど……〝自由〟と〝強さ〟かな?」
「……上等すぎる謳い文句じゃねェか。いいぜ、おれを乗せてくれ」
ガスパーデは不敵に笑うと、エマは「クロエ海賊団にようこそ」と手を差し出し、握手を交わした。
後にクロエ海賊団きっての武闘派として海賊、海兵達から恐れられる「〝将軍〟ガスパーデ」の誕生の瞬間だった。
なお、クロエの忠告はエレジアでパーになりますので、シャンクスは雷落とされるどころか神避ぶっ放されます。(笑)
そして、まさかまさかのガスパーデが入団。
ガスパーデって冷酷な悪党ですけど、実力を認めた者に対しては氏素性問わずスカウトする豪胆さとか、サイクロンが迫っても逃げ腰にならずルフィと一騎打ちする度胸とかがあって、ボスキャラらしさ全開なところが好きです。
調べたんですけど、将軍ってのは軍隊で言うと将官クラスが多いそうです。懸賞金を考えれば、ガスパーデは准将以上中将未満の強者というところだと自己判断しました。
本作ではただのカカシではなく、原作と同じ豪胆さと非情さを併せ持った性格で行きます。
野郎オブクラッシャアアアアア!!!