あとがきにクロエのイメージイラストを載せます!
ここはマリンフォードの海軍本部。
大海の秩序を守る正義の軍隊の中枢で、元帥コングは伝令将校の報告に身体を震わせていた。
「……で、クロエがシャボンディ諸島に来ているという情報は本当なんだな……!?」
「はっ! 巡回中のボルサリーノ中将がオーロ・ジャクソン号を目視できたので、間違いないかと……」
コングはその言葉に頭を抱えた。
クロエ絡みでシャボンディ諸島は、いつもロクな目に遭っていないからだ。
一度目は忠告を無視したとして天竜人一家を斬殺し、ゼファーの追撃を地面を割ってその割れ目に飛び込むという奇策で逃げられた。二度目は奴隷の首輪を投げつけて天竜人を爆殺し、センゴク達の猛攻を耐えきった末にロジャーの介入で逃げられた。
そしてついに三度目の上陸。来訪というより襲来に近いそれが何をしでかすか、全くもって予測がつかない。ましてや彼女はロジャーの後継として大海賊時代に君臨しており、実力はロジャー海賊団時代とは比べ物にならない。
「諸島は今どうなっている?」
「現在、海軍基地に待機している兵力は五千。こちらからは〝
「そうだな、クロエの逆鱗に触れかねない要素は徹底的に封じ込めなければ……」
コングは考えを巡らせる。
クロエがこのまま新世界の海へ行くならばコーティング作業が必須であるので、大よそ三日から四日はかかる。シャボンディ諸島が四つの海と〝楽園〟から名乗りを上げた海賊達が集結する地である以上、一度暴れるとサイクロンみたいに巻き込んでいく彼女の首を狙う者も一定数いる。故にクロエ海賊団が騒動を起こした際、相手が海賊ならば海軍は出しゃばらずに静観を決める方が利口だ。
天竜人に関しては、クロエを憎悪する者達が年々増加しているが、そのあたりは五老星が根回ししており、全面戦争は何とか回避している。天竜人直属のCP‐0も度々クロエ海賊団を殲滅しろという連絡が来るが、極めて困難な任務ゆえに今すぐは難しいと上手にはぐらかしているので、当面は持つだろう。
問題なのは、人攫い屋だ。彼らは
「これでマリージョアに乗り込まれたら、被害はオハラの時とは比べ物にならんぞ……!!」
「はっ……それと何とも間が悪いことに、天竜人のジャルマック聖が訪れるとの事で……」
「なん……だと……!?」
その報告に、コングは世界は残酷だと嘆きたくなった。
「っ……いいか、シャボンディ諸島に待機している海兵達に伝えろ!! 人攫い屋を手当たり次第取り締まれと!! あの女の暴走は是が非でも食い止めねばならん!! 反抗する者は問答無用で拘束して構わん!!!」
「りょ、了解っ!!」
海賊クロエ・D・リードの攻撃性をよく知るコングは、嫌な汗を垂らしながら声を荒げたのだった。
*
その頃、シャボンディ諸島。
13番
「全く……クロエは相変わらずのじゃじゃ馬だな」
「あら、レイさん。クロエちゃんの記事?」
女店主のシャッキー――本名はシャクヤク――が、解散以来老け込んで渋みが増したレイリーに声を掛ける。
彼女はレイリーとは事実婚の夫婦のような間柄だが、その正体は何と覇気を駆使する「
そんなシャッキーが注目してるのが、ルーキー時代に天竜人殺しで悪名を轟かせ、大海賊時代到来後は伝説の海賊の一人となった元ロジャー海賊団のクロエだった。
「あの娘を御せるのは、ロジャーだけだった。私でも無理だったからな」
「あらあら、随分とお転婆なのね」
「アレはお転婆という言葉ではすまないぞ、シャッキー……」
遠い目でレイリーは呟くと、カウンターに置かれたクロエの手配書に目を通した。
「今のクロエの懸賞金30億9600万ベリー。……現役で30億越えの海賊は、白ひげやビッグ・マム、シキ、カイドウくらいだ。あの子が奴らと肩を並べるようになるとは……」
「〝魔弾のエマ〟ちゃんも、懸賞金が25億1200万ベリー。二人だけで50億以上なんて、相当な強者ね」
「それに本人達はその気じゃないが、人間関係を考慮すれば呼びかけ一つで世界の勢力図はひっくり返る」
レイリーはグラスの酒を飲み干す。
ロジャー海賊団の後継と言えるクロエの一味は、その気になれば赤髪海賊団やダグラス・バレット、王直を味方につけることができる。今の海軍や覇を競う大海賊達も、ただでさえとんでもなく強いクロエ海賊団に加え、ロジャー海賊団の残党と海賊島の無法者達を一度に相手取るのは困難を極める。
二人共シキのような思想信条ではないことが、本当に幸運である。
「……さて、噂をすれば影が差すと言うが、まさか本当に来るとはな」
「?」
シャッキーが首を傾げた直後、扉を開けてクロエが現れた。
ロジャー海賊団解散後以来、およそ10年ぶりの再会だった。
「久しぶりじゃないか、クロエ。相変わらず愛想がないな」
「そういう貴様は随分と老けたな」
クロエはコートをなびかせながら歩み寄る。
それに続き、エマやラカム達が入店する。
「レイリーさん! 久しぶり!!」
「エマじゃないか! また随分と勇ましくなったな」
「〝冥王〟シルバーズ・レイリー……流石に本物は違うな……」
続々と入店し、一気に賑やかになる。
クロエはレイリーの隣に座ると、コートから
「単刀直入に言う。私が顔を出したのはこれを見つけたからだ」
「……それは……!!」
「ラフテルの座標が記録された
「ラフテルへの
クロエが取り出した物を見たレイリーは瞠目し、初めて目にしたステューシーに至っては驚きを通し越して顔を青ざめていた。
海賊王を目指す海賊は勿論、それを阻止したい海軍や世界政府も欲しがる、世界中がひっくり返るロジャーの遺産。クロエ曰く、海王類を仕留めた際にたまたま腹から出てきたとのことだ。
「……レイリー、これはどういう事だ?」
「――そうだな。あれはラフテルに到達した直後のことだ」
レイリーは、最後の航海にあった秘話を語り始めた。
それは、大海賊時代開幕より一年前。
前人未到の〝
「何の冗談だ!!
帰途、破天荒極まりないが人一倍仲間想いな船長は、珍しく船員を怒鳴った。
なぜなら、命じてもいないのにラフテルの座標を記録したからだ。
「万が一の為です! もしまた必要になったら……」
船員は良かれと思って記録したと理由を述べたが、寿命が近いロジャーは「万が一? ならねェよ。おれ達の冒険は終わったんだ」と断言した。
――この冒険に、
ロジャーは強引に
「こんなモンに頼る奴に手に入れられる宝じゃねェ。そうだろう?」
そう言い放ち、ロジャーは
「あー!! 船長~!! もう行けねェ……!!」
「おれ達は……
船員が頭を抱える中、レイリーは未来に思いを馳せた。
「〝
「そりゃ、おれの息子だな!」
「いねェだろう。クロエならわかるが、お前の息子だと? 笑わせるな!」
「これからできるってんだよ、相棒!!」
ロジャーは豪快に笑いながら、帰りを待つ者達がいる水平線を眺めるのだった。
「……そうだったのか」
「ああ……だからそれは本物だ」
レイリーの話に、一同は言葉を失った。
しかし、クロエは一言「そうか」と言い、そのまま仕舞い込んだ。彼女にとって、伝説級のお宝もその程度の価値なのだろう。
「……他に用はないのか?」
「私としてもこの島にはいい思い出がないからな。とっととコーティングして新世界へ行く」
「お前が原因だろう!!」
ボヤくクロエに、レイリーはカチンときたのか声を荒げた。
ロジャー海賊団時代から、彼女は口すっぱく注意してもやらかしてきた。エマが加入してからもじゃじゃ馬ぶりは変わらなかったので、今もじゃじゃ馬のままなのだろう。
「君達には随分と苦労をかける……」
『ええ、全く』
口を揃えて頷くラカム達に、クロエはジト目で睨むと、一斉に目を逸らした。
怒らせたら終わるという認識はあるようだ。
「さて、話を変えようレイリー。コーティング職人の所在についてだが……」
「それなら私が請け負う。今はコーティング職人のレイさんで通ってるからな」
「フーン……ラカム、せっかくだから教えてもらえばいいじゃないか。こないだ言ってたろう」
クロエはラカムがコーティング技術を覚えたいという話を思い出し、彼に話を振った。
要領が非常によく手先も器用なラカムなら、レイリーと一緒にやればすぐ習得できるだろう……そう判断したのだ。
「そこらの職人でもよかったんだが、まさか冥王レイリーに教わるとは思わなかったな……」
「ミリオン・ラカムか。噂は聞いている。懸賞金は確か15億6000万ベリーだったな」
「え!? ラカム君、いつの間にそんな金額に!?」
「おれだって初耳だよ。何であんたが驚いてるんだ」
あわあわするエマに冷静に切り返すラカム。
だが、15億越えの賞金首ははっきり言って大海賊である。
そもそも賞金額が3億ベリーを超えると滅多な事では上がらず、それ以上はとんでもない大事件を引き起こしたか世界的な大海賊の部下であるかのどちらかになる。ラカムの場合は、戦闘力の高さに加え、あの〝鬼の女中〟の一味の古参という事実がその首に15億以上懸けられる理由なのだろう。
「そこにいる君達も、全員3億越えの強者ばかりだぞ?
「きゅ、急に言われると照れるど……」
「ましてや冥王に言われればな……」
デラクアヒやマクガイ達は、冥王の評価に一斉にデレデレし始めた。
いい年した海賊が気持ち悪いマネをすると思ったステューシーだが、空気を読んで言わないことにした。
「……君はどこかで見た顔だな」
「え!?」
「そう言えば昔、私もあなたの顔を見た覚えがあるわ。二十年以上前だけど……」
レイリーとシャクヤクの一言に、ステューシーはドキッとなった。
決して惚れたわけではない。彼の意味深な言葉に動揺したのだ。
「確か、ロックスの船に乗ってたな。名前は確か――」
レイリーが名前を言おうとした時、プルプルという音が鳴り響いた。
電伝虫の受信音だ。
「エマ、お前の子電伝虫じゃないか?」
「あ、そうっぽい」
エマはコートの内ポケットから子電伝虫を取り出す。
シャボンディ諸島上陸の際、クロエはレイリーに会うAグループと買い出しをするBグループ、船番のCグループで分けている。
Aグループはクロエ、エマ、ラカム、ステューシー、マクガイ、デラクアヒの六人。Bグループはドーマ、
その内のBグループの子電伝虫からの連絡だ。
「はい、もしもし」
《そ、その声は副船長か!? 船長いるか!?》
「どしたの、切羽詰まったような声で」
連絡してきたのはドーマだが、いつになく慌てふためいている様子。
怪訝に思ったエマは、ひとまずクロエに交代して事情を聴くことにした。
「私だ。どうしたドーマ」
《船長、大変だ!! ヤマトがいなくなっちまった!!》
「……は?」
クロエはその言葉に凍りついたのだった……。
……という訳で、以前より示唆されていた「ある大事件」のきっかけは、生まれて初めてシャボンディ諸島に来たヤマトの失踪です。
これが何を意味しているかは、シャボンディ諸島がどういう場所かを知る皆さんなら大体察しているでしょう。そういうことです。
さて、お待たせしました。ようやくクロエのイメージイラストです!
【挿絵表示】
「ムチムチじゃねェじゃねェか!!」と思った方、本当に申し訳ありません。クリスタ使ったんですが自分の画力はこれより上手くいきませんでした……。(泣)
もし改良できる方いれば、遠慮せずイラスト化して送ってくださいな。
ちなみにクロエはブラではなくサラシです。