〝鬼の女中〟と呼ばれる女   作:悪魔さん

47 / 122
海賊無双4が超楽しい件。(笑)
キャラクターパックでロジャーとウタのシルエットがありましたが、個人的には緑牛とベックマン、ヤマト、劇場版のボスとかがプレイアブルキャラであってほしいですね~。
あと、新世界編の衣装の追加もしてほしいところ。サカさんの白スーツとか、ビッグ・マムのおリンさんバージョンとか。


第47話〝たるむな全員〟

 〝偉大なる航路(グランドライン)〟を行くクロエ海賊団。

 愛銃の手入れを終えたエマは、船首キャノン砲の手入れをすべく甲板を移動していた。

「そろそろ火薬の調達もしないとね……あーあ、こんな事ならバギーに砲弾作りを教えてもらうんだったなァ……」

 溜め息交じりにボヤき、肩を落とす。

 銃砲類に使われる火薬は黒色火薬だが、硝石がなければ成立しない。硝石は洞窟の床や乾燥地帯の地表に生成されるもので、雨が多い地域では水に溶解するせいで鉱脈ができにくい。それゆえに探して掘り出すよりも製造する方が主流だ。製造法もいくつかあるが、どれも数年がかりのものであるために結構高かったりする。

 そういう意味では、大砲好きの海賊とも言われる弟分がどうやって火薬を集めてるのかが気になる。自前で火薬を製造しているかもしれないと考えると、再会した時に訊いておくべきだった。

「あとでカネの残高確認しないと……ん?」

 ふと、船首楼甲板から何かが空気を切る音が聞こえた。

 気になったエマは気配をカモフラージュさせて近づくと、視線の先でクロエとステューシーが手合わせをしていた。

(……改めて思うと、クロエとスーちゃんって身長差スゴいなァ)

 片や身長270センチのクロエと、片や身長179センチのステューシー。

 比較してみると、少女と成人女性みたいな光景だ。エマもクロエに迫る高身長だが。

「〝()(ガン)〟」

 ステューシーは硬化した指で電光石火の一本貫手を放つ。

 クロエはそれを難なく躱すが、躱し方がどこかぎこちない。

 未来を視れる彼女らしくない回避方法に、エマは怪訝に思った。

「ふんっ!」

 クロエは反撃と言わんばかりに()()()()()()()突き技を繰り出した。

 刹那、ステューシーは微笑みながら驚きの技を披露した。

「――「(カミ)()」〝(ざん)(しん)〟」

 

 ボッ!

 

「!」

(残像!?)

 クロエの突きを、ステューシーは残像を残しながら回避し、彼女の死角に回った。

 六式の防御技である〝紙絵〟と爆発的な速度で移動する〝(ソル)〟の併用だ。

「おバカ」

「がっ!?」

「!?」

 死角に回り込んだステューシーは、ローキックでお仕置き。

 ちゃっかり覇気を纏ってるからか、向こう脛で受けたのもあってクロエは悶絶した。

 それを見ていたエマも驚きを隠せない。

「っ~~~~!!」

「見聞色の覇気にどうしても頼ってしまってるわ。〝紙絵〟は敵の攻撃から生まれる風圧に身を任せながら回避するの。全身の力を抜かなきゃダメ。覇気を鍛えすぎよ」

「…………」

(そうか、六式と覇気は厳密には違うもんね)

 六式は覇気と関連性があり、鍛錬方法も類似しているが、六式は武術なので「意志の力」である覇気とは区別がなされてもいる。全身を鉄の硬度にまで高めて相手の攻撃を防ぐ〝鉄塊〟が、全身を武装硬化する技と違ってほとんど体を動かせないように、比較すると全く異なる。

 紙絵も見聞色と類似しているが、完全な先読みの見聞色と違って相手の攻撃を「紙一重で避ける」ことに特化している為、攻撃範囲を読み違えるとダメージを受けてしまうという欠点があるのだ。

(成程、覇気を一切使わない修行をしてたんだ……その上、スーちゃんの技を盗むつもりか)

「全く……それじゃあ私の「(カミ)()」〝(ざん)(しん)〟の習得には程遠いわよ? あなたは戦闘の達人なんだから、手古摺らないでほしいわ、おバカ船長さん♡」

 煽りに煽るステューシーに、完全に舐められたクロエはわなわなと震えながら「善処する……」と返した。

 新入り――それも世界政府のスパイ――にマウントを取られた船長を見て、気配をカモフラージュさせながら盗み見ていたエマは笑いそうになるが、とある可能性を想像して顔を引き攣らせた。

(あれ? それってもしかして、死角に回り込んでからの大技のブチかましっていうハメ技ができるってことなんじゃ……?)

 残像がハッキリ残る程の速さで死角に回り込まれ、そのまま〝神避〟や〝錐龍錐釘〟を至近距離でぶっ放されたら、間違いなく敵対した相手が可哀そうな目に遭う。

 己を鍛え、強くなる事に一途なクロエが、これ以上強くなれば太刀打ちできる相手がもっと少なくなり、新世代の海賊達も生半可な戦力と覚悟で挑めば壊滅一択。たとえシャンクスやバレットがさらなる成長を遂げても、クロエを超えるのは困難になっていく。

「姉に勝る弟はいないっていうより、弟が姉に勝らないようにしているんじゃ……」

「親友にそんな意地汚い女だと思われてるのか、私は」

「ぴゃあっ!!?」

 突如背後から間近で聞こえた呆れ半分の声に、エマはビクッとした。

 慌てて振り返れば、ジト目のクロエが睨みつけていた。

「ク、クロエ……」

「何で覗いてたのがバレたんだって顔だな。……お前さっき笑っただろう、私が善処すると言ったあたりで」

「ア、アタリデス……」

 エマは冷や汗が止まらなくなった。

 何でだろう、物凄く悪い予感がする。

「私を笑えるってことは、当然やれるんだよな?」

「いや、笑ったってそういう意味で笑ったんじゃ――」

「やれるんだよな?」

 ニッコリと笑うクロエだが、放つ圧が尋常ではない。

 エマは咄嗟に逃げようとしたが、あっけなく首根っこを掴まれてしまう。

「そうだ、たまには覇気抜きの修業もしないとな。――付き合え、どうせ暇だろう?」

「い、いや、私には大砲の整備が……」

「他の奴らに任せる。ステューシー、ガスパーデに銃砲類の手入れをするよう言え。元海兵だから手慣れてるはずだ」

「うふふ、了解♪」

 微笑みながらその場から退散するステューシー。

 副船長に助け舟を出さない新入りに呆気に取られていると、親友の圧のこもった声が耳に届いた。

「よし、今日はみっちり扱いてやろう。ありがたく思え」

「理不尽!!」

「何を言う。世の中原則不平等、理不尽は日常茶飯事だろう?」

 問答無用で覇気を放ち始めたことで、逃げ場を失ったエマは涙が出そうになった。

 なお、このあと彼女は親友と壮絶な殴り合いを繰り広げ、ラカムに「二人揃って脳筋か!?」とこっぴどく叱られたのは言うまでもない。

 

 

           *

 

 

 海賊とはお尋ね者であり、海兵に追われる身だ。

 そして海賊が大物であれば、それを追う海兵も自然と大物になる。

 ましてや、天下に名を轟かす〝鬼の女中〟ともなれば、彼女を潰しにかかれる海兵など一握りの強者達でしかない。

「そりゃそりゃそりゃそりゃーーー!!!」

 とある海域で、〝海軍の英雄〟ガープはクロエ海賊団と遭遇し、容赦なく攻撃した。

 本来ならば今の海軍の方針としてはかなり問題行為なのだが、ドが付く程にフリーダムなガープには通用するわけなどなく、問答無用に襲い掛かった。通常運転と言えば通常運転だが。

 その対処に追われるクロエ海賊団は、砲弾の嵐をどうにか捌いて逃げていた。

「ああ、もうしつけェな!!」

「皆、死ぬ気でやれェ!!」

「やあああっ!!」

 各々が得物から斬撃や打撃を飛ばし、どうにか相殺するのが精一杯。

 するとここで、エルドラゴが動いた。

「わしに任せろォ!! ――ガアァァァァァァァァ!!!」

 エルドラゴは凄まじい大声を出し、大きく開けた口からレーザーを放った。

 息が続く限り声を出し、砲弾の弾幕をあっという間に薙ぎ払った。

「おおっ!! 弾幕がなくなったぞ!!」

「やるじゃねェか、エルドラゴ!!」

「ガハハハハハッ!! これぐらい朝飯前……って、また来たぞォ!!!」

「さっきより増えてるーーー!!?」

 ゴエゴエの実の攻撃が煽りとなったのか、ガープは〝拳骨流星群〟でさらに砲弾を投げまくった。

 とてもエルドラゴでは撃ち落とせる量ではなく、また全員で死ぬ気で対応した。

「クソ、そもそもガープが何でここに……!!」

 ラカムは愛用の戦鎚・衝角で飛ぶ打撃を放ちながら歯噛みする。

 伝説級の大海賊達と渡り合った〝海軍の英雄〟の威光と実力は、海賊王亡き海でも健在である。カイドウやビッグ・マムと真っ向からぶつかったり、バスターコール艦隊を攻撃したり、とにかく暴れ回るクロエもガープを脅威と見なしており、戦う場合は全力を出す必要があると明言する程だ。

 そんな生ける伝説が、クロエ海賊団壊滅に動いた。政府の命令か独断専行かは不明だが、本気で沈めに行ってるのは嫌でもわかった。

「やっぱり、ステューシーがチクったか……!?」

「正確に言えば、私がステューシーに頼んでわざと情報を流したんだがな」

 軽く斬撃を飛ばして砲弾を斬るクロエの爆弾発言で、船内の空気が一気に凍った。

 ガープ襲撃は、何とクロエが下手人だったのだ!

「な、何で……?」

「お前ら、最近たるんでるだろう」

 顔色一つ変えずハッキリとそう言う船長に、仲間達は開いた口が閉まらない状態になった。情報をリークしたステューシーも、理由を知らなかったのか若干引いてる。

 仲間達に鍛錬を推奨するクロエだが、幼少期のスパルタ教育の影響か、実戦に勝る経験はないという思考回路の持ち主である。ゆえに彼女としては、仲間達を鍛えたいから喧嘩を売ってきてほしいというのが本音だが、名実共に世界最高峰の海賊の一角である〝鬼の女中〟と渡り合える猛者など世界中を探してもそうはいない。大抵の実力者達は壊滅的な被害を恐れて積極的に戦おうとしないので、仲間達の戦闘能力の停滞及び低下を危惧していた。

 そこでステューシーのスパイ活動に目を付け、事前に進路上に海軍を待ち伏せさせるように要請した。任務には忠実な彼女は、見事に複数の軍艦と海軍が誇る強豪海兵を召喚させ、クロエにとってはお望み通りの展開になったという訳だ。ステューシーはその理由を知らされなかったが。

「そういう好戦的なところ、受け継がないでほしかったなァ……」

「貴様も我から見れば相当な戦闘狂だぞ……」

「それは大袈裟じゃないか?」

『ウソだろ、おい!!?』

 ラカムを筆頭に、レッドフィールドとガスパーデ以外の男性陣は呆然とした。

 クロエは前世に無能な同僚の尻拭いを何度もした件から、ストイックな気質もあって「たるんでる状態」を嫌う。絶対的強者の威光に依存し、能力や覇気の研鑽に努めない者は心底侮蔑するので、仲間達がそんな痴れ者の集いになってほしくないという想いがある。何よりも純真無垢なヤマトが自己研鑽に努めているのに、大の大人が己のチカラに慢心するなど言語道断だ。

 そこでクロエは、ステューシーが政府と通じている立場を利用し、海軍を待ち伏せさせるように依頼したのだ。前半の海の海賊達では相手にならないので、海軍本部の将官達ならいい腕試しの機会になると考えたのである。まさかガープが来るとは思わなかったが。

「ハァ~……ったく、このバカ船長……!!」

「ガハハハッ!! まァ気にするだけ無駄という……って何じゃありゃあ!?」

 盛大な溜め息を吐くラカムを豪快に笑ったエルドラゴだったが、軍艦の方に目を向けた瞬間、目玉が飛び出そうなくらいの勢いで叫んだ。

「ぬぉおおおおお!!! これならどうじゃあァ~~!!!」

「超特大鉄球~~~!!?」

「うわーーー!!! やっぱりデカいのを持ち出してたーー!!!」

 軍艦並みの大きさの鉄球を持って構えたガープに、ヤマトとエマは悲鳴に近い叫び声を上げた。

 いくら海賊王から譲り受けた伝説の海賊船でも、直撃を受ければ海の藻屑だ。

 流石に狼狽えるエマ達に、さらに追い打ちをかけるような出来事が襲い掛かった。

 

 ガキィンー……!

 

「海面が凍った!?」

 凍り付いた海面に捕らわれ、身動きが取れないオーロ・ジャクソン号。

 軍艦の方に目を向けると、ガープの隣で氷の手を振るクザンが見えた。

「ごめんよー」

「小僧が……!!」

 軽い調子で悪びれる様子のないクザンに、レッドフィールドは青筋を浮かべた。

 が、ここでついに〝彼女〟が動いた。

「狼狽えるな、私が出る!」

 愛刀・化血を抜いたクロエが出撃し、宙を蹴って高速移動しながら鉄球に近づく。

 それを待ってたと言わんばかりに、ガープは特大鉄球をぶん投げた。

「〝錐龍錐釘〟!!」

 

 ガキィン! ドゴォン!!

 

『えええええええええっ!?』

 武装硬化した化血の切っ先が鉄球に深く刺さった瞬間、粉々に砕けた。

 これには仲間達はおろか、クザン達も口をあんぐりと開けて驚愕せざるを得ない。

「フッ……」

「ほう……じゃじゃ馬がやりおるわい!!」

「今度はこっちの番だ、ガープ!! 〝武脚跟(ブジャオゲン)〟!!」

 クロエは覇王色の覇気を込めた踵落としを上空で放ち、覇気を爆発的に拡散させる。

 発生した衝撃波は軍艦に襲い掛かるが、ガープは何とそれを拳から発した莫大な覇気で打ち破った。

「何っ!?」

 これにはクロエも驚愕。

 するとガープが一瞬で跳躍し、武装硬化した拳を振るった。

 が、見聞色の先読みで回避したクロエは、愛刀の鞘を武装硬化させて攻撃。右頬・左頬・顎の順に殴り、最後に唐竹割の要領で脳天に振り下ろし、凍った海面が陥没する勢いで叩き伏せた。

『ガープ中将!!』

 氷の足場に仰向けで倒れる海軍の英雄。

 しかし、全盛期こそ過ぎれど実力は未だ健在。ガープは「温いのう!!」と元気よく立ち上がり、スクワットする余裕を見せた。

「相変わらずデタラメだな、ガープ…」

 氷の足場に降り立つクロエは、覇王色を纏いながら見やる。

 無傷――という訳ではないだろうが、ダメージを悟らせずに悠然と立つ英雄に、一人海賊時代に初めて戦った時を思い返した。

 あの時は全盛期のパワーで鳩尾を殴られ、全速力のショルダータックルを食らった。スパルタ教育で生命力や身体能力を強化しなければ最悪死んでただろう。そう思うと、やはりチンジャオの修業は正解で、同時に自分は()()()()()()()()()()のだと思い知る。

「ぶわっはっはっはっ!! 聞いたぞ、潜り込んだスパイを利用してわしらをわざと誘き寄せたとな!! ――大方の見当はついとる、たるんだ子分共を扱く為じゃろう?」

「いかにもそうだ」

「ちょっとちょっとォ、海軍も暇じゃないんだから……」

「少なくとも貴様にだけは言われたくないと全員思ってるぞ」

 クロエの冷たいツッコミに、敵味方問わず頷いた。

 今のクザンは、自らが掲げる正義を変えている。かつては「燃え上がる正義」を掲げて情熱的に任務を遂行していたが、18番GR(グローブ)事件やオハラの一件で自分の正義を悩んだ末に寛容さを持つ「ダラけきった正義」を掲げるようになった。

 とはいえ、掲げる正義は変わっても素の性格は変わらず、いつも通りのマイペースな野郎ではある。そんな男が「自分も暇じゃない」と言えば、「サボっているお前が言うな」と言いたくなる。

「行くぞじゃじゃ馬!! 歯ァ食いしばれ!!」

「望むところだ……!」

 覇気を高める両者。

 双方から発する威圧は、空気だけでなく海をも震わせた。

「〝神鳴〟……」

「むっ!」

「〝神威〟!!」

 覇王色を纏った飛ぶ斬撃が迫る。

 ガープは武装硬化した両腕を交差させてガードすると、「効かんわーーー!!」と笑いながら打ち破る。

 しかし、それはクロエが仕掛けた陽動。彼女は隙を見せたガープに肉薄し、化血の刀身に武装色と覇王色を纏わせた。

「〝神避〟!!!」

「っ!?」

 

 ドォン!! ボコォン!!

 

 凄まじい衝撃波が発生し、同時に彼女の覇気が暴発。

 ガープはそのまま吹き飛ばされてしまい、大きな水柱と共に海に落水した。

「ガープさん!!」

「ガープ中将が!!」

「スゲェぜ、船長!!」

「あの伝説の英雄を……!!」

 海軍に動揺と混乱をもたらした〝鬼の女中〟に、仲間達は歓喜する。

 だが、当のクロエの眼光は未だ鋭く、警戒心も強く覇王色も纏ったままだ。

「――っ!!」

「どりゃあああああっ!!」

 クロエは見聞色で強大な気配を察知し、咄嗟に後退。

 その直後、真下から氷をぶち破ってガープが奇襲を仕掛けた。

「間に合っていたか…!!」

 苦い顔で一筋の汗を流す。

 ガープは〝神避〟を受ける直前、強大な覇気を全身に流したことで威力をある程度殺していたのだ。

 的確かつ迅速な判断力と鍛え抜いた覇気の強さに「流石だな」と称えつつ、クロエは今度はバリバリと覇王色を纏わせた化血を掲げた。

「〝閃電娘娘(せんでんにゃんにゃん)〟!!!」

 

 ドドドドドドッ!!

 

「うおおおおっ!?」

 刹那、化血の刀身から覇気の雷が放たれ、度肝を抜かれたガープは紙一重で躱していく。

 覇王色を纏う攻撃そのものは、何十回と殺し合ったロジャーが扱える為、幾度となく見た事がある。だがこれ程までに精密かつ強烈な攻撃は、今まで見た事がない。覇王色を纏える猛者は他にも知っているが、クロエはガープの目から見ても別格だった。

 正直な話、覇気だけで言えば在りし日のロジャーに匹敵しているとガープは判断している。しかもまだ三十代なので更なる成長の可能性があり、おそらく肉体の全盛期はこれから先と思われる。これで全盛期を迎えれば、彼女を単独で撃破するのはほぼ不可能になるだろう。

「全く、とんだじゃじゃ馬になったもんじゃわい……!!」

「どうしたガープ、()()()()()私の体力切れを狙ってるのか?」

「やかましい!! お前のような小娘、チンジャオの二の舞にさせてくれる!!」

「ガープさん、そんな安い挑発に乗んないでくれよ!!」

 挑発にしっかり乗ってしまったガープに、クザンは盛大なツッコミを炸裂。

 クロエは不敵に笑いながらも、覇王色の攻撃で追撃。しかし虚を衝かれたガープは慣れてきたのか、段々と躱しながら懐に入れるようになり、彼女に鉄拳を振るった。

 それを見聞色で読んだクロエは、覇気を纏った鞘でガードする。

「お前さんの攻撃は凄まじい……が、まだ粗さが目立つのう!!」

「つい先日編み出した新技だ、粗いのは当然……だっ!」

 

 ガッ!

 

「ぬわっ!?」

 クロエは覇気の雷を止め、何とおでこを武装硬化させて頭突き。

 〝見聞殺し〟を発動していたからか、それとも単に予想しなかったのか、ガープは直撃を受けてしまう。その一瞬の隙を見逃さず、刀と鞘の二刀流で近接戦闘を仕掛け、飛ぶ斬撃と飛ぶ打撃の嵐を繰り出す。

 あまりの強大さゆえ、ガープの背後の軍艦にも当たり、船底や甲板にも穴が空き始める。

「ガープ中将!! 軍艦が!!」

「っ……」

 部下の報告に、ガープは苦い顔を浮かべた。

 それを見たクロエは猛攻を止め、一旦距離を置いて口を開いた。

「――勝負は預けよう、ガープ。全力を出せない今のお前に勝っては、〝弟達〟にシメシがつかない」

「……互いにその方がいいようじゃな」

 クロエは背後の部下達がガープを縛っていると判断し、決着は次に預ける形にすることを提案。ガープもあまり暴れすぎると本部への帰還が困難になると思ったのか、その申し出を受け入れた。

 彼女の攻撃性を知るクザンは、〝鬼の女中〟なら徹底的に叩き潰すと思っていたため、ある種の潔さに感心もしていた。

「……という訳じゃ! お前ら、帰るぞ!!」

「いや、帰るどころか救援を呼ぶべきですよ!! 軍艦の船底に大穴が……!!」

「やかましい、クロエが全部悪いんじゃろうが!! そういうことだからクザン、お前どうにかせい!!」

「何でおれに振るんですか!?」

 ギャーギャーと騒ぐガープの部隊。

 その賑やかさをどこか懐かしそうに見つめると、背を向けて船に戻る。

「流石だ母さん!!」

「フッ……当然だ、ガープとタメ張るくらいやらないとこの一味の長は務まらん」

「ビッグ・マムの時もカイドウの時もそうだけど、ホント規格外過ぎるよね」

 抱き着くヤマトを抱擁するクロエに、エマが呆れた笑みを浮かべる。

 しかし、それ以外の面々はガープの猛攻に疲弊しており、中には大の字で仰向けになる者もいた。

「……やっぱりな。これでは私が出張れない時が不安だぞ」

「てめェと殺し合いたい物好きが何人いると思ってんだ」

 強すぎる〝鬼の女中〟を倒せる者はそうそういないだろうと決めつけるガスパーデだが、クロエはそんな事はないと否定した。

「私を狙う奴は結構いるぞ? バレットとカイドウ、リンリンにシキ、海兵だとガープとゼファー、サカズキ……」

「も、もういいど船長!!」

「それ以前に一番最初に名が挙がるのが弟分ってのもおかしいだろ」

 怪物の相手ができるのは怪物だけだと知り、一同は今後追いかけてくる強敵に震え上がるのだった。




またまたクロエの新技が登場。
名前は〝閃電娘娘(せんでんにゃんにゃん)〟。名前はかわいらしいとお思いでしょうが、この閃電娘娘は中国民間信仰や道教で奉じられている雷神〝(でん)()〟の別名で、かの「封神演義」では〝(きん)(こう)(せい)()〟の名で仙女として登場しているスゴい女神様なんです。
ちなみに怒らせたら中国一怖いそうです。(笑)

それと、以前感想にて「レイリーやおでんの技も使えるのか」という質問がありました。
これについては「クロエの二刀流とおでんの二刀流は違うので使えない」と返答しましたが、彼女は使いたいと思った技は相手に教えを乞いますので、出会った相手次第です。人間関係には律儀なので、見返りとして自分の技を授ける可能性もあります。
事実、クロエはヤマトに神避の伝授を考えてますし、ロジャー海賊団時代には弟達に覇気を駆使した戦い方を教えてますから。


そんなわけで、次回はシャボンディ諸島。
レイリーとの再会とラフテルのエターナルポースにまつわる真実、そして大事件のきっかけへ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。