〝鬼の女中〟と呼ばれる女   作:悪魔さん

45 / 124
タイトル通りです。


第45話〝ステューシー〟

 エルドラゴが加入し、戦力が大幅に増強されたクロエ海賊団は、またまた〝凪の帯(カームベルト)〟を突っ切って〝偉大なる航路(グランドライン)〟前半の海に突入した。

 そんなある日、オーロ・ジャクソン号の船尾楼甲板でヤマトは仁王立ちしていた。彼女の視線の先には、樽のイスに腰かけるクロエとテーブルに乗ったバンビーノの姿が悠然と見据えている。

「っ!」

 ヤマトは呼吸を整えると、キッ! と睨みつけた。

 その直後、見えない衝撃がビリビリと肌を突き刺すように一人と一匹に襲い掛かった。

 が、どちらとも意識を持ってかれるどころか、気にも留めてない。

「ど、どうかな? 母さん」

「……バンビーノ、無事か?」

「ウキィッ!」

「――合格だ」

 その言葉に、ヤマトは「やったぁ!」と喜んだ。

 彼女が先程やったのは、クロエ独自の覇王色の鍛錬法。威圧する対象を絞ることで精密さを高めることを目的とし、指名した相手だけを威圧できれば合格、それ以外の人間あるいはその場にいる全員を威圧したら不合格というシンプルな訓練だ。これを巻き添えにする人数を増やしながら繰り返すことで、覇王色を自らの意思でコントロールできるようにするのだ。

 この修業をクロエはロジャー海賊団時代にバレットとシャンクスにも課した事がある。前者は元少年兵なので初めて出会った時には仕上がっており、シャンクスは一味解散の時点でタイミング・威力・影響が及ぶ範囲を制御できる領域にまで達していた。

「父親がカイドウなだけある、血は争えないな。……次は踏み込んだ修行をする。武装色と見聞色はお前なりの鍛錬に任せる。この世界の頂点との戦い方を叩き込んでやる」

「はい!」

 クロエとヤマトは笑い合う。

 その光景を見ていたラカムは「砂でも吐きそうだ」と肩を竦めた。

「……前からちょっと思っていたんだがよ……」

 ふと、ドーマは思い出したように呟いた。

「ヤマトに結構甘いよな、船長」

『……』

 沈黙がその場を支配した。

 全員がその言葉に思い当たる節があったからだ。

 無論、あからさまな贔屓はしないし、一味の船員(クルー)を務める上での特別扱いもしていない。体力と腕力があるからと雑用や力仕事を割り振ってるし、この間に至ってはガスパーデと夜間当直をするというシュールな光景が爆誕していた。

 それでも、改めて思い返すとクロエはヤマトに甘い気がするのだ。

 無愛想な上に気まぐれで荒い気風の彼女だが、基本的に仲間には寛大だ。船のルールさえ守れば自己責任を条件に自由行動を許すし、何気に一人一人への心配りもする。何なら一対一(サシ)の手合わせを挑んで来たら、日時を調整してちゃんと相手してくれる。そういった人間関係への律儀さがあるからこそ、今まで誰の口からも不満が出る事はなかったし、むしろ好感を抱かれる。

 ただ、ヤマトに関しては少し違う気がするのだ。

 覇気の修業をする時はいつもより丁寧で優しめな口調だし、雑用仕事や戦闘の時は自分の目が届く範囲でやらせるかエマが傍に居れる状況にしている。仲間として同等に見なして扱っているが、態度だけで言えば親友のエマを差し置いて他の船員(クルー)の誰よりも柔和だ。

 それはヤマトがまだ子供であるからだろうと、今まで誰も気にしていなかったが、こうなると一気に気になってくる。

 カイドウの娘ということもあり、好敵手との腐れ縁も大きな理由だろう。けれど実の娘のように本当に大切に思っていて、それが無意識にそうした甘さとして出ていたならば……。

「……だから母さんって呼ばれたんじゃね?」

「義母という意味合いだろうがな」

「うん、ぶっちゃけ甘いと思うよ」

「ふ、副船長!!」

 突然エマがふらりと現れ、驚く一同。

 彼女は仲睦まじい二人を眺めながら口を開く。

「クロエは実の家族とゴタゴタがあったからね……ああいう存在を欲してたんだろうね」

「実の家族?」

「遠い昔の話だよ。完全に縁を切ってるから大丈夫だろうけど」

 眉を下げるエマに、誰もがそれ以上の詮索をしなかった。

 チンジャオは育ての親であることは周知だが、それ以前の事はクロエは話していない。ということは、相手が仲間でも話す事自体を嫌悪するくらい仲が悪かったんだろう。絶縁してるから大丈夫とエマが言ってるあたり、余程険悪な関係だったと伺える。

 その時、エマが見聞色で海底から迫る大きな気配を探知して叫んだ。

「――! クロエ、海王類が来るよ!」

「ああ、わかってる」

 その声が聞こえた時には、すでにクロエは抜刀して宙を駆けていた。

 刹那、海が盛り上がり、そこからオーロ・ジャクソン号の十倍以上はある巨体の海王類が姿を現した。

「〝劈風〟」

 顔を出した瞬間に、覇気を纏った化血を振るって斬撃の嵐を放つ。

 斬撃は牙をむいた海王類の巨体を次々と斬り刻んでいき、あっという間に息の根を止めてしまった。

「スゲェ……」

「相手は海王類だど……!?」

「フン……大した女だ」

 仲間達は船長の電光石火の早業を称えた。

 一方のクロエはというと、仕留めた海王類の上に乗ってあるモノを見ていた。

 古びた永久指針(エターナルポース)だ。斬り刻んだ際、傷口から出てきたのだ。

 そこに刻まれた文字に、クロエは眉をひそめた。

(……ロジャー……)

 クロエの脳裏に、亡き今も敬愛し続けるロジャーの顔が浮かんだ。

 目の前の永久指針(エターナルポース)は、彼とその一味と過ごした冒険の日々に縁がある航海器具――正確に言えば、クロエが興味を示さなかった島の磁気を記録している代物だった。

「クロエ、何か見つけたの?」

「今行く。……今後の進路の話もする」

 クロエは跳躍して帰還。号令をかけて仲間を集め、次の目的地を伝えた。

「次はシャボンディ諸島へ向かう。あそこはレイリーの隠居先だ」

「また何で? 天竜人(ぶた)に会いたくないんでしょ?」

「これの真偽を確かめたいんでな」

 クロエはエマ達に、海王類の腹から出てきた例の永久指針(エターナルポース)を見せた。

 そこに刻まれた文字を見て、一同は絶句した。

 

 ――LAUGHTALE(ラフテル)

 

 〝偉大なる航路(グランドライン)〟最果ての地にして、クロエが愛するゴール・D・ロジャーを海賊王たらしめた、この世の全てであるという〝ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)〟が眠る島だ。

 真偽は不明だが、眼前に存在する永久指針(エターナルポース)は、紛れもなく時代の覇権を握れる伝説級のお宝。エマ達は心が波立つのを抑えきれなかった。

「ウソだろ……!?」

「ほ、本物、なのか……!?」

「フン、そんなモノはどうでもいい。黄金なら話は別だがな」

 黄金を人一倍愛しているエルドラゴは、真偽はおろか〝ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)〟自体にもそこまで興味ないと吐き捨てた。

 しかし、いかに眉唾物でも、ロジャー絡みは別だ。ましてやラフテルへの直線航路など……!

「私はラフテルへの航海に同行してない。特に興味ないからな。……が、これを野放しにするわけにもいかない。レイリーの下へ向かい、真相を知りたい」

「か、仮に……もし本物だったら?」

()()()()()()()()私が保管するに決まってるだろう」

「クロエ、それ修学旅行のお土産なんてレベルじゃないから」

 こうして、クロエ海賊団の次の進路は忌々しいシャボンディ諸島に決まったのだった。

「……ところでクロエ、クロッカスさんには確認しないの?」

「今は距離的にレイリーの方が近い」

「あ、そう……」

 

 

           *

 

 

 伝説級のお宝を偶然拾ったことで、次の目的地が決まったクロエ海賊団。

 鉢合わせする敵船を次々と蹂躙しながら大海原を行くと、一隻の船と出くわした。

「船長、様子がおかしいぞあの船!」

「ああ、見ればわかる」

 嵐に見舞われたのか、それとも敵船との戦闘の被害か、ボロボロの状態で浮かぶ船。

 クロエは見聞色を発動し、集中して精度を上げる。 

「……一人生き残りがいるな。エマ、接舷の準備をしろ」

「わかった。みんな、船を寄せて!」

 オーロ・ジャクソン号を船に接舷させ、ドーマ達が乗り込んでいく。

 甲板は全滅状態なので、船内も死屍累々と見ていいだろう。

「…………」

「クロエ? どうしたの?」

「! いや、何でもない」

 何か思い耽っていたクロエは茶を濁す。

 すると、乗り込んでいたドーマが「船長、見つけたぞ!」と叫んだ。

 彼の隣にいたのは、金髪の女性だった。ウェーブのかかったボブヘア、大きな花のコサージュのついた帽子……その気品は貴婦人のそれだ。人身売買に手を染める海賊もいるのだから、全滅状態の海賊団の人質だったのだろうか。

(……あの女……)

 一瞬だけ鋭い眼差しを向けつつも、帰還を命じる。

 ちゃっかり奪える物を奪い、ドーマ達は女性をクロエの前に連れ出した。

「名前は?」

「ステューシーよ」

「……!?」

 金髪の女性・ステューシーの名を聞き、レッドフィールドは目を見開いた。

 その様子をクロエは見逃さなかったが、ひとまずステューシーの話に耳を傾けた。

 彼女曰く、客船で一人旅を楽しんでいたところで海賊の襲撃に遭い、見た目から金持ちだろうと判断されて人質として攫われたという。しかし敵海賊との戦闘となり、自分を攫った一味は全滅し、幸いにも自身は牢に囚われていたために難を逃れたとのことだ。

「……そうか。これからどうするつもりだ?」

「実は、本来の目的地は新世界にあるの。それまでお世話になりたいのだけれど……ダメかしら?」

「なら、私が部屋を用意する。他の者は持ち場に戻れ。ステューシー、ついて来い」

「あら、船長さん直々に? 嬉しいわ」

 クロエはあっさりとステューシーを迎え入れ、船内へと案内した。

 その場に残された仲間達は、終始神妙な顔だったレッドフィールドに視線を向けていた。

「あの女……まさか……!?」

「レッドフィールド、あんた何か知ってるのか」

「ああ……我の思い違いでなければ、あの女はかつてロックス海賊団にいたはずだ。名前は確かバッキンガム・()()()()()()

 レッドフィールドの言葉に、一同は言葉を失った。

 人質と見られていた女性が、かつて世界最強と謳われた過去の悪の代名詞――ロックス海賊団の残党である可能性を示唆したのだ。

 しかし、それはそれで疑問が残る。

「うーん、まさかとは思うけど……そんな訳ないよね、多分」

『?』

「いずれにしろ、いくら何でも弱くない?」

「うむ……故に同世代の我も半信半疑といったところだ。偶然同じ顔で同じ名前の女に過ぎぬ、というのも否定できん」

 ある意味でロックスの関係者であるエマの言葉に、レッドフィールドも同意する。

 本当に元ロックス海賊団のバッキンガム・ステューシー本人だとすれば、逆に前半の海の海賊団など一捻りで皆殺しにできるはず。そこまで衰弱した様子でもないのに、なぜ大人しく監禁されていたのか。

 その疑問に対し、ラカムが一つの仮説を立てた。

「政府のスパイじゃないか? あの覇気の強さは相当だぞ。堅気じゃないのは確かだ」

 ラカムの言葉に、エマ達は唸る。

 見聞色の覇気は、熟練していけば相手の力量も推し量ることができ、相手の覇気の動きすら感じ取ることができる。言わば探知機のような機能も可能とし、相手の真の実力を大よそ把握できるということだ。

 仮にレッドフィールドの知るステューシーと彼女が別人であるとすれば、自然とスパイ説が濃厚になる。だが穏健派の白ひげがわざわざクロエと戦争しなければならない理由はないし、カイドウは割と武人肌なので内通者を送り込むのは好まない。ビッグ・マムならば可能性としてはあり得るが、クロエと対立して結構痛い目を見てるので限りなく低いだろう。となれば、その正体は自然と絞られる。

「……CP‐0か?」

「実力と立場を考えれば、CP9(シーピーナイン)もあり得るな」

 ラカムはどちらかの部署の刺客だと断言する。

 CP‐0は言わずと知れた世界貴族直属の諜報機関だが、CP9は世間には公表されていない諜報機関である。正式名称は「世界政府直下暗躍諜報機関 サイファーポールNo.9」と言い、政府と敵対する者や非協力的市民への暗殺も行う組織で、CP‐0と同様に諜報員全員が超人的な身体能力と優れた潜入能力を有している。

 サイファーポールはかつて海戦で無敵を誇ったワールド海賊団のように、世界政府が危険視する海賊団への工作活動も任務の一環。〝ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)〟に最も近いとされる海賊団の動向は、是が非でも把握したいところだろう。

「クロエはそれをわかってるのかな……?」

「何か目論見はあるはずだろう。でなければ正気ではない」

()()()()()に目覚めた様子でも、洗脳された様子でもないからな……」

 エマとレッドフィールド、ラカムが勘づいて、クロエが勘づかないなんてあり得ない。

 あり得るとすれば、彼女が世界政府のスパイと知った上であえて泳がしていることだ。

 だが、その目的は何なのか。それがわからないのだ。

「……まあ、一々考えても仕方ない! スパイ云々は後にして、ひとまず様子見だね」

「いざとなれば始末すればいいしな」

「じゃあ、一応毒盛られてもいいように薬の調合でも始めるか……」

 古株三人衆はクロエを信じ、本性を現した際に備えて動き出す。

 ドーマ達も「船長ならどうにかするだろ」と納得させ、各々の仕事に戻るのだった。

 

 

 一方、クロエはステューシーに空き部屋を案内していた。

「ここだ。何かあったらすぐ呼べるよう、私の部屋の隣にあるから安心しろ」

「あら、随分とお優しいこと♪」

 穏やかに笑うステューシーだが、その眼差しはまるで殺し屋のように冷たい。

 そう、ステューシーの本来の立場は貴婦人ではない。

 彼女の正体は世界政府の諜報員――世界最強の諜報機関であるCP‐0のメンバーだ。

(堅気への手出しを禁じているのは本当のようね……)

 背中を見せているが、海の女王のような威厳と風格を醸し出すクロエに息が詰まりそうになる。

 ステューシーが世界政府から命令された任務は、クロエ海賊団の動向の監視だ。

 クロエは天竜人達からは「神々の繁栄と秩序を破壊しようとする()」と憎悪され恐れられているが、その無双ぶりと凶暴さから迂闊に手を出せない。海軍としても彼女との全面戦争は避けたいのが本音で、しかもナワバリや傘下を持たないために足取りもわかりづらく、無駄足となる可能性が高い。

 そこで世界政府は、CP-0にクロエ海賊団へ潜入してその動向を探るよう命じた。クロエの行動を知る事で、不都合な出来事を起こす確率を少しでも減らそうという魂胆だった。ちなみに暗殺を命じなかったのは、返り討ちに遭うのが関の山だと判断してのことだった。

(とりあえずはクリア、と言ったところかしら?)

「さて、一つ訊くが……」

「っ!」

 クロエの言葉に、思わず身構える。

 しかし、彼女が口にした言葉はあまりにも意外なものだった。

「コーヒーは飲むか?」

「へ?」

 思わず変な声を出してしまう。

 もてなす気満々の相手に、ステューシーは「紅茶の方がいいけど飲めるわ」と返答。それを聞いたクロエは「淹れてくるから待ってろ」と告げて部屋を出ていった。

(コーヒー淹れられるのね……)

 悪名高い大海賊の意外な一面を早くも知って戸惑うステューシー。

 しばらくするとカップを二つ置いたトレーを片手にクロエが入室。オリジナルブレンドのコーヒーを振舞った。

「自分より図体のデカい連中に見られて緊張しただろう?」

「あ、どうも……」

 カップを片手に取り、息を吹きかけて冷ましながら一口飲む。

 すると……。

(お、美味しい!! 同僚が淹れたのよりも格段に!!)

 ステューシーは目を見開いた。

 口内に広がる心地の良い苦味、控えめな酸味、芳醇な香り……文句のつけようがないくらい美味しい。

 これで好物のアップルパイまで出されたら、溜まったものではない。

「気に入ってくれて何よりだ。政府の狗なら海賊のコーヒーは飲みたがらないと思ってた」

「えっ?」

 突然の爆弾発言に、空気が凍り付いた。

 口に残ってた苦みが一瞬で消え、代わりに冷や汗が流れた。

「……な、何のことかしら? 私は――」

「白を切るなら別に結構。まあエマとレッドフィールドは勘づいてるようだが」

(バレてる……!! こんなに早いなんて……!!)

 見る見るうちに顔を引き攣らせていくステューシー。

 クロエは〝鬼の女中〟と呼ばれる以前――ルーキー時代は〝神殺しのクロエ〟と呼ばれ、天竜人殺しで恐れられた女。ロジャーの部下となってからもその敵意と殺意は変わらず、海軍とCP‐0の大失態として語られる「18番GR(グローブ)事件」の張本人として畏怖されている。

 もし自分が天竜人直属の部下と知られれば……任務失敗では済まされない。この場で殺される。

 死を覚悟するステューシーだったが、そんな彼女にクロエは――

「まあ、好きにしろ」

「――えっ」

 クロエの言葉に、ステューシーは目が点になった。

 目の前の人間がサイファーポール、ましてや天竜人直属の諜報員だというのに、見逃すどころかこの一味に居ても結構だと言ったのだ。

「……仮初めの船員として居てもいいの?」

「お前一人の密告と暗躍で崩壊するような脆い一味じゃない。私の海賊団は砂上の楼閣じゃない」

 ステューシーはその言葉に息を呑んだ。

 圧倒的な強さを誇るがゆえの傲慢なまでの自信家のセリフだが、仲間に絶対的な信頼を寄せる船長の賛辞にも聞こえる。かつては孤高の一人海賊として海をさすらっていた女とは思えない。

「……じゃあ、私の処遇は?」

「それについては、今日の夕飯の時に全員の前で言う」

 コーヒーを飲み干すと、そのまま部屋を出ていった。

 正体を知った上で自らの船に乗せるという、あまりにも豪胆な対応。

 ロジャーの部下は、懐が広すぎるのではないか――ステューシーはそう思わざるを得なかった。

 

 

 そして、夕食時。

「者共、ステューシーは政府のスパイだが気にせず仲良くしてくれ」

『できるか!!!』

 クロエの唐突な発言に、全員がツッコミを入れた。

 あのレッドフィールドですら頭を抱え、ラカムも目に手を当てた。唯一エマだけは「じゃあ、よろしく」と軽く返答している。

「船長、考え直した方がいいど!!」

「おれ達の居場所とかバレたら、ガープあたりに待ち伏せされるに決まってる!!」

「最高戦力も出てくるぜ!?」

 デラクアヒ達は現役の諜報員を船に居続けさせるのは危険だと訴えるが……。

「ガープは待ち伏せできないタイプだろう」

「船長、そういう問題じゃねェって!!」

 当のクロエはどこ吹く風。

 しかし、必ずしも反対意見だけではない。

「おれァ構わねェぜ。サイファーポールが何を企んでるかは知らんが、チクられたところで何も変わらねェだろうよ」

「向かってくるなら蹴散らすまでだ」

「僕は母さんの言葉に従うよ! 新しい仲間なら歓迎しないと!」

 ガスパーデとエルドラゴは肯定的な意見で、来るなら来いというスタンス。

 ヤマトは船長の意向に従い、仲良くなりたがっている。

「……我は傍観者の立場とさせていただこう。貴様が責任を取れ」

「右に同じく」

「私もクロエに任せる。生殺与奪の権もね」

 レッドフィールドとラカムは、ステューシーの件に関する責任はクロエが取るべきと主張する。

 エマもクロエの判断に委ねるようで、それ以上のことは別に要求しない様子。

 それを見ていたドーマ達は、副船長まで言うならと渋々妥協した。 

「……とりあえず許してもらった、ということかしら?」

「ああ。そういう訳だから明日から雑用仕事を手伝ってくれ」

「ええっ!?」

「当たり前だろう、海賊船に乗るとはそういうことだ。便所掃除もやってもらう。明日から忙しいぞ、ステューシー」

 肩に手を添えて微笑むクロエに、ステューシーはこの任務を了承した事を後悔したのだった。




はい、という訳でステューシーがスパイ兼務で入団しました。
世界最強の諜報機関に属しているので、そのメンバーに相応しい強さを持ったことが裏目に出ましたね。

ドーマ達は当初こそ不信がってますが、一日ちょっとで絆されます。(笑)

まあ、ステューシーは今後起こる〝ある大事件〟で世界政府からの永久追放まで追い込まれますけど、それはまた近い内に。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。