〝鬼の女中〟と呼ばれる女   作:悪魔さん

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彼が満を持して再登場です。


第53話〝再戦の時〟

 島に上陸したクロエ海賊団は、早速百獣海賊団との戦闘となった。

「〝閃電娘娘(せんでんにゃんにゃん)〟!!」

 掲げた化血の刀身から覇気の雷を放ち、百獣海賊団の下っ端を一気に蹴散らすクロエ。

 新世界有数の海賊団とはいえ、在りし日の海賊王に匹敵する威力と練度と見なされる彼女の覇気には、一溜りもないようだ。

 しかし、その程度で瓦解するような一味ではない。すぐさま増援を呼び、さらには災害の二つ名を冠する幹部格も顔を揃えた。

「クロエ海賊団……ワノ国以来だな」

「キングとクイーンか」

 カイドウよりも先に、二人の巨漢――〝火災のキング〟と〝疫災のクイーン〟との再会を果たす。

 二人共、ワノ国の戦争でクロエ達と壮絶な死闘を繰り広げた猛者である。

「ムハハハ!! マリージョアにカチコミに行くたァ、ビッグ・マムのババアと大差ないイカレっぷりだなァ!! ……カイドウさん、悔しがってたなァ……」

「やっぱりか」

 ズーン……と重い空気を纏って項垂れるクイーンに、クロエはほんの少し同情した。どうやらカイドウは、あの事件に参加できず結構やさぐれていたようだ。

 だが好敵手の身の上話よりも、クロエとしては気になる事が一つあった。

「……そいつ、新顔か?」

「あ、確かにワノ国の時はいなかったね」

 エマも気づき、興味深そうに目を細める。

 百獣海賊団はカイドウを頭目に、彼を支える腹心が二人だったが、いつの間にか一人増えているのだ。

 身長はクロエの一味でも随一の巨漢であるガスパーデを超え、二つ結びにした三つ編みの金髪の長髪と大きな二本の角、口を覆う金属のマスクが特徴的だ。両手にはショーテルのように大きく湾曲した刀を携えており、二刀流の剣士であることが伺える。

 〝旱害のジャック〟……カイドウの部下では新参者だが、億越えの賞金首である強者だ。

「……お前が〝鬼の女中〟か」

「いかにもそうだ」

「ジャック、クロエはカイドウさんの獲物だ」

 一歩前に出ようとしたジャックを、キングが諫める。

 その直後、クロエは強い覇気が急接近するのを感じ取った。

「っ!! ……全員下がれ!!」

「え?」

「どけ、バカ共ォ!!!」

 クロエが退避を促した時、地鳴りのような大声が響いた。

 それと共に森の中から、青き鱗を全身に纏った人の姿の龍が満面の笑みを浮かべながら突撃してきた。

 人獣型になったカイドウだ。

「来たか!」

 カイドウは八斎戒に、クロエは化血に覇王色の覇気を纏わせ、挨拶代わりの一撃を打ち合った。

「フンッ!!」

「うおおおおああああああ!!」

 

 ガンッ!! ボォン!!!

 

 クロエとカイドウの覇王色が、轟音と共に激突。

 地面に亀裂が生じ、空気が震え、互いの覇気が大爆発。島中に猛烈な衝撃が勢いよく駆け巡り、双方の仲間達は海岸まで吹き飛ばされそうになる。

 覇王色の衝突が鎮まると、両者は互いに笑みを浮かべて睨み合う。

「ウォロロロロォ!! 元気そうだな、クロエ!!」

「フフッ……! 何年振りだろうな、カイドウ」

「……ウォロロロロロロ!!」

「――ハハッ! アッハッハッハッハッ!!」

 久しぶりの好敵手に、胸を躍らせる二人。

 が、それも束の間。再び覇気を全身から放ち、得物を突きつける。

「「身ぐるみ置いてけ」」

 その一言で、海賊達は一気に殺気立ち、士気を高めた。

「おれ様達に続け、ゴミクズ共ォーー!!」

「奪い取れーー!!」

 クロエ海賊団VS.百獣海賊団――ワノ国兎丼での戦争以来、二度目の激突。

 島だけでなく周囲の海域をも揺るがす激闘が、ついに勃発した。

 

 

           *

 

 

 クロエとカイドウの激突は、すぐさま海軍本部に報告が行った。

「センゴク元帥!! 新世界にて、クロエ海賊団と百獣海賊団が交戦!! 現在進行形で戦闘中です!!」

「な、何でそうなっとるんだーーー!?」

 センゴクは目玉が飛び出そうな勢いで驚いた。

 二人はヤマトを預け預かる間柄で、良好な関係だったはず。それがまさかの接触どころか全面衝突中。

 仲が良いのか悪いのか、というレベルではない。世界政府の最重要警戒対象である最強の海賊達が衝突すれば、世界の均衡にも大きく影響を与える。

 これが単なる奪い合いや殺し合いならまだいい方で、最悪なのはクロエとカイドウが何らかの形で手を組む事を決めた場合。海賊同盟が成立すれば、世界政府はおろか大海賊時代の頂点である白ひげですら勝ち目がなくなる。

「あの女は狂犬か何かか!? 自分が世界の均衡にヒビを入れる程のチカラがある事を自覚せんか!!」

「絶対自覚無しだと思いますよ、おれ」

「わっしらの状況も考えてほしいねェ~……」

 新体制へ移行しようとしている中で知らされた、大海賊同士の武力衝突……状況としては最悪だ。

 そこで立ち上がったのは、〝赤犬〟の二つ名で新海軍大将に任命されたサカズキだった。

「なら、わしが行っちゃる!! あの女はマグマで徹底的に焼かにゃあならん!! センゴクさん、迷う必要はありゃあせん!!」

「うむ……この際、新たに任ぜられた海軍大将の睨みを利かせるのもアリだな」

 サカズキの出撃を、センゴクは認めた。

 海軍大将が新世界で幅を利かせれば、強豪海賊達への抑止力として十分に発揮する。大海の秩序を維持する上で、海軍本部の最高戦力が最前線で出張るのは大きな意味を持つのだ。

「ただし、あの二人との戦闘だけは避けろ。絶対にだ」

「っ!? クロエの首を取るのは許さんっちゅうんですかい!?」

「正当防衛ならまだしも、こちらから仕掛ければクロエとカイドウが黙ってる訳がない。同時に相手取る事態となれば、今の海軍の戦力では不可能だ」

 コングは海軍元帥を辞し、世界政府全軍総帥という役職としてマリージョアに勤務する事となった。最高戦力だったセンゴクは元帥に、ゼファーは次代の正義の味方を育てる教官になる形で前線から退き、ガープとつるを除いて最前線で戦う有望株はこれからであり、後進はたくさん育てねばならない。

 そんな中、クロエとカイドウを怒らせて袋叩きに遭ったなどとあれば、海軍の信頼や威厳、軍内の士気にもかかわる。だからこそ、勇み足でも討ち取りに行くのではなく、あくまでも両者の牽制でなければならない。

「どの道、今回のマリージョア襲撃で海賊共の動きも活発になっている。新体制の威光を示す為にも、そういう奴らを片っ端から仕留めてけばいい。……そっちの方がお前の性に合っているだろう? サカズキ」

「……センゴクさんだけでなくゼファー先生もそこまで言うんなら、今回はわしゃこれ以上何も言わんわい。このどうしようもない鬱憤、海のゴミ共相手に思う存分発散するんじゃけェ……!!」

 サカズキは軍帽を被り直し、肩を怒らせて会議室を出た。

 

 

 クロエとカイドウが再戦をしている頃。

 新世界のある海域で、白ひげは苦い顔で新聞を眺めていた。

「こいつァ……」

 困惑に満ちた声色で、目を細める。

 世界最強の男としてこの時代の頂に君臨する彼も、黒歴史が存在する。ロックス海賊団時代だ。

 船員のほとんどが人の下に付けないタイプの人間なのでチームワーク皆無な上、メンバー間の仲があまりにも悪かった為に殺し合いが絶えなかった凶悪ぶりだったので、ロックスの一味だった頃を語るのは禁忌として避けてきた。白ひげ自身、無法同然の一味に属するのに嫌気が差しており、立場が立場とは言えおでんを船に乗せるのを嫌がったくらいだ。

 そんな時、ロジャーの部下だったクロエが、勝手な行動をした仲間を迎えに行くためにマリージョアを襲撃したというニュースを耳にした。ロジャー以上に滅茶苦茶だなと笑いながら新聞に目を通し、ある顔を見て驚いた。

「何でてめェがいる……?」

 新聞に載っていたのは、すでに縁を切ったも同然の女――ステューシーの姿だ。

 ゴッドバレーでは自分の背中に引っ付いていた奴が、若き日のままクロエ海賊団の一員として指名手配されたのだ。還暦を迎えようとしている自分から見て、彼女も年を重ねているはずなのだが……。

「……あのじゃじゃ馬、ロックスの野郎と同じ事でもする気か?」

 今のクロエ海賊団は、バスターコールすら歯が立たない程の戦力を有している。

 トップは海賊界でも最上位クラスの猛者、その下には30億越えの賞金首が二人、下っ端も全員が5億以上の懸賞金。少数だが現役の海賊で張り合えるのはロックスの残党ぐらいだ。

 ここ最近老いを感じ始めている白ひげとしては、彼女と本気で戦う場合は心してかからねばならない。

「ロジャーの野郎、とんでもねェ置き土産を遺しやがって……」

 白ひげの脳裏に、サムズアップしながら大爆笑するかつての好敵手が浮かんだのだった。

 そして、遠く離れたホールケーキアイランドでも、大海賊が新聞を読んでいた。

「――ハァ~~!? おれより懸賞金が低いくせに〝史上最恐〟だとォ!?」

 ワナワナと怒り狂うのは、かつてクロエと激闘を繰り広げたビッグ・マム。

 女海賊の中では最高懸賞金額である彼女は、自分より下の世代の小娘の台頭に苛立っていた。

「ママ、あいつだぜこの記事!!」

「ああ……憶えてろモルガンズ……いや、憶えてろよ〝鬼の女中〟ゥ~~~!!!」

 

 

           *

 

 

 〝偉大なる航路(グランドライン)〟のある島。

 暢気にキャンプを楽しんでいた赤髪海賊団は、新聞を引き攣った笑みで眺める大頭を注目していた。

「アハハ……滅茶苦茶だなァ、クロエ姉さん」

「マリージョアに殴り込んで、随分な被害を与えたらしい」

 冷や汗をダラダラ流すシャンクスに、ベックマンは煙草を吹かしながら言葉を紡ぐ。

 クロエ海賊団と海軍の戦闘で発生した被害は甚大だ。パンゲア城の一部は崩壊、〝赤い港(レッドポート)〟は次の世界会議(レヴェリー)までに復旧が終わるかは不明、神々の地に至っては壊滅的な打撃を受けている。人的被害も多く、天竜人がクロエとガープの戦闘に巻き込まれたことで多数の死傷者が出て、海兵と衛兵は数千人もの重傷者を出す大惨事だ。

 大海賊時代開幕以来……いや、この世界の歴史上最悪のテロ事件と言っても過言ではない。

「シャンクス、何見てるの?」

「うおっ!? い、いや!! 何でもねェよ!!」

「――あっ! クロエおばさん!」

 ひょこっと顔を出し、新聞を見て目を輝かせるツートンカラーの少女。

 シャンクスの義理の娘・ウタだ。

「シャンクス、また出し抜かれたのね! 私にとってシャンクスが一番の海賊なんだから、クロエおばさんを超えてよ!」

「無茶言うんじゃねェ、姉に勝る弟はこの世にいねェんだよ!!」

「説得力のある自虐だな」

『ぎゃははははは!!!』

 大爆笑するヤソップ達に、シャンクスは「うっせー!」と怒号を飛ばす。

 だが、彼がクロエに敵わないのは紛うことなき事実だ。ロジャー海賊団に在籍していた年数こそ上だが、実力は圧倒的に姉貴分の方が上で、しかも黒歴史もあって弱みも握られている。本気で戦いを挑もうものなら、弟分ゆえに情けはかけるかもしれないが心も体もボロボロにされる。戦ってみたいと言えば戦ってみたいが、()()()()()が求められそうだ。

「クロエおばさん、会いたいなー……私の歌を聴かせてあげたい!!」

「ダッハッハッハッ!! おいおい、姉さんは子供でも容赦しないぞ? 今のお前じゃあ聞く耳も立ててくんないかもな!!」

「シャンクスのバカ!! 一度も勝った事ないクセに!!」

「こ、このっ……おれァからかっただけだってのに、言葉のナイフを……!!」

 こめかみをピクピクさせる、大人気ないシャンクスであった。




本作を読んでると、ラカムはどうしてあんなに強いのかという疑問が湧くと思いますが、近い内にその真実を公開します。
実は彼は、ある人物から覇気を習ってるんです。

ヒントはアニオリのキャラです。
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